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第一部 マスター、これからお世話になります
僕と霧乃さんの出会い
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僕の名前は藤原 大輝。最近中学生一年生から二年生になったばっかりだ。
身長は146cmと中学二年生の男子にしては少し小さい方。
そして、僕の顔はお母さん似で中性的な顔……らしい。
何故曖昧なのかは、僕のお母さんとお父さんは物心がつく前に僕をお婆ちゃんに預けて、外国へ行ったっきり帰ってきていないから。
物心がつく前だから僕自身、両親の顔をハッキリとは覚えていない。
お婆ちゃんは「仕事だから仕方がない」と言っているけど、僕はお母さんとお父さんを信じて帰りをずっと待っている。
「大ちゃ~ん。そろそろ学校に行きなさいよ~」
「うん」
リビングの方からお婆ちゃんの声が聞こえた。
部屋の時間を見ると八時五分でここから僕の通っている中学生までは歩いて間に合う時間だ。
「行って来ます」
「行ってらっしゃい」
何処の家族でも家を出る時に当たり前のようにする挨拶。その当たり前の挨拶が、僕には少し寂しく感じた。
学校について僕のクラスである二年三組に入って机に向かう。
僕の机の上には、いつものように女子の制服が置いていた。
「…………」
僕はそれを無言で見つめる。
周りの人達は何か言うこともなく僕の方を見てニヤニヤとしている。
——うん、これもいつも通りだ。
「なあ、大輝」
「……何?」
僕が大した反応がないのに呆れたのか、一人の男子生徒が声をかけてきた。
男子生徒の名前?別に知る必要が無いし、そもそも僕には興味がない。
「お前、これ着てみろよ。絶対似合うぞ?」
「ふーん。じゃあ、家に帰ってから着るね」
そう言うと、その男子生徒は眉間にしわを寄せて僕に聞こえるように舌打ちをした。
僕の発言の何処に彼を怒らせる原因があったのだろうか?
彼の要求は「女子の制服を着てみろ」で、誰もその女子の制服を「今すぐに着てみろ」とは言っていない。
僕はただ、彼の言われた要求に従っているだけ。
そして、僕が女子の制服を手に取ると今度は一人の女子生徒が僕に話しかけてきた。
「うわーそれ私の制服なんですけどー」
「えー!? 大輝君って人の制服を勝手に取る変態さんだったのねー」
「しかも女子の制服をねー」
わざとらしい口調で僕を変態に仕立て上げようとしてくる。
恐らく、僕がいくら否定してもこの人達のすることがエスカレートするだけ。
そもそも、今来ている制服以外の制服を持ってくるのはどうかと思う。
「………」
「おい、先生が来たぞ」
「やべっ、早く座れ!」
僕のクラスの担任が廊下を通ってこの教室に近づいて来ていることに気が付いた生徒達は、僕の机に制服を置いたまま一斉に自分の席に戻る。
そして、全員が座り終わる頃には先生も教室に着いていた。
「せんせー、私の予備に持ってきていた制服が藤原君に盗られましたー!」
先生が教室に入ってきた途端にさっきの女子生徒が大声で言う。
「……はあ、またお前か藤原。朝のホームルームが終わったら先生と一緒に職員室に来い」
「……わかりました」
僕の担任は僕がこんな目にあっていることは知っているが何もしない。
それに、表向きは人当たりのいい先生だが、裏向きはこのクラスの生徒のように退屈しなさそうな奴を見つけるとコソコソと嫌がらせをしてくる人として最低な奴だ。
それを見抜けたのは、僕が初めにこのことを先生に相談した時だ。
聞く時は真剣に話を聞いてくれたが、結局したことは、関係のある生徒を数人呼び出し軽く叱っただけ。
しかも、その時の先生の顔は本気で怒っている顔ではなく、この生徒達と同じくニヤニヤした顔だった。
「これでホームルームは終わりだ。それじゃあ行くぞ藤原」
「……はい」
そして、僕は先生と一緒に職員室に行って一時限目開始ギリギリまで怒鳴られた後に授業に間に合うように走らされた。
結局、一時限目には間に合わず、また先生に怒鳴られた。
——いったい皆は僕の何が気に入らないんだろう?
僕が今の状況になった時に抱いた疑問。
いったい何が悪くて何処が気に入らないのか。その答えを僕が知ることになるのはかなり先のことになるだろう。
そして、朝からずっと嫌がらせのオンパレードで適当に流していたらいつの間にか放課後になっていた。
特に部活は入っていないので僕は家に帰る準備をして教室の扉に向かう。
「おい、何勝手に帰ろうとしてるんだよ」
朝のホームルーム前に僕に話しかけてきた生徒が声を掛けてきた。
勝手に変えるも何も、もうホームルームも終わったし家に帰ろうとして何が悪いのだろうか。
「帰ろうとして何が悪いの?」
「今日はお前と俺達で楽しい勉強会だぞ?」
「勝手に決めないでくれる?」
何が楽しいだ。勝手に勉強会なんて開いて僕を強制的に参加させようとしているところで、僕には楽しいなんて感情はない。
もし、参加したとしても誘ってくるのがアイツらの時点で楽しいはずが無い。
「僕は参加するつもりは無いから帰らせてもらうね」
「……その態度だ」
「何か言った?」
「お前のその生意気な態度が気に食わねぇんだよ!」
男子生徒は突然怒りだして僕を殴った。僕は殴られた反動で後ろに倒れる。
周りの人は少し驚くだけで何もしない。単に見て見ぬ振りをしているのか、或いは、これも計画したことなのか。
「お前がその態度ってことはお前の両親もそういう奴なんだな!? どうせお前ん家に帰って来ないのもバチが当たったて死んじまったに決まってる!」
「おまっ、それは言い過ぎだって!」
死んじまった……その言葉を聞いた瞬間に、僕の何かが外れる音が聞こえたような気がした。
「僕の両親が……何だって?」
僕は立ち上がりながら男子生徒に向かって問いかける。
「お、お前の両親にバチが当たって死んだって言ってんだよ!」
「……僕に嫌がらせをするのは別にいい。でもさ……僕の両親が死んだとか、勝手な決めつけは止めてくれないかな?」
僕が両親が帰って来ないのは死んだかもしれないけど、いつか帰ってくるって僕は信じている。
それを否定するのは決して許せない。
「……今は時間が無いから帰るけど、いいよね?」
「か、勝手にしろよ!」
「うん、そうさせてもらうね」
帰っていい許可が出たのでさっさと教室から出て校門へ向かう。
——ちょっとカッとなり過ぎたかな?
来週の月曜日に投稿した時にまた面倒くさいことになるのだろう、と僕は予想する。
「……早く帰ろ」
僕は校門から出ると、特に寄り道などをせずに家へと真っ直ぐ向かった。
帰ってからはお婆ちゃんが優しく出迎えてくれた。
夜にはお婆ちゃんが作ってくれたご飯を食べてお風呂に入り、午後十時にはベッドに入って眠りについた。
次の日、十五日の土曜日は朝からずっと土砂降りの雨だった。
梅雨は既に明けているのに何でこんなに降るんだろう。
土砂降りに降る雨。それを見ている内に何だか僕の心の中みたい、なんて思ってしまう。
——……嫌な感じだなぁ。
この日は特にやることが無く、いつも通りにご飯を食べてお風呂に入って、昨日と同じ時間に眠った。
次の日、十六日の日曜日の朝。僕はいつもより少し早い六時五十分に起きた。
「……起きよ」
折角起きたのに二度寝はしたくない。そう思いベッドから降りて僕の部屋のドアを開けようとした。
その時、机に置いていた僕のスマホがメールや電話が来たわけでもないのに、突然画面が点いた。
「……何で?」
これが世に言う「心霊現象」って言うやつなのかな?
でも、今は夜ではなく早朝。幽霊が出るわけがない。
「幽霊さん、出てくるタイミング間違えてますよ」
スマホの画面を覗き込んで遊び半分な気持ちで言ってみる。
そして、僕が言って間もなく画面の端からひょこっと可愛い少女が顔を出した。
「えっと……君は誰?」
僕が声を掛けると画面の中にいる少女は驚いていた。
それから、少女は考え込むような仕草をして動かなくなった。
しばらく待っても中々終わらないので僕のことを忘れているのではないかと心配になって、つい声を掛けてしまった。
「ねぇ、聞いてる?」
「あ、はい、すみません」
僕がまた急に声を掛けたせいで、少女驚かせてしまった。
でも、謝った理由がわからない。
どちらかと言えば、それは急に声を掛けて驚かせてしまった僕の台詞の筈なのに。
「よし……!」
「?」
それからしばらく待っていると、何故か急に少女は意気込みを入れだした。
——何をするつもりなんだろう……?
そう疑問に思っていたら、さっきまで意気込みを入れた時以外は開かなかった口が開いた。
「私の名前は大神霧乃といいます。単刀直入に言いますと、私をここに住まわせてくれませんか?」
何をするのかと思ったら、少女……霧乃さんは僕に自己紹介をした後にこのスマホに住んでいいかと聞いてきた。
僕の霧乃さんが言ったお願いの答えは迷わずOKだ。
困っているのなら助けるのが当たり前。あんな思いをするのは僕だけで充分。
「え、あ、うん。別に変なことをしなければいいよ」
「あ、ありがとうございます!!」
僕が答えると霧乃さんは、まるで、ゲームの強敵を数日かけて倒した時のような顔をしていた。
「よかった……一体どれだけの時間を掛けたか……」
「そうなの?それは大変だったね」
取り敢えず、霧乃さんがここに来るまでに大変なことばかりがあったということはわかった。
一体何があったんだろう?
「えっと……」
「あ、僕の名前は藤原 大輝ね」
「じゃあ、大輝さん。今日って何月何日の何時何分ですか?」
何月何日の何時何分かって言うのは、日本の時間のことでいいよね?
今の日本の時間を言うけど……聞くって事は今の正確な時間がわからないってこと?
「えっと……確か今日は、七月十六日の日曜日で時間は午前六時だよ」
「……それって本当ですか?」
「うん。僕が今嘘を言う意味なんてないでしょ?」
「確かにそうですね」
部屋の時計を見て答えたら、今の時間のことが信じられないような顔を霧乃さんはしていた。
そんな表情をするほどの時間ではないと思うけど……。
あ、そうだ。折角僕のスマホの中に住むんだったらお互いに呼び方を決めなければ!
「あの、呼び方……」
「呼び方がどうかしましたか?」
「で、出来れば僕のことをマスターって読んでほしいなー、なんて」
実のところ、僕はバーチャルアイドルが結構好きだ。
よくバーチャルアイドルの二次創作の小説を見ているとよく最も親しい人のことを「マスター」って呼んでいる。
僕がバーチャルアイドルを好きになって数ヵ月後に抱いたやりたいことだ。
「あの、やっぱり無理だよね……?」
「うっ……」
でも、現実は上手くは行かない。今目の前にいる霧乃さんは、まるで本当に生きているかのようだ。
だからこそ、この呼び方には抵抗がある筈なんだ。
僕が半分以上諦めかけていると、霧乃さんは恥ずにしながら顔を赤面しながら話し出す。
「わ、わかりました。マ、マスター」
「あ、ありがとう!!」
霧乃さんが許可した上にすぐに僕のことをマスターと呼んでくれた。
あまりの嬉しさに僕の頭の中「幸せ」で埋め尽くされていた。
こんな気持ち初めてだ
——ああ、幸せってこういうことなのかな?
「ハッ!」
「ん?どうかしたの?」
「い、いえ」
僕が幸せに満ちていると、霧乃さんの声が聞こえた。
何かあったのかと思ったけど別に何も無かったみたい。
「……ありがとう、僕のところに来てくれて」
「ん?何か言いましたか?」
「なんでもないよー」
お母さん、お父さん、心配しないで。僕はもう大丈夫だよ。
だって、やっと僕に念願の友達が出来たから。
僕はこの日、初めて友達がいる嬉しさ。
そして、初めて「幸せ」というものがわかった気がした。
身長は146cmと中学二年生の男子にしては少し小さい方。
そして、僕の顔はお母さん似で中性的な顔……らしい。
何故曖昧なのかは、僕のお母さんとお父さんは物心がつく前に僕をお婆ちゃんに預けて、外国へ行ったっきり帰ってきていないから。
物心がつく前だから僕自身、両親の顔をハッキリとは覚えていない。
お婆ちゃんは「仕事だから仕方がない」と言っているけど、僕はお母さんとお父さんを信じて帰りをずっと待っている。
「大ちゃ~ん。そろそろ学校に行きなさいよ~」
「うん」
リビングの方からお婆ちゃんの声が聞こえた。
部屋の時間を見ると八時五分でここから僕の通っている中学生までは歩いて間に合う時間だ。
「行って来ます」
「行ってらっしゃい」
何処の家族でも家を出る時に当たり前のようにする挨拶。その当たり前の挨拶が、僕には少し寂しく感じた。
学校について僕のクラスである二年三組に入って机に向かう。
僕の机の上には、いつものように女子の制服が置いていた。
「…………」
僕はそれを無言で見つめる。
周りの人達は何か言うこともなく僕の方を見てニヤニヤとしている。
——うん、これもいつも通りだ。
「なあ、大輝」
「……何?」
僕が大した反応がないのに呆れたのか、一人の男子生徒が声をかけてきた。
男子生徒の名前?別に知る必要が無いし、そもそも僕には興味がない。
「お前、これ着てみろよ。絶対似合うぞ?」
「ふーん。じゃあ、家に帰ってから着るね」
そう言うと、その男子生徒は眉間にしわを寄せて僕に聞こえるように舌打ちをした。
僕の発言の何処に彼を怒らせる原因があったのだろうか?
彼の要求は「女子の制服を着てみろ」で、誰もその女子の制服を「今すぐに着てみろ」とは言っていない。
僕はただ、彼の言われた要求に従っているだけ。
そして、僕が女子の制服を手に取ると今度は一人の女子生徒が僕に話しかけてきた。
「うわーそれ私の制服なんですけどー」
「えー!? 大輝君って人の制服を勝手に取る変態さんだったのねー」
「しかも女子の制服をねー」
わざとらしい口調で僕を変態に仕立て上げようとしてくる。
恐らく、僕がいくら否定してもこの人達のすることがエスカレートするだけ。
そもそも、今来ている制服以外の制服を持ってくるのはどうかと思う。
「………」
「おい、先生が来たぞ」
「やべっ、早く座れ!」
僕のクラスの担任が廊下を通ってこの教室に近づいて来ていることに気が付いた生徒達は、僕の机に制服を置いたまま一斉に自分の席に戻る。
そして、全員が座り終わる頃には先生も教室に着いていた。
「せんせー、私の予備に持ってきていた制服が藤原君に盗られましたー!」
先生が教室に入ってきた途端にさっきの女子生徒が大声で言う。
「……はあ、またお前か藤原。朝のホームルームが終わったら先生と一緒に職員室に来い」
「……わかりました」
僕の担任は僕がこんな目にあっていることは知っているが何もしない。
それに、表向きは人当たりのいい先生だが、裏向きはこのクラスの生徒のように退屈しなさそうな奴を見つけるとコソコソと嫌がらせをしてくる人として最低な奴だ。
それを見抜けたのは、僕が初めにこのことを先生に相談した時だ。
聞く時は真剣に話を聞いてくれたが、結局したことは、関係のある生徒を数人呼び出し軽く叱っただけ。
しかも、その時の先生の顔は本気で怒っている顔ではなく、この生徒達と同じくニヤニヤした顔だった。
「これでホームルームは終わりだ。それじゃあ行くぞ藤原」
「……はい」
そして、僕は先生と一緒に職員室に行って一時限目開始ギリギリまで怒鳴られた後に授業に間に合うように走らされた。
結局、一時限目には間に合わず、また先生に怒鳴られた。
——いったい皆は僕の何が気に入らないんだろう?
僕が今の状況になった時に抱いた疑問。
いったい何が悪くて何処が気に入らないのか。その答えを僕が知ることになるのはかなり先のことになるだろう。
そして、朝からずっと嫌がらせのオンパレードで適当に流していたらいつの間にか放課後になっていた。
特に部活は入っていないので僕は家に帰る準備をして教室の扉に向かう。
「おい、何勝手に帰ろうとしてるんだよ」
朝のホームルーム前に僕に話しかけてきた生徒が声を掛けてきた。
勝手に変えるも何も、もうホームルームも終わったし家に帰ろうとして何が悪いのだろうか。
「帰ろうとして何が悪いの?」
「今日はお前と俺達で楽しい勉強会だぞ?」
「勝手に決めないでくれる?」
何が楽しいだ。勝手に勉強会なんて開いて僕を強制的に参加させようとしているところで、僕には楽しいなんて感情はない。
もし、参加したとしても誘ってくるのがアイツらの時点で楽しいはずが無い。
「僕は参加するつもりは無いから帰らせてもらうね」
「……その態度だ」
「何か言った?」
「お前のその生意気な態度が気に食わねぇんだよ!」
男子生徒は突然怒りだして僕を殴った。僕は殴られた反動で後ろに倒れる。
周りの人は少し驚くだけで何もしない。単に見て見ぬ振りをしているのか、或いは、これも計画したことなのか。
「お前がその態度ってことはお前の両親もそういう奴なんだな!? どうせお前ん家に帰って来ないのもバチが当たったて死んじまったに決まってる!」
「おまっ、それは言い過ぎだって!」
死んじまった……その言葉を聞いた瞬間に、僕の何かが外れる音が聞こえたような気がした。
「僕の両親が……何だって?」
僕は立ち上がりながら男子生徒に向かって問いかける。
「お、お前の両親にバチが当たって死んだって言ってんだよ!」
「……僕に嫌がらせをするのは別にいい。でもさ……僕の両親が死んだとか、勝手な決めつけは止めてくれないかな?」
僕が両親が帰って来ないのは死んだかもしれないけど、いつか帰ってくるって僕は信じている。
それを否定するのは決して許せない。
「……今は時間が無いから帰るけど、いいよね?」
「か、勝手にしろよ!」
「うん、そうさせてもらうね」
帰っていい許可が出たのでさっさと教室から出て校門へ向かう。
——ちょっとカッとなり過ぎたかな?
来週の月曜日に投稿した時にまた面倒くさいことになるのだろう、と僕は予想する。
「……早く帰ろ」
僕は校門から出ると、特に寄り道などをせずに家へと真っ直ぐ向かった。
帰ってからはお婆ちゃんが優しく出迎えてくれた。
夜にはお婆ちゃんが作ってくれたご飯を食べてお風呂に入り、午後十時にはベッドに入って眠りについた。
次の日、十五日の土曜日は朝からずっと土砂降りの雨だった。
梅雨は既に明けているのに何でこんなに降るんだろう。
土砂降りに降る雨。それを見ている内に何だか僕の心の中みたい、なんて思ってしまう。
——……嫌な感じだなぁ。
この日は特にやることが無く、いつも通りにご飯を食べてお風呂に入って、昨日と同じ時間に眠った。
次の日、十六日の日曜日の朝。僕はいつもより少し早い六時五十分に起きた。
「……起きよ」
折角起きたのに二度寝はしたくない。そう思いベッドから降りて僕の部屋のドアを開けようとした。
その時、机に置いていた僕のスマホがメールや電話が来たわけでもないのに、突然画面が点いた。
「……何で?」
これが世に言う「心霊現象」って言うやつなのかな?
でも、今は夜ではなく早朝。幽霊が出るわけがない。
「幽霊さん、出てくるタイミング間違えてますよ」
スマホの画面を覗き込んで遊び半分な気持ちで言ってみる。
そして、僕が言って間もなく画面の端からひょこっと可愛い少女が顔を出した。
「えっと……君は誰?」
僕が声を掛けると画面の中にいる少女は驚いていた。
それから、少女は考え込むような仕草をして動かなくなった。
しばらく待っても中々終わらないので僕のことを忘れているのではないかと心配になって、つい声を掛けてしまった。
「ねぇ、聞いてる?」
「あ、はい、すみません」
僕がまた急に声を掛けたせいで、少女驚かせてしまった。
でも、謝った理由がわからない。
どちらかと言えば、それは急に声を掛けて驚かせてしまった僕の台詞の筈なのに。
「よし……!」
「?」
それからしばらく待っていると、何故か急に少女は意気込みを入れだした。
——何をするつもりなんだろう……?
そう疑問に思っていたら、さっきまで意気込みを入れた時以外は開かなかった口が開いた。
「私の名前は大神霧乃といいます。単刀直入に言いますと、私をここに住まわせてくれませんか?」
何をするのかと思ったら、少女……霧乃さんは僕に自己紹介をした後にこのスマホに住んでいいかと聞いてきた。
僕の霧乃さんが言ったお願いの答えは迷わずOKだ。
困っているのなら助けるのが当たり前。あんな思いをするのは僕だけで充分。
「え、あ、うん。別に変なことをしなければいいよ」
「あ、ありがとうございます!!」
僕が答えると霧乃さんは、まるで、ゲームの強敵を数日かけて倒した時のような顔をしていた。
「よかった……一体どれだけの時間を掛けたか……」
「そうなの?それは大変だったね」
取り敢えず、霧乃さんがここに来るまでに大変なことばかりがあったということはわかった。
一体何があったんだろう?
「えっと……」
「あ、僕の名前は藤原 大輝ね」
「じゃあ、大輝さん。今日って何月何日の何時何分ですか?」
何月何日の何時何分かって言うのは、日本の時間のことでいいよね?
今の日本の時間を言うけど……聞くって事は今の正確な時間がわからないってこと?
「えっと……確か今日は、七月十六日の日曜日で時間は午前六時だよ」
「……それって本当ですか?」
「うん。僕が今嘘を言う意味なんてないでしょ?」
「確かにそうですね」
部屋の時計を見て答えたら、今の時間のことが信じられないような顔を霧乃さんはしていた。
そんな表情をするほどの時間ではないと思うけど……。
あ、そうだ。折角僕のスマホの中に住むんだったらお互いに呼び方を決めなければ!
「あの、呼び方……」
「呼び方がどうかしましたか?」
「で、出来れば僕のことをマスターって読んでほしいなー、なんて」
実のところ、僕はバーチャルアイドルが結構好きだ。
よくバーチャルアイドルの二次創作の小説を見ているとよく最も親しい人のことを「マスター」って呼んでいる。
僕がバーチャルアイドルを好きになって数ヵ月後に抱いたやりたいことだ。
「あの、やっぱり無理だよね……?」
「うっ……」
でも、現実は上手くは行かない。今目の前にいる霧乃さんは、まるで本当に生きているかのようだ。
だからこそ、この呼び方には抵抗がある筈なんだ。
僕が半分以上諦めかけていると、霧乃さんは恥ずにしながら顔を赤面しながら話し出す。
「わ、わかりました。マ、マスター」
「あ、ありがとう!!」
霧乃さんが許可した上にすぐに僕のことをマスターと呼んでくれた。
あまりの嬉しさに僕の頭の中「幸せ」で埋め尽くされていた。
こんな気持ち初めてだ
——ああ、幸せってこういうことなのかな?
「ハッ!」
「ん?どうかしたの?」
「い、いえ」
僕が幸せに満ちていると、霧乃さんの声が聞こえた。
何かあったのかと思ったけど別に何も無かったみたい。
「……ありがとう、僕のところに来てくれて」
「ん?何か言いましたか?」
「なんでもないよー」
お母さん、お父さん、心配しないで。僕はもう大丈夫だよ。
だって、やっと僕に念願の友達が出来たから。
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