婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

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十五章 本婚約

まさかのオファー

「婚約パーティーの衣装のデザインのこと、凄く、ありがたいことなのですが……本当にわたくしでいいんですの?! リヴィ様!」

 レイディアンス大公家の応接室で、ドレス姿のデルフィーニは声を上げた。
 まだラディウスに事情を説明していないので、今日もデルフィーニは令嬢の姿だ。

「はい、是非、フィー様」

 にこにこと微笑むリヴィアスは大きく頷く。
 その隣には、デルフィーニに疑問の目を向けるラディウスが座る。

「わたくしとしては、とても光栄で、嬉しいことなのですが……ラディウス王太子殿下は宜しいのですか?」

 扇を広げ、デルフィーニは意見を求めるようにラディウスを見る。

「……ヴィアが希望しているから、その要望に沿いたいが、デルフィーニ嬢はどのようなデザインを描くんだ?」

「えっ……あの、見て下さるのですか……?」

「見ないと判断が付かないだろう?」

「そ、その通りですが……え? 見て下さるのですか……?」

 目を何度も瞬かせて、デルフィーニは対面のラディウスを見る。
 持っていた扇を落とし、うっかり令嬢の表情ではなく、素の表情になるくらいに動揺している。

「ああ、先程も言ったが、見ないと判断が付かない……待て。デルフィーニ嬢は、デルフィーニ卿、だったのか……?」

「はい」

 少年らしい素の表情のまま、デルフィーニは笑って頷いた。

「……流石に、近くにいると分かりますか」

「ああ。五感が人より良いからな。子供の時に会った時も逃げ回っていたから気付かなかった」

「今まで黙っていて申し訳ございません。両陛下からも殿下が気付くまで黙っているようにと命じられていましたので」

「命を狙われていたんだ。知る者を減らすのは当たり前だ」

「それはご存知だったのですね」

「俺にも影はいるし、護衛もいるからな。子供の時に会った際に、俺を狙うのと同時にデルフィーニ卿を狙ったのは、サイクロン公爵家の親族から命を狙われていたとその後に知った」

 ラディウスはデルフィーニに、少し同情するような目を向ける。

「それで、デルフィーニ卿。デザインを見せてもらっても?」

「あ、はい、こちらです……」

 そう言って、デルフィーニは持参した数枚のデザイン画をラディウスに渡す。
 デザイン画を受け取り、ラディウスは目を落とす。
 だんだんラディウスの目が見開いていく。
 そのラディウスの様子を、リヴィアスとデルフィーニがハラハラとした表情で見つめる。
 全て見終わったのか、ゆっくりとした動作でラディウスはテーブルにデザイン画を置く。

「デルフィーニ卿」

「は、はい……!」

 キリリとした表情のラディウスに驚き、デルフィーニは上擦った声で返事をする。

「ーーとても、良い。これはヴィアが着ると、綺麗で可愛い……。俺の好みだ。是非ともヴィアの衣装のデザインをお願いしたい」

「本当ですか?!」

 身を乗り出すように、デルフィーニがラディウスを見る。その表情はデザインを認められて、嬉しそうだ。

「あの、フィー様。是非ともアシェル様との対のデザインでお願いしたいのですが……」

「ヴィア? 俺のも?」

「……はい。前のブラカーシュでのパーティーも対の衣装だったので、今回も対の衣装が良いです。むしろ、ずっと対の衣装が良いです……」

 恥ずかしそうに少し伏し目がちに、リヴィアスは呟いた。

「ヴィアが可愛い……っ!」

「リヴィ様が可愛い過ぎる……!」

 ラディウスが両手で顔を覆って天を仰ぎ、デルフィーニはやっと持ち直したのに、ぷるぷると震えながら扇をまた落とした。

「ごほん……。ラディウス殿下、如何致しますか?」

 咳払いをして、デルフィーニはラディウスを見た。

「もちろん、ヴィアの望みを叶えたい。デルフィーニ卿、出来るだろうか?」

「もちろんです。俺……私で宜しければ……。あの、本当に私で宜しいのでしょうか?」

「はい! フィー様のデザインした衣装を着たいです!」

 天色の目をきらきらと輝かせて、リヴィアスはデルフィーニを見る。
 その眼差しに、デルフィーニは撃沈した。

「……殿下。デザイン、頑張りますし、衣装も期日までに仕上げます。それと、可愛過ぎるリヴィ様を学園でお守りするのをお手伝い致します……」

「デルフィーニ卿、色々と宜しく頼む。デザインは出来上がり次第、その都度見せてもらえないだろうか」

「もちろんです。お二人のご意見をその都度、お聞かせ下さい」

 デルフィーニがそう告げると、リヴィアスは笑顔で、ラディウスは微笑して頷いた。






 それから、数日後に出来上がった数枚のデザイン画を見たラディウスは、愛しい人に何が似合うかで悩み、目の下に隈を作ったことで、リヴィアスに怒られた。
 リヴィアスに怒られたラディウスを見たレインとリヒトは、何とも言えない表情をしていたという。





※更新が遅くなり、ごめんなさい!
私事で飛び石更新が出来ませんでした……。
年末年始は出来ると思います。
そして、たくさんのお気に入り登録、感想、いいね、エールをありがとうございます!
更新がゆっくりになっていますが、完結まで更新しますので、これからも宜しくお願い致します。
感想 42

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