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22. 歌劇場にはご注意ください?
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シュゼットは、天覧席に誰かが座ったのに気が付いた。チラッと目の片隅で様子を伺ったところ、人影が二人いることを認めた。一人はヤツ。そしてもう一人は同じ髪色をした姉姫だろうと思った。
(まあ、5年振りですし、ここからは顔なんか判りませんわ)
すでに照明が落ちて暗くなった1階の客席から、天覧席の貴人の姿は見えない。こちらにヤツが気付くことは無いはずだ。私は以前の面影が無い程に変わってしまったし? まして予定と違ったパートナーと一緒にいるし?
(さて、このままゆっくり観劇している場合ではないわね。エーリック殿下もカテリーナ様もいるなら、ご挨拶はしなくてはいけないわ。さて、ヤツに会うか? 会わないか?)
はっきり言って、ヤツだって10歳の子供の頃から、この5年で結構変わっているはずだ。
(だって、エーリック殿下もセドリック様だって随分大人っぽくなったもの。エーリック様は、最初お会いした時、女の子と思う位い可愛らしかったですわ。おかっぱの黒髪で、童話に出てくるお人形の様でしたもの!)
思い出すと頬が緩んでしまいそうになる。背丈だってそんなに変わらなかったはずなのに、今ではシュゼットを軽く越してしまい、頭一つ高くなっている。そして、少女人形の様な可愛らしさが薄れてキリリとした美少年になった。
(そう言えば、エーリック殿下に婚約者とかいるのかしら? 聞いたことがありませんけど?)
今まで考えたことも、聞いたことも無かったけれど。でも、ヤツにそんな話がある以上、彼にもあるのかもしれない。
(まあ、無い方が不思議ですわね?)
(……)
(……?)
(……セドリック様は……?)
変わっていないかも。
初めて会った時から、今も変わらない気がした。言ってることと行動のインパクトが強すぎて、他の事が記憶に残っていないのかしら?
(なーんて! そんなことは、ありませんわ!)
思わず自分で突っ込んでしまった。
そう、セドリックとはずっと教室で席が隣同士だった。遅れて入学してきたシュゼットの隣の席が、学級委員のセドリックだったのだ。
普通にしていれば良いのに。と、何度思ったことか。
サラリとした癖の無いアッシュブロンドの髪は、彼の祖母の出身地による特徴だと聞いた。北方系の切れ長のアイスブルーの瞳に白い顔。普通にしていればキレイな顔だと思うけど、それを裏切る数々の言動。そして、自分の容姿に全く興味を持っていなそうなところが、
……残念。本当に残念過ぎます。
(そうですわよ! 髪だって、前髪が長すぎますわ! 後ろはちゃんと短く切ってあるのに、何のポリシーですの? 折角の綺麗なアイスブルーの瞳が隠れていますのよ! 勿体ないですわ!! 髪を切るか、さもなければ上げなさいよ!)
年に何度かそう言い合いになった。その度に試験の結果を賭けたり、順位を競ったりしていた。まあ、シュゼットは負けてもランチを一緒に食べるという、自分にはデメリットにならない罰? を受けた。
(そう言えば、随分前髪が長くなっていましたわね? もしかして、1年切っていなかったのしら?)
たまに前髪を上げる時があった。問題を考えながらくしゃりと搔き乱す時、剣術の授業で汗に濡れた時、急な天気で小雨に降られた時……アイスブルーの瞳は、幼い時から変わらぬ澄んだ水色だった。
時折、彼の瞳が自分をじっと見ていることがあったような気がする。大体、身長差から見下ろされることになるシュゼットが、それに気付くのは妙な皮肉? とか妙な嫌味? を言われている時だった。
(何でしょう? とっても、残念な気持ちになってしまったわ)
でも、エーリックとセドリックの幼い時の事を思い出したら、少し元気が出てきたような気がした。
此処コレール王国には無い5年間が、彼等と共にある。確かにあるのだから。
「ふふふ・・」
笑うところでは無いのに、思わず小さく微笑んでしまった。声が聞こえたかもしれない。でも、聞こえたとしてもシルヴァしかいない。
(大丈夫ですわ。 さあ、2幕が始まるまでが勝負ですわね?)
幕間の休憩時間まではもう少し。
「遅れてしまった。エーリック殿下に叱られるな」
セドリックが馬車の中で独り言つ。
本当ならば時間に間に合うように官邸を出られたはずだった。しかし、来客の名前を聞いて足を止めてしまった。普段ならどんな高官が来ようが気に留めることも無かったのに。
グリーンフィールド外務大臣。ほんの少し前まで、ダリナスにコレールからの外交大使として駐在していた。シュゼットの父親。
「シュゼットが劇場に……」
グリーンフィールド大臣は、誰かの侍従? らしき人物が訪ねて来て話をしてから、暫く一人百面相をしていた。やっとそれが落ち着いた頃に、シュゼットが歌劇場に行っていることが何となく判った。はっきり聞こえた訳では無いが、そんな感じの事をお付きの従者と話していた。替わりに誰かが一緒に行くとか何とか?
(まったく! 観劇に行くなら、行くと言えばいいのに。いや、寧むしろ行きたいから、連れて行ってくれと言ってくれれば! 一緒に行くのもやぶさかでは無い!)
それから馬車に乗った。父親の事より、やっぱり娘の方が気になった。
「言ってくれれば、エスコートだってしたものを! 全く言葉が足りないな!! シュゼット・メレリア・グリーンフィールド!」
とりあえず、幕間の休憩時間に間に合うように、ゆっくりと馬車は歌劇場を目指していた。
「……」(考)
「……しかし、誰がエスコートしたんだ?」
(まあ、5年振りですし、ここからは顔なんか判りませんわ)
すでに照明が落ちて暗くなった1階の客席から、天覧席の貴人の姿は見えない。こちらにヤツが気付くことは無いはずだ。私は以前の面影が無い程に変わってしまったし? まして予定と違ったパートナーと一緒にいるし?
(さて、このままゆっくり観劇している場合ではないわね。エーリック殿下もカテリーナ様もいるなら、ご挨拶はしなくてはいけないわ。さて、ヤツに会うか? 会わないか?)
はっきり言って、ヤツだって10歳の子供の頃から、この5年で結構変わっているはずだ。
(だって、エーリック殿下もセドリック様だって随分大人っぽくなったもの。エーリック様は、最初お会いした時、女の子と思う位い可愛らしかったですわ。おかっぱの黒髪で、童話に出てくるお人形の様でしたもの!)
思い出すと頬が緩んでしまいそうになる。背丈だってそんなに変わらなかったはずなのに、今ではシュゼットを軽く越してしまい、頭一つ高くなっている。そして、少女人形の様な可愛らしさが薄れてキリリとした美少年になった。
(そう言えば、エーリック殿下に婚約者とかいるのかしら? 聞いたことがありませんけど?)
今まで考えたことも、聞いたことも無かったけれど。でも、ヤツにそんな話がある以上、彼にもあるのかもしれない。
(まあ、無い方が不思議ですわね?)
(……)
(……?)
(……セドリック様は……?)
変わっていないかも。
初めて会った時から、今も変わらない気がした。言ってることと行動のインパクトが強すぎて、他の事が記憶に残っていないのかしら?
(なーんて! そんなことは、ありませんわ!)
思わず自分で突っ込んでしまった。
そう、セドリックとはずっと教室で席が隣同士だった。遅れて入学してきたシュゼットの隣の席が、学級委員のセドリックだったのだ。
普通にしていれば良いのに。と、何度思ったことか。
サラリとした癖の無いアッシュブロンドの髪は、彼の祖母の出身地による特徴だと聞いた。北方系の切れ長のアイスブルーの瞳に白い顔。普通にしていればキレイな顔だと思うけど、それを裏切る数々の言動。そして、自分の容姿に全く興味を持っていなそうなところが、
……残念。本当に残念過ぎます。
(そうですわよ! 髪だって、前髪が長すぎますわ! 後ろはちゃんと短く切ってあるのに、何のポリシーですの? 折角の綺麗なアイスブルーの瞳が隠れていますのよ! 勿体ないですわ!! 髪を切るか、さもなければ上げなさいよ!)
年に何度かそう言い合いになった。その度に試験の結果を賭けたり、順位を競ったりしていた。まあ、シュゼットは負けてもランチを一緒に食べるという、自分にはデメリットにならない罰? を受けた。
(そう言えば、随分前髪が長くなっていましたわね? もしかして、1年切っていなかったのしら?)
たまに前髪を上げる時があった。問題を考えながらくしゃりと搔き乱す時、剣術の授業で汗に濡れた時、急な天気で小雨に降られた時……アイスブルーの瞳は、幼い時から変わらぬ澄んだ水色だった。
時折、彼の瞳が自分をじっと見ていることがあったような気がする。大体、身長差から見下ろされることになるシュゼットが、それに気付くのは妙な皮肉? とか妙な嫌味? を言われている時だった。
(何でしょう? とっても、残念な気持ちになってしまったわ)
でも、エーリックとセドリックの幼い時の事を思い出したら、少し元気が出てきたような気がした。
此処コレール王国には無い5年間が、彼等と共にある。確かにあるのだから。
「ふふふ・・」
笑うところでは無いのに、思わず小さく微笑んでしまった。声が聞こえたかもしれない。でも、聞こえたとしてもシルヴァしかいない。
(大丈夫ですわ。 さあ、2幕が始まるまでが勝負ですわね?)
幕間の休憩時間まではもう少し。
「遅れてしまった。エーリック殿下に叱られるな」
セドリックが馬車の中で独り言つ。
本当ならば時間に間に合うように官邸を出られたはずだった。しかし、来客の名前を聞いて足を止めてしまった。普段ならどんな高官が来ようが気に留めることも無かったのに。
グリーンフィールド外務大臣。ほんの少し前まで、ダリナスにコレールからの外交大使として駐在していた。シュゼットの父親。
「シュゼットが劇場に……」
グリーンフィールド大臣は、誰かの侍従? らしき人物が訪ねて来て話をしてから、暫く一人百面相をしていた。やっとそれが落ち着いた頃に、シュゼットが歌劇場に行っていることが何となく判った。はっきり聞こえた訳では無いが、そんな感じの事をお付きの従者と話していた。替わりに誰かが一緒に行くとか何とか?
(まったく! 観劇に行くなら、行くと言えばいいのに。いや、寧むしろ行きたいから、連れて行ってくれと言ってくれれば! 一緒に行くのもやぶさかでは無い!)
それから馬車に乗った。父親の事より、やっぱり娘の方が気になった。
「言ってくれれば、エスコートだってしたものを! 全く言葉が足りないな!! シュゼット・メレリア・グリーンフィールド!」
とりあえず、幕間の休憩時間に間に合うように、ゆっくりと馬車は歌劇場を目指していた。
「……」(考)
「……しかし、誰がエスコートしたんだ?」
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