【更新中】悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! -5年前「白パンダ」と私を嗤った皆様に今度は天使の姿でリベンジします! 覚悟は宜しくて?-

薪乃めのう

文字の大きさ
32 / 121

31. 食堂ホールは混沌として?

しおりを挟む
 白のクラス。



 知っている人は、ほとんどいません。故郷コレールに帰って来たのに、知っている顔はダリナス王国の人達ばかりですわ。カテリーナ様は真ん中辺り、エーリック殿下とセドリック様は前側の席です。

 挨拶を終えた私は、セントル先生に席を教わり、自分の席に向かいます。男女がそれぞれ列になって並んでいます。そうですね。テレジア学院は平民も貴族も男女の一緒でしたけど、王立学院は貴族のみですから自然と男女を分けているのです。ってか?

「お隣、失礼しますわ。シュゼットです。よろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそ。あの、さっきは、あ、ありがとうございます……ローナ・ピア・カリノです。宜しくお願いします」

 先程、廊下で遭遇したローナ様のお隣です。まあ、記憶をくすぐるフォルムの方です。
 授業が始まりますから、挨拶は早々に切り上げて椅子に座ります。カテリーナ様が斜め前、エーリック殿下は隣の列でお隣、セドリック様はその前のお席です。

 近ちかっ! まあ、5年振りの本国への帰国で、知り合いもいない事にご配慮頂いたという事でしょうか? まあ、気は楽ですね。それにローナ様は……デジャブる感じが何とも言えません。





「シュゼット!! さあ! ランチに行きましょう!」

 カテリーナ様が、後ろに振り返ってにっこりと微笑みます。

「はい。カテリーナ様、ご一緒させて下さいな」

 午前中の授業はあっさり終わりました。何というか、正直眠くなるような緩さでしたわ。そのせいか、カテリーナ様のはきはきした声音と言い方が気持ち良いです。

「私達も一緒に行くよ? 良いよね?」

 エーリック様も声を掛けて下さいます。昨日の事がありますので、正直とっても気恥ずかしいですけど、ここは平静を保って肯定の意味を込めて微笑みかけます。

「……」
「? セドリック様も行きましょう?」

 いつになく大人しいです。普通なら、ここぞとばかりに上から目線で、何か言ってくるはずですけど? どうしました?

「セドリック様?」

 顔を覗き込んで、もう一度聞きます。

「なっ!? シュゼット・メレリア・グリーンフィールド! か、顔が近い! 判った! 行くから!」

 そう言うと顔を真っ赤にして、思いっきり肩を押しやられました。

「あっ」

 押された拍子に足元が揺らぎ一歩後ろに下がると、トン!! と何かにぶつかった感じがしました。




「痛いですわ。騒いでいないで、早くどいて下さらないこと? 通れませんのよ」

 ドナタデスカ? この金髪縦ロールの方は?

「イザベラ、そんな言い方をするものでは無いよ」



 誰よ。



「だって、フェリックス様。通路の真ん中にいらっしゃるのですもの」


 ヤツだ。ヤツと婚約者候補の一人、イザベラ様ですか。

 まじまじと二人を見ようとしましたけど、エーリック様が私と彼らの間に立ちはだかって、良く見えません。

「ああ。済まなかったね? つい話し込んでしまったね。さあ、シュゼットはこちらに来て?」

 エーリック様に手を取られて胸元近くに引き寄せられます。これってもしかして、挑発シテマスカ?

「さあ、シュゼット。私達も早く食堂に行こう。じゃあ、お先にね? フェリックス殿」

 物凄く良い笑顔で、エーリック様が言いますけど、言われているヤツとイザベラ様の表情を見ることはできません。背を向けるように手を握られていますもの。

「イザベラ、失礼致しますわ?」

 カテリーナ様のその笑顔は、さっきのエーリック殿下と同じです。それって、でしょうか?




 編入試験の時に来たことのある食堂ホールは、学生たちで賑わっていました。さすがに隣国のダリナスの王子と従姉妹姫には、テーブルがリザーブされていました。4人掛けのテーブルですから、私とセドリック様もご一緒させて頂きます。

「シュゼット、今日のAランチにしましょう? サラダ仕立てのパスタとアイスクリームですもの?如何かしら?」

 カテリーナ様が、メニューを見せてくれながらお薦めを教えてくれます。良いですね。それにしましょう。手元に広げられたメニューから目を上げると、周囲からの視線を感じます。

「やっぱり、注目されているね?」



 エーリック様が、周りを見回してそう言いました。そこかしこから視線を感じますし、ヒソヒソコソコソとこちらを見ては囁かれています。

「そうですね。編入生が珍しいのでしょう? それに、皆さんとご一緒していますのも。注目されて当然ですわ」
「それだけじゃ無いと思うけどね? まあ、今日の所はそれでもいいけど」

 ところで、向こうの角席は、ヤツ達の席の様ですわ。ヤツとあれはさっきのイザベラ様? それに銀髪の短い髪の男性……従兄弟のオーランド様かしら? 素晴らしい赤毛の女性がテーブルに着いてるのが見えます。もしや、あれはもう一人の婚約者候補のドロシア様でしょうか?

(なに? 今からテーブルを一緒に食事をしているの? ヤダ。冗談じゃないわ!)

 イザベラ様とヤツ達は、一緒にここまで来たということ。さっきの態度から、イザベラ様は結構気が強いタイプのようです。でもまあ、セドリック様も言っていましたしね。イザベラ様とドロシア様は張り合っているって。



「ご苦労様ですわ」



 私は小声で呟きました。



「本当ね」



 カテリーナ様に聞こえていたようです。向こうのテーブルを見ながら、肩を竦めておっしゃいました。

 注文したお料理は学生食堂とは思えないほど、綺麗に盛り付けられて、とても美味しく頂けました。

 ところで、ずっと気になっていましたけど、セドリック様がずっと大人しいです。たまに目が合いますけど、その度に目を逸らされたり、眉間に皺を寄せられたり。本当に、何時も変ですけど、今日はとびきり変ですわ。



 そして、食後のお茶がサーブされた時でした。



「グリーンフィールド。体調は大丈夫だったか?」

 手元に影が落ちたように思いました。すぐそばで、聞いたことのある声がします。

 あっ。ハート先生……

「先日は、ご迷惑をお掛けいたしました。一晩寝たらすっかり良くなりましたの。本当にご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした」

 椅子から立ち上がって少し腰を落とすと、ハート先生を見上げてお礼を言いました。本当に申し訳なかったのですもの。

「……大丈夫だったら良い。私も悪かった。は気を付けるようにしよう」

 静かな声でそう言われました。
 そして、綺麗に畳まれた絹のハンカチを手渡されました。

 「これは?」

 白地に銀色の糸で縁かがりがされた上等な物です。こてんと首を傾げて聞きました。

「君の侍女に渡してもらえれば判る」
「……そうですか? 承知しましたわ。必ず渡します」

 良く判りませんが、マリに渡せば判るのでしょう。私は手提げポーチに丁寧にしまいました。







「ハート先生、気を付けて下さいね? 彼女は私のですから」

 エーリック殿下が、じっと先生を見上げて言いました。
 普段はこんな風にお話しされるのでしょうか? 涼しい顔で言う彼に、ハート先生はちょっとだけ目を見張ったように見えました。まあ、気のせいかもしれませんけど。
 承知したという代わりに、片手を挙げたハート先生が、食堂ホールから出て行かれるようです。目で追っていると……

 じっと私を見ているセドリック様と目が合いました。あっ。ホッペが真っ赤になりました。耳もですわ。
 そして、また、思いっきり目を逸らされました。 まったく! 今日は何だって言うのですか!?
 セドリック様に呆れて、ふと先のテーブルを見ると、そこにはローナ様が居ました。お一人で長テーブルの角に座っています。





 真剣なその目線の先には……オーランド様と、言葉を交わすヤツの姿がありました。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...