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III プレ女王国連合の成立

か、ギラギラする日。 下

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 ―メドース・リガリァ
 ドォーーーーーーン

「ほらっサッワちゃん、早速東側の同盟軍の連中が魔法地雷に掛かったわっ! 多分部隊の三分の二くらいは吹き飛んだハズよっ!!」

 ココナツヒメが飛び上がりそうな程の喜びの顔でもくもくと上がる巨大な黒煙に指をさして言った。しかし実際に犠牲になったのは砂緒一人だった……

「あれと同程度の物がカヌッソヌ市に?」
「ええそうよ、もともと数を減らした西の部隊の事、カヌッソヌ市ごと全員吹き飛ぶのじゃなくって、おほほほほほ」

 サッワは眩暈がした。もう負ける寸前なのに、これ以上罪を重ねる必要が無いと感じていたからだ。

「じゃあ、わたくしは吉報を待ちながらクレウの行方でも探しますわよ」
「は、はい行ってらっしゃいませっ! 僕は残ったレヴェルの応急措置に取り掛かります!」

 ココナツヒメは後ろ姿で手を振って歩いて行った。サッワは冷や汗を流しながら彼女が立ち去るのをじっと見届けてから走り出した。


「うわーーーーん、砂緒さーーーーーーん!!」

 メランはまだ泣いていた。

「ちょっと待ってメラン! 魔ローンに反応があるよっ」
「へ?」

 キラッ!!
 上空に一瞬何かが光った……

「アーーーーーーーッ!!」

 ヒューーーンと砂緒が上空から落ちて来た。
 ドシャッ
 大穴が開いた地面に叩き付けられて一瞬動かなくなるが、すぐにムクリと何事も無く起き上がってキョロキョロと左右を見回した。

「あれー? 大穴が開いてますね」
「うわーーーーー砂緒さん!!」
「砂緒っお星様になったと思った!!」

 メランと兎幸はル・ツー黒い稲妻Ⅱを跪かせて急いで駆け寄った。

「心配しましたよっ!! 馬鹿は本当に死なないんですねっ!」

 メランは涙を流しながら砂緒に抱き着いた。

「メラン、ちょっと落ち着いて下さい、確か私におっぱい触らせてくれると言ってましたよね」
「聞こえるかあーーーっ!!」

 ドガッ!!
 抱き着いていたメランは即座に砂緒を殴り飛ばした。

「冗談は兎も角、急いでメドース・リガリァ城壁に到達してY子殿達に危険を知らせましょう!」
「ええ、そうね……降りちゃってるのか、蛇輪に魔法秘匿通信が届かないのよね」

 メランは殴り飛ばして真っ赤に腫れた砂緒の頬を撫でながら言った。

「まー繰り返し呼び掛けて見て下さい」


 ―カヌッソヌ市

「今なんか音がしなかったか?」
「いやあ……」
「ほらっメド国の方角に黒い煙が上がったぞ!」
「自爆? 爆発事故かな?」

 砂緒の東側本隊とメド国を挟んで丁度反対側のカヌッソヌ市に到達しているY子の西部隊からは、巨大な爆発もその全体像が分かる物では無かった。

「では……今夜はこのカヌッソヌ市にお泊りになる訳では無く、夜が更けるまでにメドース・リガリァ征伐を実行すると?」
「ああそうだっ我々に休みなど不要だ! 今日が終わるまでにメド国を完全に征服する」

 揉み手猫背で話し掛けるカヌッソヌ市長に対し、ふんぞり返ったセレネがツカツカと歩きながら答えた。

「ちょっと勝手に決めないでよ! 皆も少しくらい休息したいはずよ! 城攻めは明日からでも良いじゃないかっ」

 Y子が横からセレネに抗議した。その後ろには無言のカレンも付いて来ている。

「今が既に休息になっている。この間にも敵国が体勢を立て直すかもしれない、一時間もしない内に再出陣するぞ! 絶対だからな。砂緒も東側で待っているぞ!」

 カレンは後ろで無言で二人の顔を交互に見返した。

「砂緒がそんな真面目な訳ないでしょう」
「いや、今は貴方よりあたしの方が砂緒の事を良く分かっている」

 睨み合う二人を見て、自分を現地妻にするとか言っていたあの目付きの悪い少年を取りあう二人の感覚が理解出来ないカレンだった。
 カンカンカン! ウーーーッ
 二人が話している最中、突然カヌッソヌ市街に警告音が鳴り響いた。

「何だ? これは何なのだ?」
「敵襲かもしれないわっ!」
「黒いトリッキーか?」
「は、はあすぐに問い合わせます!」

 セレネに聞かれて急いで走って行く市長だった。が、すぐに別の職員が走って来た。

「大変です! メド国の魔ローダーが一機投降して来ました! 片手を上げていて武器を携行していません!!」
「まずいな、蛇輪を西側の城壁に置いて来たぞ」
「とにかく本当に投降する気なら、魔呂からすぐに降りる様に言いなさい!」

 Y子が叫んだ直後に別の職員が走って来た。

「投降者は既に魔呂から降りて拘束されました! どうしても指導者にお伝えしたい事があると、会談を要求しています!! 名前はサッワとか言うそうです!!」

「え? サッワ?? サッワくんなの!?」

 大声で名前を呼び返したカレンをセレネとY子が見た。

「知っているのか??」
「……はい、知っています。元戦友です」

 カレンは隠す事はせず、もはや正直に経緯を伝えた。

「なんて事……魔法長距離スナイパー能力?? もしかして……」
「ミミィ王女の仇だな」

 途端にY子の声が低くなり、セレネの顔が険しくなったのをカレンは感じた。

「……処刑は当然としても、話だけは聞くか」
「……それは避けられないかもしれないわね。兵士だから……」

 いつも優しいY子が処刑という言葉に反対しなかった事でカレンは言い様の無い感情に襲われた。そして蛇輪を降りる時にY子の操縦席の下から抜き取った短魔銃をポケットの中でぎゅっと握った。
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