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Ⅵ 女王

神話の終わり ⑩ 真の主様…… 出現

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『シューネ、大型船が千岐大蛇チマタノカガチに接触したよ!』

 白鳥號はくちょうごうの紅蓮アルフォードが叫んだ。死ぬつもりであった貴城乃たかぎのシューネは、突然兎幸うさこの個人用未確認飛行物体により大型船のブリッジから救助され、激しく失意のどん底に居たが、なんとか気を取り直し今はGSX-R25の操縦席に居た。

『そのまま絡んでいけえええええええ!!』

 シューネは思わず叫んだ。しかし彼が叫ぶまでも無く、伝説の料理どじょう豆腐の如くに巨大な船体や甲板に向けて複数の千岐大蛇の頭が食い掛り、頭を突っ込んで絡んで行く。
 カッッ! ドカーーーーンッ!! ズズーーン!
 その直後、あらかじめ衝突時の衝撃で発動する様にプログラムされていた自爆装置が多数の蓄念池と魔ァンプリファイヤを破裂させた。船体を一瞬持ち上げる程の衝撃であちこちから誘爆が起こり、チマタノカガチの首を2、3本吹っ飛ばした。

「うぬううう!?」

 息子猫名を海上に追いやり、再び一人ル・ツー漆黒ノ天で戦う大猫乃主おおねこのぬしも水中に広がる衝撃波に巻き込まれた……

「ネコノ……炎と黒い煙がいっぱいでもう見えないよ……」
 
 キラッ!!
 しかしチマタノカガチの首が届くぎりぎりの海上をUFOで飛ぶ兎幸の目に、漂流物や炎の隙間から一瞬キラッと光る物が目に入った。大型船の備品の漂流物に掴まり、片手に剣を握りながら気絶している猫名の姿であった。

「あの男の子……」

 兎幸は猫乃の約束の人物だと思い個人用UFOで救い上げ、見えなくなったル・ツーの居た辺りの海面を何度か見ると静かに陸地に向かった。


『見て……』

 フルエレが指を差す。両腕を再生し、再び神魔ローダースキル国引きを実行しようとする雪乃フルエレ女王とフゥーと美柑ミカ、ついでに猫弐矢ねこにゃ達にも遂に大型船が千岐大蛇に特攻した事が見えた。しかし今や600Nメートルを越えようかという大きさに到達したチマタノカガチに対しては、さしもの全長248Nメートルの大型船も役不足であった。みるまに木の葉の様に舞いながらどんどんと食い潰されようとしていた。

「フルエレくんフゥーくん、ついでにパピヨンの君、もはや本当に終局が近付いているね」

 猫弐矢の言葉通り、今度国引きが成功しなければ最後にはもはやセレネの運動神経頼りで砂緒の衛星爆撃を敢行しなければならなかった……

「フルエレ様、私今度こそやります……やってみせます!!」
「そうね……一緒に頑張りましょう!!」

 フゥーがグッと拳を握り決心をすると、雪乃フルエレ女王が両肩を持って励ました。

(何このスポ根……)

 しかしまだまだ冷めた態度の美柑の雰囲気がフルエレのレーダーに掛かった。

「でももう一回ちょっと待ってねフゥーちゃん」

(ヒッ)

 フルエレはフゥーの肩から手を離し、やおら美柑の前に立って彼女のヒラヒラの可愛い服の胸ぐらを掴んだ。

「いい? 今折角フゥーが一生懸命やろうと頑張っているのよ、もしその決心に水を差す様な事をしたら絶対に私が許さないから!!」
「ははは、ハヒッ」

 フルエレはパピヨンマスクの奥に隠されたまだ気付いていない、今美柑と名乗る妹の依世いよの目を恐ろしい形相で睨んで低い声で脅した。

「貴方、本当に分かったのね? ……アレ……貴方どこかで……?」

(ゲッヤバッッ)

 睨んでいたフルエレの顔が一瞬何かに気付きそうな雰囲気になって、美柑は慌てて光の速さで土下座をした。

「申し訳んなか! 次ばまっこて本気で身命ば賭してやいもんそ!! 国引きば成功さしもんそっ!!」

 方言は滅茶苦茶だが、美柑は心を入れ替えて恐ろしい姉に向けて必死に土下座しつつ謝罪した。


「では……フルエレ様、やりますっ!!」
「ええっ行きましょう!!」
「おーーーっ!」
「三人娘、頑張れっ!」

 フゥーとフルエレに比べると若干気の抜けた感じはするが、美柑も今度は必死に頑張ろうと決意していた。

「神マローダースキル、国引きっ!!」

 ビキィイイイイイイッ!!
 三度全高300Nメートルのヌッ様の両手から光の綱が伸びた。フゥーは力の限りその光の綱を引ききろうと念じ続けた。フルエレと美柑もやはり同じ様に力み続けた……
 メリメリメリ……

「くっくうううう、うっ」

 しかしこれまでと同じ様にヌッ様の両腕は、人々が住む全ての島々の重みに耐えきれず悲鳴を上げ、不気味な音を上げ始めた。

「ちょっと待ってフゥーちゃん!」
「え?」

 フゥーが戸惑うと、雪乃フルエレ女王は上を向いた。

「ちょっとヌッ様! 聞いてるの!? さっきからこれだけフゥーちゃんが力を込めて念じ続けているのに、何で願いを聞き届けて上げないの!? 貴方は本当に人々から尊敬される神の魔ローダーなのっ?? このままでは千岐大蛇がセブンリーフの人口が多いユッマランド中心部や七葉後川流域を通って私の海と山とに挟まれた小さき王国まで行ってしまうのよ、いい加減に目覚めなさい! でないと私が許さないんだからっっ!!」

 ダンッッ!!
 フルエレは大声で啖呵を切ると、操縦席の魔法コンソールを拳で思い切り叩いた。

(ヒッッお姉さま、むしろヌッ様の機嫌を損ねる様な真似を!?)

「フルエレくん……何て事を……」

 猫弐矢が驚くのも無視して、再びフルエレは操縦桿に手を添えた。

「さっもう一度頑張りましょう!!」

 と言った途端に、フゥーと美柑がフルエレに指を差した。

「フルエレさま! 何かヘンな物がっ」
「へっ?」

 フルエレが自身の両手を見ると、湯気の様な白い物がもや~っと放出されていた。しかしそれは彼女の全身から浮き出ていた。そしてそのまま操縦席の天上に消えて行く。

(お姉さまのコレは何!?)

「い、良いからもう一度よっ!」
「ハイッ!」
「はい」

 フルエレの迫力に押され、三人は再び操縦桿を握り直した。

「はあぁああああああああああ!!」
「たあああああああ!!!」
「でやーーーーーーーっ!!」

 三人娘が必死に気合を入れ直していた時、外では異変が起きていた。全高300Nメートルのヌッ様の背中や両肩からフルエレと同じ様に大量の湯気の様なオーロラの様な光る何かが湧き出て居た。それはどんどんと勢いを増し、凄まじい放出量になるとやがてオーロラやプロジェクションマッピングの様に像を結び始めていた。

「何だありゃ……」
「ヌッ様の上に……」
「凄い……」

 やがてざわざわとアナの地の人々や船から脱出して砂浜に陣取る神聖連邦帝国兵達が騒ぎ出した。

『フルエレちゃん、ヌッ様の上にっ!! 見えないのかい?? 上を見てごらん』

 思わず紅蓮がヌッ様のフルエレに叫んだ。

『紅蓮くん何? どうしたの?? フゥーちゃんちょっとヌッ様の頭を上に向けて見て』
「はいっ!」

 フゥーはヌッ様の視線を上に向けた。

「げっ」
「え?」
「ヌッ様……??」

 ヌッ様が頭を上げて上を見ると、ヌッ様自身の上にさらに超巨大なヌッ様の下半身らしき物が見えた。

「……はぁあああ、で、伝説の全高10Nキロのヌッ様だ……」

 猫弐矢が腰を抜かす程に驚いた様に、実体のある全高300Nメートルのヌッ様に重なる様に、その上に蜃気楼かホログラムの様に夜の闇の中に朧げに光る、伝説の全高10Nキロの真のヌッ様が出現していた。

『フゥーちゃん、もう一度……真・神魔ローダースキル国引きを掛けるのよ』

 フルエレは静かに言った。



令和6年能登半島地震に被災された方々にお見舞い申し上げます。
この小説のプロットは震災以前に出来ていた物です。
小説家になろう版をそのままコピペしています。
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