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III プレ女王国連合の成立
戦場に現れた黒い騎士
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「ではフルエレくんはセレネ王女の提案にどう対応するのかな?」
今度はアルベルトが訊いて来た。
(セレネ……分かってて聞いてるのかな)
セレネと砂緒は偶然海と山とに挟まれた小さき王国に立ち寄り、王様やお后様と会話して親密になりさらにはまおう抱悶とも行動を共にした事など雪乃フルエレ女王、すなわち夜宵さんは知らなかった。同様今の段階ではまだセレネと砂緒も夜宵がフルエレの事だとは気付いていなかった。純粋に偶然たまたま今後の方針を相談したに過ぎない。
「フルエレくん?」
「はっすいません」
フルエレとしては家出して出てしまった我が家に連絡を取るのは避けたい、しかしそれ以上に自分の国の戦争に故郷を巻き込むのが心苦しかった。なんとかしなくてはいけないと思ったが、様子を探る様にアルベルトに頼めば喜び勇んで戦場に舞い戻ってしまう口実を与えてしまう。
「私の手の者に、猫呼の部下の者に様子を探る様に指令を出します。決めるのはその後です」
フルエレはきっぱりと言い切った。
「でも戦場は生き物だよ、悠長な事を言っていると当地の状況と全くそぐわない事になる可能性もあるんだよ」
アルベルトはやはり怒る事も無く、優しく諭す様に言った。
「安心して下さい、信用のおける者に速やかに調査させます」
「そうなのかい? 先程の事でわだかまりがあるなら申し訳無い。フルエレくんの障害にはなりたくない、何でも協力するよ」
「は、はい……そんな事は無いです、アルベルトさんには困った事があったらちゃんと相談します」
しかし内心はノープランで口から出まかせだった。この場でフルエレ女王が決定を下す事は無く、他の国内議題等をこなして重臣会議はまもなく終了した。
「あーーいたいた間に合った!!」
フルエレが着替えて会議場をぐったりして出て来ると、ロビーに猫呼が居た。
「あーー猫呼じゃない? なにー?」
「なにーじゃないわよあれ、いつも愛しのアルベルトさんと出て来るのに一人??」
「う、うん色々溜まった仕事とかがあるとかで走って行ったの」
「ふ~~~ん」
猫呼がきょろきょろした。
「あーそれでね、メランさんという人から手紙で直接頼まれたんだけど、黒い稲妻Ⅱという魔ローダーの修理が終わったらくれぐれも他の人を通さないで私に直接返して欲しい……という事なの。そんなに取られたくない物なのかなあ」
「愛着があるのね……」
「んで、丁度その修理が完成したと研究所から知らせがあったのよ! て訳でメランさんの意志はちゃんと伝えたからね」
本来であれば軍隊が事務的に処理して運ぶついでに新たな操縦者が選任されてしまう事を恐れたのだろう、メランがわざわざ手紙で内々の実力者である猫呼に依頼していた。
「黒い稲妻Ⅱか……ル・ツーかつての敵魔ローダーかあ……」
ピコーーン! とフルエレの脳内であるアイディアが浮かんでしまった。
「ねえ猫呼、貴方の闇の冒険者ギルドの者共の中に女性で黒い衣装を纏った者っている?」
「者共ってどうしても言いたいのね。いるっちゃあ居るわよ、一体どうするのよ??」
猫呼は切羽詰まって聞いてくるフルエレを不審がった。
ロミーヌ城。タカラ山監視砦を手中に収め、砂緒やセレネ達は再び本拠であるこの城に戻っていた。
「遅い!! 一体知らせは何時届くのか? フルエレさんは一体何をしてるんだ?? 敵の動きが見えている今、なんとしても早く叩いてしまいたいのにっ」
セレネがずっとイライラしてうろうろして居る。
「七葉後川南側に集結している敵兵力、一体どう動くんでしょうか? 川を渡って本国に逃げる気かはたまたこちらに攻め掛かってくるのかどちらなのでしょうかね」
砂緒が他人事の様に言った。
「今もし敵に魔ローダーが無ければ蛇輪で殲滅する事が出来るのに……本当にいらいらする」
「それフルエレが聞いたら絶対駄目って言う奴ですよ。まあ精々脅して降伏を呼び掛けるとか程度でしょうね」
「よし……ではもう知らせが届く前に独断専行で攻め掛かろう。その後に海と山とに挟まれた小さき王国には交渉を持ち掛ければ良い」
セレネがしびれを切らし独断専行を決めた直後だった、砂緒とセレネの控室に知らせが届く。
「セレネ司令官殿、本国から知らせが……」
「おお、そうか、書面はどこにある?」
セレネが腕を伸ばす。
「い、いえそれが黒い稲妻Ⅱを操縦して来た者が女王陛下の名代だとして、直接セレネ指令に伝えると……」
「ほほう、まどろっこしいな。あたしを信用して無いてか。小賢しい」
新たな使いの者が来たと聞いて、セレネはフルエレの手の者が目を光らせに来たと直感した。
「まーまーどの様な者か知りませんが、仲良くしておきましょうよ」
「砂緒はいつから常識人になった? おかしな者なら叩き返してやる!」
セレネは意気込んで部屋を出た。
「駆動音を聞きましたっ! 遂に私の黒い稲妻Ⅱが修理完了したんです。ご一緒に行きます!」
メランが満面の笑顔で部屋の前で待ち構えていた。当然横にはミミイ王女とイェラも居る。
「イェラおはよう、今日も美人ですね」
「ふふ、褒めても何もでんぞ」
「おい、イェラお姉さまには優しいんだな」
セレネが不満げに言う。
ロミーヌ城前広場、そこには既に黒い稲妻Ⅱが仁王立ちしていた。城から出てゆっくりと黒い稲妻Ⅱの近くに行く砂緒とセレネ御一行。
「ああっ私の黒い稲妻Ⅱが復活!! けど誰が乗っているのだろう、ちゃんと譲ってくれるのかな? 猫呼さんにも頼んであるし……」
「ふん、なんと尊大で無礼な奴なのだ。ユティトレッド魔導王国王女の私の前で、魔ローダーからも降りず無礼であるぞ!」
セレネは正体を見せない魔ローダー搭乗者にイライラした。
「どうしたセレネ、喫茶猫呼にいる時と態度が違い過ぎるぞ、可愛いお前はどこに行った?」
イェラが驚いて素直な感想を漏らす。
「はぁ~~イェラ、実はセレネさんはいつもこうなのです。本当は繊細で優しい子なのですが、こうやって強がっていないと人々の前で総司令としてやって行けないのですよ、大目にみてやって下さい」
「おお、そうなのか」
「冷静な分析止めてくれる?? てか上から目線過ぎてイラつくんだけど!? 保護者気取り止めて」
ヴィーーーン
ようやく黒い稲妻Ⅱが片膝を付き、ハッチが開いて中から操縦者が出て来た。オートで巨大な掌の上に乗る人物を見て砂緒以外の皆が息が止まりそうな程の衝撃を受けた。
「やあ皆さん方、私が仮面の女黒騎士Y子だ。雪乃フルエレ同盟女王からの特命を受け、この戦場に舞い降りる!」
ブーーーーーーーッッ
その瞬間、ミミイ王女は先程飲んだばかりの牛乳を一Nメートル以上吹いた。
「な……フルエレさん……どうした?」
「壊れた……フルエレが壊れた」
皆の目の前に立つ女黒騎士と名乗る女性は、シルエットは姿形も身長も雪乃フルエレその物の見事なふわふわの金髪の娘で、それでいて妖しい蝶の形をしたマスクを装着し、胸の谷間こそ隠れてはいるが、黒いレザーのぴちっとしたボンデージ風のミニスカ服を着こみ、さらには黒いレザーのピンヒールになったニーハイブーツまで着込んでいた。
「違う……私はフルエレ女王から特命を受けた女黒騎士だ。勘違いしないでくれたまえ」
その瞬間、砂緒以外の人間は氷河期に叩き込まれた様に固まった。これは突っ込むべきなのか、本人は本気でバレていないと思っているのか? ギャグなのか正気なのか迷いに迷った。その時砂緒がスッと前に進み出た。皆に緊張が走った。
「貴方は……とても美しい方の様にお見受けします。フルエレが指名しただけの事、きっと信頼に足る人物なのでしょう……よろしくお願いする」
そのまますっと跪いて騎士の様に礼をした。
(どっち!?)
皆は分かっててノッてやっているのか? 本気でそう言っているのか判断に苦しんだ。
「……しかし私、一瞬フルエレが出て来るんじゃないかと期待してしまいました。こんな所にフルエレが来るはずも無いのに……」
遠い目をして語る砂緒を見て、本気だ! と皆に戦慄が走った。
今度はアルベルトが訊いて来た。
(セレネ……分かってて聞いてるのかな)
セレネと砂緒は偶然海と山とに挟まれた小さき王国に立ち寄り、王様やお后様と会話して親密になりさらにはまおう抱悶とも行動を共にした事など雪乃フルエレ女王、すなわち夜宵さんは知らなかった。同様今の段階ではまだセレネと砂緒も夜宵がフルエレの事だとは気付いていなかった。純粋に偶然たまたま今後の方針を相談したに過ぎない。
「フルエレくん?」
「はっすいません」
フルエレとしては家出して出てしまった我が家に連絡を取るのは避けたい、しかしそれ以上に自分の国の戦争に故郷を巻き込むのが心苦しかった。なんとかしなくてはいけないと思ったが、様子を探る様にアルベルトに頼めば喜び勇んで戦場に舞い戻ってしまう口実を与えてしまう。
「私の手の者に、猫呼の部下の者に様子を探る様に指令を出します。決めるのはその後です」
フルエレはきっぱりと言い切った。
「でも戦場は生き物だよ、悠長な事を言っていると当地の状況と全くそぐわない事になる可能性もあるんだよ」
アルベルトはやはり怒る事も無く、優しく諭す様に言った。
「安心して下さい、信用のおける者に速やかに調査させます」
「そうなのかい? 先程の事でわだかまりがあるなら申し訳無い。フルエレくんの障害にはなりたくない、何でも協力するよ」
「は、はい……そんな事は無いです、アルベルトさんには困った事があったらちゃんと相談します」
しかし内心はノープランで口から出まかせだった。この場でフルエレ女王が決定を下す事は無く、他の国内議題等をこなして重臣会議はまもなく終了した。
「あーーいたいた間に合った!!」
フルエレが着替えて会議場をぐったりして出て来ると、ロビーに猫呼が居た。
「あーー猫呼じゃない? なにー?」
「なにーじゃないわよあれ、いつも愛しのアルベルトさんと出て来るのに一人??」
「う、うん色々溜まった仕事とかがあるとかで走って行ったの」
「ふ~~~ん」
猫呼がきょろきょろした。
「あーそれでね、メランさんという人から手紙で直接頼まれたんだけど、黒い稲妻Ⅱという魔ローダーの修理が終わったらくれぐれも他の人を通さないで私に直接返して欲しい……という事なの。そんなに取られたくない物なのかなあ」
「愛着があるのね……」
「んで、丁度その修理が完成したと研究所から知らせがあったのよ! て訳でメランさんの意志はちゃんと伝えたからね」
本来であれば軍隊が事務的に処理して運ぶついでに新たな操縦者が選任されてしまう事を恐れたのだろう、メランがわざわざ手紙で内々の実力者である猫呼に依頼していた。
「黒い稲妻Ⅱか……ル・ツーかつての敵魔ローダーかあ……」
ピコーーン! とフルエレの脳内であるアイディアが浮かんでしまった。
「ねえ猫呼、貴方の闇の冒険者ギルドの者共の中に女性で黒い衣装を纏った者っている?」
「者共ってどうしても言いたいのね。いるっちゃあ居るわよ、一体どうするのよ??」
猫呼は切羽詰まって聞いてくるフルエレを不審がった。
ロミーヌ城。タカラ山監視砦を手中に収め、砂緒やセレネ達は再び本拠であるこの城に戻っていた。
「遅い!! 一体知らせは何時届くのか? フルエレさんは一体何をしてるんだ?? 敵の動きが見えている今、なんとしても早く叩いてしまいたいのにっ」
セレネがずっとイライラしてうろうろして居る。
「七葉後川南側に集結している敵兵力、一体どう動くんでしょうか? 川を渡って本国に逃げる気かはたまたこちらに攻め掛かってくるのかどちらなのでしょうかね」
砂緒が他人事の様に言った。
「今もし敵に魔ローダーが無ければ蛇輪で殲滅する事が出来るのに……本当にいらいらする」
「それフルエレが聞いたら絶対駄目って言う奴ですよ。まあ精々脅して降伏を呼び掛けるとか程度でしょうね」
「よし……ではもう知らせが届く前に独断専行で攻め掛かろう。その後に海と山とに挟まれた小さき王国には交渉を持ち掛ければ良い」
セレネがしびれを切らし独断専行を決めた直後だった、砂緒とセレネの控室に知らせが届く。
「セレネ司令官殿、本国から知らせが……」
「おお、そうか、書面はどこにある?」
セレネが腕を伸ばす。
「い、いえそれが黒い稲妻Ⅱを操縦して来た者が女王陛下の名代だとして、直接セレネ指令に伝えると……」
「ほほう、まどろっこしいな。あたしを信用して無いてか。小賢しい」
新たな使いの者が来たと聞いて、セレネはフルエレの手の者が目を光らせに来たと直感した。
「まーまーどの様な者か知りませんが、仲良くしておきましょうよ」
「砂緒はいつから常識人になった? おかしな者なら叩き返してやる!」
セレネは意気込んで部屋を出た。
「駆動音を聞きましたっ! 遂に私の黒い稲妻Ⅱが修理完了したんです。ご一緒に行きます!」
メランが満面の笑顔で部屋の前で待ち構えていた。当然横にはミミイ王女とイェラも居る。
「イェラおはよう、今日も美人ですね」
「ふふ、褒めても何もでんぞ」
「おい、イェラお姉さまには優しいんだな」
セレネが不満げに言う。
ロミーヌ城前広場、そこには既に黒い稲妻Ⅱが仁王立ちしていた。城から出てゆっくりと黒い稲妻Ⅱの近くに行く砂緒とセレネ御一行。
「ああっ私の黒い稲妻Ⅱが復活!! けど誰が乗っているのだろう、ちゃんと譲ってくれるのかな? 猫呼さんにも頼んであるし……」
「ふん、なんと尊大で無礼な奴なのだ。ユティトレッド魔導王国王女の私の前で、魔ローダーからも降りず無礼であるぞ!」
セレネは正体を見せない魔ローダー搭乗者にイライラした。
「どうしたセレネ、喫茶猫呼にいる時と態度が違い過ぎるぞ、可愛いお前はどこに行った?」
イェラが驚いて素直な感想を漏らす。
「はぁ~~イェラ、実はセレネさんはいつもこうなのです。本当は繊細で優しい子なのですが、こうやって強がっていないと人々の前で総司令としてやって行けないのですよ、大目にみてやって下さい」
「おお、そうなのか」
「冷静な分析止めてくれる?? てか上から目線過ぎてイラつくんだけど!? 保護者気取り止めて」
ヴィーーーン
ようやく黒い稲妻Ⅱが片膝を付き、ハッチが開いて中から操縦者が出て来た。オートで巨大な掌の上に乗る人物を見て砂緒以外の皆が息が止まりそうな程の衝撃を受けた。
「やあ皆さん方、私が仮面の女黒騎士Y子だ。雪乃フルエレ同盟女王からの特命を受け、この戦場に舞い降りる!」
ブーーーーーーーッッ
その瞬間、ミミイ王女は先程飲んだばかりの牛乳を一Nメートル以上吹いた。
「な……フルエレさん……どうした?」
「壊れた……フルエレが壊れた」
皆の目の前に立つ女黒騎士と名乗る女性は、シルエットは姿形も身長も雪乃フルエレその物の見事なふわふわの金髪の娘で、それでいて妖しい蝶の形をしたマスクを装着し、胸の谷間こそ隠れてはいるが、黒いレザーのぴちっとしたボンデージ風のミニスカ服を着こみ、さらには黒いレザーのピンヒールになったニーハイブーツまで着込んでいた。
「違う……私はフルエレ女王から特命を受けた女黒騎士だ。勘違いしないでくれたまえ」
その瞬間、砂緒以外の人間は氷河期に叩き込まれた様に固まった。これは突っ込むべきなのか、本人は本気でバレていないと思っているのか? ギャグなのか正気なのか迷いに迷った。その時砂緒がスッと前に進み出た。皆に緊張が走った。
「貴方は……とても美しい方の様にお見受けします。フルエレが指名しただけの事、きっと信頼に足る人物なのでしょう……よろしくお願いする」
そのまますっと跪いて騎士の様に礼をした。
(どっち!?)
皆は分かっててノッてやっているのか? 本気でそう言っているのか判断に苦しんだ。
「……しかし私、一瞬フルエレが出て来るんじゃないかと期待してしまいました。こんな所にフルエレが来るはずも無いのに……」
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