【完結】みなしごは不器用な海の神から愛を知る

伊藤あまね

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*三十三 永久の誓い

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 始まりの口吸いののち、海璃は渡津海からまとうばかりになっていた紗々の着物を脱がされ、渡津海もまた自らのそれを脱ぎ去った。
 布越しでない互いの肉体を、ぼんやりとした灯りの寝台の上で見つめるのは、なんとも不思議な色気を伴う。下履きすら取り払った、まったくの生まれたままの姿のため、互いの体の中心で熱を持ち始めている芯が露わにされている。
 渡津海のそれは、海璃が考えるよりもうんと大きく長く、たくましさも兼ね備えていた。浅黒い肌のせいで陰影が濃く、海璃のそれよりも随分と雄々しい。
 組み敷かれている海璃は、そっと上に覆い被さってきたことで重なり合う渡津海の雄芯の質量に、熱のこもった息を吐く。
 思わず見入っていると、渡津海が小さく苦笑をした。

『海璃、怖いか?』
「えっと……これが、俺の、ナカに?」
『まあ、そうなるな……痛みはないように術を施しはするが』
「うん……ねえ、触っても、いい?」

 よいぞ、と渡津海に促され、海璃は自分の腹の上に載る渡津海の雄芯に触れてみた。熱いそれは、はちきれそうに硬く、重たい。しかし、先端に触れたり、竿の辺りを撫でてみたりすると、ひくりとわずかに反応した。濃い下生えの中から屹立するそれは、渡津海と同様に強い意志を持っているようにも見える。
 海璃は自分のものとは全く異なる姿のそれに、夢中で触れる。ぎこちなくも懸命な仕草に、渡津海の熱は煽られるように高まっていく。

『ああ……よいぞ、海璃……上手だな……』
「渡津海、気持ち良い?」
『ああ、とても良い……だが、出来ることなら、お前の中でより心地よくなりたいのだが……』

 どうだろうか? と、問われ、海璃は腹の奥がずくりと疼くのを感じた。先程の愛撫でわずかに先走りの蜜をこぼした花芯が、触れ合う雄芯の熱に期待を寄せて体温をあげるのがわかる。
 自分のナカに、この熱が……想像するだけで目眩がしそうな興奮を覚え、海璃はこっくりとうなずく。肌が上気し、覚えたての情欲に目が潤んで濡れる。瞬くほどに灯りを受けてきらめく瞳には、ただの雄獣の姿になろうとしている渡津海の姿が映し出されていた。
 海璃の快諾をきっかけに、渡津海の指先が花芯の輪郭をなぞりながらその果実のような陰嚢に触れ、やがて未踏の秘所へ行きつく。指先が触れると、そこはひくりと疼く。
 人と人であれば、そこはまぐわいに適していない箇所であるはずなのだが、渡津海はそこに触れつつやわらかな熱を施し始めた。淡い熱を感じ始めたそこに、ゆっくりと指先が滑り込んでいく。

「あ……ン、ッふぅ……」
『痛みはないか?』
「ン……ない……でもなんか、ちょっと、熱くて、ヘンな感じ……」
『不快ではないか?』
「ううん……平気……もっと、シて……」

 海璃の隘路を伝って挿し込まれる指からは、渡津海は痛みと不快感を取り除き、滑らかになる蜜を湧かせる不思議な熱を伴う術が施されているらしく、ゆっくりと内部へと触れてくる熱に海璃の口が甘くほどける。
 こぼれる声を我慢しなくても良いと言われたこともあり、海璃の口からは止め処なく溢れてこぼれていく。すがるような、甘えるようなその声に釣られるように、指を呑み込む秘所も蜜をあふれさせ始める。
 蜜を多分に伴いつつ、渡津海は再び唇を重ね、海璃の緊張をほどいていく。舌を絡ませ、吸い、嬲るように裏筋をなぞれば、海璃はくぐもった甘い声を漏らす。
 その内に、花芯からは先走りが糸を引いて溢れ、海璃の腹を汚し始める。渡津海はそれごと絡めとり、花芯を扱き始めた。前と後ろ、そして口許の三カ所からいっぺんに与えられる快感に、海璃は意識を攪拌かくはんされていく。

「ン、ンぅ! っや、あ、ああ、ああぅ!」

 やがて容赦のない愛撫に海璃は絶頂を迎え、渡津海の手の中に白濁を吐き出した。ひくひくと震えるそこを、唇を解放した渡津海が舌を這わせる。
 絶頂を迎えても尚与えられる快感に、海璃は声も出ず、震えながら涙目で渡津海を見つめていた。

「渡津海、舐めちゃったの?」
『お前のすべてが愛しいからな。吐き出された精さえも惜しい』

 くすりと笑う渡津海の笑みに、果てたはずの熱が小さく疼く。
 ああ、もっとだ。もっと、この男の熱が欲しい――施された熱のせいだけじゃない昂ぶりを感じながら、海璃は蜜のあふれる後孔に触れながら、求める声をあげた。

「俺も、渡津海の、精……いっぱい欲しい」

 欲情に濡れた瞳で懇願してくる海璃の淫らな姿に、渡津海の欲望が熱を一層上げていく。弾けんばかりに硬度をあげ、天を突かんばかりに反り上がる。
 渡津海は海璃のしなやかな脚に触れ、頬に口付けをしながら微笑んで答えた。

『ならば儂の想いも力も、与えられる限り注いでやろう』

 その覚悟はいいか、と問うように見返され、海璃は細い腕いっぱいに渡津海を抱きしめて囁いた。

「渡津海を信じてるから、愛してるから……ちょうだい」

 言葉は重ねられた唇に呑み込まれ、やがて指で触れていた秘所に渡津海の想いと力をまとった熱が挿し込まれる。海璃の悲鳴は、渡津海が口伝いに飲み干していく。
 貫いてきた熱の圧迫感は、想像よりもうんと大きかった。隘路を押し広げ、腹の奥までいっぱいに満たされ、苦しい。ようやく唇を解放されても、海璃は息を吸うことも吐くこともままならない。

「あ、ああ……あぅ、ッは、あぁ……」
『熱いな、海璃のナカは……懸命に抱き着いてきて、愛おしい……』
「渡津海……好き、もっと、もっと……」
『そのように愛らしいことを言って煽るでない……加減が効かなくなってしまう』

 そう、渡津海が苦笑をしつつ、熱に貫かれて微かに震える海璃の髪や頬を撫でてなだめようとする。初めてのまぐわいなのだから、恐怖心を与えないようにしているのかもしれない。なにより、神とのまぐわいは命に関わるのだから。
 だが、それを打ち消すように首を振り、欲情に浮かされた目で渡津海を見つめる。

「加減、効かなくていい……だって、俺、渡津海と、一緒になりたい……」
『しかし、海璃……』
「お願い……俺を、いっぱい、愛して……」

 生まれてからずっと欲しかったものを、渡津海はいつも海璃に与えてくれた。あたたかい寝床も美味しい食べ物も、きれいな着物も。そして何よりも、愛されるということを。
 そのすべてを込めた行為がこのまぐわいで、それにより海璃が神になってふたりが結ばれるというのならば、あらん限りの想いを躊躇うことなく与えて欲しい。それが、海璃の最大の望みだ。

『……わかった、海璃の望むように愛してやろう』

 海璃の言葉に、渡津海はうなずいたかと思うと、そのまま彼を抱き上げ、あぐらをかくように座り直したかと思うと、そのままぐっと海璃をより深く差し抜いた。海璃の自重と、下からの突き上げにより、渡津海が奥深くに入り込んでいく。それまでとは違う圧迫感に海璃は息が止まりそうになった。

「ッカハッ……あぐッ……ッは、あぁ……」

 快感を覚えるすべてを押し潰され、花芯がわずかに白濁をこぼす。はくはくと酸素を求めるよう喘ぐ海璃の唇を、渡津海は噛みつくように塞ぎ、舌を挿し込んでまさぐる。悲鳴さえ、上げられなかった。
 強く抱きすくめられた格好のままの海璃を、渡津海がさらに容赦なく突き上げてくる。蜜が溢れ、二人を繋ぐ箇所が卑猥な音を立てて溶け合っていく。

『海璃……ああ、何と言う締め付けだ……そんなに儂とまぐわうのが嬉しいのか』
「ンぅ……ッあ、ンぅ……嬉し、よ……っはぁう! あ、あぁン!」

 だからもっと、深くまで愛して欲しい。言葉にならない求めを、渡津海は汲み取ったかのように一層激しく海璃を求める。夢中で貪るように、熱い屹立を突き立てる。
 その内に海璃の体の奥で熱いものが爆ぜる感触がしたが、それでも渡津海の雄芯に衰えは見えない。そのまま海璃を膝立ちで抱え替え、後ろ立ちをした姿勢でさらに突き上げていく。そのはずみでナカに放たれた精が海璃からあふれだし、淫らな色に染まった肌を汚していく。

『海璃よ……我が伴侶となり、永久に添い遂げようぞ……!』
「渡津海、好き……愛して、る……あ、あ、あぁう!!」

 幾度目になるかしれない絶頂のさなかに交わす言葉は永遠をかたどり、やがて二つの体を一つにしていく。もう二度と離れないようにと願うふたりの想いを表すかのように。
 乱れて交じり合い、互いの境目すら曖昧になっていく中、契った言葉を唇に載せて刻むように互いに流し込んでいく。それはきらめく光のように鮮やかに海璃の内部に入り込み、満たしていった。
 渡津海の溢れんばかりの熱情を感じながら、また別に覚えるやさしい充足感を、海璃はうっとりと浴びるように味わう。
 そうしていく内に、海璃の体は淡い光に包まれていくように感じられる。

(――――ああ、俺……いま、神様になっていっている……)

 知らぬはずなのに、確かにそれとわかる感触に、海璃は言葉にならない喜びを感じ、そしてこれがしあわせなのだとも気づいた。
 身を捩って渡津海を見上げる瞳が、ふたり同じ色――金色しているのを、海璃は気付いているのだろうか。きらめく瞳の中に互いを映し合い、幾度目になるかしれない口付けを交わす。その度に、海璃の肌には虹色に輝く鱗が並んでいき、神の姿に変わっていくのがわかった。

「愛してる、永久とわに、ずっと――――」

 身も心も満たされて知った甘やかでやわらかい感情に包まれながら、海璃は渡津海と同じく神の存在となり、彼の伴侶として永久にとわ添い遂げることを誓ったのだった。


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