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小山内 陽向
人生最悪の日
しおりを挟む今日は最悪の日だ。
今までの人生で、多分最悪の日。
「あのさ。ちょっと昴に聞いてほしいことがあるんだけど」
私の今日を人生最悪の日に導いた男がそう言った。
太陽みたいにキラキラした光属性強めの私の幼なじみ、小山内陽向。
今朝、学校に行こうと玄関を出た瞬間、私は彼に捕まった。
それは今から10分前のことだった。
◇
「おはよう、昴!」
「うげっ」
底抜けに眩しい笑顔を向けられ、寝不足だった私の両目は潰されてしまいそうになった。咄嗟に目を逸らして、なんとか難を凌ぐ。
「……おはよう」
私はいつものようになるべく無愛想を装って、陽向の横を通り過ぎようとした。
自分では目一杯の早歩きでぶっちぎりたかったのに、陽向は余裕でついてくる。
無理もないか。私の身長は150センチをちょっと越えたくらいなのに、向こうは小山内なんていう苗字に反して180センチもある大男なのだ。一歩を繰り出す足が長い。
そのうえ陽向は成長期にぐんぐん伸びたその身長を活かし、中学から部活動でバスケを始めていた。その後、彼はみるみるうちに才能を開花させ、華やかなトッププレーヤーへの道をまっしぐらに突き進んだ。
高校でも彼は当然バスケ部に入り、まだ二年生なのにセンターフォワードとかいう派手めのポジションで頑張っているらしいとかなんとか、うちの母親が陽向の母親と井戸端会議しているところを小耳に挟んだことがある。
バスケのことはよく知らないけど、陽向は狙った相手をピッタリマークするのが上手なのだということは分かった。
「なんなん。ウザい。ついてこないでよ」
このままじゃ私の息が上がる。
運動不足の帰宅部に朝から全力で競歩させるな。
横目で睨みつけても、陽向はキョトンとして
「えっ。ダメだった?」
と、ほざく。
昔からそう。
私がどんなに突き放しても、陽向は平気な顔している。
陽向みたいなキラキラした人が、私みたいなちっぽけでつまんないやつと一緒にいるべきじゃないのに。
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