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第一話
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黒神礼美には悪魔がついている。という話は校内では知らないものがいないくらい有名な話だった。
しかもそれは噂ではなくて真実だと信じられていた。
だからカラスの濡れ羽という古い例えで表現したくなるくらい、つややかできれいな黒髪を腰のあたりまで伸ばしていても、日本人形のようにきれいな顔立ちをしていたとしても、黒神礼美はいつも一人ぼっちだった。
教室の中でも窓際の一番後ろの席が指定席になっていた。席替えが行われたとしても決まってそこが黒神礼美の指定席だった。教師もそのことについてなにも言わなかったし、クラスの中で、それどころか学校中で黒神礼美という存在は触らぬ神にたたりなし、いるけれどいない存在、見えるけど見えないものとして扱われているのだった。
黒神礼美のほうも特に誰に話しかかけるわけでもなく、話しかけられるわけでもなくいつも一人で過ごしていた。
そしていつも頬笑みを浮かべている。
それが黒神礼美という存在だった。
だから席替えでハズレ席と認識されていた彼女の隣の席になった明石要が話しかけたことは、ある意味平穏だったクラスに嵐をおこすことになった。
黒神礼美の隣の席なった明石要は、ちょっとためらった後に黒神礼美に一言「よろしく」と声をかけたのだ。
それだけのことなのだけれど、一瞬にして辺りは静まり返った。
張り詰めたような緊張したような空気が辺りを支配する。
席替えというイベントにざわめいていた教室もなにが起こったのかが伝わると誰もが話をするのをやめて窓際の後方へと視線を向けた。
明石要はクラス中の注目を浴びてどうにもバツの悪い思いをする羽目になってしまったけれど、話しかけたことは事実なので、なんとなくそのまま黒神礼美のほうに視線を向けていた。
黒神礼美は関心がないといった感じで窓の外を見ていたのだけれど、明石要の視線を感じてか、それとも教室内が静まり返ったことに気がついたからか、顔を明石要の方に向けて口を開いた。
「私にかかわると呪われますよ」
誰かが悲鳴を押し殺したような息を飲む声が聞こえた。
明石要自身も自分の表情がひきつっているのではないかと思った。
思えば、黒神礼美の声を聞いたのは初めてだったかもしれない。
なぜなら黒神礼美は授業中に教師に指されることもなかったし、誰かが話しかけることもなかった。そして彼女の方から誰かに話しかけることも今までなかったのだから。
だから黒神礼美がしゃべったというだけでも事件かもしれなかった。
まして内容が内容である。そして何より自分に関わると呪われるといった時の黒神礼美の顔にはいつものように頬笑みを浮かべたままだったのだ。
黒神礼美は言うことは言ったとばかりに再び視線を窓の外に向けていた。
明石要は何ともいえない微妙な表情を浮かべながらクラスを見回した。するとなぜか彼の視線から目をそらそうとするクラスメートが多かった。
なんだか急に居心地の悪さを感じながら明石要はため息をついた。
しかもそれは噂ではなくて真実だと信じられていた。
だからカラスの濡れ羽という古い例えで表現したくなるくらい、つややかできれいな黒髪を腰のあたりまで伸ばしていても、日本人形のようにきれいな顔立ちをしていたとしても、黒神礼美はいつも一人ぼっちだった。
教室の中でも窓際の一番後ろの席が指定席になっていた。席替えが行われたとしても決まってそこが黒神礼美の指定席だった。教師もそのことについてなにも言わなかったし、クラスの中で、それどころか学校中で黒神礼美という存在は触らぬ神にたたりなし、いるけれどいない存在、見えるけど見えないものとして扱われているのだった。
黒神礼美のほうも特に誰に話しかかけるわけでもなく、話しかけられるわけでもなくいつも一人で過ごしていた。
そしていつも頬笑みを浮かべている。
それが黒神礼美という存在だった。
だから席替えでハズレ席と認識されていた彼女の隣の席になった明石要が話しかけたことは、ある意味平穏だったクラスに嵐をおこすことになった。
黒神礼美の隣の席なった明石要は、ちょっとためらった後に黒神礼美に一言「よろしく」と声をかけたのだ。
それだけのことなのだけれど、一瞬にして辺りは静まり返った。
張り詰めたような緊張したような空気が辺りを支配する。
席替えというイベントにざわめいていた教室もなにが起こったのかが伝わると誰もが話をするのをやめて窓際の後方へと視線を向けた。
明石要はクラス中の注目を浴びてどうにもバツの悪い思いをする羽目になってしまったけれど、話しかけたことは事実なので、なんとなくそのまま黒神礼美のほうに視線を向けていた。
黒神礼美は関心がないといった感じで窓の外を見ていたのだけれど、明石要の視線を感じてか、それとも教室内が静まり返ったことに気がついたからか、顔を明石要の方に向けて口を開いた。
「私にかかわると呪われますよ」
誰かが悲鳴を押し殺したような息を飲む声が聞こえた。
明石要自身も自分の表情がひきつっているのではないかと思った。
思えば、黒神礼美の声を聞いたのは初めてだったかもしれない。
なぜなら黒神礼美は授業中に教師に指されることもなかったし、誰かが話しかけることもなかった。そして彼女の方から誰かに話しかけることも今までなかったのだから。
だから黒神礼美がしゃべったというだけでも事件かもしれなかった。
まして内容が内容である。そして何より自分に関わると呪われるといった時の黒神礼美の顔にはいつものように頬笑みを浮かべたままだったのだ。
黒神礼美は言うことは言ったとばかりに再び視線を窓の外に向けていた。
明石要は何ともいえない微妙な表情を浮かべながらクラスを見回した。するとなぜか彼の視線から目をそらそうとするクラスメートが多かった。
なんだか急に居心地の悪さを感じながら明石要はため息をついた。
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