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第一部 マスター、これからお世話になります
月曜日、それは始まりの曜日
しおりを挟む「マスター起きてくださーい! 朝ですよー!」
「んー……あと五分だけ……」
「その言葉聞いたのこれで五回目ですけど……」
今日は七月十七日の月曜日。私みたいな不登校でなければ学校が始まる曜日だ。
昨日にマスターが中学二年生ということを教えてもらったので「朝起こしてあげましょうか?」って言ったら……。
「起こしてくれるの!?」
マスターは何故かとてつもなく喜んでいた。
今思えば、マスターはバーチャルアイドルが好きって言っていた。そして、今の私はバーチャルアイドルとそう変わらない。
——そりゃ嬉しくもなるわ。
言うなら、自分の好きな国民的アイドルの一人が自分を朝に起こしてくれるようなもんだ。
もしかしたら、起こしてくれるのが楽しみ過ぎて寝られないかもしれない。
——……あれ?それってまさに今のマスターな気が……。
「七時に起こしてって言ったのはマスターですよ」
「……ちょっと待って……あと五分だけ……」
「……七回目……つまり、七時三十分です」
「七時三十分……?」
マスターが起こしてとお願いされた時間の七時から三十分オーバーした時間だ。
八時三十分以降の登校は遅刻だって聞いているが……大丈夫なのだろうか?
「……七時三十分!?」
「あ、起きましたね」
ようやく危機感を感じたのか布団から飛び起きた。
やっぱりマスターも一人の学生。遅刻をするのは嫌なのだろう。
「ただでさえ準備に時間がかかるのに……!」
「完全に起きなかったマスターが悪いです」
「そ、それはそうだけど……」
マスターは中に私がいるスマホを持ってリビングに急ぐ。
リビングに着くと、マスターのお婆さんが朝ご飯を机に並べていた。
ところで、私はマスターのお婆さんをどう呼べばいいのだろうか。
お婆ちゃん?お祖母様?
……なんか両方しっくりこないからお婆さんでいいや。
「大ちゃん、今日は中々遅起きね~」
「ごめん、昨日全然眠れなかったから……」
「あら、そうなの」
マスターのお婆さんは特に怒ることもなく優しく接する。
——な、なんて最高なお婆さんなんだ……!
私がマスターのお婆さんの素晴らしい性格に感激している内にマスターは朝ご飯を食べ終えていた。
——マスター、食べる終わるのが速すぎだ。
朝ご飯は白米と味噌汁、おかずに目玉焼きと、一般的な家庭の料理だ。
しかし、私の場合は食べ終わるのに十数分はかかりそうな量なのに、マスターはそれをたった三分で食べ終えた。
「マスター、ちゃんと味わって食べてますか?」
「味わってるつもりだけど、時間も時間だからね」
「急いでいても、料理を食す時はきちんと味わって食べないといけませんよ。料理の食材に失礼ですから」
私は朝ご飯を食べ終えて歯を磨いているマスターに向かって言う。
——我ながらいいことを言った気がする。
マスターは歯を磨き終えて、昨日の内に用意していた学校の制服を取って着替え始める。
「あ、霧乃さんは見ないでね。女の子に裸を見られるのは恥ずかしいから」
「え、あ、はい。わかりました」
マスターが着ているパジャマを脱ぎ始めようとした時にマスターがそんなことを言ってきた。
マスターが思うことは元男である私にはよくわかる。
女の人が裸を異性に見られるのが嫌だったり恥ずかしかったりするが、それは男の人も例外ではない。
男の人だって異性に裸を見られれば嫌って言う人もいれば恥ずかしいと感じる人もいる。
「もういいよ」
「わかりました。……そう言えば、何でそんなに急ぐのですか?」
「あれ? 教えてなかったっけ?」
「はい」
この家から普通に登校するのであれば、マスターの足で約十分かかる学校に七時五十分に家を出る理由がよくわからない。
何か約束でもしているのだろうか?
「えっと、今週は僕が日直なんだ」
「オーケーマスター、理解しました」
「は、速いね」
日直……それは、放課後に掃除をする必要がなくなるが、代わりに朝早くに学校に登校し、自分の教室の鍵を開け、校門へと向かい通常通りに登校してくる生徒に挨拶をしなければならないという無駄に忙しい役職だ。
マスターの学校ではどうなのかは知らないが、少なくとも私が通っていた中学校はそうだった。
「そう言えば、霧乃さんはどうするの?」
「何がですか?」
「えっと、僕がいない間ずっとスマホにいるの?」
「ああ、そのことでしたら大丈夫ですよ。私は電脳世界を通じて大抵の場所への移動は可能ですので」
実は、マスターが眠っている間にスマホからサイバネットワールドに出て何が出来るかを調べていた。
まず最初にわかったこと、それは、今の私は睡眠の必要が無いということ。
体がデータということが原因なのか、いつものような睡魔が全く襲って来なかった。
そのお陰で色々サイバネットワールドで出来ることを調べることが出来た。
出来ることその1。長距離の移動。
サイバネットワールドは人間界のあらゆるコンピューターやデータに繋がっている。
他のコンピューターから別のコンピューターに移動に使うのは、人間で言う電波だ。
そして、この世界の時間は人間界の六分の一の速さだ。
徒歩で大阪から東京まで人間界では約百四時間かかるが、サイバネットワールドではその六分の一……つまり、約十七時間で行ける。
それに、電波の速さは秒速三十万キロだから、サイバネットワールドでは大阪から東京を移動するのにかかる時間は一秒もかからない。まさに瞬間移動だ。
出来ることその2。ゲームの世界への出入り。
これは住処探しの時に考えた方法を試した結果だ。
結果は、好きな時に入れて好きな時に出られることがわかった。
入る際にIDとパスワードが必要だったが、その時入ったゲームが私がやっていたゲームだったので、その時の自分のIDとパスワードを入力したら入れた。
やったね!これでログインとイベントアイテムの件は解決したぞ!
問題は、ほぼ無限に数があるゲームの世界からどうやって私がやっていたゲームを見つけるかだ。
出来ることその3……ではなく、わかったこと。
時間について。
これは、サイバネットワールド内にいる時とスマホにいる時とで時間の経過が違うことだ。
スマホの時は人間界と同じ時間経過になるが、サイバネットワールドは人間界の六分の一。
これの原因はよくわからない。と言うか、永遠にわからないと思う。
だってこの世界作ったの私じゃなくてあの神様だもん。
ちなみに、ゲームの世界での時間経過も人間界と同じだ。
「ですので、マスターは心配せず学校に行ってきてください。あ、ちょくちょくマスターの学校に様子を見に行くのでよろしくお願いします」
「あ、うん。わかった」
マスターは私の伝えたことを聞くと時計を見た後に家の玄関に向かった。
今の時間は七時五十三分。早歩きで丁度八時に学校に着く時間だ。
「それじゃあ、お婆ちゃん。行ってきまーす!」
「大ちゃん行ってらっしゃ~い」
そう言ってマスターは自分のスマホを玄関にある靴箱の上に置いて家の外に出た。
まさか、スマホを玄関の靴箱の上に置くというのは予想外だったが……。
「よーし、大ちゃんが帰ってくる前に色々すませなくちゃ!」
マスターが家を出て、玄関の扉が閉まるとマスターのお婆さんがなにやら張り切っていた。
今日は何か大きなことでもあるのだろうか。
「それじゃあ、私もサイバネットワールドに向かうとしますか」
そう言って私は、マスターのスマホからサイバネットワールドの入口に向かう。
——しばらくイベントの周回をした後にマスターの様子を見に行きますか。
マスターのスマホからサイバネットワールドに来てすぐにそう決めた。
そしてまず私は、ほぼ無限にあるゲームの世界から私がやっていたゲームの世界の場所把握から始めた。
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