魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

文字の大きさ
115 / 698
II メドース・リガリァと北部海峡列国同盟

北部海峡列国同盟締結 11 戦闘中に後ろから抱き着くとかありえんわ ……で、でも、今だけな…

しおりを挟む
「ハーーーーーーッ!!」
「遅いですわっ! そんな攻撃瞬間移動を使うまでもありませんわねっ!!」

 一般魔導士操縦者が乗るユティトレッドの量産型魔ローダー、青いSRVが剣でココナツヒメの半透明魔ローダール・ワンに切り掛かるが、ひょいっと簡単に避けられる。

「こっちにもいるんだよっ! 忘れないでっ!!」

 今度は魔導士少女メランが乗る黒い稲妻Ⅱが、後ろに避けたばかりのル・ワンの背中に切り掛かる。しかしル・ワンは恐るべき反応速度でしゃがみ、メランの剣はブンッと空を切る。

「二人がかりでその程度ですの? なんだか簡単に勝てそうですわね、早く片をつけてメッキ野郎に止めを刺したいですわ!」

 そんな感じで三機の魔ローダーは死闘を演じていた。

「あの……何をじっとしているのでしょうか? 早く変形して下さい」
「いや、変形言われても判るかいな」

 当のメッキ野郎……銀色の蛇輪の複座の操縦席では、砂緒すなお瑠璃ィるりいキャナリーが言い合っていた。

「だから鳥の形に魔ローダーが変化するんですってば」
「変化? 化け狸みたいにか? 葉っぱを乗せて??」
「何を言っているのですか? ふざけているのですか? フルエレもセレネも簡単に変形できましたよ。心に変わる気持ちを持つのです!」
「なんや急にスピリチュアル的な事言い出したで。ヤバイ子なん?」

 瑠璃ィは目をつぶり再び念じる。

「ん~~~~~~~~~~~~~~どやっ?」
「どやっ? じゃないですよ、一向に変化無しです……やはり年齢ですか……見た目は若作り出来ても脳が……」
「脳が……やないわっ! ウチは二十九やでっ!」

「それは確かル・ツーのはず、そんな素晴らしい機体に乗りながら、全く使いこなせていないですわ。宝の持ち腐れ、猫に小判とはこの事ですわっ!!」

 ココナツヒメのル・ワンが、奇しくも同型機であるル・ツーの改名機である黒い稲妻Ⅱに切り掛かる。確かにこれが魔ローダーの初陣となるメランにとっては、初めての敵がココナツヒメでは荷が重かった。ガシィッ!! とギリギリで受け太刀するメラン。ギリギリと押し込まれる。

「キャーーーー!! 助けて青い人!!」
「よしっ黒い人!! こっちにも敵がいるぞ!! 半透明!!」

 少しずるいが、黒い稲妻と鍔迫り合いをしているココナツヒメのル・ワンの背中に後ろから切り掛かるSRV。
 ガシッ!!

「バカなっ!!」

 寸でで振り返ったル・ワンはSRVの剣を握る手を掴み、二機同時に立ち向かう。

「動けない!? なんというパワー、只の半透明で派手なだけじゃない!!」

 その三すくみの瞬間だった、黒い影がタタタッとSRVの装甲の出っ張りを伝い、遂にSRVの頭部に達すると、後ろ向きにダイブする様に、回転しながらジャンプした。長い髪を振り乱したセレネだった。

「はぁああああああああああ、アイスベルグ!!」

 セレネが叫ぶと巨大な氷山の様な氷の塊がル・ワンの顔に激突する。あうっと後ろによろけるル・ワン。

「うおおりゃあああああああああああ、大雪山斬りぃいいいいいいい!!!」
「ひゃああ、セレネ!? 凄い……」

 そのまま髪を綺麗に流しがら、セレネがくるくる回転して、ル・ワンの頭部に思い切り剣で切り掛かる。

 カキイィイイイイイイン!!
セレネの細い長剣はいとも簡単に折れ、剣先が回転して飛んで行く。

「やっぱダメかーーーーー!! ドラゴンと違って魔呂は硬いわっ!! 撤退!!」

 セレネは魔法を噴出したり、ル・ワンの装甲を利用したりして器用に地面に手を着いて着地すると、すたたと走り出した。

「ちょっと、我々ずっとこうして、じっとしてるだけですか?? いい加減にして下さい!」
「出来ないもんわ出来んのや、そもそも彼氏さんは魔力も無いくせに偉そうに命令せんといて!」
「何を言っているのでしょう? そもそも論で言えばこの蛇輪は私の物です。とすれば貴方は私に家賃を払う立場なのですよ?」
「…………? 今ウチが皆の為に戦ってるねやんなあ? 彼氏さんと話してると訳が……」

 ゴンゴン!! ガンガン!!

「オラーーーーー!! 入れろやああ!!」
「ぎゃーーーーーーーー」
「うわ!? セレネ」

 突然言い合いする蛇輪内二人の操縦席のモニターに、セレネの顔のどアップが映し出される。セレネは今度は蛇輪の顔にまでジャンプして上がって来たのだった。砂緒は久しぶりに自ら蛇輪を動かすと、セレネを自らが座る操縦席に招き入れた。

「おわっ!? 私は上の席に入れろよ」
「すいません、上の席には熟女が乗っておりまして……彼女と相席します?」

 セレネは無言でシャッターを開けて上の座席を見て来る。一瞬目が合ってギョッとしてシャッターを無言で閉める。

「……会話した事ない人じゃん、仕方ないここでいいわ。席代われ」
「はい、言われなくとも。早速ですが変形して下さい」
「あいよ」

 セレネが念じるといとも簡単に変形して、蛇輪は鳥型に変わった。バサッバサッと飛行を始め、からかう様にル・ワンの上空を旋回し始める。

「何ですの!? メッキ野郎が鳥型に変形ですって??」

 ココナツヒメは驚愕して固まった。

「あのさあ、砂緒……何で迎えに来てくれんかったん? 王女をリアルお姫様抱っこする絶交の機会だろうに……」
「え? だってル・ツーに回復魔法か何か受けて元気になったんですよね? わざわざ私が迎えに行く必要とかってありましたか? 回復した貴方は象さんに踏まれても死なないくらい大丈夫な人でしょう」
「そういう所だっ!」

 セレネは戦闘中にも関わらず頬をぷくっと膨らませた。

「私は……そういう点数稼ぎみたいな事は嫌いなのです! きっとセレネはこの締結の舞台を荒らした謎の賊を倒した方が喜んでくれる、そう思って蛇輪に飛び乗ったのですが……もちろん気持ちとしてはすぐさまセレネの元に飛んで行きたい気持ちでしたよ」
「砂緒……」

 大ウソだった。単純に回復したセレネを放置していただけだった。

「んでアイツをどう料理すんだ?」
「はい、半透明は恐らくもう瞬間移動のエネルギーか何かが切れかけてて、出し渋りを始めています。私達は急上昇して猛加速を付け、猛スピードでアイツをかっさらい、目にも止まらぬ速さで再び急上昇して成層圏に飛び上がります」
「ほうほう、ほんで?」
「空でどれだけ瞬間移動しても、とっかかりが無く落ちるだけ。落ちて気絶した所を両手と頭を切り落とした上でハッチをこじ開け、セレネの分も含めて拷問します」
「怖いヤツだなお前」

 等と言いながらバトルする三機を放置して、急上昇を始める鳥型に変形した蛇輪。

「………………」
「どうしたんですかセレネ?」

 無言だったセレネが振り返り、座席に掴まる砂緒に恥ずかしそうに掌を見せた。

「ほら、このホネホネ持ってるぞ。……あ、ありがとうな。宝石イヤリングも含めて、ほ、本当は凄く嬉しかったんだ。砂緒に素直に嬉しいって言うのがなんだか恥ずかしくて、態度悪かったかもしらん、それが……なんかごめん」

 セレネの指先から危うく骨がプランプランしたシルバーのイヤリングが落ちかけ、砂緒が慌てて受け取る。セレネの手を握る形になった。

「そんな事、今の今まで全く気にしてませんでした。貰ってくれたこちらの方こそ嬉しかったですよ……」
「も、いいだろ手を離してくれよ、恥ずかしいわっ」
「離しません」
「何だよそれ、恥ずかしいわ……」
(お、おおおお、面白過ぎるやん!! 地上に降りたら皆に言いふらしたんねん!!)

 瑠璃ィは途中から全力で気配を消し、二人の様子を盗み聞きし続けた。

「じゃ、じゃあそろそろ急降下始めるよ、手離して……」
「は、はい……」

 金色のキラキラ粒子を放出しながら急降下を始める鳥型蛇輪。

「あの……」
「なんだ?」
「あのとても言い難いのですが、後ろから抱き着いてもいいですか?」
「はぁ?」
「私どうも戦闘中の女性を抱きしめたくなるフェチの様なのです……」
「どんなフェチだよ聞いた事ないわ、キモイわ」

 砂緒は以前フルエレとニナルティナで戦った時の事を思い出し、シュンとなった。

「…………ですよね、忘れて下さい」
「……………今だけな」
(なんやてーーーーーー! 面白過ぎるこの二人!! 赤面するわっ)

「はい……お言葉に甘えて」

 砂緒はそう言うと少し屈み、座席越しにセレネのか細い胴に腕をまわし抱き締めた。

「う……恥ずかしいよ……」
 
 セレネは自分の身体にまわされた砂緒の腕に片手を乗せた。砂緒はそのまま座席の頭部越しにセレネの耳の辺りに自分の顔を近付けた。セレネは砂緒の呼吸を感じてぞくっとした。

「それ聞いてない……」
「セットです」
「もういいだろ恥ずかしいよ」
「さっきセレネの魔ローダーが襲われた時、本当に心配で心配で堪りませんでした」
「うん、ありがと」
「私、フルエレに対しては自分でも説明出来ない様な何か離れられない気持ちを抱いているのですが、今はセレネに対して全く違う、何か別の気持ちが湧いて来てるんです。それがセレネの魔ローダーが破壊された時に初めて強く認識しました。もう絶対にあんな思いはしたくないです。出来る限りセレネの事を守りたいです……」
「……あ、ありが……とう。私も……その、砂緒といつもいたい気がする」

 セレネは勇気を出して初めて本音を言ってみた。セレネは激赤面していた。

(なんやねんこれ……ウチもこんなんなりたかったわ……)

 瑠璃ィは皆に言いふらす事はやめようと思った。急降下する鳥型に変形中の蛇輪は猛スピードで地上に接近し、ココナツヒメのル・ワンの姿を捉えた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...