婚約破棄をされたので、次の婚約をせずに薬師として生きます!

羽山由季夜

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十六章 婚約パーティー

作戦会議?

「カース伯爵家も、ウィキッド子爵の息子達もリヴィちゃんを狙っている……か。ミストラル。対策、考えているのか?」

 椅子に座り、足を組んで話を聞いていたミーティア王妃がミストラルを見る。

「……愚問だな。対策は考えている」

「どんな対策だ?」

「ちょうどこの話し合いで言うつもりだったが、リヴィアスと王太子の婚約パーティーを四ヶ月後に延ばしたい。本来なら、パーティーを今から二ヶ月後に、と考えていたが、カース伯爵家がリヴィアスを狙っているという情報は、こちらにも入っていたからな。更に二ヶ月後にしたい」

 リヴィアスの頭を撫で、ミストラルは申し訳なさそうな表情を浮かべる。

「待ち遠しかったと思うが、カース伯爵家のことを解決させてから、憂いを断ってから、婚約パーティーをさせてやりたかった。相談せず、勝手に決めてすまない、リヴィアス……」

「大丈夫です、父様。僕のことを考えて下さってありがとうございます」

 頭を撫でる父に、リヴィアスは見上げて微笑む。

「四ヶ月後、というのはどういうことだ? 二ヶ月延ばした意図は何だ?」

 ミーティア王妃が真意を問うように、じっとミストラルを見つめる。

「……カース伯爵家周辺の貴族達には二ヶ月後にリヴィアスと王太子の婚約パーティーをすると情報を既に流した。そこで捕らえ、潰すつもりだ。これで二度目だ。もう慈悲を与えるつもりはない」

 冷ややかな紺碧色の目を細めるミストラルに、ミーティア王妃は口元をひくつかせる。

「うわ、見たことがない隣国の伯爵家だが、そいつ等、馬鹿だな。ミストラルの怒りに触れたな」

「ミストラル大公。私も一枚噛んでも宜しいですか? 愛しい大事な婚約者を狙われているのに、指を咥えて、攫われるのを待つ気はありません。竜の怒りを味わせたいのですが」

 同じように冷ややかに真紅色の目を細め、ラディウスもミストラルに同調する。

「ーーもちろんだ」

「うわ、ウチの竜まで便乗した……」

 レインも口元をひくつかせて、ぼそりと呟く。

「ミストラル君。それで、二ヶ月後と流したのは分かったけど、相手をどう捕らえる気だい?」

 カエルム国王が困ったように、息子のラディウスを見ながら、ミストラルに問う。

「二ヶ月後、リヴィアスと王太子の婚約パーティーをレイディアンス辺境領で行う、と流した。エリスロース竜王国と国境くにざかいの辺境領なら、どちらの国の貴族も招待出来るから、ともな」

「実際に婚約パーティーをするのは、エリスロースなんだけどねぇ……。ブラカーシュ王国内のレイディアンス辺境領なら、自国だから相手も動きやすいと思うだろうから、誘き寄せるということだね?」

「しかも、ブラカーシュ王国で、精鋭と呼ばれるレイディアンス辺境騎士団が待ち構えている。だが、竜神の加護を持つラディと月の女神の加護を持つリヴィちゃんという最高級の人参が目の前にぶら下がってるから、やって来る、と」

「ああ。ああいう連中は、こちらの守りが万全だと考えずにやって来る。恐らく、相手は風の加護を持つ者を使って、目眩しとリヴィアスの元へ移動をするつもりだろう」

 ミストラルがそう告げると、話を聞いていたヒンメルが頷く。

「……二ヶ月後まで、査問機関を通じて、カース伯爵家の動向をミストラル達にしっかり情報共有する。ウィキッド子爵夫人は闇市へ転売したリヴィアスの薬を、カース伯爵家にも横流ししていたことも分かった。その闇市で、他国から流れてきた”人を意のままに操る薬”というのも購入したという記録もあった。カース伯爵家を捕らえる理由に出来る。後でイリオスに詳しい報告書を提出しておく」

「助かる、ヒンメル」

 ヒンメルの言葉を聞き、ミストラルは少しだけ安堵の表情を浮かべる。

「私達の加護の見せどころだね、ルミナ、お兄様」

「そうだね、オーラ。リヴィを僕達で守れる」

「そうだな。これで堂々と私もリヴィを守れるな」

 叔父達の話を聞きながら、オーロラとルミナス、リュミエールが頷き合う。
 その遣り取りを聞いたラディウスも、隣に立つリヴィアスの肩を抱く。

「俺も、ヴィアを守る。この前の太陽神様の時のようにはしない」

「はい。僕もアシェル様方をお守りします」

 嬉しそうにラディウスに微笑み、リヴィアスも頷く。

「それなら、リヴィ君。この二ヶ月の間に、私の加護を使いこなせるようになろうか。しっかり教えるよ」

 リヴィアスの頭を撫でながら、アリアンロッドも微笑む。

「はい、宜しくお願い致します」

 アリアンロッドにリヴィアスは頭を下げる。

「……リヴィアスが二人??」

 今気付いたらしいヒンメルが、リヴィアスとアリアンロッドをぽかんと口を開けて見つめる。

「あ、ヒンメルおじ様。この方は月の女神様のアリアンロッド様です」

「え、月の女神様……? リヴィアスの加護に月の女神様の加護があるのは知っているが、神様って、そんなに簡単に顕現されるのか……? 神様、初めて見るんだが……」

 ヒンメルが震える手を口元に持っていく。

「リヴィ君は、私の加護を与えた愛し子だからね。愛し子を悪意の塊に奪われる訳にはいかないよ。ましてや、同じ神の悪神が関与しているならね」

「悪神……? ウィキッド子爵の次男?」

 眉を寄せて、ヒンメルが呟く。

「流石、査問機関の一員だね。少しの情報で答えを導き出したね」

 銀色の目を細めて、アリアンロッドはヒンメルを見る。
 同じ顔のリヴィアスとは違う表情のアリアンロッドを見て、ヒンメルは僅かに眉を動かす。

「私は加護を与えたリヴィ君自身には関与出来るけど、他の事柄には関与出来ない。ブラカーシュとエリスロースで起きたことで、貴方達がまだ気付いていないこともあるから、この二ヶ月で出来れば導き出して欲しい。それがリヴィ君を間接的に守ることになるから」

 穏やかに微笑み、アリアンロッドはイリオス国王、カエルム国王、ミストラル、ヒンメルの順に見る。イリオス国王達は頷き、アリアンロッドに頭を垂れる。

「ラディウス君はリヴィ君をしっかり愛してね。それだけで、リヴィ君の心も身体も守れるから」

 にっこりと満面の笑みを、リヴィアスとラディウスにアリアンロッドは向ける。
 その言葉を聞いたリヴィアスは顔を真っ赤にして、ラディウスも満面の笑みを浮かべる。

「もちろんです。アリアンロッド様のお墨付きも頂いたので、しっかり今日から今まで以上にヴィアを愛します」

「え、アシェル様?!」

 驚きつつも、恥ずかしくなり、ゆっくりと逃げようとしていたリヴィアスをラディウスはしっかりと婚約者の腰を抱いて逃がさない。
 その遣り取りを見て、レインは苦笑する。

「ラディウス君、しっかりリヴィ君の心を安心させてあげて。リヴィ君、明日から加護の使い方を教えるから、宜しくね?」

 にっこりと笑って、アリアンロッドは姿を消した。
 アリアンロッドが姿を消した場所をリヴィアスは呆然と見つめ、顔を真っ赤にした。

「……あー……ラディ。婚約したとはいえ、リヴィちゃんは未成年だからな? 一線越えるなよ。月の女神様から言われたからといって、越えたら婚約がなくなるからな?」

 浮かれそうな雰囲気のラディウスに釘を刺し、ミーティア王妃はちらりとミストラルを見る。隣でカエルム国王もイリオス国王も同じようにミストラルを見ている。

「……王太子。未成年のリヴィアスを困らせるようなことをすれば、許さないからな? 釘は刺したぞ?」

 普段以上の重低音の声で、ミストラルが冷ややかな笑みと共に釘を刺した。
 その笑顔がいつぞやのリヴィアスの冷ややかな笑顔と似ていたことに気付き、ラディウスは縦に頭を動かしながら、愛しの婚約者は怒らせると父親に似ていると心に刻んだのだった。
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