婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

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十章 学園復学

閑話10 平民に戻った少女の決意(モノリス視点)

 私がアル様と浮気をし、リヴィアス様の功績を自分の功績だと訴え、冤罪で傷付けた。
 このことで、プサリ男爵令嬢の養女としての立場と薬師見習いの資格を剥奪。今後も、貴族の養女になることを認めないと王太子殿下と王家の命令で、私は平民にまた戻されてしまった。
 パーティーの後、王家から尋問で、私は一週間くらい拘束された。
 王家からリュミエール王太子殿下と、リヴィアス様のお父様のミストラル大公殿下も尋問に来ていた。
 そこで、リヴィアス様に何故、冤罪を掛けたのか、動機を聞かれた。
 聞いてくるミストラル大公殿下の目が鋭くて、冷たくて、怖い。
 自分の子供を冤罪に掛け、婚約者と浮気をしたのだから、怒るのは分かるけど、そんなに酷いことなの?
 ただ、リヴィアス様に近付くために、婚約者のアル様と浮気をして、アル様との仲をギクシャクさせるために冤罪を掛けただけなのに。
 それだけなのに、何が悪いの?
 私は誰かを殺したとか、怪我をさせたとかしていないのに。
 ただ、浮気をしただけ。
 ただ、冤罪を掛けただけ。
 誰も傷付けてない。
 アル様のお母さんみたいに、リヴィアス様の薬を勝手に闇市に売って、お金儲けしていない。アル様の子供が出来たと、国王陛下達――誰にも報告しなかったということもしていない。
 アル様の弟みたいにリヴィアス様を拉致しようとした訳でもない。
 アル様みたいに、浮気をして、浮気をした他の女の人と子供を作った訳でもない。
 私はリヴィアス様に、そんなに酷いことをしていない。

 リュミエール王太子殿下とミストラル大公殿下に、私はそう言うと睨まれた。

「……自分の身に置き換えても、そう言えるか? 小娘」

 優雅に足を組んで、椅子に座って、両腕を組んだミストラル大公殿下が私に問う。
 問われた私は、リヴィアス様の状況を自分に置き換えてみる。

 ……私も、酷いことをした……?

 婚約者が浮気をして、浮気相手と一緒になって、冤罪を掛ける。
 リヴィアス様はどんな気持ちだったのだろう……。
 私だったら、怒って、相手と浮気相手のところに殴り込みに行く……と思う。
 そのくらいの怒りだ。
 じゃあ、リヴィアス様は?
 優しいリヴィアス様は、きっと自分の心に溜め込む気がする。
 ほとんど話したことがない私でも、リヴィアス様のことは想像がついてしまう。
 短い間だったけど、リヴィアス様の様子はいつも見ていたから。
 もし、アル様の浮気相手ではなく、私がリヴィアス様の友達だったら、家族や親戚だったら、自分の心に溜め込むリヴィアス様の代わりにきっと怒る。
 それを今、ミストラル大公殿下とリュミエール王太子殿下は私にしている。

 ああ、私、最低だ……。ごめんなさい、リヴィアス様……。

「……ごめんなさい……。私、酷いことをしたと思っていなくて……」

「口先だけなら、いくらでも言える。反省しているのなら、もう二度とあの小僧の家族に近付かないことだな。利用されるぞ」

「利用……?」

 冷たい目のまま、ミストラル大公殿下は私に告げる。
 どういう意味? アル様達が私を利用?

「それぞれ一人ずつ尋問したが、浮気以外の自分達が犯した罪をお前に擦り付けようとしていた。平民のお前に唆されたとな」

「時系列が全くと言っていい程、ずれているのに、反省もせず、君に擦り付けようとしているから、一つずつ擦り付けようとしている罪を時系列と共に潰したが……。後々、釈放した時に君に接触しようと考えるかもしれない。捨て駒として」

「平民から貴族。貴族から平民になったから、お前を簡単に利用出来ると思っているのだろう。こうも屑だと、あいつらは死んでも治らないだろうな」

「そこでだが、君に提案だ。選ぶ、選ばないは君の自由だ。聞くか?」

 リュミエール王太子殿下が笑う。
 それが私には死神にも、神にも見えた。

「……その提案は、受けたことでリヴィアス様への償いに繋がりますか?」

「それは君次第だ。君がこれからどう選び、どう向き合うかによるね」

 リュミエール王太子殿下の笑顔を見て、私は確信した。
 殿下の提案は、リヴィアス様への償いに繋がる。
 それなら、私の答えは決まった。

「リヴィアス様への償いに繋がるのなら、お受けします。殿下の提案を聞かせて頂けますか?」

「今から一年間。高位貴族の令嬢、侍女、護衛の教育、恋愛の気持ちを抱かない思考を施す。名を捨て、二年後以降にラディウス王太子と恐らく結婚するであろうリヴィアスを主人として仰ぎ、侍女として、エリスロースへ共に行け。君を恋愛の気持ちを抱かない思考に教育することで、結婚出来ないものと思え。場合によっては、リヴィアスを守ることで命を落とす可能性もある。受けるか?」

 それは、つまり、リヴィアス様の侍女で護衛になり、恋愛は出来ずに、私の夢の、貴族の人と幸せな結婚は出来ないことになる。

「……選ばなかったら、どうなりますか?」

「平民に戻るだけだ。リヴィアスの特効薬で救われた国民達は多い。そのリヴィアスを貶めたことで、生涯、非難を受けるだろう。王家もレイディアンス大公家も何もしない」

 リュミエール王太子殿下の言葉を聞いて、私は俯く。
 王家もレイディアンス大公家も何もしない。
 それは、何もしなくても、人々からの私刑をされる可能性があるということ、だと思う。
 私が住んでいた王都の人達の情報網は凄い。
 その情報網で、あっという間に、私がしてしまったことは、この数日で広まり、実家の家族達は肩身狭い思いをすることになる。
 男爵家の家族だった人達も、私のせいで肩身狭い思いをさせてしまっている。
 それは申し訳なく思う。
 けど、そこでふと気付く。
 もし、殿下の提案を受けたら、実家も、男爵家も、王家とレイディアンス大公家に守ってもらうことは出来ないかな……。
 自分のことは棚上げしてと思われるかもしれないけど、私のせいで家族や男爵家の人達に辛い思いをさせてしまうのは、今の、自分がしてしまったことに気付いた私には申し訳なく思ってしまう。
 私がしてしまったことが、こんなにも大きくなり、たくさんの人達に迷惑が掛かるなんて、思いもしなかった。

「……あの、もし、殿下のご提案を受けたら、実家とプサリ男爵家の人達を、人々の非難から守って下さいませんか……?」

「そうだな。そのくらいのことはしよう。君はリヴィアスを守ろうとして、逆に家族とプサリ男爵家を人質にアルギロスから脅された、という嘘と、真実を両方流そう。まぁ、君よりアルギロス達の罪の方を大々的に流せば、君の話は流れるだろうがな」

「ありがとうございます。あの、でも、何故、リヴィアス様の侍女に私を選ぼうとしているのでしょうか。私、リヴィアス様に酷いことをしたんですよ……?」

「君、加護を持ってるだろ? 珍しい加護」

 リュミエール王太子殿下が私の顔を見て、ニヤリと笑う。

「――盾神の加護。全てではないが、物理も魔法も攻撃を防ぐ加護。リヴィアスの身を守るのに持ってこいの加護だ。王都の中で腐らせるより、守るために使ってもらいたくてな」

 リュミエール王太子殿下の言葉に、私は目を大きく見開く。
 家族にも、プサリ男爵家にも、アル様にも黙っていた加護をどうして、リュミエール王太子殿下は知ってるのだろう。

「だから、先日のパーティーで言っただろう? 我が王家の査問機関を舐めるなよ、と。調べはついている。それに、家族達も知らないのだろう? 尚更、リヴィアスを守るには持ってこいだ。どうだ? これ以上ない程のリヴィアスへの償いに繋がるぞ。常に側であの子を守れる。まぁ、名も捨てることになり、望むような恋愛は出来ないが……」

 どうだ? と問われ、私は少し悩む。
 リヴィアス様への償いには、確かに繋がる。
 それも間近で確認出来る。
 でも、私の名前は別のモノに代わり、私が夢見るような恋愛は出来ない。
 それよりも、恋愛の気持ちを抱かない思考に教育って、何だろう?

「ああ、別に怖いものではないぞ。酷い恋愛の話を散々聞かせたり、見せたりして、恋愛は嫌だと思ってもらったり、何よりリヴィアスに対して恋愛感情を抱かせないためのお話し合いだな。王太子だからな、非人道的なことはしないぞ」

 笑顔で言われて、とっても怖い。
 でも、私には選択肢がないような気がした。
 このまま、提案を受けず平民に戻るよりは、リヴィアス様への償いになる侍女の方が、これ以上、罪を犯す選択をしない気がする。
 平民に戻り、王都の人達の非難をずっと受け続け、それこそもっと悲惨なことになってしまう気がする。
 リヴィアス様を逆恨みするようなことをしてしまいそうな気がする。
 それなら、やっぱり、提案を受けた方がいい気がした。
 今まで誰にも言わなかった、私の加護でリヴィアス様を守ることが、償いに繋がるなら。

「――殿下のご提案、お受けします。リヴィアス様を私の加護で、お守りします」

 大きく頷き、私はリュミエール王太子殿下とミストラル大公殿下を見据えた。

「よく決めてくれた。早速、明日から教育をしよう。期限は一年だからな。辛いぞ。明日から名前も変わるからな」

 リュミエール王太子殿下はニヤリとまた笑う。

「が、頑張ります……」

「一年後、私がテストしよう。それによっては、平民に戻す。いいな? モノリス」

 ミストラル大公殿下が初めて、私の名前を呼んだ。
 多分、名前が明日から違う名前になるから、モノリスとしての最後の慈悲のように感じた。











 リュミエール王太子殿下の言う通り、教育は本当に過酷で、辛かった。
 勉強で頭はいっぱいいっぱいになるし、護衛のための基礎練習や応用練習も身体がボロボロになるくらい疲れた。
 恋愛なんてしたくないと思う程の話を聞いたり、見たり、幻滅したりすることもあり、恋愛の気持ちを抱かない方が楽、と思うくらいだった。
 一年後、ミストラル大公殿下から合格をもらい、リヴィアス様に再会した時、何故かすぐにモノリスとバレてしまった。
 けど、私を全く恨んでなくて、むしろ、とても優しく接して下さるリヴィアス様を心からお守りしたいと思った。
 が、誤算だったのが、恋愛の気持ちを抱かない思考というのを身に着けたのに、リヴィアス様とラディウス王太子殿下の仲睦まじい姿を常に見ることで、お二人を応援する気持ちと、邪魔をしようとする者達を排除しようと考える気持ちが溢れてしまい、暴走しそうになったのは本当に誤算だった。







※いつも読んで下さり、ありがとうございます!
モノリスの結果は、悩んだ末の結果です。
処刑も考えたのですが、浮気をしたり、冤罪を掛けたとはいえ、元侯爵家がしたことよりは罪は軽い(冤罪は軽くはないですが……)それなら、罪を償うルートにしようとギリギリまで悩んだ末こうなりました。
賛否あるかもしれませんが、処刑に近いルートまっしぐらの元侯爵家と、贖罪ルートのモノリスで分かれた、それぞれの道も書く予定です(話としては先になりますが……)


そして、お気に入り登録がいつの間にか3600人超えていて、驚きました!
読んで下さり、登録して下さり、本当にありがとうございます!
嬉しくて、仕事の疲れも吹っ飛んでいます!
BL大賞も、1位のままでビビってます。
このまま1位で……! とお祈りしてます……。
読んで下さり、お気に入り登録も、感想も、投票も本当にありがとうございます!
このまま月末まで、ほぼ毎日更新をしていく予定ですので、どうぞ宜しくお願い致します!
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