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78. 願い
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震えが止まらない。エーリックは、自分の肩を抱きしめる様に抱え、固まったように立ち尽くしている。
慌ただしく動き回る医師の間から、真っ白い顔をした彼の顔が見える。
柔らかく癖の無いアッシュブロンドの髪に、鮮やかな赤い血がベッタリと付いているのが見えた。ついさっき起こった惨事が窺うかがわれる。
「セドリック……」
駆け寄って、声を掛け、手を握り、身体を揺さぶって縋りつきたい位だった。
いつも自分の近くにいた。賑やかで、明るくて、空気が読めなさそうで、でも本当は感受性が豊かで繊細な、大切な大切な幼い頃からの友人。
こんな形で失うなんて、考えた事も無かった。
「セド。目を、目を覚ましてくれ。お願いだから……」
処置を受けているセドリックから、一瞬も目を離せずにいるエーリックの方も倒れそうな顔色だ。
「エーリック。こっちへ来い。ここに座って待て」
「……いえ。大丈夫です。ここにいます」
叔父の声にも応えず、じっと動かない。動けなかった。
シルヴァはエーリックの肩に手を載せると、大丈夫だと言うように力を込めて引き寄せた。
「医師長、どうだ? 状況を教えてくれ」
レイシルが長身の医師長に尋ねた。幾分白髪の混じった黒髪をオールバックに撫でつけている医師長は、険しい表情で振り返った。
「頭の傷は、皮膚を切ったので派手に出血をしていますが、深くは無いので、縫って閉じれば血も止まります。それから、右手と右足を骨折しています。多分、あばらにもヒビ位は入っていると思われます。神経の具合は、今の段階では判定できませんが」
「何時目を覚ます? 頭は大丈夫なのか?」
「判りません。傷は塞げば治ります。骨折も骨が付けば治ります。しかし、何段目から落ちたのか判りませんが、彼女がいたあの場所以上から転落したのならば、相当な衝撃があったはずです。頭の傷も、骨折もこの程度で済んだこと自体が奇跡です。首の骨や脊髄の損傷があったとしてもおかしくはありません。そんな危機的な状況ですから、最悪このまま目を覚まさない事も考えられます。とにかく数日は絶対安静で様子を診ましょう」
医師長の話から、頭を打ったことが相当深刻な状況であることが窺うかがわれる。
「……そうか。ならば、万全の態勢で治療に当たってくれ。彼は、ダリナス王国の外交大使、マラカイト公爵のご子息で、ここにいらっしゃるエーリック殿下のご学友だ。それに、シルヴァ王弟殿下とも懇意にされている。何としても治療してくれ、よろしく頼む」
普段尊大な態度でいるレイシルが、医師達に頭を下げて懇願する。
「私からも、お願いする。セドリック殿をどうか治して欲しい」
レイシルとよく似た少年に皆が目を向けた。コレールの人間ならば誰でも知っている、第一王子のフェリックスが目の前で同じように頭を下げていた。その顔に苦悩の陰が落ちている。
「殿下。顔を上げて下さい。承知しております。全力を尽くして治療に当たります」
何としても治さなければ。医師長は二つの国の王族にしっかりと頷いて見せた。
「シュゼット様。聞こえますか? 大変な事が起きてしまいましたよ! 聞こえていますか!?」
部屋の外から大きな音がした。何かが転がり落ちる様な大きな音。
思わずマリは、眠っているシュゼットの上に被さるように身を挺した。そして、服の襟から手を入れると、シルヴァから預かった識別章の指輪を引っ張り出して握り締めた。
「な、なんの音?」
すると、まるで何かに反応するように、指輪を通していた鎖がバラバラに切れた
「えっ!? 切れちゃった?」
驚いていると、隣の部屋の扉が開け放たれた音がして、廊下に誰かが飛び出した気配がした。
そして、エーリックの今まで聞いた事も無い叫び声が聞こえた。
『セドリックッ!? 大丈夫か!?』
「えっ!? セドリック様?」
シュゼットの身体の上から身を起こすと、指輪を握りしめたままマリは、扉を薄く開けて廊下を見た。廊下から階段を駆け下りるエーリックとシルヴァの姿が見えた。
まさか、セドリックが階段から落ちたのか? でも、この階段は病人向けに建てられているせいか、階段のステップの幅が広くて歩き易いはずだ。
(結界? でも、セドリック様がこの結界に弾かれるなんて事は、絶対に在り得ない)
マリはそっと部屋を出て、階段下の様子を見た。
「なっ!?」
踊り場に横たわる足が見えた。エーリックとシルヴァの陰になって、顔は見ることが出来ないがセドリックに間違いないのだろう。
『セド!! セドリック!! しっかりしろ!』
悲痛な呼びかけをするエーリックの声が響く。
(な、何てこと! セドリック様が、階段から落ちて怪我を!?)
壁沿いに恐る恐る様子を見るマリの目に、階段の中ほどにいる少女の姿が見えた。この場所に場違いなその存在に、驚きつつも見覚えがあった。
(ローナ様? 何でここに? なぜ、あの方があそこにいて、セドリック様が階段から落ちているの!?)
そうしているうちに数人の医師達が駆け付けると、宙に浮かぶ担架にセドリックを乗せて階段を滑るように上って来た。
「あっ!?」
目の前を医師に囲まれた担架が通り過ぎた。わずかに見えたセドリックの姿は、思わず目を背ける様子だった。髪にも、顔にも赤い血がベッタリと付き、その顔色は血の気を失って青白かった。
(まさか、ローナ様が結界に弾かれて、セドリック様が巻き添えになってしまったの?……)
さすがに気丈なマリも、その場から動けずに立ち竦んでいた。その間にセドリックが運び込まれた病室に、エーリックとシルヴァ、カイル達が入って行った。
(フェリックス殿下と、よく似たあの方がレイシル師長様……)
二人によってマリは状況を知ることが出来た。結界に弾かれたのはローナで、多分それを見たセドリックが咄嗟に庇って転落したようだ。
フェリックスによって謹慎を言い渡されたローナに、容赦なく留めを刺すようにレイシルが言い放った。
祈れ、と。
(それだけ、セドリック様の状況は悪いという事ですか……)
マリはローナとレイシルがその場から去った後、踊り場まで降りた。床には血の染みが広がり、まだ乾くことは無かった。生々しい血の匂いに思わずマリは鼻を覆った。
(あっ!! イケない!! 指輪が!?)
シルヴァの指輪がコロリと床に落ちてしまった。慌てて指輪を拾い上げて、傷や汚れが無いか日に透かして見た。念のためエプロンで指輪を拭うと、うっすらと赤い掠かすれが付いた様な気がした。
(大事な物なのに。失敗したわ。後でちゃんと磨かないと)
もう一度、指輪を握り締めると手摺から階段下を覗き込んだ。
そして見つけた。
踊り場の下に投げ捨てられた様に落ちているそれを。
小さな花束。シュゼットの好きな、良い香りの花だ。マリは花束を拾い上げ、軽く振って埃を払うと、階段をそっと上って来た。
その目の先にある床の染みが、怪我が重症である事を訴えてくる。背筋がブルリと震えた。
眠るシュゼットの枕元、彼女の右手を両手で包んで話しかける。ずっと握りしめていたシルヴァの指輪ごと。枕元には、さっき見つけた花束を飾った。
「シュゼット様。聞こえますか? 大変な事が起きてしまいましたよ! 聞こえていますか!?」
耳元に向かって呼びかける。
「セドリック様が、大怪我をしてしまいました。血も沢山出ています。もしかしたら、もう目を覚まさないかも知れません。お嬢様!! 早く目を覚まして下さい! セドリック様が死んでしまうかもしれませんよ!!」
呼びかけているマリの目にも涙が浮かんでいる。
「どうか、お嬢様……目を、目を覚まして下さい……!」
そう呟くと、マリは握り締めたシュゼットの手ごと涙を拭った。
慌ただしく動き回る医師の間から、真っ白い顔をした彼の顔が見える。
柔らかく癖の無いアッシュブロンドの髪に、鮮やかな赤い血がベッタリと付いているのが見えた。ついさっき起こった惨事が窺うかがわれる。
「セドリック……」
駆け寄って、声を掛け、手を握り、身体を揺さぶって縋りつきたい位だった。
いつも自分の近くにいた。賑やかで、明るくて、空気が読めなさそうで、でも本当は感受性が豊かで繊細な、大切な大切な幼い頃からの友人。
こんな形で失うなんて、考えた事も無かった。
「セド。目を、目を覚ましてくれ。お願いだから……」
処置を受けているセドリックから、一瞬も目を離せずにいるエーリックの方も倒れそうな顔色だ。
「エーリック。こっちへ来い。ここに座って待て」
「……いえ。大丈夫です。ここにいます」
叔父の声にも応えず、じっと動かない。動けなかった。
シルヴァはエーリックの肩に手を載せると、大丈夫だと言うように力を込めて引き寄せた。
「医師長、どうだ? 状況を教えてくれ」
レイシルが長身の医師長に尋ねた。幾分白髪の混じった黒髪をオールバックに撫でつけている医師長は、険しい表情で振り返った。
「頭の傷は、皮膚を切ったので派手に出血をしていますが、深くは無いので、縫って閉じれば血も止まります。それから、右手と右足を骨折しています。多分、あばらにもヒビ位は入っていると思われます。神経の具合は、今の段階では判定できませんが」
「何時目を覚ます? 頭は大丈夫なのか?」
「判りません。傷は塞げば治ります。骨折も骨が付けば治ります。しかし、何段目から落ちたのか判りませんが、彼女がいたあの場所以上から転落したのならば、相当な衝撃があったはずです。頭の傷も、骨折もこの程度で済んだこと自体が奇跡です。首の骨や脊髄の損傷があったとしてもおかしくはありません。そんな危機的な状況ですから、最悪このまま目を覚まさない事も考えられます。とにかく数日は絶対安静で様子を診ましょう」
医師長の話から、頭を打ったことが相当深刻な状況であることが窺うかがわれる。
「……そうか。ならば、万全の態勢で治療に当たってくれ。彼は、ダリナス王国の外交大使、マラカイト公爵のご子息で、ここにいらっしゃるエーリック殿下のご学友だ。それに、シルヴァ王弟殿下とも懇意にされている。何としても治療してくれ、よろしく頼む」
普段尊大な態度でいるレイシルが、医師達に頭を下げて懇願する。
「私からも、お願いする。セドリック殿をどうか治して欲しい」
レイシルとよく似た少年に皆が目を向けた。コレールの人間ならば誰でも知っている、第一王子のフェリックスが目の前で同じように頭を下げていた。その顔に苦悩の陰が落ちている。
「殿下。顔を上げて下さい。承知しております。全力を尽くして治療に当たります」
何としても治さなければ。医師長は二つの国の王族にしっかりと頷いて見せた。
「シュゼット様。聞こえますか? 大変な事が起きてしまいましたよ! 聞こえていますか!?」
部屋の外から大きな音がした。何かが転がり落ちる様な大きな音。
思わずマリは、眠っているシュゼットの上に被さるように身を挺した。そして、服の襟から手を入れると、シルヴァから預かった識別章の指輪を引っ張り出して握り締めた。
「な、なんの音?」
すると、まるで何かに反応するように、指輪を通していた鎖がバラバラに切れた
「えっ!? 切れちゃった?」
驚いていると、隣の部屋の扉が開け放たれた音がして、廊下に誰かが飛び出した気配がした。
そして、エーリックの今まで聞いた事も無い叫び声が聞こえた。
『セドリックッ!? 大丈夫か!?』
「えっ!? セドリック様?」
シュゼットの身体の上から身を起こすと、指輪を握りしめたままマリは、扉を薄く開けて廊下を見た。廊下から階段を駆け下りるエーリックとシルヴァの姿が見えた。
まさか、セドリックが階段から落ちたのか? でも、この階段は病人向けに建てられているせいか、階段のステップの幅が広くて歩き易いはずだ。
(結界? でも、セドリック様がこの結界に弾かれるなんて事は、絶対に在り得ない)
マリはそっと部屋を出て、階段下の様子を見た。
「なっ!?」
踊り場に横たわる足が見えた。エーリックとシルヴァの陰になって、顔は見ることが出来ないがセドリックに間違いないのだろう。
『セド!! セドリック!! しっかりしろ!』
悲痛な呼びかけをするエーリックの声が響く。
(な、何てこと! セドリック様が、階段から落ちて怪我を!?)
壁沿いに恐る恐る様子を見るマリの目に、階段の中ほどにいる少女の姿が見えた。この場所に場違いなその存在に、驚きつつも見覚えがあった。
(ローナ様? 何でここに? なぜ、あの方があそこにいて、セドリック様が階段から落ちているの!?)
そうしているうちに数人の医師達が駆け付けると、宙に浮かぶ担架にセドリックを乗せて階段を滑るように上って来た。
「あっ!?」
目の前を医師に囲まれた担架が通り過ぎた。わずかに見えたセドリックの姿は、思わず目を背ける様子だった。髪にも、顔にも赤い血がベッタリと付き、その顔色は血の気を失って青白かった。
(まさか、ローナ様が結界に弾かれて、セドリック様が巻き添えになってしまったの?……)
さすがに気丈なマリも、その場から動けずに立ち竦んでいた。その間にセドリックが運び込まれた病室に、エーリックとシルヴァ、カイル達が入って行った。
(フェリックス殿下と、よく似たあの方がレイシル師長様……)
二人によってマリは状況を知ることが出来た。結界に弾かれたのはローナで、多分それを見たセドリックが咄嗟に庇って転落したようだ。
フェリックスによって謹慎を言い渡されたローナに、容赦なく留めを刺すようにレイシルが言い放った。
祈れ、と。
(それだけ、セドリック様の状況は悪いという事ですか……)
マリはローナとレイシルがその場から去った後、踊り場まで降りた。床には血の染みが広がり、まだ乾くことは無かった。生々しい血の匂いに思わずマリは鼻を覆った。
(あっ!! イケない!! 指輪が!?)
シルヴァの指輪がコロリと床に落ちてしまった。慌てて指輪を拾い上げて、傷や汚れが無いか日に透かして見た。念のためエプロンで指輪を拭うと、うっすらと赤い掠かすれが付いた様な気がした。
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そして見つけた。
踊り場の下に投げ捨てられた様に落ちているそれを。
小さな花束。シュゼットの好きな、良い香りの花だ。マリは花束を拾い上げ、軽く振って埃を払うと、階段をそっと上って来た。
その目の先にある床の染みが、怪我が重症である事を訴えてくる。背筋がブルリと震えた。
眠るシュゼットの枕元、彼女の右手を両手で包んで話しかける。ずっと握りしめていたシルヴァの指輪ごと。枕元には、さっき見つけた花束を飾った。
「シュゼット様。聞こえますか? 大変な事が起きてしまいましたよ! 聞こえていますか!?」
耳元に向かって呼びかける。
「セドリック様が、大怪我をしてしまいました。血も沢山出ています。もしかしたら、もう目を覚まさないかも知れません。お嬢様!! 早く目を覚まして下さい! セドリック様が死んでしまうかもしれませんよ!!」
呼びかけているマリの目にも涙が浮かんでいる。
「どうか、お嬢様……目を、目を覚まして下さい……!」
そう呟くと、マリは握り締めたシュゼットの手ごと涙を拭った。
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