婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

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十二章 噂の真実

王女の怒り

「……全く。とんでもないことをしてくれましたわね、プリズム」

 項垂れるプリズムを冷めた表情でデルフィーニが見下ろす。
 広げていた扇を綴じ、溜め息を吐く。

「リヴィアス卿、ラディウス殿下。本当に我が公爵家の者がご迷惑をお掛けし、申し訳ございません……」

 深く頭を下げ、デルフィーニは眉をハの字にする。

「デルフィーニ嬢が謝らないで下さい。貴女は僕を守って下さいました。僕の方こそ、お礼を言うべきところです。ありがとうございます、デルフィーニ嬢」

「そうだな。私の婚約者を守ってくれたこと、礼を言う。ありがとう」

 お礼を言うリヴィアスの腰を抱き寄せ、ラディウスも礼を述べた、その時。
 教室の外からたくさんの足音が聞こえ、勢い良く、アイシクルとルミナス、オーロラが教室に飛び込んできた。後ろには、タイバス学園の警備をしている騎士達と、ルミナスとオーロラを護衛する王城の騎士達が立っている。

「リヴィ兄上! 大丈夫?! 怪我はない!?」

「アイス! 僕は大丈夫だよ。ルミナとオーラも来てくれてありがとう」

「良かった……って、ラディウス王太子殿下?!」

 微笑むリヴィアスにほっと安堵の息を漏らそうとして、隣に違和感なく立つラディウスに気付いて、アイシクルが叫ぶ。

「……うわぁ……。過保護イヤーカフが発動しちゃったんだ……」

 呆れた声音で、ルミナスはリヴィアスの左耳のイヤーカフを見た。
 ルミナスの言葉を聞き、にやりと不敵に笑って、ラディウスはリヴィアスの左耳のイヤーカフに魔力を注ぐ。
 更に何かを付与したようだ。

「……更に何か魔法を追加で付与したようよ……」

 同じく呆れた顔で、オーロラもリヴィアスの左耳のイヤーカフを見つめた。

「リヴィ、ラディウス王太子殿下、それとデルフィーニ嬢。この状況を詳しく聞かせて頂けますか?」

 ルミナスは一度、咳払いをしてリヴィアスを守るように抱き締める……というように見せているラディウスとリヴィアス、デルフィーニ、プリズムを順に見た。

「リヴィアス卿の代わりに、わたくしが説明させて下さいませ。サイクロン公爵家の一員として、大変、恥ずかしく、申し上げにくいことなのですが、長女プリズムは、ラディウス王太子殿下に懸想しているようで、婚約者として選ばれなかったことで、リヴィアス卿に逆恨みをしたようですわ。その結果、リヴィアス卿を使われていないこちらの教室に閉じ込め、魔法で攻撃しようとしたところをわたくしとラディウス王太子殿下が守りに来たところです。プリズムが項垂れているのは、ラディウス王太子殿下に振られたからですわ。立ち直る前に拘束頂けますか?」

 ちらりと警備の騎士達にデルフィーニが目を向けると、暴れないようにと魔法封じの拘束具でプリズムを拘束する。

「……成程。それでリヴィの危機を察知して、ラディウス王太子殿下がいらしてる訳ですね。リヴィを守って下さり、ありがとうございます。殿下、デルフィーニ嬢」

 ルミナスが眉を寄せてプリズムを見た後、ラディウスとデルフィーニに目を向け、頭を下げた。

「詳しい動機は後程、調べましょう。ラディウス王太子殿下、デルフィーニ様。プリズム様は我が国の査問機関で捜査しても宜しいでしょうか?」

 オーロラもルミナスと一緒に頭を下げ、ラディウスに問い掛ける。

「それは構わないが、良ければ、我が国の捜査員を派遣しても構わないだろうか? 我が父、エリスロース竜王国の国王とサイクロン公爵にも報告しないといけないからな。一緒に捜査した方がこちらも手間が省ける」

 ラディウスの『サイクロン公爵』の言葉に、拘束されたプリズムの肩がびくりと震える。

「もちろんです。短期間で両国で共有出来ますから、その方が助かりますわ」

 頷いて、オーロラはにこやかに笑い、冷ややかな金色の目でプリズムを見下ろす。

「早くなる分、私達の大事な従弟を傷付けようとした者を裁く時間も早くなりますからね」

 オーロラの言葉に、プリズムは小刻みに震える。

「オーラ、威圧しないで」

 オーロラの威圧に気付き、リヴィアスは小さく声を掛ける。

「あら、何で? そこの令嬢は私達の大事な従弟――ブラカーシュ王国の準王族を傷付けようとしたのよ? 隣国の公爵家の養女が」

「だから、だよ。アシェル様にも言ったけど、プリズム嬢を怪我をさせるのはよくない。ちゃんと国同士の法律の下、決めて欲しいんだ。個人で断じるのはプリズム嬢と変わらないよ。アシェル様も、ルミナもオーラもアイスも、僕なんかのことでプリズム嬢と同じところまで堕ちないで」

 緩く頭を左右に振り、リヴィアスは眉をハの字にする。
 自分達の身を案じるような表情のリヴィアスに、オーロラは困ったように笑って、従弟の両頬に触れる。

「あのね、リヴィ。貴方の優しいところはとっても大好きなんだけど、“自分なんか”って、自分を卑下することは言わないで。私とルミナにとって、大事な従弟なんだからね? その大事な従弟に逆恨みで手を出そうとしたんだから、怒るのは当然よ。でも、そうね。隣国の公爵家だもの。両国それぞれで断じられたらいいわ」

「それは、両国の国王陛下にお任せするよ。僕は本当に大丈夫だから。卑下しないように気を付けるよ。ありがとう、オーラ」

「……気を付けるんじゃなくて、これからは絶対にしないようにして欲しいな、ヴィア」

「あ、はい……。努力します……」

 小さく頷くリヴィアスを、すっぽりとラディウスは腕の中に閉じ込めた。





 それから警備の騎士達に、サイクロン公爵家の長女プリズムを引き渡した。
 タイバス学園の学園長にも説明をし、リヴィアスとアイシクル、ラディウスと共に、王都のレイディアンス大公家の邸宅に帰った。
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