【更新中】悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! -5年前「白パンダ」と私を嗤った皆様に今度は天使の姿でリベンジします! 覚悟は宜しくて?-

薪乃めのう

文字の大きさ
58 / 121

57. 王子様と天使の攻防

しおりを挟む
「ロイ!」「ロイ様?」


 植込みの角から芝生に踏み入って来たのはロイだった。
 怪訝そうな表情ではあったが、シュゼットの姿を見つけるとやんわりと微笑んだ。

「フェリックス殿下? シュゼット様? こんなところでどうされたのですか?」

 ロイは二人の顔を交互に見ながら、頭をかしげた。
 シュゼットが、口を開く前にフェリックスがロイに向かって答えた。

「歩道を散策していたシュゼット嬢に、ご一緒させて頂いた。そう言うお前はどうしてこんなところに?」

 さっきまでの様子が嘘のように、爽やかオーラを纏っている。さすが王子だ。

「ロイ様こそどうされたのですか?」

 シュゼットが笑顔でロイに向き直して問う。その笑顔にロイの頬はさっと朱に染まった。一瞬の表情の変化にフェリックスは気付いてしまった。


(ああ。やっぱりロイは、彼女の事が好きなんだ・・・)


「バザーの時に、こちらの庭に飲み物と菓子の売店を設置する予定なのですが、馬車寄せからの道案内版をどう立てたらいいか考えていたのです。それで、実際に歩いていたら、話し声がしたので。こんな時間に珍しいな? と思って見たらお二人だったのです」

 ニコニコしながら説明するロイの顔。茶色の目が嬉しそうに輝いている。シュゼットに向ける顔は、今まで見たことも無い表情だ。初めて見たその顔に、フェリックスは大いに驚いていた。













 5年前のお茶会のもう一つの目的。側近選び。

 貴族の子息との交流と称して少年達と馬上競技ポロをしたのだった。自分とオーランドがそれぞれ大将になってゲームをしたのだ。そこでロイの存在を知った。クルクルした茶色い髪と茶色い丸い瞳が仔犬のようで、あまり得意とは言えない馬術に、一生懸命な姿と明るい笑顔が気に入った。

 それに、ゲームが終わった後、乗馬した馬を他の者は従者に任せていたのに、彼だけは水場まで自分で連れて行った。彼の髪色と似た栗毛の馬の首を優しく撫でながら。その瞳に好感を持ったことが縁で、学院に通うようになってからは、オーランドと共に身近な存在になった。側近と言うには、まだまだ子供であったけれど。

 あれから、5年たったのだ。

(もう、コドモでは無いという事か・・・)

 頬を染めて嬉しそうに会話をするロイにそう思った。ロイは、多分。いや、絶対、シュゼットに恋をしている。
 複雑な気分がした。ロイは知っているはずだ。シュゼットも婚約者候補であることを。

(結局、コレが皆の気持ちに釘を刺しているんだ。エーリックにも、セドリックにも、ロイにも)

 彼等から見たら、制度を傘に自分の想い人を理不尽に縛る、いけ好かない男と言う立場に見えるだろう。フェリックス自身が望んだわけでは無いが、こうまで彼女を見詰める男が多いと居た堪れなくなる。

 レイシルの言った言葉が浮かんだ。

『そんなの、無くしてしまえば良いのに』

 自分だってそう思う。

「……あの、フェリックス殿下? もうすぐ授業が始まりますわ……」

 シュゼットとロイが穏やかに話をしているのを見ていた。ぼんやりしていた訳ではないが、その声に現実に引き戻された。思わず声のした方向に顔を向けると、シュゼットとロイも同じように振り返った。

「ローナ」

 ここにもいた。婚約者候補の一人が。









 木々の陰から、おずおずと顔を出したのは、ローナ様ですわ。もしや、ずっといらしたのですね。全く気が付きませんでした。この方の気配を消すスキルは相当な物ですわ。

「おはようございます。ローナ様」

 ロイ様ももいますから、軽くスカートを摘んで天使130%位で微笑んでご挨拶します。

「あ、あの、、急ぎませんと授業に遅れてしまいます」

 ああ。やっぱり私のことは無視ですか? 私の挨拶には目もくれませんの。
 でもね、流石ですよこの方。しっかりの方には笑顔を向けていますし、ロイ様にも言っていますのよ感を出していますもの。

 ソウキマスカ? アナタ?

「・・・」

 ローナ様、貴方がそういう態度なら、私にも考えがあります。貴方は堪こたえるでしょうけど?

「ローナ様のおっしゃる通りですわね。フェリックス様、教室まで急ぎましょう?」

 私は彼・に向かってそう言うと、の腕にそっと手を掛けました。早くこの場から抜け出ましょう。という意味を込めて。

「それでは、ロイ様、ローナ様? お先に失礼致しますわね」

 の腕を軽く引くように歩き出します。腕を引かれているは、驚いているようですが大人しく私のするままに任せてくれています。

 チラリと伺い見たローナ様の顔が真っ赤になって、垂れ目気味の目が悲しそうに顰ひそめられました。でも、あれは相当怒っているのでしょう。彼女の王子様(本物の王子様ですけど)を連れ去った魔女のように思われているかもしれません。









 でも、良いのです。彼女への仕返しは、彼女の居場所を奪うことですから。

「シュゼット嬢? あの、手を」

 隣から、小さな声が聞こえました。

「あっ」

 ずっと、彼の腕を引っ張るように手を添えていたのです。彼が遠慮がちに声を掛けてきたので、ようやくこの場所が人通りの多い正面玄関近くだと判りました。

 私ったら、ローナ様に見せつけるために随分と大胆な行動をしてしまったようです。思わず頬がカッと熱くなりました。だって、エーリック殿下やセドリック様以外とこんなに近づいたことは無かったですから。

 馬車から降りてくる生徒達が、チラチラとこちらを見ています。ここで注目されるのはイタイです。でも、自分から引っ張ってきたため彼との離れ際が判りません!



(どうしましょう!? 早まってしまいました。ローナ様に張り合った結果、こんな事に!!)

 隣にいる彼は、じっと私を見下ろしているのだと思います。そんな気配がビシビシ感じられますもの。



 慌てて、彼の腕から手を離そうとしたのですが、逆にその手はギュッと握られてしまいました。

(う、うそっ!!??)

「今日の放課後、もう一度話をしたい。時間を作って欲しい。良いと言うまでこの手は離さない。シュゼット嬢、お願いだ」

 どうしましょう! 人通りが多くなってきました。こんな状況をずっと見られているのは嫌ですけど、改めて話をするのも気が進みませんわ!! どうする? 私!?



『君はフェリックス殿と、話をした方が良いと思うよ』

 エーリック殿下のあの一言が再び胸に蘇ってきました。

「……」
「シュゼット嬢?」
「……判りました」

 私は、彼の顔を見上げて答えました。すると、不安そうなグリーントルマリンの瞳が安堵したように優しく細められました。





「ありがとう」

 握られていた手は、そっと外されて、小さな声でそう言われました。

「放課後、グリーンフィールド公爵家に伺いたい。良いだろうか?」

 なんと。我が家に来ますか? まあ、そうですね。学院の食堂ホールで話すのも気が引けますし、王宮に呼ばれるのも嫌です。名実ともにで迎え撃ちます。そうさせて下さい!

「……承知しました」





 まさかの急展開ですわ!!

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』  学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。  その瞬間、私は全てを思い出した。  私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。  幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。  ーーなんて、ひとり納得していたら。  何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?  更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。  しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。  タイムリミットは1年間。  その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

処理中です...