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第二話
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「いったい何のつもりだったんだ?」
昼休み、騒がしい学食でようやく席を見つけて座った要に話しかけてきたのは、クラスメートの倉田だった。
「何の……といわれてもなあ」
要は大盛りカツカレー350円にスプーンを突っこんだままため息のように呟いた。
いつもはこの安くてそれなりに美味しい学食のメニューを目の前にするとテンションが上がるのだけれど、この日ばかりはどうにも食欲がいまひとつだった。
原因は要自身もよくわかっている。
というのも朝のロングホームルームの時の席替えで、あの黒神礼美に話しかけた馬鹿がいるということはクラスだけでなく学年中に、昼休みのころになると学校中に広まってしまったようなのだ。
だから廊下を歩いていても、こうやって学食に来ても常に誰かの視線を感じるようになってしまっていたのだった。しかも視線を感じてそちらを向けば慌てたように、言ってみれば露骨に視線を外された。
さらに同情したような、なんだかかわいそうなものをみるような表情を浮かべられては要としても気分のいいものではないし、こんな雰囲気の中で食事をしてもおいしく味わう気持ちになれないというものだ。
そんな中話しかけてきて倉田はいいやつだなと要は思う。
倉田とは高校に入ってからの友達で、二年になった今も同じクラスになったこともあっていい関係を築いていた。親友といってもいい間柄だ。
「別に深い意味はないんだけどね。とりあえず隣の席になったからあいさつしただけでさ」
そう答えて要はスプーンにご飯とカレー、それに薄いけれど大きいカツをいっぱいにのせて口に運ぶ。やっぱりいつよりおいしくないような気がした。
「それにしたってよ。要だってあの子の話を知らないわけじゃないだろ?」
箸で要を指すようにして倉田が言う。倉田の前にはこれまた大きなてんぷらののっかったうどんとおにぎりが置かれていた。
「いや、まあ、しらないわけじゃないけどさ」
「だったら」
「まあそうなんだけどよ。なんていうか隣の席なのに無視するっていうのもなんか違うっていうか、それってやっぱ不自然だろ?」
と要は倉田に答えると目の前のカツカレーに集中した。
何か言いたそうな表情を浮かべていた倉田も改めてうどんとおにぎりを食べ始めた。
しばらく二人は無言のまま昼食を片づけていた。二人とも食べるのは早い方だし、ましてや高校生の男子であるからあっという間にカツカレーもてんぷらうどんもおにぎりもすぐになくなってしまった。
いつもだったら食べ終わった食器を持ってすぐに場所を開けるのだけれど、二人ともなんとなく座り続けていた。
「でもな、あの子の呪いっていうのはマジだぞ」
冗談でなく、真面目な表情を浮かべた倉田がグイッと顔を要に近づける。
「いいから聞けって」
口を開こうとした要を押しとどめて倉田は語る。
「要は高校からだからあまりあの子のことを知らないかもしれないけど、俺は小中高と同じ学校なんだよ。だからよく知っている。彼女にかかわると本当に呪われているんじゃないかってことがたくさん起きるんだ」
「それって、例の不良が怪我したとかそういう話だろ? でもあれって、事故とも言えるじゃん。それに噂じゃ黒神に乱暴しようとして体育倉庫に連れ込んで、もみ合った拍子に積んであったポールとかが倒れてってことだろ? はっきりいって自業自得じゃん」
「たしかに黒神さんは」そこまで言って倉田は声をひそめた。「見た目はいいし、大人しそうだから目をつけられやすいところがあったけど、でも不良たちはみんな怪我して、彼女だけ無傷って言うのも不思議だと思わないか? 俺みたいにずっと同じ学校だったやつはやっぱりって思ったし、そうじゃなくったって地元のやつが多い学校なんだ。触らぬ神にたたりなしって言葉を実感したと思うぞ。要だってそうじゃないのか?」
真剣に本気の目だった。
「そりゃ一年の時はクラスが違ったかし、これまでだって話す機会もなかったし、無理に話しかけようとは思わなかったけどさ」
やや蹴落とされたような感じで要は言い訳のようなことを言った。
「でもさ、やっぱりクラスメートじゃん」
そう言われると倉田としてもいつまでも強い口調で要に詰め寄ることができないようだった。
野球部でもないのに坊主頭の倉田は、テーブルに肘をついて頭を抱えた。そして苛立ったように頭をかき乱した。
「俺だってあんまり言いたくないけど、たぶん要が思っている以上にヤバいんだって。悪魔が本当にいるのかどうかは知らないけど、彼女には何かあるんだって」
周囲が静かになっていた。視線が集まっている事に気がついて倉田はいつの間にか自分の声がだいぶ大きくなっていたことを知った。
要と倉田の二人はそそくさと食器を片づけると足早に学食を後にした。
昼休み、騒がしい学食でようやく席を見つけて座った要に話しかけてきたのは、クラスメートの倉田だった。
「何の……といわれてもなあ」
要は大盛りカツカレー350円にスプーンを突っこんだままため息のように呟いた。
いつもはこの安くてそれなりに美味しい学食のメニューを目の前にするとテンションが上がるのだけれど、この日ばかりはどうにも食欲がいまひとつだった。
原因は要自身もよくわかっている。
というのも朝のロングホームルームの時の席替えで、あの黒神礼美に話しかけた馬鹿がいるということはクラスだけでなく学年中に、昼休みのころになると学校中に広まってしまったようなのだ。
だから廊下を歩いていても、こうやって学食に来ても常に誰かの視線を感じるようになってしまっていたのだった。しかも視線を感じてそちらを向けば慌てたように、言ってみれば露骨に視線を外された。
さらに同情したような、なんだかかわいそうなものをみるような表情を浮かべられては要としても気分のいいものではないし、こんな雰囲気の中で食事をしてもおいしく味わう気持ちになれないというものだ。
そんな中話しかけてきて倉田はいいやつだなと要は思う。
倉田とは高校に入ってからの友達で、二年になった今も同じクラスになったこともあっていい関係を築いていた。親友といってもいい間柄だ。
「別に深い意味はないんだけどね。とりあえず隣の席になったからあいさつしただけでさ」
そう答えて要はスプーンにご飯とカレー、それに薄いけれど大きいカツをいっぱいにのせて口に運ぶ。やっぱりいつよりおいしくないような気がした。
「それにしたってよ。要だってあの子の話を知らないわけじゃないだろ?」
箸で要を指すようにして倉田が言う。倉田の前にはこれまた大きなてんぷらののっかったうどんとおにぎりが置かれていた。
「いや、まあ、しらないわけじゃないけどさ」
「だったら」
「まあそうなんだけどよ。なんていうか隣の席なのに無視するっていうのもなんか違うっていうか、それってやっぱ不自然だろ?」
と要は倉田に答えると目の前のカツカレーに集中した。
何か言いたそうな表情を浮かべていた倉田も改めてうどんとおにぎりを食べ始めた。
しばらく二人は無言のまま昼食を片づけていた。二人とも食べるのは早い方だし、ましてや高校生の男子であるからあっという間にカツカレーもてんぷらうどんもおにぎりもすぐになくなってしまった。
いつもだったら食べ終わった食器を持ってすぐに場所を開けるのだけれど、二人ともなんとなく座り続けていた。
「でもな、あの子の呪いっていうのはマジだぞ」
冗談でなく、真面目な表情を浮かべた倉田がグイッと顔を要に近づける。
「いいから聞けって」
口を開こうとした要を押しとどめて倉田は語る。
「要は高校からだからあまりあの子のことを知らないかもしれないけど、俺は小中高と同じ学校なんだよ。だからよく知っている。彼女にかかわると本当に呪われているんじゃないかってことがたくさん起きるんだ」
「それって、例の不良が怪我したとかそういう話だろ? でもあれって、事故とも言えるじゃん。それに噂じゃ黒神に乱暴しようとして体育倉庫に連れ込んで、もみ合った拍子に積んであったポールとかが倒れてってことだろ? はっきりいって自業自得じゃん」
「たしかに黒神さんは」そこまで言って倉田は声をひそめた。「見た目はいいし、大人しそうだから目をつけられやすいところがあったけど、でも不良たちはみんな怪我して、彼女だけ無傷って言うのも不思議だと思わないか? 俺みたいにずっと同じ学校だったやつはやっぱりって思ったし、そうじゃなくったって地元のやつが多い学校なんだ。触らぬ神にたたりなしって言葉を実感したと思うぞ。要だってそうじゃないのか?」
真剣に本気の目だった。
「そりゃ一年の時はクラスが違ったかし、これまでだって話す機会もなかったし、無理に話しかけようとは思わなかったけどさ」
やや蹴落とされたような感じで要は言い訳のようなことを言った。
「でもさ、やっぱりクラスメートじゃん」
そう言われると倉田としてもいつまでも強い口調で要に詰め寄ることができないようだった。
野球部でもないのに坊主頭の倉田は、テーブルに肘をついて頭を抱えた。そして苛立ったように頭をかき乱した。
「俺だってあんまり言いたくないけど、たぶん要が思っている以上にヤバいんだって。悪魔が本当にいるのかどうかは知らないけど、彼女には何かあるんだって」
周囲が静かになっていた。視線が集まっている事に気がついて倉田はいつの間にか自分の声がだいぶ大きくなっていたことを知った。
要と倉田の二人はそそくさと食器を片づけると足早に学食を後にした。
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