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氷崎 玲奈
無意味な推理
しおりを挟む私はそこまで考えて、いや、と首を捻った。
やっぱりおかしい。何か仕掛けるなら、スタメン発表後じゃなくて発表前の方が絶対にいい。
発表後にもし陽向が怪我でもしたら、内部に犯人がいると疑われてもおかしくない。それに、実際千秋くんは昨日は何もしていない。せっかく陽向を眠らせたのに、何もしないのはおかしい。
それとも、何かしようとしたけど邪魔が入った?
それがキスの犯人だったのかも?
だったら少しは納得できる。
いや、もしかしたら。
キスの犯人と千秋くんは共犯者だったという可能性もあるのではないだろうか。
この時系列を見る限り、起きていた陽向と接触する機会は部活関係者以外なさそうだ。
けれども、もし千秋くんが陽向を眠らせて、キスの犯人の手助けをしたという推理が成立するなら、犯人は必ずしも部活関係者だとは限らなくなる。
眠っている陽向を襲うことなら、学校内にいれば誰でも可能なのだ。部室には鍵なんてついていない。私だって入れた。
……『あの人』だって。
私はため息をついた。
こんなの、推理でも何でもない。ただの妄想だ。
千秋くんが事件に関係しているかどうかすら分からない。
あの人と千秋くんに繋がりがあるかどうかも分からない。
だから、こんなものは無意味だ。
今書いたものを塗りつぶそうとした時、制服のスカートのポケットに入れていたスマホがブルっと一回だけ振動した。
授業中はカバンに入れておくルールだけど、さっきの休み時間にカバンに入れるのを忘れていた。
LINEメールの通知か。授業中に誰だろう。
先生が板書をしている間にこっそりスマホをポケットから出してみて、私は思わずドキッとした。
表示されていたLINEのアイコンは、隣のクラスの陽向のものだったのだ。
何だろう。次の休み時間まで待てない案件?
ますます気になって仕方がない。私は先生の動きを警戒しながら、陽向のトークルームを開いた。
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