光と闇の継承者〜神に選ばれた少女の物語〜

加藤 すみれ

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2章 歪みの中で出会う者たち

神となる資格と少女の覚悟

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「ねぇ、スミレ。あなた、何か私たちに隠していない?」

その言葉を聞いた瞬間、スミレの肩が小さく跳ねた。
びくりと震えたその反応が、何よりの答えだった。

「……なんのこと? 別に、何も隠してないよ?」

そう答えながらも、顔色は明らかに悪い。
唇はわずかに震え、視線は定まらなかった。

「スミレ、何を隠しているの? お願い、教えて」

その声に、スミレは言葉を失う。

そこへ、イレイナが姿を現した。

「スミレはね。私と契約したとはいえ、その寿命は――」

「イレイナ!!」

鋭い声が、言葉を遮った。
イレイナは目を伏せ、口を閉ざす。

「スミレ? 寿命って……いったい、どういうことなんだ?」

嫌な予感が、部屋を満たしていく。

「っ……」

言葉を失ったスミレの手を、メイサが強く握った。

「お願い。話して。
 自分の娘のことを、何も知らないままでいるなんて……私は嫌なの」

その真剣な眼差しから、スミレは逃げられなかった。

「私は……」

震える声で、スミレは口を開く。

「私の命は、もう……そんなに残ってないの」

絞り出すようなその一言に、誰もが息を呑んだ。

そのとき、扉の向こうで何かが落ちる音が響いた。
直後、シュンとリリナが駆け込んでくる。

「姉上!! 本当なのですか!?」

「姉さま! 説明を求めます!!」

シュンとリリナは焦った顔をして部屋に入ってきた。
その額には、汗がにじんでいる。

逃げ場は、もうなかった。

スミレは小さく息を吐き、すべてを語り始める。

「私の魔力は、イレイナと契約したことで、足と目が使えるくらいには制御できるようになった。
 でも……それでも、完全じゃない」

一瞬、言葉を区切り――

「私は、もっても三年の命よ。
 もし、これ以上魔力が増えるようなら……私は、すぐにでも死ぬわ」

その言葉に、メイサ、シュン、リリナは力を失ったように崩れ落ちた。
他の者たちも、声を出せず、ただ涙を流すことしかできなかった。

「なぜ……」

ルイの声は低く、震えていた。

「なぜ、そんなことを黙っていたんだ?」

その声には、怒りよりも痛みが滲んでいた。

「だって……心配してほしくなかったから」

スミレは、静かに微笑もうとした。

「あなたたちには、ずっと笑顔でいてほしかったから」

その頬を、一筋の涙が伝う。

しばらくの間、誰も何も言えなかった。
重苦しい沈黙を破ったのは、アイビスだった。

「お前は……
 魔力が増える可能性があると言ったな」

静かな問いかけ。

「それはどういうことだ?
 普通なら、魔力は増えないはずだろう?」

その言葉に、誰もが一筋の希望を見出した。
魔力さえ増えなければ、三年は生きられる――。

だが、その希望は、すぐに打ち砕かれる。

「グレイルが言っていたでしょう?
『今は未熟。だが、その器はすでに完成している。
 いずれ――“そこ”へ至る力だ』って」

その名が出た瞬間、空気が凍りついた。

「グレイルは、魔神王を名乗った。
 だったら……女神の神が生まれても、おかしくはない」

「……その神が、君だというのか?」

―違うと言ってくれ―
誰もが、そんな目でスミレを見つめていた。

「そう」

スミレは、はっきりと頷く。

「私は、もう資格を持っている。
 神となる資格を」

静かに、だが確実に言葉を重ねる。

「私は、いつでも神になれる。
 でも、神となって、一日経てば、この命は……」

その先を、誰も聞けなかった。

自由に世界を見て、自由に歩けるようになった少女は、
もうすぐ、その命を失う。

その事実を、誰も信じたくなかった。

「スミレ……やっぱり、あなたは……」

「行きますよ。下界へ」

はっきりとした声だった。

その言葉に、周囲は怒りと悲しみの入り混じった視線を向ける。

「そんな顔をしないでください」

スミレは、まっすぐに皆を見つめた。

「残り少ない命なら……せめて、大切な人のために使いたい。
 それが、私の願いです」

その表情に宿る決意を、誰も否定できなかった。

「……わかったわ」

メイサが、震える声で言う。

「その代わり、一年で帰ってきて。
 仲間が全員集まらなくてもいい。
 最後の二年は、私たちと過ごして」

「わかりました」

スミレは、力強く頷く。

「一年で戻ります。
 仲間を全員集めて――この戦いを、終わらせてみせます」
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