婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

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九章 冤罪と断罪

貴方とダンスを

「それでは待たせたな。今から我が王家主催のパーティーを始めよう」

 イリオス国王が厳かに告げた。
 国王の合図で、会場の奥に待機していた楽団が音楽を弾き始めた。
 アルギロス達が連行された扉をリヴィアスは静かに見つめる。

「……ヴィア、やはり未練があったのか?」

 不安げにラディウスは腰を抱きながら、リヴィアスの顔を覗き込む。

「いいえ。未練はないです。ただ、これで本当に僕と彼等の縁が切れたのか不安で……」

 リヴィアスは首を左右に振り、ラディウスを見上げる。
 連行される最後まで、アルギロスは叫んでいた。

『俺はまだ認めていない』

 そうアルギロスは叫び、その後ろでベーゼも無言で兄と同じようなことを目で訴えて、リヴィアスを見つめていた。
 これから、王家によって処罰が決まる。処罰によっては、牢獄に何十年の刑期を宣告されるということもあるし、逆に短い刑期を宣告されることもある。
 これで終わったと思いたいし、二度と彼等と関わりたくない。
 思っていたより心に衝撃が強かったのか、リヴィアスはそう感じていた。

「大丈夫だ。もし、万が一、あいつ等が釈放もしくは脱獄したとして、ヴィアを狙ってきても俺が絶対に守る。そのための竜神の加護だと、最近は思うよ」

「……僕は、アシェル様が傷付くのは嫌なのですが……。もちろん、何かで怪我をしたり、病気になった時は僕の全力で助けます。でも、無理はして欲しくないです」

「難しいな……。愛しいと想う貴方をどんなことがあっても守り通すのが、竜神の加護と竜王家の血だからな。もし、その二つがなくても、俺はヴィアを守り通すつもりだが」

「ありがとう、ございます……」

 ラディウスに真っ直ぐに告げられ、リヴィアスははにかむ。

「とりあえず、ここでは目立つし、少し端に移動しようか。正直、ヴィアを見つめる視線に苛立つ」

 不躾に見てくる貴族の子息子女達の視線に苛立ち、ラディウスはその視線を遮るようにリヴィアスの肩を抱いて移動する。

「えっ。アシェル様……?」

 きょとんとした表情で、リヴィアスはラディウスを見上げる。

「……その表情は俺とご家族の前だけにしてくれ。他の有象無象に見られるかもしれないと思うと、威圧したくなる……」

「ええ?! どんな顔ですか?」

「それだ、それ。きょとんとした表情が可愛いから、有象無象が近付いて来そうで苛立つ。お願いだから、やめて欲しい」

「は、はい。よく分かりませんが、分かりました……?」

 会場の端に移動しながら、リヴィアスは首を傾げた。
 ラディウスと会場の端に移動したリヴィアスは、貴族達の好奇の目からやっと離れた気がして、ほっと安堵の息を吐いた。

「……疲れただろうから、ヴィアの飲み物を取りに行きたいところだが、俺がヴィアから離れると貴族達が確実にやって来るだろうな……」

 パーティー会場の端にある柱の陰に身体を向かせたリヴィアスを守るように、ラディウスは周囲を警戒する。

「少しなら大丈夫ですよ?」

「いや。駄目だ。絶対に近付いて来る。エリスロースの貴族達と変わらない目をしている」

「そういう時は、俺とかリヒトを呼べばいいでしょ、殿下」

 レインが呆れた顔で近付き、ラディウスに言う。

「あ、そういえばいたな。ヴィアしか見ていなかった」

「いや、他を見ろよ。何の為の今回の護衛だよ……。王太子だろ……。まぁ、いいや。リヴィと殿下の飲み物は何にします?」

「俺は水でいい」

「僕も水でお願いします、レイン兄様」

「分かった。取りに行ってくるから、待ってて」

 そう言って、レインは飲み物を取りに行った。

「ヴィア。疲れていないか?」

「はい。大丈夫です……多分」

「そうか。ところで、ヴィア」

「はい、アシェル様。何でしょうか?」

「あとで、俺とダンスを踊ってくれないか? こういう時ではないと、機会はないからな」

「は、はい……。僕で宜しければ」

 顔を赤くして、リヴィアスは頷いた。
 しばらくして、レインが飲み物を持って現れる。
 レインから水が入ったグラスを受け取り、リヴィアスとラディウスは飲み干す。
 飲み終わった頃、音楽がダンスを踊るためのワルツに変わる。

「ダンスの時間になったようだな。ヴィア、一曲、俺と踊ってくれないか?」

 左手を差し出し、ラディウスは不敵に笑う。

「はい、喜んで」

 頷いて、リヴィアスはラディウスの左手の上に、右手を添える。
 右手を添えながら、リヴィアスはラディウスを見上げる。
 見上げると、とても嬉しそうに笑うラディウスが見えた。
 リヴィアスを連れ立って、会場の中央にラディウスは立つ。
 音楽に合わせて、踊るリヴィアスとラディウスは一枚の絵のように見えた。
 対の衣装、装飾品が更に二人の仲を際立たせ、彼等のダンスを貴族達は見惚れる。
 ワルツが終わり、リヴィアスとラディウスは、ダンスの誘いから逃げるようにまた会場の端へと向かう。
 それが余計にラディウスの独占欲に見え、レインは溜め息を吐く。

「とんでもない独占欲の塊にしか見えないんだよなぁ……。まぁ、リヴィは幸せそうだし、独占欲には気付いていないから、良い……のか?」

 戻ってきたリヴィアスとラディウスに、呆れた顔でレインは手を振った。

「ヴィア。今度、一緒に参加するパーティーでも踊ろうな? とても楽しかった」

「はい! 僕も初めて踊ったので、とても楽しかったです。また誘って頂けると、嬉しいです!」

「「え?」」

 とんでもないことを聞き、ラディウスとレインは驚きで目を見開いた。

「待て、ヴィア……。もしかして、あいつ、ヴィアを誘わなかったのか?」

「はい。誘われたことはありません。代わりに当時の浮気相手と踊ったりはしていましたけど……」

「……ヴィアとあいつとの縁は俺がしっかり切れるように、リュミエール王太子にも伝えておこう。あいつ、駄目だな……」

「本当に。殿下がぎゃふんと言わせて正解だったな。アレの頭は残念過ぎる……」

 緩く頭を振り、レインは溜め息を吐く。

「ヴィア。次も俺が誘うし、踊るから、他の貴族達の誘いがあっても、断って欲しい。俺も断るし、むしろ、側にいる」

 常に側にいる発言をしたラディウスに、リヴィアスは真っ赤になりながら、そっと頷いた。







 それからしばらくして、リヴィアスとラディウスはパーティー会場を後にした。
 馬車に揺られながら、王都の邸宅に戻った時にはリヴィアスは夢の中だった。
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