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妖怪神社の大ピンチ
賽銭泥棒じゃありません
しおりを挟むゾクッと背筋に冷たいものが走った次の瞬間、黒羽の黒い翼から強風が放たれ、僕の体ごと竹刀を吹き飛ばした。
「うわ……あああ!」
「きゃああ~!」
後ろにいたコンとポンも巻き込んで、参道の入り口まで吹き飛ばされる。
あいつは僕に触れたわけじゃないのに、僕の体はティッシュペーパーのように成す術もなく宙を舞っていた。砂利に背中から着地したからかろうじて受け身を取れたけど、頭から突っ込んでいたら首の骨が折れていたかもしれない。
「大丈夫ですか? 尚之介さんっ」
コンとポンは無事のようだ。獣の本能でうまく着地したんだろう。
「くそ……本当にヤバい奴じゃないか!」
砂塵が口の中に入り込み、ざらりとした舌触りを感じた。不快すぎて唾を吐きたくなる。
「ぬらりひょんはどこです? 居場所を教えてください」
高いところから朗々と黒羽の声が響く。
「冗談じゃない……。誰が教えるか!」
僕の家にいるなんて言ったら、僕の家がますますめちゃくちゃになっちゃうじゃないか。
「私はまだ全力の1%も出していません。素直に白状すれば命だけは助けてあげますよ」
勝ち目がなさすぎて笑える。
なんで僕はこんな目に遭っているんだ。
昨日までただの大学生だったのに。
「あの人のことがそんなに大事ですか?」
「まさか。あんなのとは早く縁が切りたいよ!」
「だったらどうして庇うんです?」
「庇ってなんかいない……!」
「じゃあ居場所を教えてもいいじゃありませんか」
「それだけはできない!」
「話が通じませんね」
同感だ。一体どうすればいいんだろう。
「あのー、そこで何をしてらっしゃるんですか?」
するとその時、背後から懐中電灯の光が差し込んで来た。振り向くと、チェック柄のパジャマ姿の美彌子さんが僕に向かって光を照らしていた。僕たちはお互いに顔を見て驚く。
「ど、泥棒⁉︎」
「美彌子さん⁉︎」
無事だったのか。なんて安堵している場合じゃない。
「きゃあああ! お賽銭ドロボー!」
美彌子さんは盛大な勘違いをしていた。
「うちみたいな貧乏な神社に入ったって、何にもありませんよ⁉︎」
「ち、違います! 誤解です! 僕です、正右衛門の孫の社尚之介です! 昼間ご挨拶したでしょう⁉︎」
「ええ……? ああ! 思い出しました! お賽銭、565円の方!」
顔や名前じゃなくて金額で覚えられてんの、なんか辛い。
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