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十五章 本婚約
加護を貰ったので
ダンジョンからレイディアンス大公家の領主館に帰るため、リヴィアスとラディウスはミストラル達と合流するために、最下層から上の層へと向かう。
アリアンロッドの話によると、最下層が太陽神と月の女神を祀る神殿だった。
数百年前、同時多発のスタンピードにより、魔物達から神殿の破壊を防ぐため、太陽神ベレヌスと月の女神アリアンロッドの力で、ダンジョンの奥深くに移動させた。
その時に、神官達も、と考えたそうだが、神官達はそれぞれの故郷に帰ることを選んだ。が、溢れた魔物に襲われ、神官達は一人を除いて命を落とした。
生き残った神官は、ミストラルが話していた通り、リヴィアスの元婚約者のアルギロスの母の実家のカース伯爵家の先祖だった。
その神官以外が命を落としたのは、その神官に安全に避難出来ると聞かされ、向かった場所が正にスタンピード真っ最中のダンジョンで、襲われたことが原因だった。
その神官が何故、他の神官達をその場所まで誘導したのかは、アリアンロッドもベレヌスも真意までは分からないそうだ。
元婚約者のアルギロスとベーゼ兄弟の母の実家で、現在も健在のカース伯爵家なので、調べれば何か分かるかもしれない。
が、月の女神の加護を持つ者がリヴィアスだとカース伯爵家に知られれば、危険があるかもしれない。
更に、罪人として鉱山に収容されているベーゼを脱走させて、利用しようとしている者もいるらしい。
『だから、気を付けてね、リヴィ君』
アリアンロッドとベレヌスは心配そうに、そう警告してくれた。
そんな話をアリアンロッドとベレヌスから聞いたリヴィアスとラディウスは、合流したミストラル達に伝えた。
リヴィアスが無事なのを確認しつつも、今後起きるかもしれない問題にミストラル達は眉を顰める。
「……今のうちに、あそこの伯爵家を潰せば問題ないか……?」
両腕を組んで、ミストラルがぼそりと呟いた。
「物騒だな、ブラカーシュの王弟……。まだ、害も何もないんだから、やめろ。何で、隣国の俺が止めないといけないんだよ。まぁ、気持ちは分かるし、俺も先陣を切るが……」
呆れた顔で、ミーティア王妃が言ってミストラルを止める。
「害があってからでは遅いだろう。こういう時は先手を取るべきだ」
「証拠を掴んでからにしろ。ついでに言うが、証拠を掴む前にそんなことをしたら、リヴィちゃんもステラも悲しむぞ?」
「ぐ……」
有り得る話なので、ミストラルは言葉に詰まった。
そんな親同士の物騒な会話を聞き、リヴィアスは戸惑っていると、ラディウスが腰を抱いてきた。
「アシェル様……?」
驚いて、リヴィアスはラディウスを見上げる。
「ミストラル大公」
「何だ、王太子」
「ここで言うのもどうかというのは分かるのですが、言わせて下さい。太陽神の加護を得たので、ヴィアとの仮婚約を本婚約にさせて下さい」
「……いや、ラディ。お前さ、時と場合と場所があるだろ。今、ここで言うことか?」
呆れた声で、ミーティア王妃は息子を見る。
「母上、これでも限界なんです。ヴィアと早く婚約したいんです」
切実なラディウスの訴えに、リヴィアスの顔がじわじわと赤くなる。両頬に手を当てて、ラディウスの背に隠れようとする。
「仮婚約より、本婚約の方がヴィアを守りやすいです。もし、ヴィアの元婚約者の弟や、その母方の実家が出て来て、その他の者達もヴィアを狙ったとしても、レイディアンス、ブラカーシュ、プロミネンス、エリスロースで連携して守れるでしょう?」
「まぁ、そうだが……。そう聞くと、二つの王家に、大公家、公爵家だから権力凄いよな……。ここで聞くのはどうかと思うが、ミストラル、リヴィちゃんとの本婚約を認めてくれるか?」
「……約束は約束だ。認めよう。だが、書面の遣り取りはレイディアンスの館に戻ってからだ」
「だよなぁ……。ラディ、よく聞くだろ、帰るまでが遠足だってさ」
「ミストラル大公、ありがとうございます。言葉だけでも聞けて安心しました。戻ってから書面を交わせて下さい」
ミストラルに頭を下げた後、背中に隠れるリヴィアスを振り返り、ラディウスは微笑む。
「ヴィア。本婚約したら、先程の約束通り、離さないからな?」
ラディウスの言葉で、先程の最下層で起きたことを思い出し、リヴィアスの顔が真っ赤になる。
「は、はい……」
先程、とんでもないことを自分が発したことで照れてしまい、リヴィアスは小さく頷いて、俯いた。
ラディウスの輝かんばかりの嬉しそうな顔が直視出来ない。
離さないという独占欲も言葉の端々に感じる。
そんなラディウスに嫌悪感は全くなく、むしろ、愛しさが増していき、リヴィアスは戸惑いながらも、心はとても温かく、嬉しい。
ダンジョンを後にして、レイディアンス大公家の領主館に戻って来たリヴィアス達は、まずは疲れを癒した。
その次の日に、ミストラルに呼ばれたリヴィアスとラディウスは、応接室に向かった。
応接室にはミストラル、ステラ、グレイシア、アイシクル、ミーティア王妃、ヴェントゥス、レイン、リヒトが待っていた。
前回の仮婚約と同じく、正式な婚約をする書類をミーティア王妃が取り出し、リヴィアスの父であるミストラルが目を通す。
未成年のリヴィアスの親権者のミストラルが書類にサインをし、ミーティア王妃がカエルム国王の代わりにサインをし、ラディウスも目を通してサインをする。
リヴィアスに目渡された書類には、それぞれのサインはもちろん、ラディウスと正式な婚約をすること、成人し、学園卒業後に準備が整い次第、婚姻をすること、王太子妃教育、竜王妃教育をすること、竜王家も加わって守ること等が書かれていた。
内容をしっかり読み、リヴィアスもサインをした。
サインをしたことで、ラディウスの正式な婚約者になったリヴィアスはじわじわと実感した。
そして、この日からラディウスのリヴィアスに対する愛情表現が激しくなることに、この時は気付きもしなかった。
アリアンロッドの話によると、最下層が太陽神と月の女神を祀る神殿だった。
数百年前、同時多発のスタンピードにより、魔物達から神殿の破壊を防ぐため、太陽神ベレヌスと月の女神アリアンロッドの力で、ダンジョンの奥深くに移動させた。
その時に、神官達も、と考えたそうだが、神官達はそれぞれの故郷に帰ることを選んだ。が、溢れた魔物に襲われ、神官達は一人を除いて命を落とした。
生き残った神官は、ミストラルが話していた通り、リヴィアスの元婚約者のアルギロスの母の実家のカース伯爵家の先祖だった。
その神官以外が命を落としたのは、その神官に安全に避難出来ると聞かされ、向かった場所が正にスタンピード真っ最中のダンジョンで、襲われたことが原因だった。
その神官が何故、他の神官達をその場所まで誘導したのかは、アリアンロッドもベレヌスも真意までは分からないそうだ。
元婚約者のアルギロスとベーゼ兄弟の母の実家で、現在も健在のカース伯爵家なので、調べれば何か分かるかもしれない。
が、月の女神の加護を持つ者がリヴィアスだとカース伯爵家に知られれば、危険があるかもしれない。
更に、罪人として鉱山に収容されているベーゼを脱走させて、利用しようとしている者もいるらしい。
『だから、気を付けてね、リヴィ君』
アリアンロッドとベレヌスは心配そうに、そう警告してくれた。
そんな話をアリアンロッドとベレヌスから聞いたリヴィアスとラディウスは、合流したミストラル達に伝えた。
リヴィアスが無事なのを確認しつつも、今後起きるかもしれない問題にミストラル達は眉を顰める。
「……今のうちに、あそこの伯爵家を潰せば問題ないか……?」
両腕を組んで、ミストラルがぼそりと呟いた。
「物騒だな、ブラカーシュの王弟……。まだ、害も何もないんだから、やめろ。何で、隣国の俺が止めないといけないんだよ。まぁ、気持ちは分かるし、俺も先陣を切るが……」
呆れた顔で、ミーティア王妃が言ってミストラルを止める。
「害があってからでは遅いだろう。こういう時は先手を取るべきだ」
「証拠を掴んでからにしろ。ついでに言うが、証拠を掴む前にそんなことをしたら、リヴィちゃんもステラも悲しむぞ?」
「ぐ……」
有り得る話なので、ミストラルは言葉に詰まった。
そんな親同士の物騒な会話を聞き、リヴィアスは戸惑っていると、ラディウスが腰を抱いてきた。
「アシェル様……?」
驚いて、リヴィアスはラディウスを見上げる。
「ミストラル大公」
「何だ、王太子」
「ここで言うのもどうかというのは分かるのですが、言わせて下さい。太陽神の加護を得たので、ヴィアとの仮婚約を本婚約にさせて下さい」
「……いや、ラディ。お前さ、時と場合と場所があるだろ。今、ここで言うことか?」
呆れた声で、ミーティア王妃は息子を見る。
「母上、これでも限界なんです。ヴィアと早く婚約したいんです」
切実なラディウスの訴えに、リヴィアスの顔がじわじわと赤くなる。両頬に手を当てて、ラディウスの背に隠れようとする。
「仮婚約より、本婚約の方がヴィアを守りやすいです。もし、ヴィアの元婚約者の弟や、その母方の実家が出て来て、その他の者達もヴィアを狙ったとしても、レイディアンス、ブラカーシュ、プロミネンス、エリスロースで連携して守れるでしょう?」
「まぁ、そうだが……。そう聞くと、二つの王家に、大公家、公爵家だから権力凄いよな……。ここで聞くのはどうかと思うが、ミストラル、リヴィちゃんとの本婚約を認めてくれるか?」
「……約束は約束だ。認めよう。だが、書面の遣り取りはレイディアンスの館に戻ってからだ」
「だよなぁ……。ラディ、よく聞くだろ、帰るまでが遠足だってさ」
「ミストラル大公、ありがとうございます。言葉だけでも聞けて安心しました。戻ってから書面を交わせて下さい」
ミストラルに頭を下げた後、背中に隠れるリヴィアスを振り返り、ラディウスは微笑む。
「ヴィア。本婚約したら、先程の約束通り、離さないからな?」
ラディウスの言葉で、先程の最下層で起きたことを思い出し、リヴィアスの顔が真っ赤になる。
「は、はい……」
先程、とんでもないことを自分が発したことで照れてしまい、リヴィアスは小さく頷いて、俯いた。
ラディウスの輝かんばかりの嬉しそうな顔が直視出来ない。
離さないという独占欲も言葉の端々に感じる。
そんなラディウスに嫌悪感は全くなく、むしろ、愛しさが増していき、リヴィアスは戸惑いながらも、心はとても温かく、嬉しい。
ダンジョンを後にして、レイディアンス大公家の領主館に戻って来たリヴィアス達は、まずは疲れを癒した。
その次の日に、ミストラルに呼ばれたリヴィアスとラディウスは、応接室に向かった。
応接室にはミストラル、ステラ、グレイシア、アイシクル、ミーティア王妃、ヴェントゥス、レイン、リヒトが待っていた。
前回の仮婚約と同じく、正式な婚約をする書類をミーティア王妃が取り出し、リヴィアスの父であるミストラルが目を通す。
未成年のリヴィアスの親権者のミストラルが書類にサインをし、ミーティア王妃がカエルム国王の代わりにサインをし、ラディウスも目を通してサインをする。
リヴィアスに目渡された書類には、それぞれのサインはもちろん、ラディウスと正式な婚約をすること、成人し、学園卒業後に準備が整い次第、婚姻をすること、王太子妃教育、竜王妃教育をすること、竜王家も加わって守ること等が書かれていた。
内容をしっかり読み、リヴィアスもサインをした。
サインをしたことで、ラディウスの正式な婚約者になったリヴィアスはじわじわと実感した。
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