社畜探索者〜紅蓮の王と異界迷宮と配信者〜

社畜 討伐

「どうするか」

炎の刀が二本ある、これで殆どの触手は切れる
その後に血の斬撃を飛ばせば恐らく触手を全て斬れる
これはあくまで先程と同じ防御方法なら
対応しているのなら再生した触手を全ては使わずに小出しにして防御をするだろう
そうなれば多段攻撃をしても防がれ届かない
本命を届かせるには手数が足りない

『いけぇ』
『頑張れー』
『押せぇ』
『行けぇ』

「いや考えるより先にだ」

1本目の炎の刀で触手を焼き斬る、2本目の炎の刀で残りを斬り裂く
再生した触手を防御に回し対応する
剣に溜まった血を消費して血の斬撃を飛ばす
触手を斬り裂く、触手が無くなった無防備
（まだ行けるか）
血の斬撃をもう1回飛ばしてから溜めた炎を放つ
魔物を燃やす

『おぉ、燃やした！』
『これなら行ける！』
『やったれ！』
『押せ押せ！』
『頑張れー！』
『ファイアー』

「血を吸え」

剣は血を吸い始める
簡単に炎を圧縮して足場にしてジャンプする

『高ぇ』
『炎足場にしたのか。考えたな』
『足場にしたにしてもそれでも高くね』
『身体能力ヤバっ』
『これなら本体に届く』

再生した触手を伸ばして襲いかかる
数は少ないが蓮二は下から襲いかかる触手に気付いていない

『避けて！』
『ひぃぃぃ』
『危ない！』
『気付いてない！？』
『逃げてぇ！』

「鎖よ縛って！」

触手を鎖が拘束する
間髪入れずに風が残りの触手を弾く

『天音ちゃんナイス！』
『おぉ！』
『おぉ！』
『流石天音ちゃん！』
『足手纏いどころか命救ってるやんけ』
『これなら届く！』

目的は本体、炎の刀を2本とも魔物本体に突き刺す
刺された魔物は傷口から燃え上がる
引き抜こうとするが刺さっているのは炎で作られた刀、触手が焼けて持てない
これでも倒せるだろうが念の為に蓮二は血を纏いリーチが伸びた剣を頭に突き刺す

「いい加減終われ、燃えろ！」

内部で血を弾けさせ傷口に炎を打ち込む
魔物を蹴って圧縮した炎を再び踏んで戻る

『これは倒したろ』
『流石に本体だよな？』
『これは本体でしょ』
『だよな』
『勝ちだ』
『間違いない、ニワトリくんの勝ちだ』
『すげぇ、めっちゃ強そうな奴に勝った』
『だいぶ強そうだし3級のダンジョンの主くらいはあるんじゃないか？』
『少なくとも中ボス以上はありそう』

魔物は燃え上がる、再生が間に合わない
今はコアは無事だが燃え上がる炎に焼かれる、コア付近に再生を集中させて炎を阻止する
コアさえ破壊されなければ時間さえかければ再生が出来る
例え体の大半を失ったとしても生存を優先する
左半身を前に腕を肩の高さへ剣先を魔物に向けて構える
燃え上がる中で再生している部分を見る
（あそこだな）

「撃ち抜け」

血を消費して弾丸のように放つ
狙いは再生している部位の中心、恐らくそこにコアがある
血の弾丸は触手の隙間を通りコアを正確に撃ち抜く
コアが破壊された魔物はそのまま燃え消滅する
魔石と素材が落ちる
剣の能力を解除する、茨が離れ剣の中に消える
2つを回収する
入口の魔物の魔石より大きい

「あれはただの分身ではなかったのか」

入口の分身は魔石と素材を落とした

「いや吸収されていたから違うだけか。それより」

階段に急ぐ
既に天音が階段に戻っていた
一鬼はだいぶ体力を消耗している
薬の効果も切れ治癒の杖の効果ではこれ以上は持たない

「倒したか」

蓮二が来た事に気づいた一鬼が言う

「倒した、すぐにダンジョンを出る」

蓮二はすぐに一鬼を抱える、負荷をかけないように慎重に

「すまないね」
「大丈夫」

『お姫様抱っこ』
『おぉ』
『ニワトリくん男前ー』
『ヒュー』
『抱えながら行くのか。魔物倒せるの？』
『ニワトリくんの異能なら可能だ』

天音と一鬼では体格差がある､抱えて走るのは厳しい
剣を返して炎を一鬼に当たらないように周囲に漂わせる

「天音は走れるな」
「走れます！」

2人は階段を走って登る
上の階層では魔物が待っていた

「邪魔だ！」

手加減など一切無く炎を放って焼き払う
魔物が湧いたら炎で焼き払い進む、落ちた魔石や素材は回収しない

『回収しないんだ』
『回収してる余裕ないでしょ』
『天音ちゃんが残れば』
『回収中に魔物が湧いたら天音ちゃんだけじゃ倒せない』

道中の魔物は数が居るため魔石や素材の回収には時間がかかる
その間も蓮二は進んでいく
間違いなく置いてかれる
1体、2体程度ならどうにかなるが数が多ければ天音ではどうにも出来ない

『風の短剣も範囲はともかく攻撃力は無さそうだったしね』
『緊急時に魔石なんて拾ってる余裕は無い、それにニワトリ君なら道中の魔物程度なら一撃だし』
『後でいいな』
『てかダンジョン出たとしても治癒系の異能者居ないしどうするの！？』
『妥当なのは病院じゃないか？』
『病院であれ直せるの？』
『さ、さぁ？』
『現代医療は発達してると言っても内臓損傷してるし……』
『穴空いてるもんね……』
『かと言って治癒系の異能者を待つ時間は無いだろ……近くに居ないっぽいし』
『大きな病院近くにあったっけ』
『車で30分くらい』
『遠いな……』
『もしくは空間系の異能者かな。治癒系異能者の元に行ければ』
『空間系の異能者なんて見つかってるのは世界で3人だけだぞ！？』
『レイさん近くに居ないかな』
『あの人は使い勝手悪いとか言ってた気がする。人を運べるような異能かも分からないし』

（くっそ、見つかってないのか）
配信のリスナーのコメントを片手間に確認している
ダンジョンを出ても絶望的と分かる
3人とも車で来てはいない、タクシーは少し大通りに出ないと拾えない
車で30分なら走ってだともっとかかる
治癒系の異能者も見つかっていない、今から探しては間に合わない
考えている間にも走り最後の魔物を倒してダンジョンを出る