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社畜 治癒系異能者とエンカウント

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ダンジョンを出てすぐに病院へ向かおうとするとダンジョンのある林の前にある道に一台の車が止まる

「おやおや、タイミングバッチリだったようだな」
「だいぶ無理をしたからな」

車から男女が出てくる
長髪の中性的な男性と白衣を着た少女であった

「君達は?」
「安心したまえ私達は敵では無い」

『誰?』
『うわっイケメン』
『なんか見た事あるな』
『あのイケメン探索者じゃね』
『居たっけ?』
『配信はしてなかったと思うが……探索者の1人で偶に取引所に来てる』

「そりゃ人同士では争っていないからな」
「……言ってみたかっただけだ。相も変わらずつれないなまぁいい彼女を見せてみな」

少女は蓮二に近付き一鬼の傷を見る

「見せる? 医者?」

医者にしては若過ぎる、見た目は少女だ
何処か怪しさがある

「彼女は治癒系の異能者だ。私はただの付き添いだ」
「治癒系の異能者!?」

『まじか!』
『おぉ救世主!』
『ナイスタイミング』
『タイミング神じゃん』
『スタンバってた訳でも無いっぽいしな』
『神来た!?』
『治癒系の異能者』

「彼女を治してやるから早く地面に置け」
「少し待て」

男性が素早くブルーシートを敷く

「土の上に置くのはオススメしない」
「緊急時だが?」
「緊急時だからこそだ。良いぞ」
「あ、あぁ……分かった」

ゆっくりと一鬼を地面に置く

「配信を見てたがとんでもないな。寧ろ今の状態で生きてるのが不思議なのだが生命力が高いな」
「しぶといのが長所なんでね」
「薬を使いました」
「あの薬をか。よくあんな怪しい薬を使うものだ」
「おい」
「事実だろ。一時的とはいえ副作用もあるしな」
「現に役に立っているならば間違いでは無い。副作用に関しては……現状ではどうにもならん」
「この薬を飲ませろ」

男性は小瓶に入った薬を取り出す

「調和薬持っていたのか」
「薬害の被害を抑えるためにな」
「まぁ良い寄越せ」

少女は調和薬を男性からぶんどる

「飲め」

一鬼に薬を飲ませる
余りの苦さに少し吐き出してしまう

「かなり苦いな。あの薬も苦かったが」
「良薬は口に苦しだ。黙って飲め」

なんとか飲みきる

「少し距離を取れ」
「あっ、はい」
「分かった」

3人は距離を取って見守る

「ありがとうございます」
「来てくれて助かった。正直病院まで持つかどうか分からなかった」
「気にするな、あいつは人を救いたい性分でな。あぁ、だが配信は切ってくれ。余り多くの人に見られたくない異能なんでな」
「は、はい分かりました」

天音は少し離れた距離で配信を終える準備をする

「それでは皆さんここで配信終了となります。後ほどSNSにてこの後の流れをざっくりと説明しますのでお待ちを」

『お疲れ様でしたー』
『治癒見たかったなぁ』
『配信NGって感じだからシャーない』
『獅子神さん無事であってくれ』
『お疲れ様でしたー』
『2人もきちんと休んでねぇー』
『お疲れ~』
『ニワトリ君もおつかれー』

配信を終えてドローンを回収する
ドローンをしまって2人の元に戻る

「……竜胆さんところで薬ってのは?」
「薬……あぁ、祈りの秘薬という薬です。とある異能者が作った薬で副作用として一時的に身体能力が低下する代わりに一時的に身体に負った傷を悪化させないという効果を持つ薬です」
「そしてその薬は奴が作った」

男性は少女を指差す

「という事は薬を作れる異能者?」

蓮二は少女の異能を推測する
異能で薬を作ったのなら薬に関する異能、もしくはそれに近い異能なのだろう

「そうだ、奴の異能は正確には治癒系ではない」
「薬を生み出す異能、つまり毒も作れるのか」

薬と毒は表裏一体、どんな薬でも使い方次第では毒になり毒もまた使い方次第で薬にもなり得る
あくまでその基準は人が決めた物に過ぎない

「薬を生み出す異能それが奴の異能だ」
「あの……その薬であの傷は治せるんですか? 結構な傷だと思うんですが」
「自己再生能力を高める薬がある。作れる範囲こそ限られているが現代医療を超える薬を生み出せる」

少女は剣を召喚する
禍々しい紫色の剣、恐ろしい形をしている
とても薬を作る異能を使用する剣とは思えない
峰の部分に中に入れられる穴がありポケットから小さな注射器を取り出してその穴に詰め込む
柄を強く握る
(薬を作る異能……)
剣先にある穴から先程入れた注射器が出てくる
注射器の中には薬が入っている、紫色の液体だ

「痛いが我慢しろ、打つぞ」

一鬼の傷口に刺して液体を入れる
痛みが生じるが我慢できないレベルでは無い

「中々痛いがこの程度か」
「治す為だからな」
「お前は優しいな」
「何を言っていのか分からないな。私はただの救える側の人間なだけだ」
「それでも行動出来る人間は少ないだろ」

液体を入れ切った後は何もせずに様子を見る

「これで終わりか?」
「治るまでは動くなよ、時間がかかる。その傷だと30分だな」
「そうか」
「それでは私は帰る」
「ありがとうな」
「……そうか」
「傷が癒えても彼女に無理はさせるなよ」
「はい!」
「助けてくれてありがとうございます」
「礼はあいつにしてやってくれ」

2人は車に戻っていく

「「ありがとうございました!」」

天音と蓮二は頭を下げてお礼を言う
少女が居なければ救えなかった
少女は何も言わずに車に乗りこみ車は去っていく
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