魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

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Ⅴ 千岐大蛇(チマタノカガチ)

カガチ後⑤ アウトレンジへ

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『へェー、兎幸うさこ先輩がそう言うなら誰も居ないんだろ、なあメランさん?』
『……そうよっ! 誰もいないわよ、変な事言うわねえ、さすが同盟一の変な子ちゃんね!』
『変な子ちゃん言うな』

 等と言っている間にも、千岐大蛇チマタノカガチはもはや川を無視してメキメキと木々をなぎ倒しながら東に移動を開始した。

『あのさぁ、あのカガチとか言う化け物、私らを追い掛け……』
『わーわーわー』

 メランが横を向きながら何気に言うと、突然セレネは大声を出し始めた。

『どしたぁ?』
『今いい事を思い付きました。メランさんは黒い稲妻Ⅱが振り落とされない様に、しっかり翼を掴んでて下さい』
『ナヌッ? あっ』

 とにかくメランに思考させない様に、今度は急上昇で誤魔化す策を思いついたセレネであった。

『うおりゃーーーーー!!!』

 突然機首というか鳥形の頭を上空に向け、蛇輪へびりんはぐんぐんと急上昇した。途端に機体が斜めになった為に、メランと兎幸うさこが乗るル・ツー漆黒ノ天は片手でしっかりと翼の上部を掴むしかなかった。その様子を見てチマタノカガチの無数の首達は、真っ赤な瞳を点滅させて物欲しそうにさらに高く延ばして機体の影を追った。

『上昇してどうするのよ?』
『一旦西の浜に戻る!!』
『何故!? 敵前逃亡よーっプンスカ!』

 血気盛んなメランは自慢の魔砲ライフルを二発しか撃てなくて、あっさりと撤退するセレネに不満たらたらだった。

『考えがあるんです。それにヌッ様とやらが揃っていない今、あたし達単体で頑張る事も無いでしょう』
(魔ローダーが出揃えば、あたし達か蛇輪にチマタノカガチが執着してる事を誤魔化せるだろクフフ)

 セレネの動機は一部不純であったが、考えがある事は事実であった。

『お、おいコラ、私だけ置いて帰るなっ! 臆病者がっ』

 引き返して来た蛇輪の機影を見て、傍観していた桃伝説ももでんせつ夜叛やはんモズが上を向いて叫んだ。同乗している四人の操縦者達は辟易していた……

『臆病者じゃない、鳥男も何もせずに刺激しないで後ろに下がれ!』
『何を言うのですか、カガチが目覚めた以上……あれ? ムムッ』

 まだ日没までに一時間以上あり、本来なら眠っているハズのカガチであったが、それが突然動き出した……という事であったのだが、蛇輪が空高く急上昇した辺りからその動きは明らかに鈍化して来ていて、さらに蛇輪がぐんぐん遠ざかるにつれて、また赤い瞳達を閉じて眠り始める様に見えた。

『とにかく言う事を聞け! 犯罪者予備軍!!』
『誰が犯罪者予備軍かっ!』
(むぅ、あの銀色がこのクラウディアに来た途端にカガチの行動が不規則になり、あ奴らが遠ざかればカガチは元に戻り眠り始めた? あの銀色とカガチに何等かの相関関係があり、あの長い髪の暴力女はそれを隠そうとしておるのか?)

 妖しい鳥の仮面を付けているお笑い要員とは言え神聖連邦帝国の重臣である夜叛モズは、直ぐにセレネの考えを正確に推測した。しかし今は出来る事が無い為に言われるまま、眠り始めたカガチを刺激しない様にゆっくりと後ずさりして一旦仮宮殿に戻る事とした。しかし時間的にはもはや一時間程度しか無い急ぐ状況には違い無かった。


「おいコラ! 貴様ら逃げる気かっ!?」

 魔車に乗った貴城乃たかぎのシューネが仮宮殿に急ぐ途中で、上空を鳥型蛇輪が逆走して西の浜に向かってしまっているのを発見して、驚いて両手を上げて大声で叫んだ。もちろん当然聞こえていないが……


『よし、一旦浜辺に降りよう!!』

 シューーッと白い航跡を引きながら鳥形蛇輪は砂浜ぎりぎりの海に着水して、直後にピョンとタイミング良くメランのル・ツーが飛び降りた。そこは丁度フゥーと美柑ミカ猫弐矢ねこにゃがヌッ様の球体で待機している場所であった。その球体の横には魔法通信で連絡を伝える為の魔戦車が待機していた。
 パシャッ!
 蛇輪から物珍しそうにセレネが飛び降りると、フゥーと目が合って彼女は申し訳なさそうに視線を逸らした。

「よっ裏切り娘っ! 猫弐矢さんは何してるの?」
「キミッその言い方はもはやイジメみたいだよ? フゥーは反省してるじゃないかっ!」

 セレネの早速の嫌味に正義漢の強い美柑が反応して指を立ててたしなめた。

「はぁ? やんのかコラ」
「何この子?」
「セレネおねがい、カッコ悪いからヤメテッ」

 メランは頭を抱えた。

「セレネ様申し訳ありません、私はどの様な非難を受けても良いです。どうか皆の為に今はお許し下さい」

 フゥーは頭を下げたが、この様な良い子的な言い方にもセレネはカチンと来て、それを見て慌てて猫弐矢が間に入った。

「セレネくん、僕達は友達じゃないか、どうか実のある話をしようよ」
「ほーでご自慢のヌッ様とやらは?」
「うん、無意味に起動させても魔力をすり減らす一方だからね、君達の戦闘の推移を見て参戦するつもりだった」
「つまりあたしらを囮に使ったと」
(お互い様子見かよ)
「まあ、確かにそう言われれば」

 二人の会話を聞いていて、美柑は何この性格悪い子は? とセレネを睨み続けた。二人は以前にププッピ温泉近くで見かけた時以来の対面であった。しかし大切な新女王選定会議を滅茶苦茶にされたセレネにも恨みがあって当然であった。

「お静まりをっ! 今モズ様から突然目覚めたカガチはその後何故か東に向かい、さらに銀色の帰投後に再び眠りに就いたと。今は仮宮殿にご帰還との事です!」

 魔戦車の隊長がキューポラから大声で猫弐矢に伝えた。シューネも丁度仮宮殿に付いた頃である。

「なんと、カガチは東に向かって再び眠りに就いただって? 変だな。しかしあと一時間の余裕は出来た訳だ……所で砂緒くんは?」

 本来クラウディア王国旗機のル・ツーを見ながら猫弐矢が突然変化球的に話題を換えて、普段強気な振りで誤魔化しているが元来会話が苦手なセレネはとっさに言葉が詰まった。
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