光と闇の継承者〜神に選ばれた少女の物語〜

加藤 すみれ

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一章 別れと出会い、歪みの“兆し”

水色に咲く微精霊

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それから二人は、日が傾くまで語り合った。

話しているうちに分かったこと。
ルイは「弱いから殺される」と言われ、村から逃げてきたのだという。
そして、二人は同じ年、同じ日に生まれたこと。

「生まれたのが同じだなんて…すごい偶然ね」
スミレの声は少し緊張しつつも、嬉しさを含んで震えていた。
ルイの頬がわずかに赤く染まり、互いの存在が少しずつ心をほどいていくのを感じる。

笑い声や、風に揺れる木々のざわめきが、二人の周りに柔らかく漂う。
日が傾き、湖面にオレンジの光が反射するたび、五年前の光景がふと重なった。
水面を蹴ってはしゃぐクリスタたちの声。
その中に自分がいるような錯覚に、スミレの胸は締めつけられる。

「あっ、そろそろ帰らないと…また明日会いましょう」
スミレは立ち上がろうとするルイを見上げ、ふと提案する。
「そういえば、家はどうするの? 追い出されたのなら、よければ私の家に来る?」

ルイは驚いたように首を振る。
「い、いや、大丈夫だ。俺は寒さには慣れてるから」

「そう? じゃあまた明日、ここで会おう」
「あぁ…」

家に戻ると、そこには母、メイサが待っていた。
「何をしていたの! 家から出るなって、あれだけ言ったでしょう!?」

五年前の事件以来、母はスミレに容赦なく厳しくなった。
外出もほとんど許されず、友人と過ごす時間も制限されている。
普段は強く優しいメイサの表情も、今は怒りで硬く閉ざされていた。

―多分、母さんは私が友達も守れない、役立たずだと思っているのね―
スミレは胸の奥で静かに呟いた。

「姉上、大丈夫ですか?」
「えぇ、大丈夫よ」

りりなとしゅんが心配そうに声をかけるが、スミレは何も話さなかった。
何か嫌な予感があったのだ。ルイとのことは、二人には内緒にしておこう。

「何も。ただ、ぼーっとしてただけで、こんな時間になっちゃった」
そう言うと、スミレは自分の部屋へと戻っていった。


数日後、スミレは再びルイと会い、森の中で散歩を楽しむほどに親しくなった。

「昨日、リリナが何もないところで転んで、くるくる回って壁にぶつかったの」
「ははっ、本当に君の妹はドジだな」

笑い声が二人を包み、湖の水面が光を反射してきらめく。
だが、ふと背後から、微かに泣く声が聞こえた。

「誰かが泣いてる…?」

二人は声のする方へ向かう。そこは花畑で、甘く優しい香りが漂っていた。
小さな微精霊が、花の間で涙を零している。

「どうしたの? 微精霊さん」
「あのね…私の命形めいけいが育たないの」

微精霊の下には、まだ蕾の花がひっそりと咲いている。

「命形…?」
ルイは首をかしげる。
「命形は精霊の命そのもののようなもの。生まれてから五十年ほど経つと、精霊へと成長できるの」

微精霊は小さく震えながら訴える。
「でも、私の命形は百年たっても成長しないの…」

スミレは微笑み、優しく手を伸ばした。
「大丈夫。あなたの魔力が足りないだけ。私がすぐに助けてあげるわ」

深く息を吸い、スミレはそっと歌い始めた。

『ルマ ヴェイリ シャラ ノ レニ
ティラ ソルン エイラ フェヤ
ヴァシャ エルン キレス ノラ
セリ シラ フリャ ヴェア

アル ヴェンナ シヨ トラ ルム
フェヤ フィラ ノ セルン
ティラ ソル ルマ シラ
ニラ ヴェア シャイン

キレス ノ リナ ア ノル
シラ ヴェア シャラ レニ
ティラ フェヤ ルミナ ノ
ア シャイン フォーエバー

ヴァシャ エルン シラ ソラ
ティラ ルミナ ヴェイリ
ア マイ ア ルム フリャ
ニラ シャイン ヴェア ア』


歌が終わると、蕾だった花は淡い水色に輝き、花びらがゆっくり開いた。
微精霊は、もやもやとしたピンク色の姿から、水色の花のドレスをまとった精霊へと変わる。

「ありがとう…私の命形を育ててくれて。あなたに、世界樹の加護がありますように」

精霊は微笑み、森の中に静かに姿を消した。
湖面には光の輪が広がり、五年前の笑い声と風のざわめきが、微かに重なって聞こえるようだった。

その瞬間、湖のほとりに一人の女性が立っていた。
その瞳は深く、温かく、スミレの胸に不思議な安心感を与えた。
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