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十三章 太陽神
探しても見つけにくい
「リヴィ兄上。グレイ兄上から手紙が届いたよ」
王都のレイディアンス大公家の邸宅のリヴィアスの部屋に、アイシクルがやって来た。
机で本を見つめて考えていたリヴィアスは、顔を上げた。
「リヴィ兄上、どうしたの、難しい顔をして」
アイシクルが心配そうに兄を見る。
「うん、ダンジョンで新しい薬草が見つかったらしくて、その効能を見ていたんだ。皆に役立つような新しい薬が出来ないかなって……」
苦笑しながら、リヴィアスは息を吐く。
タイバス学園の図書館で薬草の図鑑を写したノートを見ながら、薬草の効能と、手持ちの素材の効能を見比べて、何か新しい薬が作れないか考えていたため、難しい顔をする。
そう簡単には新しい薬を作れる訳もなく、一朝一夕には達成出来ない。たくさんの試行錯誤を繰り返すしかない。
「いつも思うけど、難しそうだね……。薬神の加護でも分からないの?」
「うーん……特に僕の加護にあまり頼るのは良くないかなって……。僕しか使えない訳だし。他の薬師も作れるものにしたいんだ。もちろん、必要な時に使うのは躊躇わないよ。この前の流行り病の時みたいに。だけど、普段は加護ではなく、薬師の作り方で新しい薬を作りたいんだ」
新しい薬草の効能を書き留めたノートを見て、リヴィアスはアイシクルに目を向ける。少しだけ、得意気な顔をしている。
「ちなみに、ダンジョンで見つかった新しい薬草の一つに、エリクサーを作る材料が入ってるよ」
「えっ?!」
「たくさん素材が必要だから、この薬草だけではエリクサーは作れないけど、手持ちの別の素材と合わせて、何か、別の薬が作れないかなって、余計に思うんだよね」
困ったように笑い、リヴィアスはアイシクルの手にある手紙に目を向ける。
「ところで、グレイ兄様からの手紙は、内容はなんだったの?」
「あ、そうそう! グレイ兄上がエリスロース竜王国のヴェントゥス第二王子殿下から、太陽神の加護を与えられる場所を探すための資料を貸して欲しいって要請があったって、報告が来たよ。第二王子殿下が資料を受け取りに来られるから、今度の短期休みの時に、俺とリヴィ兄上は転移魔法でレイディアンスに帰っておいでって」
「帰るのはいいけど、太陽神の加護を与えられる場所の資料がレイディアンスにあるの? レイディアンスの領主館の書庫になかった気がするけど……」
「辺境領の図書館の、禁書区域にあるみたいだよ」
グレイシアからの手紙に目を通しながら、リヴィアスの疑問にアイシクルは答えていく。
「父上にグレイ兄上が聞いたみたいだけど、どうやら、リヴィ兄上が鍵になるみたい」
「僕が? 鍵って、どういうこと?」
「そこまでは書かれてないから分からないけど、もしかして、月の女神の加護と関係するとか?」
「太陽神の対だから?」
「うーん……俺もさっぱりだけど、関係しそうだよね」
肩を竦めながら、アイシクルは溜め息を吐く。
「……ラディウス殿下も、レイディアンスに来て下さるといいね、リヴィ兄上」
ニヤリとアイシクルが笑うと、リヴィアスの顔がじわじわと赤くなっていく。
「もう、誂わないでよ、アイス……」
両頬に手を当て、リヴィアスはアイシクルから目線を逸らす。
「恋愛してるリヴィ兄上が見られて、俺は嬉しいよ」
にこにこと微笑み、アイシクルは真っ赤な顔の兄の頭を撫でた。リヴィアスの髪がさらさらで、肌触りが良い絹のようで、アイシクルはしばらく撫で続けたのだった。
そして、タイバス学園の短期休みとなり、リヴィアスとアイシクルは転移魔法を使って、レイディアンス辺境領の領主館に帰って来た。
領主館の一室に刻まれた魔法陣に現れたリヴィアスとアイシクルの姿を認め、グレイシアが二人に近付いた。
「お帰り。リヴィ、アイス」
「ただいま帰りました、グレイ兄様」
「ただいま! グレイ兄上!」
穏やかに微笑むリヴィアスと、明るく笑うアイシクルの、対照的な二人にグレイシアは苦笑する。
「アイスは元気そうだな。リヴィは元気か? 無理はしてないか?」
「はい、グレイ兄様。アイスが目を光らせてるので、徹夜せずにゆっくり眠れてます」
苦笑を混ぜて、リヴィアスは頷いた。
「……それは普通の、当たり前のことだからな?」
頷くリヴィアスの頭を撫で、グレイシアは笑う。が、目は笑っていなかった。
「明日、エリスロース竜王国から、ヴェントゥス第二王子殿下が来られるから、今日はゆっくり休んでおくようにな、リヴィ」
「はい。あの、太陽神の加護を与えられる場所、見つかりにくいところなのですか?」
「そうらしいな。エリスロースで調べたようだが、探しても見つけにくいらしい」
グレイシアの言葉に、リヴィアスは眉を寄せる。
そんなに見つかりにくい場所なら、リヴィアスが鍵になるという言葉に信憑性が増す。
「僕もお力になれるように、お手伝いします」
「そうだな。明日、力を貸すといい。明日、来られるといいな、王太子殿下」
ニヤリと笑い、グレイシアはリヴィアスの頭を撫でた。
「……グレイ兄様まで、誂わないで下さい……」
弟に続いて、兄にまで誂われ、顔が真っ赤になって、リヴィアスは口を膨らませた。
言われる度に、ラディウスに会いたい気持ちが募っていく。
(……明日、来て下さるといいな……)
そう心から思い、リヴィアスは尚も頭を撫でて、機嫌を窺うようにしているグレイシアを見た。
王都のレイディアンス大公家の邸宅のリヴィアスの部屋に、アイシクルがやって来た。
机で本を見つめて考えていたリヴィアスは、顔を上げた。
「リヴィ兄上、どうしたの、難しい顔をして」
アイシクルが心配そうに兄を見る。
「うん、ダンジョンで新しい薬草が見つかったらしくて、その効能を見ていたんだ。皆に役立つような新しい薬が出来ないかなって……」
苦笑しながら、リヴィアスは息を吐く。
タイバス学園の図書館で薬草の図鑑を写したノートを見ながら、薬草の効能と、手持ちの素材の効能を見比べて、何か新しい薬が作れないか考えていたため、難しい顔をする。
そう簡単には新しい薬を作れる訳もなく、一朝一夕には達成出来ない。たくさんの試行錯誤を繰り返すしかない。
「いつも思うけど、難しそうだね……。薬神の加護でも分からないの?」
「うーん……特に僕の加護にあまり頼るのは良くないかなって……。僕しか使えない訳だし。他の薬師も作れるものにしたいんだ。もちろん、必要な時に使うのは躊躇わないよ。この前の流行り病の時みたいに。だけど、普段は加護ではなく、薬師の作り方で新しい薬を作りたいんだ」
新しい薬草の効能を書き留めたノートを見て、リヴィアスはアイシクルに目を向ける。少しだけ、得意気な顔をしている。
「ちなみに、ダンジョンで見つかった新しい薬草の一つに、エリクサーを作る材料が入ってるよ」
「えっ?!」
「たくさん素材が必要だから、この薬草だけではエリクサーは作れないけど、手持ちの別の素材と合わせて、何か、別の薬が作れないかなって、余計に思うんだよね」
困ったように笑い、リヴィアスはアイシクルの手にある手紙に目を向ける。
「ところで、グレイ兄様からの手紙は、内容はなんだったの?」
「あ、そうそう! グレイ兄上がエリスロース竜王国のヴェントゥス第二王子殿下から、太陽神の加護を与えられる場所を探すための資料を貸して欲しいって要請があったって、報告が来たよ。第二王子殿下が資料を受け取りに来られるから、今度の短期休みの時に、俺とリヴィ兄上は転移魔法でレイディアンスに帰っておいでって」
「帰るのはいいけど、太陽神の加護を与えられる場所の資料がレイディアンスにあるの? レイディアンスの領主館の書庫になかった気がするけど……」
「辺境領の図書館の、禁書区域にあるみたいだよ」
グレイシアからの手紙に目を通しながら、リヴィアスの疑問にアイシクルは答えていく。
「父上にグレイ兄上が聞いたみたいだけど、どうやら、リヴィ兄上が鍵になるみたい」
「僕が? 鍵って、どういうこと?」
「そこまでは書かれてないから分からないけど、もしかして、月の女神の加護と関係するとか?」
「太陽神の対だから?」
「うーん……俺もさっぱりだけど、関係しそうだよね」
肩を竦めながら、アイシクルは溜め息を吐く。
「……ラディウス殿下も、レイディアンスに来て下さるといいね、リヴィ兄上」
ニヤリとアイシクルが笑うと、リヴィアスの顔がじわじわと赤くなっていく。
「もう、誂わないでよ、アイス……」
両頬に手を当て、リヴィアスはアイシクルから目線を逸らす。
「恋愛してるリヴィ兄上が見られて、俺は嬉しいよ」
にこにこと微笑み、アイシクルは真っ赤な顔の兄の頭を撫でた。リヴィアスの髪がさらさらで、肌触りが良い絹のようで、アイシクルはしばらく撫で続けたのだった。
そして、タイバス学園の短期休みとなり、リヴィアスとアイシクルは転移魔法を使って、レイディアンス辺境領の領主館に帰って来た。
領主館の一室に刻まれた魔法陣に現れたリヴィアスとアイシクルの姿を認め、グレイシアが二人に近付いた。
「お帰り。リヴィ、アイス」
「ただいま帰りました、グレイ兄様」
「ただいま! グレイ兄上!」
穏やかに微笑むリヴィアスと、明るく笑うアイシクルの、対照的な二人にグレイシアは苦笑する。
「アイスは元気そうだな。リヴィは元気か? 無理はしてないか?」
「はい、グレイ兄様。アイスが目を光らせてるので、徹夜せずにゆっくり眠れてます」
苦笑を混ぜて、リヴィアスは頷いた。
「……それは普通の、当たり前のことだからな?」
頷くリヴィアスの頭を撫で、グレイシアは笑う。が、目は笑っていなかった。
「明日、エリスロース竜王国から、ヴェントゥス第二王子殿下が来られるから、今日はゆっくり休んでおくようにな、リヴィ」
「はい。あの、太陽神の加護を与えられる場所、見つかりにくいところなのですか?」
「そうらしいな。エリスロースで調べたようだが、探しても見つけにくいらしい」
グレイシアの言葉に、リヴィアスは眉を寄せる。
そんなに見つかりにくい場所なら、リヴィアスが鍵になるという言葉に信憑性が増す。
「僕もお力になれるように、お手伝いします」
「そうだな。明日、力を貸すといい。明日、来られるといいな、王太子殿下」
ニヤリと笑い、グレイシアはリヴィアスの頭を撫でた。
「……グレイ兄様まで、誂わないで下さい……」
弟に続いて、兄にまで誂われ、顔が真っ赤になって、リヴィアスは口を膨らませた。
言われる度に、ラディウスに会いたい気持ちが募っていく。
(……明日、来て下さるといいな……)
そう心から思い、リヴィアスは尚も頭を撫でて、機嫌を窺うようにしているグレイシアを見た。
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