電脳世界で美少女はじめました

有栖 璃亜

文字の大きさ
4 / 30
第一部 マスター、これからお世話になります

命懸けの住処探し 後編

しおりを挟む
 俺は最初のコンピューターから脱出した後も別のコンピューターにアクセスを試みるも、どれもウイルスバスターという名の厳重なセキュリティが掛けられていた。

「何でどのコンピューターにもウイルスバスターがあるんだよ……」

 決して全てのコンピューターにウイルスバスターがしているなんて考えはしていないが、俺がアクセスしようとしたコンピューター全てにウイルスバスターがあった。
 ここまで来ると流石に自分の不運さにウンザリさせられるところだ。

「もし、次の所にもウイルスバスターがあったら第二手段にするか」

 ウイルスバスターを突破して無理やりアクセスする方法もあるが、数え切れないほどの警備員が出てくるんだから成功する可能性はかなり低い。
 だが、これが最後のチャンスだ。可能性は低くてもやるしかない。

「もうウイルスバスターでも何でもかかってこい!」

 そう意気込んでゲートを通り、コンピューターにアクセスする。

 ——さあ、来るなら来い!

 いつウイルスバスターの警備員が現れてもいいように身構えているのがアクセス音以外の音はしない。

 いや、奴らが来ないなんて油断はしてはならない。
 最後まで油断するな大神切刃。奴らはお前が油断した時に絶対に出てくるぞ。

 それから数分経過してもなお、奴らは現れない。
 もうすぐアクセスが完了するのに奴らが出現する時の音すら聞えない。
 そして、ついに念願のアクセスが完了した。

「よし……!」

 アクセスが成功したことにより目の前の扉が開く。
 俺は扉の奥に進むと後ろの方から扉が閉まる音が聞こえた。
 恐らく、再びセキュリティが掛けられたのだろう。

 しばらく進んでいると、急に足場がなくなりまるで、無重力空間のようになった。
 俺は無重力になった空間を水泳の泳ぐ感覚で進んで行く。

「ん? あれは……」

 俺は縦長で長方形型の少し大きな窓のようなものを見つけた。そして、その窓からは光が射し込んできている。

「ッ!!」

 俺はその窓を覗くとあまりの驚きに言葉が出なかった。
 俺が窓の外で見た物……それは……。

「えっと……君は誰?」

 今の俺の体よりも遥かに大きいの姿だった。

 まさか、データで出来た体が人間の体よりも遥かに小さいとは思わなかった。
 いや、冷静に考えてみればそうだ。この体でスマホやパソコンの画面に現れるとしたらその画面のサイズに合わせなければならない。
 スマホなどの携帯電話なら小さく、大型テレビやスクリーンだと大きくなる。
 そして、今目の前にいる少年は巨大に見えることから、俺が今いる場所はこの少年の携帯電話の中だろう。

「ねぇ、聞いてる?」
「あ、はい、すみません」

 俺がずっと黙って考え込んでいたせいか、さっきの質問を聞いていないかと思われたらしい。

 うーん、流石に本名で名乗りでるわけにもいかないし、そもそも今の姿で切刃という名前はおかしいだろう。
 ついでに言うと、この一人称と口調もだ。
 『個性的』で済ませてもいいが俺自身が気に入らない。


 ——いっちょ今の姿に合うように演じてみますか!


 俺は、いつもの男から女を演じることにした。
 今は下手かもしれないが、その辺は少しずつ練習していこう。
 それに、認めたくはないが俺はもう男じゃない……女だ!!

 ……自分で言っといてなんだが恥ずかしいな。

「よし……!」
「?」

 軽く意気込むと目の前にいる少年は首を傾げる。

 大丈夫だ、ただ演じるだけでいい。お前なら出来る、切刃……いや、今日から私は大神 霧乃おおがみ きりのだ!!
 
 ——捻りがないなこの名前……。

「私の名前は大神霧乃といいます。単刀直入に言いますと、私をここに住まわせてくれませんか?」

 自己評価は十点中八点というところか。
 ちゃんと話せはしたが、少々表情と話し方が固すぎた。

「え、あ、うん。別に変なことをしなければいいよ」
「あ、ありがとうございます!!」

 そう言って、私は目の前の少年に一礼をする。
 少年からの許可は得た。という事は、今日からここが俺の住処だ。
 ミッション完了、最低限の住処は確保した。

「よかった……一体どれだけの時間を掛けたか……」
「そうなの? それは大変だったね」

 ありがとう少年よ。君のお陰で大神霧乃は救われた。
 体感時間は軽く一日ぐらいなんだが、実際どうなんだろうか。

「えっと……」
「あ、僕の名前は藤原 大輝ふじわら たいきね」
「じゃあ、大輝さん。今日って何月何日の何時何分ですか?」

 確か、俺がこの世界に来る前の日付は、七月十六日の日曜日で午前二時くらいだった。
 俺がこっちに来てからかなり時間が経っているような気がする。
 ないとは思うが、半年経ってたなんてことはないよな?

「えっと……確か今日は、七月十六日の日曜日で時間は午前六時だよ」
「……それって本当ですか?」
「うん。僕が今嘘を言う意味なんてないでしょ?」
「確かにそうですね」

 ——どういうことだ?

 こっちではあれだけの時間が経ったのにも関わらず、大輝さんがいる世界(人間界でいいか)は、まだたったの四時間しか経っていない?

 もしかして、サイバネットワールドと人間界とでは時間の流れの速度が違うのか?
 だとすると、俺がサイバネットワールドで一日分の運動をしても人間界ではその六分の一しか運動していないことになるのか。

「あの、呼び方……」
「呼び方がどうかしましたか?」
「で、出来れば僕のことをって読んでほしいなー、なんて」

 なぜにマスター?
 確かに住処を提供してもらっている身だが、人間で言う賃貸マンションに住んでいることと同じだ。
 でも、そこまでの関係ではない筈だ。

「あの、やっぱり無理だよね……?」
「うっ……」

 大輝さんは俺を見てしょんぼりした顔で見つめてきた。
 そんな顔をされてしまったらNOなんて言うことなんてできないに決まっているじゃないか。

「わ、わかりました。マ、マスター」
「あ、ありがとう!!」

 大輝さんもといマスターはとても嬉しそうな顔をした。

(か、可愛い……)

 ふとそんなことを思ってしまうぐらいにマスターの嬉しそうな顔は可愛かった。
 そして、しばらくマスターの顔を見ているうちに……。

「ハッ!」
「ん?どうかしたの?」
「い、いえ」

 危ない危ない。男である俺が一人の少年の顔に夢中になってしまうとは……マスター恐るべし!
 マスターの顔だけで男の精神が演じている女の精神側に取り込まれそうになった。

 なんだかんだで、目的である住処探しはいい場所を見つけたが、今度は色々なことで忙しくなりそうだ。

 そして、マスター大輝さんの生活が今この瞬間に幕を開けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。

桜庭かなめ
恋愛
 高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。  とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。  ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。  お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!  ※特別編4がスタートしました! 既に完成しており、全8話でお送りします(2026.2.15)  ※1日1話ずつ公開していく予定です。  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...