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終章 貴方と共に
新しい侍女の懺悔
それは突然の言葉だった。
「え? 父様。僕にもう一人、侍女を付けるのですか?」
リヴィアスは天色の目を丸くして、対面に座る父ミストラルを見つめた。
ここ、ブラカーシュ王国の隣国、エリスロース竜王国の王太子ラディウスと婚約してから半年が経つ。
婚約してからリヴィアスは、王太子妃教育を受けるために、王立タイバス学園の休暇に王都から転移魔法陣を使って、定期的に実家であるレイディアンス辺境領に戻っている。戻ると、時間がある時はラディウスが騎竜のフォスに乗って、迎えに来てくれることもある。
今日がそうだったようで、リヴィアスが座るソファにラディウスも座っている。
「ああ。リヴィはこのまま行けば、エリスロースの王太子妃だ。今まで以上に公に出る場面も増え、準備が何かと多くなる。命を狙う輩も増えてくる。陽光宮に侍女やメイドがいたとしても、リヴィの機微や気心が知れて、動ける侍女は今のところアクアのみ。リヴィの身の回りのフォローを含め、動ける侍従のアンブラやアクアでは手一杯の場合もある」
心配の色を滲ませ、ミストラルは紺碧色の目をリヴィアスに向ける。
「今のうちから、もう一人付けて、慣れさせた方がリヴィをより守れる。付ける予定の侍女は、護身も出来る。護衛のルーチェとも連携が出来る。私やグレイシア達が常にいればいいが、そういう訳にもいかない。親戚や侍従達がエリスロースにいるとはいえ、一人、隣国に嫁ぐことになる息子を守る手は、たくさん打っておきたい」
ミストラルからの言葉に、リヴィアスは目を何度も瞬かせる。
父がここまで心配してくれていることに、リヴィアスは胸が熱くなる。
婚約破棄で父にも家族、親族にも多大な迷惑を掛けてしまった。
学園で聞いた噂でしかないが、婚約破棄をされると、した側には何故かお咎めがなく、された側にはお咎めがあることが多いそうだ。
された側が浮気をしていたり、悪事を働いていた場合は仕方がないが、そうではない場合は家から追い出されたり、修道院へ送られたり、婚約破棄されたことで名前に傷が付き、条件の良い婚約は出来ず、何処かの年老いた貴族の後妻のような形で婚約を新たに結ぶしかないことが多いそうだ。
その点、リヴィアスの場合は、婚約破棄された理由が冤罪であり、した側がたくさんの女性と浮気をしたり、その中の一人の浮気相手との子供を作っていたりと稀なことではあるが、された側に同情される内容であったため、名前に傷はほとんど付いていない。
婚約破棄は突然ではあったが、何故か怒りはなかった。
むしろ、婚約破棄された本人より、周りの家族と親族の方の怒りが凄かった。
更には、新たに婚約した相手が人柄も地位も、元婚約者と比べて、かなり上であり、大切にしてくれるので、幸運だったといえる。
そんな幸運に、更に護身も出来るという新たに加わる侍女を自分に付けてもらっていいのだろうかと、リヴィアスは考える。
「父様、ありがとうございます。でも、いいのでしょうか? 侍女になる方のほとんどは、貴族の令嬢で、未婚です。未婚のご令嬢を隣国に連れて行くことになります。ご婚約者がいらっしゃるのでは……?」
「……本人たっての希望だ。婚約者はいない」
優雅に長い足を組んで、ミストラルはリヴィアスが淹れた薬草茶が入ったティーカップに口を付ける。
今日の薬草茶は、疲労回復効果のあるものだ。
「ミストラル大公。その侍女に婚約者がいないのは、何か理由があるのですか?」
少し眉を寄せて、ラディウスは目の前の将来の義理の父に問う。
「それは本人から聞くといい。又聞きは誤解を生む場合があり、伝わり方や解釈も変わる」
ミストラルが告げると、待っていたかのように扉を叩く音が聞こえた。
「ちょうど良い。その侍女が挨拶に来たようだ。リヴィ、ラディウス王太子。気になることは本人に聞くといい」
ミストラルが言い終えると同時に、扉が開く。
その扉から入って来たのは、ミストラルの側近
フューズ、牡丹色の長い髪を後頭部に丸く纏めて結われ、意志の強い、大きな紫色の目、侍女の服装の、リヴィアスと同じ年頃の女性だった。
「失礼致します。ミストラル様、新しく入った侍女をお連れ致しました」
「ありがとう、フューズ。リヴィ、ラディウス王太子。彼女が先程、話した侍女だ」
ミストラルはリヴィアスとラディウスに紹介しながら、ちらりと侍女に目配せした。
「リヴィアス様、ラディウス王太子殿下。お初にお目に掛かります。ライム・アネモス・ヴィンドルと申します。本日よりリヴィアス様の侍女としてお仕えさせて頂きます。どうぞ、宜しくお願い致します」
きっちりとした角度のお辞儀をして、侍女は自己紹介をする。
侍女を見たリヴィアスとラディウスは、ソファから立ち上がる。何かを感じ取ったのか、ラディウスの表情は固い。
そのラディウスが動く前に、リヴィアスが動き、侍女に近付く。
「ヴィア……!」
ラディウスが止める前に、リヴィアスは侍女の目の前に立つ。
婚約破棄の時から少し背が伸びたリヴィアスのちょうど目の位置に、侍女の頭がある。
目の前に現れたリヴィアスに、侍女が固まる。
「お久し振りですね、モノリス嬢。王家のパーティーの時と比べて、少し痩せたように見受けますが、具合は大丈夫ですか?」
心配そうに侍女の顔を覗き込んで、リヴィアスは尋ねる。
リヴィアスの言葉を聞いた、侍女本人はもちろん、ラディウスやミストラル、フューズが固まる。
「あ、あの……リヴィアス様、私は……」
驚きと戸惑いの表情で、侍女はリヴィアスとミストラルを交互に見る。
「……リヴィ、侍女がモノリスだと、いつ気付いたんだ?」
「え? 部屋に入って来た時からですが……」
きょとんとした表情で、リヴィアスは首を傾げる。
「何故、分かった? 髪の色を魔法で変えている上に、所作も全て徹底的に侍女として教育されているのだが」
「髪の色を魔法で変えたり、所作が一年前と比べて洗練されても、纏う魔力や目の輝きはなかなか変えるのは難しいと思います。アシェル様もすぐ気付かれてましたよね?」
「ああ、私の場合は竜神の加護の影響で、五感が人より優れているから、すぐに分かったが、ヴィアもすぐに気付くとは思わなかった」
「モノリス嬢とは、タイバス学園で何度かお会いしましたから。でも、良かったのですか? 一年前とはいえ、僕のことでたくさん辛い目に遭ったと思います。もう会いたくないであろう僕の侍女になるのは、本当にモノリス嬢の意志ですか? 誰かに強要されていませんか?」
尚も心配そうに侍女の顔を覗き込み、リヴィアスは尋ねる。
「ーーはい、私の意志です」
侍女は真っ直ぐリヴィアスを見上げ、大きく頷く。
「リヴィアス様。一年前までは貴方様の心をたくさん傷付けて、本当に申し訳ございませんでした。謝って済むとはもちろん思っていません。これからは誠心誠意、リヴィアス様にお仕えし、お守りすることで、少しでもお役に立ちたいと思っております。どうか、私を侍女として選んで頂けないでしょうか」
「待て。一年前、お前はヴィアとヴィアの元婚約者を侍らせるつもりだったはずだ。たった一年でそこまで心変わりするものか?」
「ラディウス王太子殿下のお言葉は尤もです。私はこの一年、ミストラル大公殿下とリュミエール王太子殿下方に、その、たくさん教育を施して頂きまして、私は恋をする気持ちがなくなりました。今は、仲睦まじいお二人を応援したく思います」
「……どんな教育を施したんだ、ミストラル大公……」
途中、言い淀む侍女の言葉を聞いて、思わず、ラディウスが誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。想像したくなくて、ラディウスはそっと目を逸らした。
「恋をする気持ちがない……成程、それで婚約者がいないということか……。だが、侍女は貴族の令嬢がなることがほとんどだ。確か、一年前、リュミエール王太子が貴族の養女になることを禁じたはず……」
「……モノリスに対して、禁じたことだ。名を変えれば、養女になることが出来る」
「つまり、禁じた王家がすり抜けさせたということですか。理由は何ですか? 彼女をヴィアの侍女にする理由が分かりません」
ミストラルの言葉を聞いて、思わず、ラディウスは頭を搔く。
「モノリスーー今はライム・アネモス・ヴィンドルという名になり、私の側近のフューズのヴィンドル侯爵家の養女になった。養女にしたのは、彼女が持つ加護を、リヴィを守るために使って欲しいと考えたからだ」
「加護ですか?」
首を傾げ、リヴィアスは父に顔を向ける。
「私は、全てではないですが、物理も魔法も攻撃を防ぐ加護ーー盾神の加護を持っています。その加護で、リヴィアス様をあらゆる悪意からお守りしたいのです」
「それは、罪滅ぼしの為ですか? それなら、気にしないで下さい。僕は大丈夫です。ウィキッド子爵令息達にはもう会いたくもありませんが、モノリス嬢には幸せになって欲しいんです。男爵家の養女になったばかりのモノリス嬢にとって、アルギロスの言葉は、悪意なのか、好意なのか判別がつかなかったと思います。これからはそんな人達に騙されずに幸せになって欲しいと、僕は願ってます」
身を案じるように、にこやかにリヴィアスは告げる。
「いいえ! 違うのです、リヴィアス様! 私は……私は、パーティーで初めてリヴィアス様にお会いした時から、リヴィアス様に口説かれたいとか、私が平民から男爵家の養女になって、もっと上に這い上がりたいから、他の貴族達に羨ましがられたいから、そんな気持ちで、ウィキッド子爵令息やリヴィアス様に近付いたのです。そんな邪な気持ちで、リヴィアス様の心と婚約を傷付けた私が幸せになるだなんて、なってはいけないのです」
「どうしてですか? 良いなと思った方に口説かれたいとか、もっと上に這い上がりたいとか、羨ましがられたいと思う気持ちは、邪なんですか? その気持ちは誰しも思うことだと思います。もちろん、婚約者がいる方に口説かれたいと思うことはいいですが、実行するのは宜しくないです。僕もウィキッド子爵令息との婚約が決まるまでは、素敵な人に出会えたら、口説きたい、口説かれたい。婚約者になる方と、僕の両親のように仲睦まじくなりたいと夢見ていました。かなり遠回りしましたが、その夢は今の婚約者様と出会えたことで叶いました」
いつの間にか、隣に立っているラディウスに、リヴィアスは顔を向けて微笑み、侍女に向き直る。
「心から尊敬する両親や兄、弟が近くにいますので、比べられると力が弱い僕は出来損ないと思われてしまうと考えて、違う分野でもっと上に這い上がりたいという気持ちと、辺境領に住まう人達を守りたいという気持ちで薬師の勉強をして、薬師になりました。人前に立つのがあまり好きではないですが、たくさんの人に羨ましがられたいという気持ちも少なからずあります。そんな気持ちがある僕は、モノリス嬢が仰る、邪ですか?」
リヴィアスの言葉に、侍女は小さく首を振る。
「……家族や親族には伝えましたが、実はウィキッド子爵令息に対して、恋愛感情は持っていません。婚約当初から浮気をし続ける婚約者に、恋愛感情なんて持てません。それでも、父が僕のことを案じて考えて下さった婚約だからと、夫婦ではなく、家族としてなら支えられるかもしれないと六年間、耐えました。今思うと、耐えなくて良かったのではと、自分でも思います。知らず知らずのうちに、僕の心も傷付いていたのだと分かります。あのまま婚約が続いていれば、いつか、僕は普段、選択しないことを選んでいたかもしれません。ですが、モノリス嬢が現れて、ウィキッド子爵令息が浮気をして、婚約破棄となりました。もちろん、婚約者がいる人に言い寄るのは宜しくないですよ? でも、モノリス嬢のことは僕を元婚約者の呪縛から解放して下さった恩人だと僕は思ってます。だから、貴女にも幸せになって欲しいです」
慈愛に満ちた微笑みを侍女に向け、リヴィアスはハンカチを取り出し、彼女に渡す。
「……ありがとう、ございます、リヴィアス様。こんな私にも優しい言葉を下さるなんて……。それでも、私は、優しいリヴィアス様をお守りしたいです。私の加護がお役に立てるのなら、お側で悪意からお守りしたいです。もちろん、それは恋愛感情ではありません。お仕えする侍女としてです」
震える手でハンカチを受け取り、侍女は止まらない涙を流しながら、リヴィアスを真っ直ぐ見つめる。
「分かりました。僕の侍女になって下さい。でも、ご自身も幸せになることを諦めないで下さいね。貴女が幸せになることも僕の幸せに繋がりますから。それを約束して頂けますか?」
「はい」
リヴィアスの問い掛けに、侍女は大きく頷く。
「モノリス嬢ーーいいえ、ライム。今日から宜しくね?」
侍女のアクアに言うような気さくさで、リヴィアスは微笑んだ。
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
モノリスーーライムは深々とリヴィアスにお辞儀をした。
新しい侍女ライムとの挨拶を終え、リヴィアスはラディウスと共に自室へ戻った。
新しい侍女との挨拶が長くなったことで、エリスロース竜王国には翌日行くことになった。
自室のテーブルセットで、リヴィアスは薬草茶をラディウスに淹れ、差し出す。
「……ヴィア。先程の話で気になったことがあるのだが、聞いてもいいか?」
「はい、何でしょうか、アシェル様」
目を瞬かせながら、リヴィアスは首を傾げる。
「口説かれたいとか、もっと上に這い上がりたいとか、羨ましがられたいとか、思ったことがあるのか?」
持っていたティーカップを受け皿に戻し、リヴィアスはラディウスに向けて微笑む。
「今は思ってません。少し昔、まだ小さい、五歳の頃くらいに思ってました。薬神の加護について深く理解出来てなくて、同じ男性なのに、父や兄、一歳下の弟よりも力が弱い僕は、剣の鍛練を熟すことが出来なくて、一部の使用人や騎士達に陰で、兄と弟と比べて僕は出来損ないと言われてましたから。それなら、別の分野で見返したいと、薬神の加護があるのだからと、薬師の勉強を始めたんです。もちろん、辺境領の皆を守りたいという気持ちの方が強いですよ。僕は聖人君子ではありません。こういう感情は、人間誰しも持つ感情だと思います。アシェル様は、そんな感情を持つ僕は嫌ですか?」
苦笑いを浮かべ、リヴィアスはラディウスを見つめる。
「いいや。今感じるヴィアの匂いと、先程の匂いが少し違ったから、気になったんだ。嘘というより、昔感じたことなのか、今も感じていることなのか、少し心配になったんだ。どんなヴィアでも、俺は嫌いにならない。ただ、子供の頃から俺がヴィアの傍にいてあげられたら良かったなと思っただけだ」
そう言って、ラディウスはリヴィアスを抱き上げ、膝に乗せ、後ろから抱き締める。
「先程は、昔の感情を思い出しただけですよ。今は大丈夫です。人それぞれ得手不得手があることを知ってますし、昔感じたことがなければ、たくさんの薬を作ろうとすることも出来なかったかもしれません」
後ろから抱き締めてくれるラディウスの大きな手に触れ、リヴィウスは微笑む。
心の強さを滲ませるリヴィアスの綺麗な微笑みに目を奪われ、ラディウスは更に強く抱き締める。
「もう一つ、あるんだが”普段、選択しないことを選んでいたかもしれない“というのは、どんな選択だ?」
「正気の僕が絶対に選ばないことです。薬師の僕が、絶対に選ばないことです」
「……それは、まさか……」
「……はい。自ら、生を閉じることです」
ラディウスの大きな手を強く握り、リヴィアスの笑みが小さくなる。
「あのまま、元婚約者との婚約が続いていれば、何処かでその選択を選んでいたと思います。今思うと、そのくらい、心は疲弊していたと思います」
リヴィアスの言葉に、ラディウスは彼を包むように抱き締める。
「だから、今は本当に幸せなんです。アシェル様が僕を否定せずに、たくさん肯定して愛して下さるから、落ちていた僕の心は癒されてるんです。僕がアシェル様から離れたくないくらいに」
「ーー俺も、ヴィアが愛しくて、傍から離れたくない。本当なら、未成年なんて無視してすぐにでも結婚したい。流石に王太子だから、国の頂点が法を破る訳にはいかないから、我慢しているが」
リヴィアスの首筋に顔を寄せ、ラディウスは細い腰に回している手の力を更に込める。
「ふふ。あと、一年です。それまで婚約者としての関係を楽しみませんか? 結婚したら出来なくなることがあるかもしれません。あ、僕、アシェル様とデートがしたいです」
「時間を作って、行こう。何処がいい?」
「エリスロース竜王国の素敵な場所に行きたいです」
「考えておくよ」
ラディウスの言葉に、リヴィアスは嬉しそうに微笑んだ。
「え? 父様。僕にもう一人、侍女を付けるのですか?」
リヴィアスは天色の目を丸くして、対面に座る父ミストラルを見つめた。
ここ、ブラカーシュ王国の隣国、エリスロース竜王国の王太子ラディウスと婚約してから半年が経つ。
婚約してからリヴィアスは、王太子妃教育を受けるために、王立タイバス学園の休暇に王都から転移魔法陣を使って、定期的に実家であるレイディアンス辺境領に戻っている。戻ると、時間がある時はラディウスが騎竜のフォスに乗って、迎えに来てくれることもある。
今日がそうだったようで、リヴィアスが座るソファにラディウスも座っている。
「ああ。リヴィはこのまま行けば、エリスロースの王太子妃だ。今まで以上に公に出る場面も増え、準備が何かと多くなる。命を狙う輩も増えてくる。陽光宮に侍女やメイドがいたとしても、リヴィの機微や気心が知れて、動ける侍女は今のところアクアのみ。リヴィの身の回りのフォローを含め、動ける侍従のアンブラやアクアでは手一杯の場合もある」
心配の色を滲ませ、ミストラルは紺碧色の目をリヴィアスに向ける。
「今のうちから、もう一人付けて、慣れさせた方がリヴィをより守れる。付ける予定の侍女は、護身も出来る。護衛のルーチェとも連携が出来る。私やグレイシア達が常にいればいいが、そういう訳にもいかない。親戚や侍従達がエリスロースにいるとはいえ、一人、隣国に嫁ぐことになる息子を守る手は、たくさん打っておきたい」
ミストラルからの言葉に、リヴィアスは目を何度も瞬かせる。
父がここまで心配してくれていることに、リヴィアスは胸が熱くなる。
婚約破棄で父にも家族、親族にも多大な迷惑を掛けてしまった。
学園で聞いた噂でしかないが、婚約破棄をされると、した側には何故かお咎めがなく、された側にはお咎めがあることが多いそうだ。
された側が浮気をしていたり、悪事を働いていた場合は仕方がないが、そうではない場合は家から追い出されたり、修道院へ送られたり、婚約破棄されたことで名前に傷が付き、条件の良い婚約は出来ず、何処かの年老いた貴族の後妻のような形で婚約を新たに結ぶしかないことが多いそうだ。
その点、リヴィアスの場合は、婚約破棄された理由が冤罪であり、した側がたくさんの女性と浮気をしたり、その中の一人の浮気相手との子供を作っていたりと稀なことではあるが、された側に同情される内容であったため、名前に傷はほとんど付いていない。
婚約破棄は突然ではあったが、何故か怒りはなかった。
むしろ、婚約破棄された本人より、周りの家族と親族の方の怒りが凄かった。
更には、新たに婚約した相手が人柄も地位も、元婚約者と比べて、かなり上であり、大切にしてくれるので、幸運だったといえる。
そんな幸運に、更に護身も出来るという新たに加わる侍女を自分に付けてもらっていいのだろうかと、リヴィアスは考える。
「父様、ありがとうございます。でも、いいのでしょうか? 侍女になる方のほとんどは、貴族の令嬢で、未婚です。未婚のご令嬢を隣国に連れて行くことになります。ご婚約者がいらっしゃるのでは……?」
「……本人たっての希望だ。婚約者はいない」
優雅に長い足を組んで、ミストラルはリヴィアスが淹れた薬草茶が入ったティーカップに口を付ける。
今日の薬草茶は、疲労回復効果のあるものだ。
「ミストラル大公。その侍女に婚約者がいないのは、何か理由があるのですか?」
少し眉を寄せて、ラディウスは目の前の将来の義理の父に問う。
「それは本人から聞くといい。又聞きは誤解を生む場合があり、伝わり方や解釈も変わる」
ミストラルが告げると、待っていたかのように扉を叩く音が聞こえた。
「ちょうど良い。その侍女が挨拶に来たようだ。リヴィ、ラディウス王太子。気になることは本人に聞くといい」
ミストラルが言い終えると同時に、扉が開く。
その扉から入って来たのは、ミストラルの側近
フューズ、牡丹色の長い髪を後頭部に丸く纏めて結われ、意志の強い、大きな紫色の目、侍女の服装の、リヴィアスと同じ年頃の女性だった。
「失礼致します。ミストラル様、新しく入った侍女をお連れ致しました」
「ありがとう、フューズ。リヴィ、ラディウス王太子。彼女が先程、話した侍女だ」
ミストラルはリヴィアスとラディウスに紹介しながら、ちらりと侍女に目配せした。
「リヴィアス様、ラディウス王太子殿下。お初にお目に掛かります。ライム・アネモス・ヴィンドルと申します。本日よりリヴィアス様の侍女としてお仕えさせて頂きます。どうぞ、宜しくお願い致します」
きっちりとした角度のお辞儀をして、侍女は自己紹介をする。
侍女を見たリヴィアスとラディウスは、ソファから立ち上がる。何かを感じ取ったのか、ラディウスの表情は固い。
そのラディウスが動く前に、リヴィアスが動き、侍女に近付く。
「ヴィア……!」
ラディウスが止める前に、リヴィアスは侍女の目の前に立つ。
婚約破棄の時から少し背が伸びたリヴィアスのちょうど目の位置に、侍女の頭がある。
目の前に現れたリヴィアスに、侍女が固まる。
「お久し振りですね、モノリス嬢。王家のパーティーの時と比べて、少し痩せたように見受けますが、具合は大丈夫ですか?」
心配そうに侍女の顔を覗き込んで、リヴィアスは尋ねる。
リヴィアスの言葉を聞いた、侍女本人はもちろん、ラディウスやミストラル、フューズが固まる。
「あ、あの……リヴィアス様、私は……」
驚きと戸惑いの表情で、侍女はリヴィアスとミストラルを交互に見る。
「……リヴィ、侍女がモノリスだと、いつ気付いたんだ?」
「え? 部屋に入って来た時からですが……」
きょとんとした表情で、リヴィアスは首を傾げる。
「何故、分かった? 髪の色を魔法で変えている上に、所作も全て徹底的に侍女として教育されているのだが」
「髪の色を魔法で変えたり、所作が一年前と比べて洗練されても、纏う魔力や目の輝きはなかなか変えるのは難しいと思います。アシェル様もすぐ気付かれてましたよね?」
「ああ、私の場合は竜神の加護の影響で、五感が人より優れているから、すぐに分かったが、ヴィアもすぐに気付くとは思わなかった」
「モノリス嬢とは、タイバス学園で何度かお会いしましたから。でも、良かったのですか? 一年前とはいえ、僕のことでたくさん辛い目に遭ったと思います。もう会いたくないであろう僕の侍女になるのは、本当にモノリス嬢の意志ですか? 誰かに強要されていませんか?」
尚も心配そうに侍女の顔を覗き込み、リヴィアスは尋ねる。
「ーーはい、私の意志です」
侍女は真っ直ぐリヴィアスを見上げ、大きく頷く。
「リヴィアス様。一年前までは貴方様の心をたくさん傷付けて、本当に申し訳ございませんでした。謝って済むとはもちろん思っていません。これからは誠心誠意、リヴィアス様にお仕えし、お守りすることで、少しでもお役に立ちたいと思っております。どうか、私を侍女として選んで頂けないでしょうか」
「待て。一年前、お前はヴィアとヴィアの元婚約者を侍らせるつもりだったはずだ。たった一年でそこまで心変わりするものか?」
「ラディウス王太子殿下のお言葉は尤もです。私はこの一年、ミストラル大公殿下とリュミエール王太子殿下方に、その、たくさん教育を施して頂きまして、私は恋をする気持ちがなくなりました。今は、仲睦まじいお二人を応援したく思います」
「……どんな教育を施したんだ、ミストラル大公……」
途中、言い淀む侍女の言葉を聞いて、思わず、ラディウスが誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。想像したくなくて、ラディウスはそっと目を逸らした。
「恋をする気持ちがない……成程、それで婚約者がいないということか……。だが、侍女は貴族の令嬢がなることがほとんどだ。確か、一年前、リュミエール王太子が貴族の養女になることを禁じたはず……」
「……モノリスに対して、禁じたことだ。名を変えれば、養女になることが出来る」
「つまり、禁じた王家がすり抜けさせたということですか。理由は何ですか? 彼女をヴィアの侍女にする理由が分かりません」
ミストラルの言葉を聞いて、思わず、ラディウスは頭を搔く。
「モノリスーー今はライム・アネモス・ヴィンドルという名になり、私の側近のフューズのヴィンドル侯爵家の養女になった。養女にしたのは、彼女が持つ加護を、リヴィを守るために使って欲しいと考えたからだ」
「加護ですか?」
首を傾げ、リヴィアスは父に顔を向ける。
「私は、全てではないですが、物理も魔法も攻撃を防ぐ加護ーー盾神の加護を持っています。その加護で、リヴィアス様をあらゆる悪意からお守りしたいのです」
「それは、罪滅ぼしの為ですか? それなら、気にしないで下さい。僕は大丈夫です。ウィキッド子爵令息達にはもう会いたくもありませんが、モノリス嬢には幸せになって欲しいんです。男爵家の養女になったばかりのモノリス嬢にとって、アルギロスの言葉は、悪意なのか、好意なのか判別がつかなかったと思います。これからはそんな人達に騙されずに幸せになって欲しいと、僕は願ってます」
身を案じるように、にこやかにリヴィアスは告げる。
「いいえ! 違うのです、リヴィアス様! 私は……私は、パーティーで初めてリヴィアス様にお会いした時から、リヴィアス様に口説かれたいとか、私が平民から男爵家の養女になって、もっと上に這い上がりたいから、他の貴族達に羨ましがられたいから、そんな気持ちで、ウィキッド子爵令息やリヴィアス様に近付いたのです。そんな邪な気持ちで、リヴィアス様の心と婚約を傷付けた私が幸せになるだなんて、なってはいけないのです」
「どうしてですか? 良いなと思った方に口説かれたいとか、もっと上に這い上がりたいとか、羨ましがられたいと思う気持ちは、邪なんですか? その気持ちは誰しも思うことだと思います。もちろん、婚約者がいる方に口説かれたいと思うことはいいですが、実行するのは宜しくないです。僕もウィキッド子爵令息との婚約が決まるまでは、素敵な人に出会えたら、口説きたい、口説かれたい。婚約者になる方と、僕の両親のように仲睦まじくなりたいと夢見ていました。かなり遠回りしましたが、その夢は今の婚約者様と出会えたことで叶いました」
いつの間にか、隣に立っているラディウスに、リヴィアスは顔を向けて微笑み、侍女に向き直る。
「心から尊敬する両親や兄、弟が近くにいますので、比べられると力が弱い僕は出来損ないと思われてしまうと考えて、違う分野でもっと上に這い上がりたいという気持ちと、辺境領に住まう人達を守りたいという気持ちで薬師の勉強をして、薬師になりました。人前に立つのがあまり好きではないですが、たくさんの人に羨ましがられたいという気持ちも少なからずあります。そんな気持ちがある僕は、モノリス嬢が仰る、邪ですか?」
リヴィアスの言葉に、侍女は小さく首を振る。
「……家族や親族には伝えましたが、実はウィキッド子爵令息に対して、恋愛感情は持っていません。婚約当初から浮気をし続ける婚約者に、恋愛感情なんて持てません。それでも、父が僕のことを案じて考えて下さった婚約だからと、夫婦ではなく、家族としてなら支えられるかもしれないと六年間、耐えました。今思うと、耐えなくて良かったのではと、自分でも思います。知らず知らずのうちに、僕の心も傷付いていたのだと分かります。あのまま婚約が続いていれば、いつか、僕は普段、選択しないことを選んでいたかもしれません。ですが、モノリス嬢が現れて、ウィキッド子爵令息が浮気をして、婚約破棄となりました。もちろん、婚約者がいる人に言い寄るのは宜しくないですよ? でも、モノリス嬢のことは僕を元婚約者の呪縛から解放して下さった恩人だと僕は思ってます。だから、貴女にも幸せになって欲しいです」
慈愛に満ちた微笑みを侍女に向け、リヴィアスはハンカチを取り出し、彼女に渡す。
「……ありがとう、ございます、リヴィアス様。こんな私にも優しい言葉を下さるなんて……。それでも、私は、優しいリヴィアス様をお守りしたいです。私の加護がお役に立てるのなら、お側で悪意からお守りしたいです。もちろん、それは恋愛感情ではありません。お仕えする侍女としてです」
震える手でハンカチを受け取り、侍女は止まらない涙を流しながら、リヴィアスを真っ直ぐ見つめる。
「分かりました。僕の侍女になって下さい。でも、ご自身も幸せになることを諦めないで下さいね。貴女が幸せになることも僕の幸せに繋がりますから。それを約束して頂けますか?」
「はい」
リヴィアスの問い掛けに、侍女は大きく頷く。
「モノリス嬢ーーいいえ、ライム。今日から宜しくね?」
侍女のアクアに言うような気さくさで、リヴィアスは微笑んだ。
「こちらこそ、宜しくお願い致します」
モノリスーーライムは深々とリヴィアスにお辞儀をした。
新しい侍女ライムとの挨拶を終え、リヴィアスはラディウスと共に自室へ戻った。
新しい侍女との挨拶が長くなったことで、エリスロース竜王国には翌日行くことになった。
自室のテーブルセットで、リヴィアスは薬草茶をラディウスに淹れ、差し出す。
「……ヴィア。先程の話で気になったことがあるのだが、聞いてもいいか?」
「はい、何でしょうか、アシェル様」
目を瞬かせながら、リヴィアスは首を傾げる。
「口説かれたいとか、もっと上に這い上がりたいとか、羨ましがられたいとか、思ったことがあるのか?」
持っていたティーカップを受け皿に戻し、リヴィアスはラディウスに向けて微笑む。
「今は思ってません。少し昔、まだ小さい、五歳の頃くらいに思ってました。薬神の加護について深く理解出来てなくて、同じ男性なのに、父や兄、一歳下の弟よりも力が弱い僕は、剣の鍛練を熟すことが出来なくて、一部の使用人や騎士達に陰で、兄と弟と比べて僕は出来損ないと言われてましたから。それなら、別の分野で見返したいと、薬神の加護があるのだからと、薬師の勉強を始めたんです。もちろん、辺境領の皆を守りたいという気持ちの方が強いですよ。僕は聖人君子ではありません。こういう感情は、人間誰しも持つ感情だと思います。アシェル様は、そんな感情を持つ僕は嫌ですか?」
苦笑いを浮かべ、リヴィアスはラディウスを見つめる。
「いいや。今感じるヴィアの匂いと、先程の匂いが少し違ったから、気になったんだ。嘘というより、昔感じたことなのか、今も感じていることなのか、少し心配になったんだ。どんなヴィアでも、俺は嫌いにならない。ただ、子供の頃から俺がヴィアの傍にいてあげられたら良かったなと思っただけだ」
そう言って、ラディウスはリヴィアスを抱き上げ、膝に乗せ、後ろから抱き締める。
「先程は、昔の感情を思い出しただけですよ。今は大丈夫です。人それぞれ得手不得手があることを知ってますし、昔感じたことがなければ、たくさんの薬を作ろうとすることも出来なかったかもしれません」
後ろから抱き締めてくれるラディウスの大きな手に触れ、リヴィウスは微笑む。
心の強さを滲ませるリヴィアスの綺麗な微笑みに目を奪われ、ラディウスは更に強く抱き締める。
「もう一つ、あるんだが”普段、選択しないことを選んでいたかもしれない“というのは、どんな選択だ?」
「正気の僕が絶対に選ばないことです。薬師の僕が、絶対に選ばないことです」
「……それは、まさか……」
「……はい。自ら、生を閉じることです」
ラディウスの大きな手を強く握り、リヴィアスの笑みが小さくなる。
「あのまま、元婚約者との婚約が続いていれば、何処かでその選択を選んでいたと思います。今思うと、そのくらい、心は疲弊していたと思います」
リヴィアスの言葉に、ラディウスは彼を包むように抱き締める。
「だから、今は本当に幸せなんです。アシェル様が僕を否定せずに、たくさん肯定して愛して下さるから、落ちていた僕の心は癒されてるんです。僕がアシェル様から離れたくないくらいに」
「ーー俺も、ヴィアが愛しくて、傍から離れたくない。本当なら、未成年なんて無視してすぐにでも結婚したい。流石に王太子だから、国の頂点が法を破る訳にはいかないから、我慢しているが」
リヴィアスの首筋に顔を寄せ、ラディウスは細い腰に回している手の力を更に込める。
「ふふ。あと、一年です。それまで婚約者としての関係を楽しみませんか? 結婚したら出来なくなることがあるかもしれません。あ、僕、アシェル様とデートがしたいです」
「時間を作って、行こう。何処がいい?」
「エリスロース竜王国の素敵な場所に行きたいです」
「考えておくよ」
ラディウスの言葉に、リヴィアスは嬉しそうに微笑んだ。
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※短編です。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4800文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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