魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

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II メドース・リガリァと北部海峡列国同盟

路面念車に乗って 3 セレネ、一緒にプレゼントを買いに行きましょう

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 新ニナルティナ港湾都市、喫茶猫呼開店直後。

「聞いて下さいフルエレさん! 朗報ですよ、ラ・マッロカンプ王国が内々に、列国同盟に参加すると表明して来ました! どんどん大きくなっています、締結の日が楽しみですねっ!」

 店内に入ってくるなりセレネは笑顔で報告をするが、店内に当のフルエレの姿は無かった。

「あ・れ、フルエレさんは?」

 セレネはキョロキョロ店内を探した。

「……フルエレは……再びブラジルに会うそうです。さっき自室前で聞きました」
「……ここって喫茶店ってなってるけど、実際にはあたしらのサロンみたいな物だな……」
「本当だったらギルドマスターオフィスを、共有スペースにしてれば良かったのですが、あそこは猫呼が死守してますので自由に使えません。廊下で立ち話も何なので……という訳で結局ここに集まるしか無いのです」
「まあフルエレさんが出掛けるにしても、一回ここを経由してくれるだけでも有難いという事か」
「お待たせ! じゃあ砂緒、後をよろしくねっ! イェラにも言っておいてね!」

 そうこう会話している内に、噂の雪乃フルエレが店内に入って来た。

「……フルエレさん聞いて下さい、列国同盟にラ・マッロカンプが参加を表明してくれました……」
「ふ、ふーん? 凄い事なの? 知らない内に規模がなんかデカくなって行ってて怖いわ……あ、でもごめんねセレネ! 今日はアルベルトさんと政庁移転候補先の下見に行く事になったの! 後でちゃんと聞くからね、どうかしら今日の服は可愛いかしら??」

 前回のパーティー事件の時に匹敵するくらいに、ひらひらした可愛い服を着たフルエレが、にこにこ笑顔でくるくる回転した。

「あ、あのフルエレさん……結構大事な話なんですが……」
「ごめんね! 絶対に今度聞くからね、あと砂緒、絶対に付いて来ないでよ。今日は路面念車を使って移動して、常に周囲に人がいっぱい居て、二人きりで喫茶店にすら入らないんだからね。あとクレウさん、姿が消せる魔法使って追跡しないでね。二人共絶対よ!」

 最初は笑顔だったが、砂緒とクレウに釘を刺す瞬間には恐ろしい顔になっていた。

「いいえ、その様な事は致しません。どうぞごゆっくり」
「いいですかブラジルはド変態です。その事は絶対に忘れないで下さい」
「………………付いて来ないという事だけは嬉しいわ、じゃあねっ! うふふふふふふ」

 フルエレは背中に羽根でも生えている様に、軽やかに店を飛び出ると階段を駆け上がって、路面念車・港湾都市中央駅に向かって行った。喫茶猫呼の入るビルは港湾都市のちょうど都心部中央に位置していた。

「……フルエレさんが、あんなに男の事ばっかり考えてる女の子とは思わなかった。最近は幻滅してばかりだよ」
「やめて下さい! フルエレはそんな女性ではありません。今のフルエレは一種の熱病の様な物で、もうすぐ目を覚まして私の元に戻って来ますから!」
「あんたのそのメンタルの強さには関心するよ……でも列国同盟はラ・マッロカンプだけじゃ無くて、今やブラザーバンド島国やシィーマ島国も参加する事が決まっていて、とても大きな物になりつつあります。フルエレさんにはもっと、天下国家について想いを馳せる様になって欲しい……」

 セレネは頭を抱えた。

「そういう話は猫呼ねここが大好きですからねえ、思い切って猫呼に乗り換えてみたらどうでしょうか?」
「いや、猫呼ちゃんは……あんまり会った事ないけど、余りにも権力に向かってガツガツするタイプはむしろ良く無いかと。あたしがフルエレさんに目を付けた事は間違いだったのだろうか……」

 そこに厨房からイェラが出て来た。

「じゃあ、フルエレと猫呼を混ぜて二つに割ったら、丁度良いのが出来るな!!」
「いや、フルエレはモンスターじゃ無いのですから、合成しちゃったら駄目でしょう……」
「モンスターじゃない、料理の食材のつもりで言っただけだっ!」
「もっと駄目じゃん……」

 セレネは首を振った。

「……………………」

 そのセレネを砂緒がじっっと凝視し始めた。

「いや何だよキモイな、何か言えよ、何見てるんだよ」
「………………いや、セレネ……」

 砂緒は一言二言何か言うと、また黙り込んで凝視した。

「いやだから何だよ、喧嘩売ってるのか??」
「………………何か買います」

 砂緒が珍しく小声で、もじもじしながら言った。

「買う……喧嘩をか?」
「違います………………その、何かプレゼントを買います」
「はぁ? 何でお前にプレゼント買われる理由があるんだよ、ていうかプレゼントって買う事を表明する物か??」
「この前セレネ、私が魔ローダーの始動鍵の宝石を見せた時、てっきりプレゼントだと勘違いして激しくときめいたにも関わらず、始動鍵と知りスカを食らい、地獄のどん底に落ちたはずです」
「ときめいてるかっ! ……細かい事覚えてるな」
「ときめいたのにスカだった、あの時セレネが感じた羞恥を思うと、今でも恥ずかしいのです」

 砂緒は赤面して顔を隠した。

「話聞いてるか? ときめいてねーしって!」

 突然の展開に、イェラは気分を落ち着かせる為にお茶を一口飲んだ。

「それだけでは無いのです。つい先日、激情と欲望のままセレネの両手首を掴み、壁に追いやり、そしてそして、キスを強要した事をお詫びしたいのですっ!!」

 ブーーーーー!!
イェラはお茶を噴射した。

「おおおーーーーーーーーーーーーーーーーい!! デリカシーゼロかよっ!? 違いますよ、これは砂緒の妄想です。全部妄想です、そんな事実は全く御座いませんでしたっ!」
(ここでそれ言うか!?)

 セレネはこれ以上無いというくらいに赤面しながらも、なんとか平静を装って手を超高速で振った。

「そういう訳で、お詫びのしるしに何か買ってプレゼントしたいのですが……」
「お詫びする前に新たなダメージ作ってどうするよ?」
「しかしセレネがどの様な物で喜ぶのか分からないのです。そこで一緒にプレゼントを買いに行きませんか?」 

 砂緒が指先をくねくねしながら言った。態度からしてどうやら本気の様である。

「ほえ? 私へのプレゼントを私が選ぶって事? それって実はフルエレさんへのプレゼントでしたってオチじゃ無いだろうな?」
「はぁ~~どうしてそんな捻くれた事を考えるのですか? そういう所が駄目な所ですよ」
「何でお前にそんな事言われなくちゃならん」
「どうするのですか? 行くのですか行かないのですか??」
「ま、まあ……くれるって言う物を断る必要も無いかな……」

 セレネは意外にも即座に断るという事は無かった。

「あ、でも店があるしな……イェラお姉さま一人に押し付けるのは悪いしな」
「いやいやいや、行け! 今すぐ行け! どんな事があっても行け! 店なんか私一人で見るぞ! とにかく行け!」

 イェラは突然猛プッシュを始めた。

「ひゃ、ひゃい!? わ、わかりました……」

 セレネはイェラの迫力に押され、行くことに決めた。

「嬉しいです。では私を魔輪まりんで商店街に連れて行って下さい!」
「私へのプレゼントを買いに、私が魔輪運転して行くのかよ、何か変だな……」
「魔力が使えず面目無い、連れて行って下さい」

 セレネは何か一瞬迷った様な顔をした。

「あ、じゃあ制服だと変だから、少し着替えて来るわ。すぐに戻るから、待っててくれ」
「……はぁ」

 砂緒は二人共制服のままですぐさま行くつもりだったので、拍子抜けした。

「うんうんそれが良いなっ! 砂緒はいくらでも待つぞ、行って来い!」

 イェラが笑顔でセレネを見送った。


 ―十分後。

「遅いですね……いつになったら降りて来るのか」
「馬鹿なのか、十分で着替えれる訳ないぞ!!」


 ―三十分後。

「三十分経ちましたが、何時になったら降りて来るのでしょうか……」
「ははは、三十分くらい掛かっても当然なのだ!」


 ―一時間後。

「一時間はさすがにイェラも遅いと思うでしょう……」
「確かに遅い……何か得体の知れない敵に襲われ、のっぴきならない状況に陥ってる可能性があるぞ!!」

 イェラも流石に遅いと思い始めた。

「ごめん……待ったか?」

 少し恥ずかしそうにしてセレネが店内に戻って来た。戻って来たセレネは喫茶猫呼の黒いシックな制服とは違い、水色の爽やかな可愛い服を着ていた。普段学園の制服だとか喫茶店の制服だとか黒い色の姿が多いセレネだけに、その着替えた姿はイェラにも砂緒にも鮮烈に映った。

(セレネがすっごいおめかししてるーーーーーーっ、すっごい気合が入った可愛い服着てるーーーーーーーー!!)

 イェラは衝撃の展開に言葉を失った。

「どっかそこら辺に落ちてた服を適当に着ただけだ、砂緒あ、あんまじろじろ見んな……」
(うわ、すっごい嘘ついてるーーーーーーーっ、気合が入っている事を恥ずかしがってるーーーーーーーーーっ砂緒、責任重大だぞーーーーーー!?)

 イェラはドキドキして砂緒を見た。

「セレネ……馬子まごにプギャッ」

 一瞬、イェラは実力以上のスピードが出、砂緒を殴り飛ばした。

(それじゃ無い、違う違う、そうじゃない……)

 イェラは首を振り、ダラダラと鼻から血を流す砂緒に、無言で信号を送った。

「ふぉえ? セレネ……その、すっごく可愛いです。凄く似合って……いますよ?」

 砂緒はイェラの表情を確認しながら言った。

「へ、変な事言うな……ホントにどっかそこら辺に落ちてた服を適当に着ただけだっ!」

 セレネは褒められて、赤面しつつ隠しきれない笑顔になっていた……
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