婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

文字の大きさ
66 / 82
十四章 太陽神の加護

太陽神の試練①(三人称視点→ラディウス視点)

 にこにこと微笑む美しい青年に、リヴィアスもラディウスも呆然と見つめる。
 その青年の微笑みは、美しさと神々しさがありながら、まるで太陽のような暖かさがあり、まさに太陽神のようだった。

「……貴方が、太陽神、様……?」

 警戒し、左手でリヴィアスの肩を抱き、右手は剣の柄を握りながら、ラディウスは目の前の青年を見る。

「そうだね。そう呼ばれてるよ」

 笑みを浮かべ、突然、太陽神が目の前から消えた。

「消えた?!」

 ラディウスは驚いて、目を見開いた。

「……ふむ。今代の薬神と豊穣、月の女神の加護を持つ愛し子は細いし、軽いな」

 背後から太陽神の声が聞こえたと同時に、リヴィアスの身体が宙に浮く。

「わっ!」

「ヴィア!」

 いつの間にか背後に移動していた太陽神に驚き、ラディウスは振り返り、抱き上げられたリヴィアスを取り返そうと手を伸ばす。

「おっと。申し訳ないけど、愛し子は一旦、私が預かるよ?」

 ラディウスの手を避け、抱き上げたリヴィアスを縦抱きに変え、太陽神は瞬間移動をして距離を置く。

「ヴィアをどうするつもりだ!」

 いつの間にか眠らされているリヴィアスが見え、腰に佩いた剣の柄を握り、いつでも鞘から抜けるようにラディウスは太陽神を見据える。
 
「どうもしないよ。可愛い大事な愛し子だからね。愛し子が愛した者だからといって、簡単に私の加護を与えられると思ったのか?」

 金色の目を細め、リヴィアスの銀色の髪を愛おしそうに撫でる太陽神はラディウスを見る。

「ーーっ!」

 息を飲み、ラディウスは太陽神を睨む。
 確かに、簡単に与えられると思っていた。
 リヴィアスに愛されていると、ラディウスは感じていたから。

「竜神は君を認めているけど、私はまだ認めてないんだよね。月の女神がどう思っているのかも聞かないと、私は与える気はないよ」

 ラディウスに向けて不敵に笑い、太陽神は縦抱きのまま眠るリヴィアスの頭を自分の胸に預けさせる。

「だから、君には試練を与える。竜神の加護を使っても構わないし、自分の魔力、愛し子が君のためにと作った薬を使うのも構わない。一緒に来た愛し子や君の家族達と力を合わせるのも構わない。このダンジョンの最下層で愛し子と待っているから、そこまでおいで」

 挑発するように笑い、太陽神はラディウスの足下に魔法陣を発動させる。

「かなりの譲歩をしたのは、ここのダンジョンを甘く見ない方がいいからだよ? 最初のフロアであの程度だったのは、愛し子が無意識に使ってた月の女神の加護のおかげ。そこをよく把握して、最下層までおいで?」

 太陽神の言葉と共に、ラディウスの足下の魔法陣が光り輝く。

「愛し子と君の家族達には状況を教えておこう。愛し子の、戦神の加護を持つ父親に君が殴られたら、愛し子が悲しむからね」

 魔法陣で飛ばされる前に、太陽神はラディウスに微笑む。

「愛し子との約束、ちゃんと守ることを願っているよ」

 太陽神の言葉に、ラディウスは目を見開いたと同時に転移した。
 ラディウスが立っていた場所を太陽神は見つめる。

「我ながら、甘い譲歩だったかな。ね、アリー……」

 眠るリヴィアスの頬を撫でながら、太陽神もまたダンジョンの最下層へ転移した。





◇◆◇◆◇◆





 気が付くと、ミストラル大公達の顔が目の前にあった。

「殿下! 大丈夫か?!」

 レインが俺の顔を見た途端、叫んだ。
 近くで叫ばれたことで、耳鳴りがする。
 それよりも、ヴィアと離されたことと守れなかったことで、心の喪失感が酷い。
 ヴィアを守れなかった。
 神ーー太陽神だから、人間の俺達が敵わないのは仕方ないと言われるかもしれないが、それでもヴィアを守りたかった。
 だから、すぐにでも最下層に行かないといけない。

「大丈夫ではない。ヴィアを太陽神に攫われた……。すぐ隣にいたのに守れなかった」

「いや、殿下。一部始終を神様に見せられたけどさ、難しいだろ、相手は神様だ」

「神様だとかは関係ない」

 絶対にヴィアを離さない。一生、ヴィアを守る。竜神の加護を過信しない。ヴィアを泣かせるような死に方はしない。死ぬ時はヴィアの側で、と約束をした。
 離さない、守る。
 どちらの約束も守れなかった。
 ヴィアの肩を抱いていた左手を握り締める。
 最下層に絶対に行かないといけない。
 あの太陽神は、このダンジョンを甘く見るなと言った。
 母達の力を借りてでも、早く最下層に行きたい。
 ヴィアを取り戻したい。

「……今から、最下層まで行きたい。どうか、皆の力を私に貸して頂きたい……」

 頭を下げて、俺は母やミストラル大公達に懇願する。
 本当なら、自分だけの力でヴィアを取り戻したい。
 だが、最速、最短を考えれば、母達の力を貸してもらった方がいい。
 どんな試練があるのかは知らないが、知恵も借りたい。
 何より、ヴィアを攫われた状況で、俺が冷静に動くことが出来るか自信がない。

「王太子。もちろん、手を貸す。息子に了承なく攫った太陽神を許す訳にはいかない」

 静かに魔力を漏らしながら、ミストラル大公が呟く。目が、本気だ。

「気持ちは分かるが、相手は神だからな! ミストラル、頼むから早まるなよ。“神殺し”なんて異名まで付いたら、リヴィちゃん泣くぞ?!」

「ミーティア。お前は腹が立たないのか? 私は非常に腹立だしい。加護を与えるため、王太子を試すのは理解出来るが、リヴィを攫う必要が何処にある?」

「見せられた内容だとそうかもしれないが、何かリヴィちゃんにも用事があったんじゃないのか? 月の女神がどう思っているかとか、何とか言っていただろ?」

 頭に血が上っている俺とミストラル大公に対して、母は冷静に説明する。
 こういう時、母は肝が据わっているから、とても頼りに感じる。有り難くも思う。

「とりあえず、最下層へ進もう。リヴィちゃんが心配なのは変わらないからな」

 母の言葉に、俺もミストラル大公達も頷いた。
 



 ーーヴィア、すぐに行くから。
感想 42

あなたにおすすめの小説

あなたが愛人を作るのなら

あんど もあ
ファンタジー
結婚して八年の夫が、愛人を作った。それも私の推しの女優を! 「君と違って彼女には才能がある」と言う。ならば、私も才能のある愛人を持つ事にいたしましょう。愛人の才能を花開かせる事が出来るのはどちら?

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、 冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまう リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、 悪役令嬢として断罪された少女が、 「誰かの物語の脇役」ではなく、 自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、 彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。