婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

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十一章 恋敵?

隣国の公爵家の令嬢

 まだ興味の視線が集中し、リヴィアスは小さく溜め息を吐く。
 復学してそろそろ一ヶ月経つ。
 弟のアイシクル、従兄妹のルミナスとオーロラ、ラディウスから贈られたイヤーカフのお陰なのか、リヴィアス自身に何かがある訳ではない。
 それでも、興味の視線が未だに纏わりつく。
 時々、一つ上の学年の生徒から、ねっとりとした視線を感じる。気のせいかもしれないが。
 ルミナスとオーロラの計らいで、食堂の奥に設けられた王族専用の個室でリヴィアスも食事させてもらっているため、食事中に突撃はない。
 それだけで、ほっとする。
 アイシクルは婚約者のマリンと仲睦まじく食事をしているので、リヴィアスも邪魔をする気はない。
 このまま幸せになって欲しいと兄として、願っているくらいだ。邪魔をする気は一切ない。

「……何というか、一つ上の学年の生徒達は、駄目で元々といった意気込みで、リヴィに一回の機会を狙ってるみたいだね」

 ルミナスがじっと他の学生達がいる、食堂がある方向を見ながら、眉を顰めて呟く。

「え?」

「婚約者のラディウス王太子殿下と離れていることで、寂しいであろうリヴィに、浮気相手でも構わないから、愛が欲しいみたい。馬鹿じゃないかな」

 ルミナスが眉間に皺を寄せて、食堂がある方向を尚も見る。

「……僕が、浮気すると思ってるの……?」

 ルミナスの話に、リヴィアスは困惑と共に不快な気持ちになる。

「浮気され続けて傷付いたリヴィが、何で逆にすると思っているのかしら。ウチのリヴィはそんな人ではないわ。それに、準王族に対して不敬だわ」

 ルミナスと同じく眉間に皺を寄せて、オーロラが持っていた扇を強く握り締める。

「一度、学園にラディウス王太子殿下にお越し頂いて、威圧してもらった方が良い牽制にならないかしら」

 金色の目を細めて、オーロラが呟く。

「いいね。父上と兄上、ミストラル叔父上に相談して、ラディウス王太子殿下を学園に招待してみる? 婚約者リヴィはこんな学園に通ってますよ? って。僕は賛成!」

「爵位の低い貴族籍の教師までリヴィに秋波を送っているからね。高位貴族の教師はミストラル叔父様が怖いからそこまでじゃないけどね。教師に関しては学園長が牽制してくれてるけれど……要相談だわ」

「ついでに例の公爵令嬢も来るみたいだよ? 一週間後に」

「そうなんだね……」

 立て続けに色々と聞いたリヴィアスは苦笑する。
 もう、お腹いっぱいだ。

「とにかく、相談はしてみるよ。リヴィもミストラル叔父上に報告しておいてね」

「うん、分かった……」

 困ったように頷き、リヴィアスは少し冷めたスープを飲んだ。








 そして、一週間後。
 ルミナスの話の通り、隣国のエリスロース竜王国から公爵家の令嬢が留学して来た。
 それも二人の令嬢だった。
 同い年の令嬢だという彼女達の名前は、プリズム・フォグ・サイクロンとデルフィーニ・フォグ・サイクロンという。
 ルミナスの話だと、デルフィーニがサイクロン公爵夫人との子で次女、プリズムが長女で養女だという。
 同い年で養女なのは、先にサイクロン公爵家に来たから長女なのかとリヴィアスは納得した。が、詳しい話を本人達から聞いた訳でもないので、先入観を持つのは失礼だとリヴィアスは感じ、聞くのはそこまでにした。
 デルフィーニがリヴィアス達のクラスに、プリズムが隣のクラスに編入となった。
 早速、デルフィーニから自己紹介が始まる。

「エリスロース竜王国のサイクロン公爵家より参りました、デルフィーニ・フォグ・サイクロンと申します。以後、お見知りおき下さいませ」

 タイバス学園の制服を身に纏い、瑠璃色の長い髪、紫色の目をしたデルフィーニは令嬢らしい笑みを浮かべ、カーテシーをしてクラスの生徒達に挨拶をした。
 カーテシーを解いた後、デルフィーニは教室の後方の窓側の席に座るリヴィアスを見て、口元に笑みを浮かべた。
 デルフィーニのアメジストのような紫色の目と合い、リヴィアスは不思議そうに天色の目を何度も瞬かせる。
 教師に案内され、デルフィーニは後方の廊下側の席へ座った。

「……リヴィを見ていたわね」

 小さな声でオーロラがリヴィアスに囁いた。

「……うん。何でだろうね……?」

 リヴィアスも頷き、不思議そうに小さく首を傾げる。

「……相手次第だよね。とりあえず、様子見だね」

 小さく息を吐いて、ルミナスも頷いた。









 学園の一日が終わり、リヴィアスはアイシクルと合流した。
 特にデルフィーニからの王族と準王族に対しての挨拶のみで、その他の声掛け等はなく、何事もなかった。
 ルミナス達から事前にサイクロン公爵家の令嬢の話を聞いていたアイシクルは、リヴィアスとルミナス、オーロラが心配で仕方がなく、合流して早々に今日の様子を聞きたがった。

「本当に特に何もなかったよ」

「肩透かしを喰らった気分だよ」

「挨拶は完璧だったわ。ただ、リヴィをたくさん見ていたのが気になるわ」

「え。リヴィ兄上を? 何でですか?」

「それが分かれば、対策が取れるけど、初日だから相手も動かないわよ。本当に噂通りの思い込みが激しい上に、可愛いものが好きなのかも分からないし。もし、噂通りなら、私だったら、一週間から一ヶ月の間に動くわ」

「そもそも、悪意があるのかどうかも分からないからね。とりあえず、気を付けながら僕達が一緒にいるしかないよね」

 肩を竦めて、ルミナスは苦笑する。

「ただ、もやもやしますね。相手の狙いが分からないから……」

 アイシクルが心配そうに兄と従兄妹を見る。
 三人とも、アイシクルと比べて背も低く、双子とリヴィアスは顔立ちが少し似ている。
 十六歳の少年なのに、リヴィアスもルミナスも綺麗で可愛く、美しく、オーロラも美少女で、密かに学園内に三人の非公式の愛好会のようなものがあるのをアイシクルは知っている。
 特に兄であるリヴィアスは『月華の君』と呼ばれるくらいに美しいから、余計に変な連中に密かに狙われている。
 レイディアンス大公家の影もいるし、アイシクル、ルミナス、オーロラも目を光らせているし、最近はエリスロース竜王家の影も護衛にいるようだ。
 それでも、アイシクルは不安だ。

(あの馬鹿野郎の弟のせいだ……)

 前の王家のパーティーで、ウィキッド子爵の次男がリヴィアスを拉致しようとしたことが、アイシクルの中で尾を引いている。
 あの時、気付いたのに身体が動かなかった。
 兄を失うかもしれない不安で、反応が遅れた。
 ラディウスがいなかったら、リヴィアスと一生会えなかったかもしれない。

「何かあったら、僕とオーラでアイスに伝えるよ。リヴィは殿下のイヤーカフをずっと身に着けておいてね」

「ルミナ兄上、オーラ姉上。リヴィ兄上をお願いします。呼んでくれたら、すぐ行きますから」

 頭を下げて、アイシクルは従兄妹達に懇願した。

「ルミナと一緒にリヴィの側にいるから」

「オーラと一緒にリヴィの側を離れないから」

 従弟のお願いに、ルミナスとオーロラはアイシクルの肩を左右それぞれ優しく叩いた。









※いつも読んで下さり、ありがとうございます!
 いつの間にか、お気に入り登録が3800人超えていまして、非常に驚いてます!
 ありがとうございます!!
 楽しく読んで頂けるように更新、頑張りますので、これからも宜しくお願い致します!

 余談ですが、語彙力がない故に、滅茶苦茶検索した結果、どうにか捻り出した『一回の機会』は所謂、『ワンチャン』です。閑話4と今回も出て来た言葉で、異世界が舞台なので、流石にワンチャンとは書けないので、凄く検索しました……。
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