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30話

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「裏切り者には丁度いい最後ね」
「あいつは何を考えている?」
「どうかしましたか? ラフィラ」
「いや、あの吸血鬼が怒りのままに攻撃するとは思えなくてな」
「そうなら……なっ」

リーダー格の魔族が吹き飛び続けて他の魔族が吹き飛ぶ
1人は剣で腕を切られ蹴り飛ばされ1人は雷を纏った拳を喰らい1人はハンマーでぶん殴られている
他にもさまざまな魔法が魔族めがけて飛んでいく
私は視界が遮られているこの時を利用して魔法を使う前に背後から奇襲をかける
鎧を纏って全力で殴る

「何!」
「雷! あの龍人か」

ラフィラは炎の盾を作る
電気が飛んできて盾に当たる

「奇襲!? どこから」
「そこからだ」

ラフィラが指をさす方向には爆発の衝撃で舞い上がった砂埃が未だに舞っていた
砂が無くなっていきやがて姿が見えていく
そこにはリア、クイナ、シアと団長たちが立っていた
そこには親子もいてクロルを守る形で立っていた
クロルは魔法で守っていたのか無傷であった

「えっ?」

クロル1人だけ状況を飲み込めていなかった
結界はルナの物であり覚悟を決めていたクロルを攻撃から守っていた
爆発を出していた理由は砂埃で援軍の到着を教えない為でありわざわざ上空に大きな魔法陣を広げたのは国の方から見えるようにする為であったが意思疎通はしていない為援軍が来るか分からなかったが気付くことに賭けていた

「光魔法 光弾」

光の弾が広範囲に広がりゆっくりと宙に浮いている
魔族はそれが攻撃魔法であることを察知して距離をさらに取る
私は降りて全員と合流する

「まさか全員来るとは」
「まぁ、リアが全員に通達したからね」
「なんで……」
「話は後」

クイナがクロルを抱えて魔法を使って高速で撤退する
クイナに続いて全員で撤退する
光弾によってこちらに来れていない

「怒ったよ! 光の弾は『消えない』」

第七席の魔族は叫ぶ
そうすると光弾は消えていく

「魔法は『消えない』」

もう一度叫ぶと私達にかかっていた魔法は消え速度が落ちる

「第七席の魔法です! あの子は……」
「喋る必要はないよ、裏切り者」

高速接近してきた第七席の拳をクイナは食らう

「君は強いが故に私の攻撃で『倒れない』」

メキッという音がしてクイナが血を吐いて倒れる

「君たちは『動ける』」

全員の動きが止まる
このままでは全員が死ぬと感じるが何も出来ない
身体が動かなくなってしまった

……何これ、体が動かない

「概念影響型の魔法、反語魔法……別名天邪鬼、ありとあらゆる言葉を自在に反対語にすることが出来る。さっきのは倒れないを倒れるに動けるを動かないに変えていたのです」

クロルはクイナが倒れた時に地面に転がっている
魔法の効果が効いているようでクロルも動けていない
第七席の魔族がクロルを踏みつける

「チート魔法の使い手じゃん……なにそれ、勝てないって」
「ちなみに言っておくと僕と第一席は吸血鬼を殺せるから気をつけてね」
「反語で殺せないを殺せるに変えるって事だよね? 第一席も似た力を持つの?」
「いや、似てもいないよ。ただ一番厄介なのは第一席の魔法だと思う」

喋りながらクロルの頭を掴み地面に叩きつける
動けないから逃げることも対抗することも出来ない

……概念にすら影響及ぼすとは勝てるの? というよりそんな力を持つのに何故第七席?

「……なんで動ける?」
「さぁな、なんでだろうな!」

地面を蹴り男性は斬りかかる
寸前のところで回避される
男性だけ何故が動けるようになっていた

「神霊の加護ね、貴方まさかと思うけど現英雄王」
「へぇ、君が現英雄か」
「初めまして先代英雄殿、俺がここをやりますので先代は全員を避難させてください」
「分かった」

リアが相手の魔法の効果が切れた一瞬を利用して全員に風魔法を付与してクイナを抱えて走る
クロルは自らの足で走っている
全員それに気付きリアについていく

「行かせない」
「行かせろよ」

私たちを止めようとするが男性が邪魔をする

「ラフィラ!」
「分かってる! 炎魔法 ファイヤーブレス」

ラフィラが炎を飛ばして男性に攻撃するが軽々と避けられる
ラフィラはその間に接近して近接戦に持っていく

「炎魔法 炎の鉤爪」
「チッ、強いな。流石戦闘特化の第三席代理だな」
「お褒めに預かり光栄だ、英雄王」

戦いが激しさを増す
戦いの余波がこちらまで届いている

「先代ってどういう事? 英雄って言われたの数百年前だよね?」
「それはね。……クロル説明できるよね」

リアがクロルにそういうとクロルは頷き説明を始める

「はい、英雄王は人間が他種族に負けないために生み出させたシステムのことで1人で一騎当千と謳われる程の実力を持ちます。実力故に英雄王レベルを見つけ出すのは困難でリアさんが消えた日から数百年間英雄王の素質を持つ者は確認されていませんでした」
「私が消えた後も問題が起きなかったのは英雄王の存在を偽造したからだよね」

……偽造? 偽りの英雄王を立てたって事?

「はい、英雄王の素質がないのに英雄王になったものたちは居ます。少なくとも神に認められた存在ではない為戦闘をすれば分かったでしょう」
「英雄王の力を恐れたからこその今という事か。システムを良いように使ったね人間は」

私がそう言うとリアとクロルが頷く

「確かにいたね。まぁ、見た目は強そうだったからじゃない?」
「見掛け倒し」

城壁が見え始め全力で結界の中に入る
男性は未だに森の奥で戦っている
おそらく7対1の戦いをやっている

「回復魔法 神秘の癒し」
「光回復魔法 光明の癒し」

クイナを地面に置きリアとルナが回復魔法をかける
団長達は城壁の上に移動して男性を待つ

「彼だけで大丈夫?」
「第一席と第七席がいるので勝てません。反語魔法を破れるとしてもです」
「第一席が不死を殺せるなら能力は大体予想はつくけど一つ確認していい?」

私は一つだけ確認として聞く
これでそうだと言われれば考えている力のうち一つだけに絞れる

「はい、何でしょう」
「第一席は不死を殺せるのではなく再生不可にする力?」
「はい、そんな感じです」

私はため息をつく
考えていた力のうち一つがそれに当てはまる

……他にもあると言えばあるけど不死を殺すのが魔法を力ではなくあくまで別の力が不死にも効く。完全不死ならともかく吸血鬼は流石に肉片にでもなれば死ぬだろう

「その力って?」
「最強も最強、チートクラスだよ。ぶっちゃけ相手が強いと勝てない。多分不可逆だね」

不可逆は一度変化したものは二度と元に戻らないと言うもので不可逆の力が働いて骨折すればその骨折は二度と治る事はない
再生が出来ないなら吸血鬼であれ死ぬだろう、もし死なずとも何も出来ない
致命傷を食らえばほぼ確実に死に至る

「よく分かりましたね。他にもたくさん似た力はあるのに」
「死なないと言っても再生出来ないなら吸血鬼は死ぬも同然、不可逆は元に戻らない」
「不可逆ですか? 可逆にすればいいのでは?」

ルナが提案するが私は首を横に振り答える

……なんで可逆なんて知ってるんだろう……まさかの転生者かな?

ルナの行動は歳通りとは考えられず転生者であるなら納得できる
父親の教育があるからと言ってもあの父親がルナの歳を考えてそこまで教えるとは思えないほど礼儀作法について知っている口振りに敵を前にしても怯まない強さを持っている
大人とは行かずとも少なくとも精神年齢は見た目より上であろう

「反語魔法を持つ第七席から力を奪わないといけない……ほぼ無理」
「助けに行く?」
「邪魔になるだけだよ。古き英雄でも厳しいよね?」

シアが結界外に行こうとするリアを止める
先ほどの全員の行動からしてあの場にいて動けるのは現英雄王のみ
神霊の加護を持つ彼以外は全員動くことはできなかった
しかし、男性も最初は動きを止めていた事から効かないのではなく相手の魔法を解除が出来ると考えた方が合っているかもしれない
森の方から大きな爆発音が聞こえ全員がそちらを向くと男性が急いでこっちに向かっていた
結界に入る前に魔法を放ち相手を怯ませて結界内に入る
団長たちがそれに気付き魔法で壁を何重にも生成する

「この結界は強いか?」
「分からない。初めて張られた結界だから」
「チッ、下手をすれば気休めにもならないかもな」

男性は舌打ちをする
空中を見るとラフィラがこちら目掛けて巨大な火の玉を飛ばそうとしている
私には見覚えがあり進化した時に使っていた魔法だと瞬時に理解する

「あれは……」
「あの大きさは止めれない!」
『光魔法 聖なる守り鏡』

火の玉の目の前に鏡が出現して火の玉を受け止める
鏡は火の玉を吸収する

「光魔法? ルナちゃん?」
「違います」

ルナに問うと首を横に振り答える

「あれは神聖術の方だ。恐らくこのレベルは王様だろうな」
「シエル凄いなぁ~」

私が感心していると結界全体が一瞬赤く光る
魔族が魔法を放つが鏡に吸収されている
その度に結界が光る

「まさか吸収した魔法分の魔力を結界に送ってる?」
「出来るのそれって」
「俺も知らないな。全員分からないか?」

その場にいる全員シエルの魔法についてわかっていない
魔族は鏡の魔法の効果に気付き撤退を始める
撤退するのは1人を除いて全員
第一席の魔族が詠唱を唱える
透き通るような声で小さい筈なのにこちらまで聞こえる

「破壊せよ、全てを破壊し全てを不可逆によって無力化せよ、我が願いを聞き我が願いのために眼前の光景を破壊せよ。我が力を持って破壊する 壊魔法 灰燼」

周りに放たれた魔力が炎と風になり広範囲に炎の竜巻を発生させる
竜巻が結界にぶつかり結界をどんどん削っていく
鏡をいくつか出して防ぐが圧倒的な数に押されている
不可逆の効果で削れた分は修復が出来ない

……何これ? 世界の終わりでもみてるのかな~

この光景に私は放心状態になる

「第一席は確か魔族の総合能力値最高が並んだよな?」
「はい、そうです。それと彼女はシン・フィロルという名を持っています。魔王すら恐れる力を持ってます」
「魔王ってどう言うの?」
「魔族の始祖と言われています。その力は魔族最強と呼ばれていましたが現在の七裁王のメンバーに劣ると言われてます」

……魔王可哀想だなぁ~

まだ見ぬ魔王に同情する
どんどんと結界が破壊されていく
団長たちが壁を作るも一瞬で破壊され時間稼ぎにもならない

「お前らも力を貸せ!」

ザーガが私達の方を向き叫ぶ
その言葉を聞き私たちも加勢する

「闇魔法 ダークバースト」
「神霊魔法 神霊の息吹」
「光魔法 光明の守り」
「無魔法 無限斬り」
「大地魔法 大地の壁」
「複合魔法 フルシールド」

全員の攻撃や防御魔法を使い加勢するが数秒時間を稼ぐ程度にしかならない

「詠唱破棄! 闇魔法 黒千弾砲」

詠唱を破棄して今ある全ての魔力を込めて一点集中で魔法を放つ
狙いはシンで真っ直ぐ飛んでいくが壁を張られる

「無魔法 煉獄斬り」
「光魔法 光明の斬撃」
「大地魔法 大地の大剣」
「複合魔法 フルバースト」
「神霊魔法 神霊の嵐」
「光魔法 光の道しるべ」

リア達が壁目掛けて魔法を放ち破壊する
光の道が次々と魔法を囲み狙いの場所へ届ける

「……甘いわ」

シンは魔力で全身を覆い攻撃を防ぐ
ダメージは多少しか入らず魔法は続いている
リアと男性がアイコンタクトで次何をするかを伝えて結界の上に立つ
2人の英雄王が剣を抜き眼前の敵と対峙する

「英雄王2人がかりとは……良いわ、やりましょう」
「行くよ!」
「分かってます!」

3人は結界の上で戦闘を始める
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