婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

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十章 学園復学

学園復学

 ラディウス達、エリスロース竜王家が自国へ帰る日になった。

「……ヴィアの制服姿が見たかった……!」

 リヴィアスをぎゅっと抱き締めて、ラディウスは嘆いた。

「あ、あの、アシェル様……制服姿を見て、何を……?」

 思わず、リヴィアスは聞く。

「普段の装いも可愛いが、制服姿も可愛いんだろうな……と、もうそ……ごほん。想像してしまって……」

「ラディ、気持ちは分かるが変態なことを言うな。竜王家の教育が疑われるだろ」

「……離れたくない……」

 再び、リヴィアスをぎゅっと抱き締めて、ラディウスは嘆く。
 レイディアンス大公家の私設魔術師達によって、レイディアンス辺境領に転移魔法で戻ったレイディアンス大公家の面々は、しばらくリヴィアスと離ればなれになるラディウスとカエルム国王、ミーティア王妃が嘆く声を聞いていた。

「まぁ、しばらく会えなくなるのは残念だなぁ……。リヴィちゃん、俺達にも手紙書いてね。それと、エリスロース竜王国の関連で何かあったら報告してくれ。すぐ動くから」

「はい、ミーティア王妃陛下」

「まだ仮婚約だし、結婚もまだだから仕方ないけど、早くリヴィちゃんにお義母様って呼ばれたいなぁー」

「早くラディに太陽神の加護を与えて頂くしかないね。私もお義父様と呼ばれたいからね。リヴィちゃん、何か困ったことがあれば、遠慮なく私達にも相談して欲しい。貴方に何かあれば、私達も悲しいからね」

「はい、カエルム国王陛下」

 微笑んで、頷くリヴィアスの頭を国王夫妻が優しく撫でる。
 つい比べてしまうが、元婚約者一家はこのようなことをしなかった。
 時折、ウィキッド侯爵――子爵が労るように肩を優しく叩いてくれるくらいだった。
 リヴィアスは気持ちを切り替えるために、頭を振る。
 ウィキッド子爵には会うかもしれないが、もう会うことはない元婚約者達を思い出しても仕方がない。
 前を向くためにも、元婚約者とラディウス達を比べない。
 何より、ラディウス達に失礼だ。
 そう思い直し、リヴィアスはラディウスを見上げた。

「学園がお休みの週末の時に、アシェル様のご都合が合えば、会って下さいますか……?」

 自分より背の高いラディウスを自然と見上げる形になり、リヴィアスは上目遣いになった。
 きらきらと輝く天色の目が、宝石のアクアマリンのようにラディウスには見えた。

「もちろん。その時はすぐに手紙で連絡する。それと、ヴィア。これを受け取ってもらえるか?」

 懐から小さな箱を取り出し、ラディウスはリヴィアスの目の前で開ける。
 開けられた箱の中に、イヤーカフが現れた。
 耳朶から耳の縁にかけて装着する型のイヤーカフで、掛けるとちょうど耳朶の辺りに、ラディウスの目の色と同じ色の宝石が光に反射して輝いた。
 パーティーで着けたイヤリングと付けると、繋がるようなデザインのものになっていることに気付く。

「アシェル様……これは……?」

「とりあえず、仮婚約の贈り物。俺と対になっている」

 ラディウスは笑みを浮かべて、自分の左耳に指差す。
 つられるようにリヴィアスの目は、ラディウスの左耳を見る。
 同じ形のイヤーカフがあり、リヴィアスの目と同じ色の宝石が輝いている。

「これで、多少は王立タイバス学園でも牽制出来るかな、と思って。ちなみに宝石に見えるかもしれないが魔石だ。昔、エリスロースのダンジョンで倒した魔物から手に入れた魔石なんだ。俺の目と同じ色だったから、いつか、伴侶になる人に渡したくて持っていたんだ。この魔石には俺の魔力を込めているから、何かあった時にヴィアを守ってくれるし、俺にも分かるようになっているし、転移されるようにした」

 そっと目の前に見せ、ラディウスはリヴィアスを見つめる。

「ヴィア、受け取ってもらえるか?」

「は、はい……。嬉しいです。ありがとうございます」

 はにかむように微笑んで、リヴィアスは頷いた。

「あの、アシェル様のイヤーカフの、僕の目の色の宝石は魔石ですか?」

「ああ。これはこの前、イヤーカフを注文した時にたまたま見つけたものだ。ヴィアの目の色みたいで、目を奪われてしまって、衝動買いした」

「その魔石に、僕の魔力を込めてもいいですか?」

「いいのか?」

「はい。僕も、僕の魔力でアシェル様のことをお守り出来ればと思って……」

 笑顔でリヴィアスが告げると、ラディウスは嬉しそうに頷き、イヤーカフを外し、渡した。
 ラディウスのイヤーカフの魔石の部分に、リヴィアスはゆっくりと魔力を込める。

(僕が離れている間、どうか、アシェル様をお守り下さい……)

 両手で包むようにイヤーカフを持ち、目を閉じて祈るように魔力を込める。
 水色と白色が綺麗に混ざったリヴィアスの魔力が、イヤーカフの魔石に吸い込まれ、輝く。
 魔力を込めているリヴィアスの姿を、ラディウスは魅入られるように見つめる。
 その姿が、慈愛に満ちた女神のようで、魔力の輝きで更に神秘的に見える。
 魔力が上手く込められたことを確認し、リヴィアスはラディウスにイヤーカフを渡した。

「ありがとう、ヴィア。大事に常に身に着けておく」

「僕も、常に大事に身に着けますね」

 お互い笑顔で言葉を交わし、ラディウス達はエリスロース竜王国へ帰っていった。










 次の日、リヴィアスは王都のレイディアンス大公家の邸宅で、学園に通う準備を始めた。
 辺境領の領主でもある父ミストラルと母ステラ、兄グレイシアは領地へ戻り、リヴィアスと弟アイシクルはこれから学園に通うので、王都の邸宅に住む。
 リヴィアスは学園に持っていくものを鞄に入れていく。
 左耳には、ラディウスからの贈り物のイヤーカフを着けている。
 学園にも着けていく。
 久々の学園なので、少し緊張している。
 あの婚約破棄以降、一度も通学せず休んでいたため、しばらくはリヴィアスの話題が出るのは誰にでも分かるくらいだ。

「……元婚約者に婚約破棄されて、冤罪を掛けられて、かと思ったら、隣国のエリスロース竜王国の王太子殿下と仮婚約だから、この約三ヶ月は凄いよね……」

 自分を客観的に見ても、濃密な三ヶ月だったとリヴィアスも思う。

「リヴィアス様は、隣国に通用する程の魅力的なお方ということですね。流石、俺達の主人です」

 自慢気な表情で、アンブラは胸を張った。
 隣でアクアも満足気に大きく頷き、ルーチェは苦笑した。

「まぁ、私としてはリヴィ様のお相手は、あの不貞最低野郎より、断然、王太子殿下ですけどね。並んで立たれても、リヴィ様の美しさに負けてませんでしたからね。あの不貞最低野郎は負けまくってましたし」

「リヴィアス様の美しい御髪を整えさせても下さらない、褒めもしない最低な不貞最悪子息でしたからね。その点、王太子殿下はリヴィアス様の御髪にすぐに気付いて褒めて下さり、整えることも解禁して下さいましたからね。私の中で株は鰻登りです」

「皆は、アシェル様に対して好印象なんだね。良かった……」

「当たり前です。リヴィアス様の笑顔が、不貞馬鹿野郎の時と全く違いますからね。それだけでも大賛成ですよ」

 アンブラが言うと、ルーチェとアクアが同意するように大きく頷いている。

「そう、だね……。気持ちの持ち方は全く違うかな……。凄く尊重して下さってるのが分かるし、贈り物も初めてもらったよ」

 照れるように笑い、リヴィアスも頷く。

「そういえば、そうでしたね……。それだけでも、俺の中で王太子殿下は好印象ですよ」

 微笑むアンブラに、リヴィアスは尚も照れるような表情を浮かべる。とても気恥ずかしい。

「リヴィアス様。今から学園ですよね? 準備は終わりましたか?」

 アクアが確認するようにリヴィアスに尋ねる。

「うん、準備は出来てるよ」

 鞄を持ち、リヴィアスは頷いた。
 学園用の鞄は、母ステラ特製のマジックバッグで、リヴィアスの個人的なマジックバッグと中が繋がっている。
 これで、学園で何かあっても、リヴィアスは薬の対処が出来る。

「では、タイバス学園に参りましょう、リヴィアス様」

「うん! 久々で緊張する……」

 そう言って、リヴィアスはレイディアンス大公家の馬車にアイシクルと共に乗って、王立タイバス学園へ向かった。
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