魔法の魔ローダー✿セブンリーファ島建国記 弥生史上最悪の悪役令嬢と記される最強魔力少女は最愛の不死従者を手に入れて破滅フラグを叩き壊します!

佐藤うわ。

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2-プロローグ~EX夢部分

EX17 最後の地、最後の女王 Ⅱ 昔は……

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「まだまだやれる事はある! どうしてそうすぐに諦める?」

 剣を構えるセレネから見ても第三代依世いよ女王の瞳には全く淀みも迷いも無く、真っ直ぐとこちらを見つめている。実際問題、依世自身がセレネに斬られる事を全く恐れていなかった。

「冷静に考えてもう乗れる魔ローダーが一機も無いのよ。魔戦車一両じゃ何も出来ないわ。貴方と可愛い部員達だけで両手の無いサクラと魔戦車に分乗して、あと残りの数少ない兵士達引き連れて切り込んで全滅でもするおつもり? そんな事ナンセンスだわ」

「砂緒とフルエレさんや多くの将兵達が戦ってこの同盟を作り、数多くの人々の夢で出来てるこの同盟を……それを、この同盟を守る為にこれまでどれだけの犠牲が出たと思っているんだ? このままじゃ、これまで死んで行った人々に顔向け出来ないじゃないか! それをムザムザ降伏するとか、そんなバカな話があるかーーーーーっ!!」

 バシンッ
 セレネは片手で机を叩き割りながら絶叫し哭いていた。


「死んで行った多くの仲間達の事は私も片時も忘れない。けれどその為に全滅するなんて無意味ナンセンスよ」
「アンタの実家が守られたらそれで良いのか!!」

 セレネは言ってしまって少し後悔した。依世の性格からして自分だけが生き残りたくて、こんな事を言っている訳では無いのは分かっているからだ。だけどセレネの直情な性格ではどうしても何か言いたかった。要は年下の依世に当たっているのだった。
 クイッ
 さらに依世が自ら首を差し出し、剣の鋭い切っ先が首の薄い皮に突き当った。

「うっ」
「そう受け取られても仕方が無い……どうぞハッタリじゃ無いわ。セレネに首を斬られてそれで貴方が次の女王に就任して、意見の合う者達と一緒に最後の突撃を敢行して滅びの華を咲かせるのもいいわ。嫌味じゃ無い……だってユティトレッド魔道王国の王女だった貴方が夜宵やよいお姉さま、雪乃フルエレを迎え入れて始まった同盟だもの、最後も貴方が決めれば良い、どうぞ……」

 と言って依世がさらにぐいっと首を動かすと、遂にぷつっと切っ先が突き刺さった……少しだが真っ赤な鮮血が流れ落ちる。

「お、おい……」

 セレネは戸惑った。依世に言われる通り、自分がフルエレを誘いながらいつも華やかな彼女を矢面に立たせ、自分は裏で気楽に好き放題やっていた。それが最後の最後に女王になって人々を率いていけるのか? 少し考えただけで人望の無さから無理だと分かる。


「依世さまっ!!」

 実は内心依世の事が好きな執事のナリが心配して叫ぶ。

「ナリくんやめて、本当にセレネの好きにして欲しいの」
「もう止めてセレネ、もう砂緒すなおもフルエレも怒って無いよ」

 そこにパジャマの兎幸うさこがスーッと間に入り、ふわ~と軽く指先で剣を横に払った。恐ろしく簡単に剛腕のセレネの切っ先は、兎幸のヤワな手で取り払われた。
 カチャッ

「……昔は良かったね、砂緒も居てフルエレも居て……喫茶猫呼ねここには可愛い制服を着たメイドさんが居て……仲間もみんな居た。お客さんもいっぱい居て、たまに変なお客さんもいて……楽しかったな」

 皆言葉が出ない。

「ニナルティナの都会には路面念車ろめんねんしゃが走ってて、フルエレが可愛い服で宮殿に通って……お買い物したりセレネと喧嘩したり、色んな所に遊びに行ったり……楽しい人がいっぱい居て良かった。セレネの学校にも行って面白かった……どうしてこんな事になっちゃったのかなあ?」

 兎幸の話を聞くうちに涙を流す兵士も居た。当時の事を知らないのにである。

「……もし……皆であの時に戻れたら良いよね。でも無理みたい……だからセレネ、もう依世の事を責めないであげて。きっと死んだ人も砂緒もフルエレも許してくれるよ」


 カシャンッ
 セレネの手から剣が落ちた。同時に彼女は静かに泣いていた。猫呼ねここも同様である。

「セレネさん、実は降伏する事は夫と私と依世の三人で決めた事です。そしてその時には依世には内緒にしていたわたくしの決断があります。現時点をもって【セブンリーファ大同盟】第三代依世女王を、敗戦の責任を取り位を退いてもらいます。そして第四代、おそらく同盟最後の女王に私が即位する事とします……」

 突然立ち上がり、きっぱりと言い切ったお后様に依世もセレネも皆も驚いた。

「お母さま!?」
「降伏の全ての責は最後の女王である私が受けます。首を撥ねられようとも奴隷として売られようとも構いません」

 夫である【海と山と国】一国としての前王と、手を繋ぎながら言い切ったお后様の顔は清々しかった。
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