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十三章 太陽神
太陽神
ダンジョンに行くことが決まり、翌日にはミーティア王妃がエリスロース竜王国から、レイディアンス辺境領に騎竜に乗ってやって来た。
カエルム国王は指名されなかったことで、泣く泣くお留守番になったという。
それを聞き、リヴィアスはとても申し訳なくなってしまった。
「……カエルム国王陛下にとても申し訳ないことをしてしまいました……」
出来上がったポーションをマジックバッグに入れながら、リヴィアスは呟いた。
マジックバッグに入れたポーションは、下級、中級、上級の回復ポーション、魔力回復ポーション、毒回復ポーション、麻痺回復ポーションを通常の薬師が精製する方法で作った。
ダンジョンが初めてなので、未知で不安なリヴィアスは更に、状態異常回復ポーションとエリクサー、ソーマを薬師の加護でこっそり作った。
何かあった時のための保険だ。
「気にしなくていいよ、リヴィちゃん。カエルムは一人でお留守番が嫌なのと、リヴィちゃんに会えないのが辛いってだけだからさ」
準備を整えたミーティア王妃がにこやかに笑う。
「え、僕、ですか? ご家族ではなく……?」
「成人した無愛想な息子達しかいないから、よく笑うリヴィちゃんが可愛くて仕方ないんだよ。婚約して、結婚したら嫁に来るだろ? 俺もカエルムも待ち遠しいんだよ」
「……何気に私達、息子に対して酷いですね、母上……」
「お前等は一緒に買い物に行ってくれないからな。一緒に行ってくれる将来の嫁のリヴィちゃんを可愛がることをカエルムと決めたんだ」
「あの、ありがとうございます。でも、喧嘩しないで下さいね……」
「大丈夫だ、ヴィア。いつもこんな感じなんだ」
ミーティア王妃とヴェントゥスの遣り取りを見ながら、ラディウスは苦笑する。
「……当たり前ですけど、レイディアンスとは違うんですね」
「それぞれ、家族の在り方は違うからな。俺達も、将来、どんな家族になりたいか、これからたくさん話そうな、ヴィア」
優しい笑みを浮かべ、ラディウスはリヴィアスの一つに結った長い髪に口付けをする。
「あ……う……はい……」
一気に顔を真っ赤にして、リヴィアスは何度も頷いた。
準備を整え終えたリヴィアス達は、件のダンジョンの付近に到着した。
レイディアンス大公家の私設騎士団が使用する馬車からリヴィアス達が降りると、待機していた私設騎士団の団員達が馬車の周囲に集まる。
馬車を団員達に預け、ミストラルはリヴィアス達を引き連れ、ダンジョンの出入り口に立つ。
リヴィアスは初めてのダンジョンで、緊張のせいか、胸の辺りに触れる。
母ステラから用意された、冒険者にも見える服を着ている。
用意された服は、金色を混ぜた白色の、袖なしのコートにも見えるデザインの冒険者として登録した貴族の令息達に人気のロングベストで、肩当てとベルトを装着して冒険をする時向きの作りになっている。
生地も丈夫な作りになっているが、伸縮性もあり、とても動きやすい。
ロングベストの下に着る白い襟付きシャツは、リヴィアスの清らかさが現れているように、彼の隣に立つラディウスは感じた。
何より、コートの裾にフリルが違和感なく付いているのを見て、ラディウスは心の中でリヴィアスの母ステラに感謝した。自分の好みがステラにはお見通しだったのだろうかと思ったくらいだ。
何より、可愛い。
そんなことをラディウスから思われているとは知らないリヴィアスは、今回は登録はしていないが、冒険者になった気分で、この衣装を纏うことで、心が逸る。
天色の目がきらきらと輝く。
「ヴィア、ダンジョンに近付いたら、俺から離れないようにな?」
初めてのダンジョンでわくわくした様子のリヴィアスに微笑みながら、ラディウスは頭を撫でる。
「はい! 今は、とてもわくわくしていますが、ダンジョンに入ったら、気持ちを落ち着かせて、周りをよく見てご迷惑をお掛けしないように動きます。アシェル様とも離れないようにします」
大きく頷いて、リヴィアスはラディウスを見上げて微笑む。
「リヴィ。そろそろダンジョンに入るが、心の準備はいいか?」
「はい。大丈夫です。父様、皆様、今からご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願い致します」
グレイシアに声を掛けられたリヴィアスは、ミストラルやラディウス達に深くお辞儀をする。
加護の影響で、自分がしっかりと戦えない分、ラディウス達に守ってもらったり、戦ってもらうしかない。
それを弁えて、リヴィアスは深々と頭を下げる。
その分、怪我や状態異常の時は、すぐにポーションを使えるように動くつもりだ。
「リヴィ、戦えないからと気負わなくていい。私達が守る。そのかわり、私達が戦闘中、何か気付いたら声を掛けて欲しい」
リヴィアスの頭を撫でながら、ミストラルが言うと、ラディウス達がそれぞれ頷いた。
「分かりました。あの、ポーションが必要でしたら、すぐ出しますし、何かの状態異常の時はすぐに近付きますから」
「頼りにしている。それでは行こうか」
ダンジョンに入ってすぐ、早速、魔物に襲われた。
よく聞くゴブリンという魔物で、群れを成して現れ、リヴィアスに向かっていくのを目の当たりにしたラディウスとミストラルが同時に動いて倒した。
先に進むにつれ、ゴブリン、オーク、リザード等、魔物が現れる。その度に、リヴィアスに向かっていく。
ラディウスはリヴィアスの側で剣を構え、ミストラルとミーティア王妃が先陣を切る。
その後ろでグレイシアとアイシクル、ヴェントゥスが魔法で倒し、打ち漏らしたのをレインとリヒトが剣や魔法で倒していく。
戦っている父達を見つめ、リヴィアスは緊張しているのか、手の先が冷たくなっていく。
「ヴィア、大丈夫か?」
リヴィアスの冷たくなった手を握り、ラディウスは声を掛ける。
「は、はい。大丈夫……です。命の遣り取りを見て、何も出来ないことが、自分に対して少しだけもどかしく感じてしまっただけです」
苦笑いを浮かべて、リヴィアスは父達の様子を見つめる。
加護の影響で動けず、何も出来ない自分が、ひどくもどかしい。
悪意のある薬を飲まされたラディウスを助けに行った時は、命を奪う必要がないため、戦闘不能にすることでリヴィアスも戦えた。
だが、魔物は戦闘不能だけでは済まない。倒さなければ、背後から襲われることもあり、命を奪う必要がある。
リヴィアスでは出来ない。
そんなお荷物な状態の自分を、ダンジョンで痛感してしまい、嫌になる。
父はそれを怖れ、心配していたのだと、今になってしっかりと分かった。
(……それでも、僕は、アシェル様や父様達とダンジョンに行きたかった……)
レイディアンスの領主館で、安否が分からないまま帰って来るのを待つのが辛い。
一緒に行って、怪我等をしたら、すぐに助けられる位置にいたいと思っていた。
誰かが魔物によって命を落とすところを見たくない。
命を落とした人の家族が涙を流すところを見たくない。
何より、大公家の一員として、常に前線に立つ父や兄弟が命を落とすところを見たくない。
王太子として、国を守る婚約者が命を狙われるのを守りたい。
けれど、守れないで、逆に守られる自分が嫌になる。
レインやリヒトの攻撃を掻い潜って、こちらにやって来る魔物をラディウスが倒すところを見て、更に自分のお荷物な状態をリヴィアスは痛感する。
(少しでも、父様達を守れるなら、どんなことでもいいから、守りたい)
今のところ怪我はないが、リヴィアスは祈るように両手を重ねて、近くで戦うラディウスやミストラル達を見つめる。
そこで、アイシクルとヴェントゥスのところへ雪崩込むように魔物が溢れ、攻撃されそうになっているのが見えた。
「アイス! ヴェントゥス殿下!」
リヴィアスが叫んだと同時に、白色と銀色の光がアイシクルとヴェントゥスを守るように覆い、魔物を隔てる。更に光はダンジョンのフロア内の魔物を弾くと、魔物は怯えるように光から逃げ、その場からいなくなった。
呆然と、リヴィアスは魔物が逃げていった方向を見つめる。
「今のは、リヴィアスか?」
ミストラルが周囲を警戒しながら、リヴィアスに近付く。
「え……?」
目を何度も瞬かせ、リヴィアスは父を見上げる。
「僕、ですか? 僕ではないです……」
「さっきの魔力はヴィアだな。いつも俺のイヤーカフで感じる魔力だ」
ラディウスがリヴィアスの肩に触れ、微笑む。
「あの、邪魔をするつもりはなくて……。ただ、アイスとヴェントゥス殿下が攻撃されそうだったので、守りたくて……」
「違うよ、リヴィ兄上。リヴィ兄上が凄い力で、俺達を守ってくれたから、驚いただけだよ。守ってくれて、ありがとう。リヴィ兄上」
まだ呆然とするリヴィアスの手を握りながら、アイシクルは笑う。
「私も、守ってくれてありがとう、リヴィちゃん」
「いえ、あの、僕が何をしたのかよく分かってなくて……。でも、ご無事で良かったです……」
戸惑った表情でリヴィアスは笑い、アイシクルとヴェントゥスを見る。
「リヴィアス。恐らく今のは月の女神の加護だろう」
ミストラルがそう告げると、リヴィアスは目を見開いた。
「え、僕は使ったつもりは……」
「それはもちろん分かっている。アイスや第二王子を守りたいという想いが加護として出てきたのだろう」
リヴィアスは呆然と父を見上げる。
月の女神の加護を使ったつもりは、まったくなかった。
「リヴィが使った加護が効いている内に、先へ進もう」
ミストラルの言葉に全員が頷き、次の階へと進もうとしたその時、リヴィアスを中心に魔法陣が突然現れた。
「ヴィア!」
ラディウスが慌てて、リヴィアスを抱き締めた瞬間、魔法陣が光りだした。
「リヴィ! 王太子!」
ミストラルが叫んだと同時に魔法陣が強く光り輝き、リヴィアスとラディウスの姿が消えた。
強い光に驚いて、目を閉じていたリヴィアスは、ゆっくりと目を開ける。
恐る恐る周囲を見渡すと、ラディウスに抱き締められていることに気付いて、見上げた。
「アシェル様……?」
警戒するように前を見ているラディウスに、眉を寄せる。
「ーーヴィア。俺から離れるなよ」
「え……?」
目を瞬かせ、リヴィアスはラディウスが向いている方へ顔を向ける。
そこには、金色の髪と目をした、裾の長い外套を着た美青年が立っていた。
「やぁ、初めまして。今代の薬神の加護と豊穣の女神の加護、私と対の月の女神の加護を持つ愛し子」
青年は穏やかに目を細めて、リヴィアスに微笑みかける。
リヴィアスの左肩を抱き締めながら、ラディウスは警戒を強める。
「ここに来たのは、愛し子に愛されし者に、私の加護を与えて欲しいから、で良かったかな?」
青年ーー太陽神は穏やかに微笑んだ。
※いつも読んで下さり、ありがとうございます!
遅くなってしまい、申し訳ございません!
諸事情で、スマホを機種変更することになり、引き継ぎに手間取り、更新が遅くなりました。
引き継ぎって、大変ですよね……。
次話も間に合えば、本日更新予定です。
宜しくお願い致します!
カエルム国王は指名されなかったことで、泣く泣くお留守番になったという。
それを聞き、リヴィアスはとても申し訳なくなってしまった。
「……カエルム国王陛下にとても申し訳ないことをしてしまいました……」
出来上がったポーションをマジックバッグに入れながら、リヴィアスは呟いた。
マジックバッグに入れたポーションは、下級、中級、上級の回復ポーション、魔力回復ポーション、毒回復ポーション、麻痺回復ポーションを通常の薬師が精製する方法で作った。
ダンジョンが初めてなので、未知で不安なリヴィアスは更に、状態異常回復ポーションとエリクサー、ソーマを薬師の加護でこっそり作った。
何かあった時のための保険だ。
「気にしなくていいよ、リヴィちゃん。カエルムは一人でお留守番が嫌なのと、リヴィちゃんに会えないのが辛いってだけだからさ」
準備を整えたミーティア王妃がにこやかに笑う。
「え、僕、ですか? ご家族ではなく……?」
「成人した無愛想な息子達しかいないから、よく笑うリヴィちゃんが可愛くて仕方ないんだよ。婚約して、結婚したら嫁に来るだろ? 俺もカエルムも待ち遠しいんだよ」
「……何気に私達、息子に対して酷いですね、母上……」
「お前等は一緒に買い物に行ってくれないからな。一緒に行ってくれる将来の嫁のリヴィちゃんを可愛がることをカエルムと決めたんだ」
「あの、ありがとうございます。でも、喧嘩しないで下さいね……」
「大丈夫だ、ヴィア。いつもこんな感じなんだ」
ミーティア王妃とヴェントゥスの遣り取りを見ながら、ラディウスは苦笑する。
「……当たり前ですけど、レイディアンスとは違うんですね」
「それぞれ、家族の在り方は違うからな。俺達も、将来、どんな家族になりたいか、これからたくさん話そうな、ヴィア」
優しい笑みを浮かべ、ラディウスはリヴィアスの一つに結った長い髪に口付けをする。
「あ……う……はい……」
一気に顔を真っ赤にして、リヴィアスは何度も頷いた。
準備を整え終えたリヴィアス達は、件のダンジョンの付近に到着した。
レイディアンス大公家の私設騎士団が使用する馬車からリヴィアス達が降りると、待機していた私設騎士団の団員達が馬車の周囲に集まる。
馬車を団員達に預け、ミストラルはリヴィアス達を引き連れ、ダンジョンの出入り口に立つ。
リヴィアスは初めてのダンジョンで、緊張のせいか、胸の辺りに触れる。
母ステラから用意された、冒険者にも見える服を着ている。
用意された服は、金色を混ぜた白色の、袖なしのコートにも見えるデザインの冒険者として登録した貴族の令息達に人気のロングベストで、肩当てとベルトを装着して冒険をする時向きの作りになっている。
生地も丈夫な作りになっているが、伸縮性もあり、とても動きやすい。
ロングベストの下に着る白い襟付きシャツは、リヴィアスの清らかさが現れているように、彼の隣に立つラディウスは感じた。
何より、コートの裾にフリルが違和感なく付いているのを見て、ラディウスは心の中でリヴィアスの母ステラに感謝した。自分の好みがステラにはお見通しだったのだろうかと思ったくらいだ。
何より、可愛い。
そんなことをラディウスから思われているとは知らないリヴィアスは、今回は登録はしていないが、冒険者になった気分で、この衣装を纏うことで、心が逸る。
天色の目がきらきらと輝く。
「ヴィア、ダンジョンに近付いたら、俺から離れないようにな?」
初めてのダンジョンでわくわくした様子のリヴィアスに微笑みながら、ラディウスは頭を撫でる。
「はい! 今は、とてもわくわくしていますが、ダンジョンに入ったら、気持ちを落ち着かせて、周りをよく見てご迷惑をお掛けしないように動きます。アシェル様とも離れないようにします」
大きく頷いて、リヴィアスはラディウスを見上げて微笑む。
「リヴィ。そろそろダンジョンに入るが、心の準備はいいか?」
「はい。大丈夫です。父様、皆様、今からご迷惑をお掛けしますが、宜しくお願い致します」
グレイシアに声を掛けられたリヴィアスは、ミストラルやラディウス達に深くお辞儀をする。
加護の影響で、自分がしっかりと戦えない分、ラディウス達に守ってもらったり、戦ってもらうしかない。
それを弁えて、リヴィアスは深々と頭を下げる。
その分、怪我や状態異常の時は、すぐにポーションを使えるように動くつもりだ。
「リヴィ、戦えないからと気負わなくていい。私達が守る。そのかわり、私達が戦闘中、何か気付いたら声を掛けて欲しい」
リヴィアスの頭を撫でながら、ミストラルが言うと、ラディウス達がそれぞれ頷いた。
「分かりました。あの、ポーションが必要でしたら、すぐ出しますし、何かの状態異常の時はすぐに近付きますから」
「頼りにしている。それでは行こうか」
ダンジョンに入ってすぐ、早速、魔物に襲われた。
よく聞くゴブリンという魔物で、群れを成して現れ、リヴィアスに向かっていくのを目の当たりにしたラディウスとミストラルが同時に動いて倒した。
先に進むにつれ、ゴブリン、オーク、リザード等、魔物が現れる。その度に、リヴィアスに向かっていく。
ラディウスはリヴィアスの側で剣を構え、ミストラルとミーティア王妃が先陣を切る。
その後ろでグレイシアとアイシクル、ヴェントゥスが魔法で倒し、打ち漏らしたのをレインとリヒトが剣や魔法で倒していく。
戦っている父達を見つめ、リヴィアスは緊張しているのか、手の先が冷たくなっていく。
「ヴィア、大丈夫か?」
リヴィアスの冷たくなった手を握り、ラディウスは声を掛ける。
「は、はい。大丈夫……です。命の遣り取りを見て、何も出来ないことが、自分に対して少しだけもどかしく感じてしまっただけです」
苦笑いを浮かべて、リヴィアスは父達の様子を見つめる。
加護の影響で動けず、何も出来ない自分が、ひどくもどかしい。
悪意のある薬を飲まされたラディウスを助けに行った時は、命を奪う必要がないため、戦闘不能にすることでリヴィアスも戦えた。
だが、魔物は戦闘不能だけでは済まない。倒さなければ、背後から襲われることもあり、命を奪う必要がある。
リヴィアスでは出来ない。
そんなお荷物な状態の自分を、ダンジョンで痛感してしまい、嫌になる。
父はそれを怖れ、心配していたのだと、今になってしっかりと分かった。
(……それでも、僕は、アシェル様や父様達とダンジョンに行きたかった……)
レイディアンスの領主館で、安否が分からないまま帰って来るのを待つのが辛い。
一緒に行って、怪我等をしたら、すぐに助けられる位置にいたいと思っていた。
誰かが魔物によって命を落とすところを見たくない。
命を落とした人の家族が涙を流すところを見たくない。
何より、大公家の一員として、常に前線に立つ父や兄弟が命を落とすところを見たくない。
王太子として、国を守る婚約者が命を狙われるのを守りたい。
けれど、守れないで、逆に守られる自分が嫌になる。
レインやリヒトの攻撃を掻い潜って、こちらにやって来る魔物をラディウスが倒すところを見て、更に自分のお荷物な状態をリヴィアスは痛感する。
(少しでも、父様達を守れるなら、どんなことでもいいから、守りたい)
今のところ怪我はないが、リヴィアスは祈るように両手を重ねて、近くで戦うラディウスやミストラル達を見つめる。
そこで、アイシクルとヴェントゥスのところへ雪崩込むように魔物が溢れ、攻撃されそうになっているのが見えた。
「アイス! ヴェントゥス殿下!」
リヴィアスが叫んだと同時に、白色と銀色の光がアイシクルとヴェントゥスを守るように覆い、魔物を隔てる。更に光はダンジョンのフロア内の魔物を弾くと、魔物は怯えるように光から逃げ、その場からいなくなった。
呆然と、リヴィアスは魔物が逃げていった方向を見つめる。
「今のは、リヴィアスか?」
ミストラルが周囲を警戒しながら、リヴィアスに近付く。
「え……?」
目を何度も瞬かせ、リヴィアスは父を見上げる。
「僕、ですか? 僕ではないです……」
「さっきの魔力はヴィアだな。いつも俺のイヤーカフで感じる魔力だ」
ラディウスがリヴィアスの肩に触れ、微笑む。
「あの、邪魔をするつもりはなくて……。ただ、アイスとヴェントゥス殿下が攻撃されそうだったので、守りたくて……」
「違うよ、リヴィ兄上。リヴィ兄上が凄い力で、俺達を守ってくれたから、驚いただけだよ。守ってくれて、ありがとう。リヴィ兄上」
まだ呆然とするリヴィアスの手を握りながら、アイシクルは笑う。
「私も、守ってくれてありがとう、リヴィちゃん」
「いえ、あの、僕が何をしたのかよく分かってなくて……。でも、ご無事で良かったです……」
戸惑った表情でリヴィアスは笑い、アイシクルとヴェントゥスを見る。
「リヴィアス。恐らく今のは月の女神の加護だろう」
ミストラルがそう告げると、リヴィアスは目を見開いた。
「え、僕は使ったつもりは……」
「それはもちろん分かっている。アイスや第二王子を守りたいという想いが加護として出てきたのだろう」
リヴィアスは呆然と父を見上げる。
月の女神の加護を使ったつもりは、まったくなかった。
「リヴィが使った加護が効いている内に、先へ進もう」
ミストラルの言葉に全員が頷き、次の階へと進もうとしたその時、リヴィアスを中心に魔法陣が突然現れた。
「ヴィア!」
ラディウスが慌てて、リヴィアスを抱き締めた瞬間、魔法陣が光りだした。
「リヴィ! 王太子!」
ミストラルが叫んだと同時に魔法陣が強く光り輝き、リヴィアスとラディウスの姿が消えた。
強い光に驚いて、目を閉じていたリヴィアスは、ゆっくりと目を開ける。
恐る恐る周囲を見渡すと、ラディウスに抱き締められていることに気付いて、見上げた。
「アシェル様……?」
警戒するように前を見ているラディウスに、眉を寄せる。
「ーーヴィア。俺から離れるなよ」
「え……?」
目を瞬かせ、リヴィアスはラディウスが向いている方へ顔を向ける。
そこには、金色の髪と目をした、裾の長い外套を着た美青年が立っていた。
「やぁ、初めまして。今代の薬神の加護と豊穣の女神の加護、私と対の月の女神の加護を持つ愛し子」
青年は穏やかに目を細めて、リヴィアスに微笑みかける。
リヴィアスの左肩を抱き締めながら、ラディウスは警戒を強める。
「ここに来たのは、愛し子に愛されし者に、私の加護を与えて欲しいから、で良かったかな?」
青年ーー太陽神は穏やかに微笑んだ。
※いつも読んで下さり、ありがとうございます!
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