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魔呂学科実習
スナコVSユーキュリーネ
しおりを挟む「私にこんな力が」
勝ったリュディア自身も信じられないという感じでしばし両手を見ていた。
『やりましたわっセレネ王女から一本取りましたわっ!』
『ええ、凄いですね』
『あの者を生徒会に取り立てたいですわっ』
ただ見ている中で一人ユーキュリーネは小躍りして喜んだ。
『と、まあ私でも油断するフリをすれば、格下の者にでも負けるという例を示した!』
シィーン
セレネ教官の苦し過ぎる言い訳に余計に静かになる。
『そうだったんですね! 有難う御座いました!!』
しかし素直なリュディアのXSが深々と頭を下げた。
『え、そうだったのセレネ?』
『そういう事にして置きましょ』
『部長……』
『今の事は記憶から消去しまっス!』
ミラとジーノは尊敬する部長の見たくない場面を見てしまい、少し気まずくなった……
『しかし君やるじゃな~い? 所でその機体には風の魔ローダースキルがあるのかね?』
セレネはひたすら何事も無かった様に気を取り直して聞いた。
『いえそんな事全然知りませんでした……ただ必死なだけで』
恐らく百年前の等ウェキ玻璃音大王が搭乗していた時に、使われていたスキルなのかも知れない。ただセレネは当然知らないし、当の本人の砂緒も前世の前世などに全く興味は無かった。
『良くやったな、その能力を伸ばす様に! という訳でこんな感じで各組が試合をしろ、三本取った方が勝ちだ。負けた方は端っこに行って素振りの練習をしろ。よーし始めっ!』
セレネが竹刀を振った。それを合図に各組がほうぼうで模擬試合を始める。
カシィーンカシィーン
巨大な魔ローダーがあちこちで闘い合う姿は壮観であった。
『そこっ組打ちをするな! そっちは無気力試合をするな怖がるなっ! 雪布留さんは三角座り』
セレネはあちこちに目くばせをした。
ースナコの組。
「うーむ、私もイェラとの剣術修行から始まり三毛猫仮面との闘いを経て、そこそこ強くなっているハズです。こんな小娘共には負けないでしょう。かと言って紳士として乙女を傷付ける様な訳には行きませんフフ」
「スナコちゃん来たよ!」
目の前の名も無き一般生徒のXS25が、果敢にもル・ツー千鋼ノ天のスナコに向けて木剣を振り上げて来た。
ズシャズシャズシャ
やはりスナコから見てもその構えはユルユルであった。
「しかし……社会の厳しさも教えてあげねば、でやっ」
パンッパシッ!
接近するXSの攻撃をあっさりかわすと、木剣で木剣を薙ぎ払いあっさりと面を打った。
『ま、まいりましたっ! 続けてお願いします』
たが、相手の子は最初から胸を借りるつもりで掛かって来ていた様で、特に落ち込む事無く続けて試合を続けた。
「ふむふむ良い心がけじゃ、行くぞっと」
『ふむふむ良い心掛けじゃ、行くぞっ!』
『え?』
相手の女の子は兎幸の通信にぎょっとしてまたあっさりと胴を取られた。
「兎幸、そのまま言わなくても良いのですが」
「エヘヘ」
そんな感じでスナコもあっさりと相手の子から三本取ってしまった。
『勝ちましたわっ!』
『負けたーっやはり名有り機体はお強い方が……』
『おほほ、気を落とさなくってよ?』
『会長、私もなんとか勝ちましたっ!』
『よきよき』
同じ頃、生徒会長ユーキュリーネのユーキュリネイドと書記ルシネーアのゴレムーⅡも勝利を得ていた。
『ピーーッ! よしよし皆模擬試合が終わったな。ふむふむ結局名有り機体は全部勝ったか。別にトーナメント戦という程では無いが、名有り機体に挑みたい者は次々胸を借りるつもりで名乗りを上げよ。ユーキュリーネくん良いか?』
『望む所ですわ!』
ユーキュリーネが勝手に承諾した事で、スナコや生徒会長の機体が次々に生徒達の相手をする事となった。ただし凶状がバレた雪布留の機体には誰も挑戦する事は無かった。
パシッ!
『一本!』
『またユーキュリーネさんが勝ちましたわっ』
『スナコさんも強いですわ』
12機程残っていた機体は次々に三機に倒されて行く。ちなみにリュディアのXSも何故かもう風のスキルは出て来ないであっさりと生徒会長に負けた……
『ふむ、そうだな……ゴレムーⅡのルシネーアくんか、どうだろう雪布留さんの相手をしてやらんか?』
丁度一般生徒を倒したばかりのルシネーアにセレネ教官が持ち掛けた。
『え何故私っ? いえ、怖いです謹んでご遠慮します!』
しかし即座にルシネーアは断りを入れる。これで彼女も失格となった。
『ちょっとお待ちを! セレネ教官、ならばわたくしが雪布留さんのお相手を……』
『駄目だっ! ユーキュリーネくんはしなくて良い』
『まっ何故ですの??』
何故か今度はセレネが生徒会長の申し出を禁じた。結局雪布留は今回は活躍する事無く、泣きながら三角座りを続けた。そんなこんなでスナコとユーキュリーネで一般生徒を倒し続け、結局はこの二機だけがグラウンドに残った。
『ピーーッ! よしよく頑張った。最後にこの二機で模擬試合をして終わろうか、良いかな?』
「うっ生徒会長さんとですか……」
『わたくしは、よろしくってよ! 早速やりましょう!!』
スナコの意思など関係無く、やはりユーキュリーネの同意ですぐさま試合は始まった。
『それでは二人とも礼ッ!』
『お願いしますとスナコちゃんは言ってるピョン』
『お願いしますわっ』
『始めっ』
ビュンッ
直後、勢いよく竹刀は振り下ろされた。
「とりあえず怪我させない程度にやりますか」
『遥かなる悠久のユーキュリネイド、行きますわよっ!!』
二機は木剣を構え合った。事実上の今日の決勝戦である。
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