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5話

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突然雄叫びが聞こえ目を覚まし周りを見渡すが何も居ない
蛇は雄叫びの聞こえた方をずっと睨みつけていた
その方向は奥に続いている道がある方であった

……そっちに何かがいるみたいだけどどうしようかな……階層ボスなんて居たら今の状況で勝てるか? スキルもまだ得られていないのに、いや結局は突破しなければならない

立ち上がり真っ直ぐ進む
オークや狼以外にも出てきたが蛇を使い戦えば圧勝とは行かずとも問題なく勝利出来た
道中血の地図を見ているとボス的存在が書き記されていた
地図には軽く情報が載っているだけだったが三階層への道を阻む巨大な怪物だと認識した

「2日目にしてボス戦か、心の準備はできていないのだけど」

魔物を倒しつつ他の魔法の研究も怠らずに進んでいくと松明が壁にいくつも置いてあった
松明を辿ると一つの大きな部屋にたどり着く
ゴブリンやオークが巨大化したような姿をして防具、武器を身につけていた
威圧感がすごく見られるだけで無意識に退く

……なっ、これが階層ボスか。果たして何ランクなんだろうか

闇魔法で弓を作り出して準備する
見た目からして近接戦は難しいと考え弓で距離を取り戦う事にした
怪物を見て警戒しながらゆっくりと戦闘の準備をしているとこちらに気付き図体に似合わない速いスピードで切り掛かって来る
蛇を三体前に出して攻撃を防ぐ
蛇が怪物と戦闘しているうちに自分は後ろに回り複数の矢を放つが防具に軽々と弾かれる

「硬いなぁ、蛇の力でも突破は難しそう。近距離で高火力の一撃を食らわせないといけなそう」

拳に魔力を集め始める
蛇が戦っている間にバレないようにゆっくりと確実に一点に集中させる
怪物は気付かないのかそれとも不死身の蛇の方が危険だと感じたのかこちらを見ずに戦っている
深呼吸をして怪物を見定める
狙いは怪物で撃ち抜く
魔力が溜まりきり怪物は完全にこちらを気にしていない
近づき飛び上がり全力の一撃を無防備な背中に叩きつける
魔力で強化された拳は防具を砕き怪物を地面に勢いよく叩きつける
そして二撃目を振るおうとした瞬間空に浮いていた私は巨大な何かに吹き飛ばされ壁に激突する

「えっ……」

その謎の物体の接近に驚き回避が遅れる血を吐き倒れる
魔力を防御に回す余裕はなくモロに一撃を食らう

……何が……起きたの?

不意をつき一撃を食らわして防具を砕き間違いなく怪物を地面に叩きつけたのに何処からか突然攻撃を受けた
身体を無理やり動かしてその謎の物体の正体を見る
その正体は大きな岩であった

「岩? どこからそんなものが」

回りを見渡すが投げたであろう存在は居なかった
蛇は怪物に噛み付くが振り払われる

「やはりまだ生きてたか。傷がまだ痛む、早く動けるようにならないと」

傷が段々と癒えていくがそれよりも怪物が立ち上がるのが早い
怪物は自分の左腕を掴み強引に押し込む
骨が動く音がしてから腕を軽く動かして様子を確認しているようだ

……腕の骨? 蛇が折っていた? いや、そんな音はしなかった……まさかこいつは! いや、あり得るのか?

状況からして一つ推測出来た事があったがあまりにも信じがたい
骨を直して近付いてくる
さっきの攻撃で怒ったのかそれとも危険だと考えたのか大剣を構えて完全に私を殺そうとしている
ダメージで折れた足の骨が治っておらず立っていることこそできるがまだ回避を取れるほど治ってはいない
一撃目を避けても二撃目は避けれないと考えていた
不老不死と呼ばれている吸血鬼とはいえど即死クラスの攻撃を食らって無事では済まないだろう
蛇が頑張っているが本気の怪物を相手に足止めすら出来ない

「血操作、地面支配」

流れ出た血を使い地面を支配して怪物の手足を封じて剣や槍などで四方八方から攻撃を仕掛ける
防具が外れてもなお怪物は驚異の防御力を見せる
攻撃を己が肉体で防ぎ拘束を力尽くで突破する
続けて何度も足止めの為に仕掛けるが悉く破られて大剣を奪うことはできたものの拳を食らう
地面に叩きつけられ一撃で骨が砕け散る
もう意識が朦朧として何が起きているのか判断が出来なくなるほどに追い詰められる

……流石にまだ無理だったか

足を掴まれ骨を折られる
感覚は麻痺して痛みすら感じない
足を掴まれたまま地面に再び叩きつけられる
内臓は潰れ一部の骨は粉々に砕けていた

……回復は出来なそう

ゴミを捨てるかのように放り投げられ怪物は大剣を奪い返す
その間に魔力で周りに数体の闇蛇を召喚する

「囮を頼むよ」

蛇達は命令に従い怪物の方へ向かっていく
あらかじめ片手だけ治癒を早めておいており叩きつけられた時に骨をやられはしたが激痛を我慢して這いながら岩陰に向かって移動する
怪物の視線を蛇が遮っているうちに行動を取る
全身ではなく一部に治癒を集中して先に両足を癒す

「くっ、うぁ……はぁ、うぐっ、はぁはぁ」

呻き声を上げながらゆっくりと進む
怪物が逃げようとしているのに気付きこちらに走ってくる

……あと少しなのに

岩陰まではあと3、4メートルだが怪物がこちらを攻撃する方が早い
もし逃げられても場所がバレている
怪物は大剣を振るい斬りかかるが蛇の攻撃によってギリギリのところでズレる

……ナイスだよ

大剣が地面に突き刺さった時ギリギリ立てる程度に足が治り素早く立ち上がり足に魔力と力を込めて駆ける
怪物の手が迫り怪物の届くギリギリのところで服を掴む
怪物の手を無理やり振り払いボス部屋を抜け出してすぐにある岩陰に身を潜める

……ふぅ、助かった、少し経ったら蛇をこちらに戻すかな。蛇が便利だなぁ~

痛みがある程度引いて感覚が少し戻った今になって洞窟の寒さに気付く
洞窟の気温が下がったのかかと思い蛇をすぐに戻す
新しい敵が増えた所為と考えて蛇に軽快させる
地図を確認しようとするが先ほどの戦闘で落としたらしく無くなっていた
先ほどの無理が響きまともに動くことが出来ない
頭も痛く感覚が鈍く視界がボヤけている為本来なら気付くであろう出来事に気づくことが出来なかった

……しばらく戦えないなぁ。回復を待って作戦考えよう

傷の回復に集中する
吸血鬼の治癒能力を持ってもこれ程の傷は治すのに時間がかかるようだ
痛みで大体の傷を予想する
外傷は服のおかげでそこまで無さそうだが問題は内部に相当のダメージが入っている
内臓がいくつか潰れ骨も殆どが折れ砕けている
怪物はあの部屋から外には出ないようでいつまで経っても追いかけてこない

……あいつは完全にボスモンスターだね。どうするか、あれは効くけど防御も固めた方がいいよね? あの盾はすぐに壊されるだろうからダメージ軽減のために鎧辺り身につけようかな?

寒さに身震いする
再び三体に戻った蛇がオーク数体と戦闘をしている
蛇1匹でオーク2体分以上の戦闘力があるようで優勢である
魔力の代わりに魔物を食べる事で魔力の消費を抑えられるみたいだ

「この寒さなんで今まで気づかなかったんだろう? 寒いなぁ~」

意識がはっきりとしてきたので魔力の操作の練習を蛇で行う
少しずつ大きく強くしていく中で魔力を出来る限り節約出来ないか調整する
闇魔法として闇蛇を登録して魔法陣を開いて内容の解読を試みる
登録された瞬間に魔法陣が現れ謎の言語の文字列が並ぶ
謎の言語で書かれている為言語自体は理解はできないが操作していくうちに大体どれかどの役割を果たしているかを数時間掛けてゆっくりと理解していく

……糖分が欲しいなぁ~、食べ物食べてないけど腹が減っていない。吸血鬼の体質かな? この蛇、思い付きで出してみたけど強い、もう少し弄ろう。数も出来る限り増やして死角を減らすかな

魔法陣を直接弄ることで魔法を作り変える
魔法弄りなど経験は無いが興味があったので実行に移した計画性のない方法である
魔法陣を出してそこに魔力を流し込む事で半ば無理やり魔法自体を作り変える
魔法陣に存在する核となる魔法の基盤を探し出してこの魔法の全てを暴く

……ほうほう、そう言う事ね

数時間経ちようやく魔法陣操作を終える
元となったものは殆ど原形を保っていない
蛇は厳つくなり蛇の面影を残しているがどちらかというと龍よりに姿は変わり蛇一体あたり半径数十メートルの守備範囲を持ち数は通常時は一体増えて4体、全力戦闘状態では約10体にも及ぶ
攻撃力も耐久力も瞬発力もかなり上がった

「反撃の準備をしよう。これ以外にもやりたいけど集中力がもう持たない。まだまだ課題はあ……る、の……」

集中力が切れ眠気が襲う
ずっと休まずにやっていたせいで眠気への抵抗力がなく倒れ眠りにつく
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