【更新中】悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! -5年前「白パンダ」と私を嗤った皆様に今度は天使の姿でリベンジします! 覚悟は宜しくて?-

薪乃めのう

文字の大きさ
81 / 121

80. サルベージ -再開-

しおりを挟む
「つまり、シルヴァ殿の指輪がイカリに出来るという事か」

 シュゼットの部屋に呼ばれたレイシルが、シルヴァの指輪を鑑定する。

「……確かに、シュゼット嬢と侍女殿、それからセドリックの気配を強く感じるな。シュゼットは君の事を相当大切に思っていたようだね? えっと……」
「マリと申します。レイシル神官長様」
「マリね。まだ挨拶していなかったな。レイシル・コールだ」

 シルヴァの陰に隠れるようにしていたマリだが、流石に神官長で高位議員を前にスルーは出来無かった。一歩前に出ると、公爵家仕込みのカーテシーで頭を垂れた。

「ああ。堅い挨拶は抜きで良い。マリ殿、君のお陰でサルベージのイカリが出来た。感謝する」

 目を細めて神々しい笑みを浮かべるレイシルに、マリは思わず目を見張った。王子とよく似ていると聞いていたが、年上の分だけ大人っぽく見える。それに、何て美しく神々しい姿なのかしら、と。

「あ、あのイカリと言うのは……?」

 先程から度々出てくるイカリとは何の事だろう。自分が関係しているお陰とか、マリにはサッパリ判らなかった。

「ああ、済まない。判らないよね。これからシュゼット嬢の沈んだ意識の引き上げを行うんだ。そして、その引き上げの魔法展開をサルベージと言うんだ」

 レイシルがマリに説明する。その隣でエーリックも詳しい事は初めての為、一言一句漏らすまいと真剣に聞いている。

「サルベージに重要なのは、どれだけ沈んだ意識の近くまで降りてルビ行けるかなんだ。でも、自ら意識を沈めたシュゼットの様な場合、近くまで降りて行くのが難しい。他者を近づけ無い強い拒絶があるからだ」

 レイシルは口元に指を当てると、少し眉根を寄せて続けた。自分のミスが更に彼女の拒絶を強固にしてしまった可能性があるからだ。

「だから、彼女に強い縁ある者の気・をイカリにすれば、彼女の拒絶も少ないはずだ。そのまま近づければ言葉も交わせるし、説得も可能だろう。
「多分? レイシル様、多分とはどういう意味ですか?」

 エーリックが聞き逃さずに指摘する。


「レイシルが多分と言っているのは、もう一つの心配があるからだ」

 シルヴァが枕元にある花束に眼を向けながら答え、花に顔を寄せて香りを確かめた。良い香りに気分も良くなりそうだ。

 花を一輪抜き取ると、シュゼットの小さな耳に髪を掛けてそこに差した。薄桃色の艶やかな頬にほんの少し指が滑ったのは、偶然では無かった。

「文献にあった、。これがサルベージにどんな影響をするか判らないからだ。幾ら強力な錨いかりで意識に近づけたとしても、引き上げるには彼女が自分で浮上する気が無ければ無理だろう。その気になったとしても負の心が重しになれば、簡単には浮上出来まい。とは言え、先程から指輪にシュゼットの気配を感じるから、少し引き上げられたのではないかと思う」
「そ……そんな。負の心って何ですか!? お嬢様に負の心って!」

 シルヴァの言葉に、マリが憤慨したように聞き返す。シュゼット至上主義のマリにとっては、主に負の心が影響するなど考えられない事だった。

「落ち着いてくれ。負の心と言うのは、人間なら誰しも持っている。持っていない人間などいない。負の心を全く持たない人間など、如何なる聖人君子でも在り得ない」
「そうだ。レイシル様も神官長ですしね」
 
 シレッとエーリックが言う。

「……うるさいよ」

 マリが理解したのは、とにかくシルヴァの指輪を使ってサルベージを掛けるらしい。そして、皆で呼びかけをして意識を引き上げ、説得して自ら浮上してくれることを願う。そう言う事の様だ。

「早くしましょう! お嬢様が目覚めれば、セドリック様も助けられますか!? 助けられますよね?」






 カイルがセドリックの治療が終わったことを知らせに来ると、そのまま直ぐにシュゼットのサルベージを行う事を伝えられた。

「シュゼットをセドリックの部屋に運ぶ。仮寝台を隣に並べてくれ。シュゼットは私が運ぼう」

 シルヴァがそう言うと、マリは寝間着が見えないようにガウンを丁寧に着せたり、膝掛を用意した。髪もさっきシルヴァが差した花が落ちないように編み込んだ。

 それを見たシルヴァの口元が、ほんの少し緩んだように見えた。

「それでは、行こう」

 掬い上げる様にシルヴァはシュゼットを横抱きにすると、一度揺すり上げて体勢をとった。くったりとした身体は力を感じることも無く凭れ掛かっているが、確かに気配は強くなっている様に感じる。

「指輪に気配がする……やはり、今行うのが良い」

 シュゼットを抱いたシルヴァが部屋を出ると、マリが膝掛を持ってその後に続く。レイシルが出て、エーリックが最後に部屋を出ようとして、ふと止まり寝台近くまで戻って来た。

。セドの癖に、随分気が利くじゃないか。も連れて行こう」

 そう呟いて花束に手を伸ばした。

「シュゼットが好きな花。覚えていたんだ……」








 部屋に戻ると治療を終えたセドリックの枕元に、フェリックスがいた。

 セドリックは、額から頭のほとんどに包帯が巻かれ、顔にも大きな絆創膏が貼られていた。少し血が滲んで見える。腕にも足にもギプスがされているようで、見る限りかなり重症に見えた。

 それでも、あの血溜まりに濡れたアッシュブロンドの髪を思い起こせば、今の状態は胸を撫で下ろせる状態に思えた。

 医師長らの努力の甲斐が見える。

「やはり、奇跡です。包帯や絆創膏は派手ですが、見た目ほど重症ではありません。ただ、頭の中は判りません。どれほどの衝撃を受けたのか……目を覚ますかどうかは、全くの未知です。とにかく、輸血と痛み止め、感染症予防の薬剤を使用していますので、どちらにしろ今は眠っている状態でしょう」

 皆に医師長はそう説明すると、医師と看護師を1名づつ残して部屋から出て行った。



 駆け寄るようにエーリックが寝台に近づいた。

「セド? セドリック?」
「……」

 やはり薬が効いているせいか、セドリックは穏やかな呼吸ながら目は閉じたままだ。それでも、輸血のせいか顔色は随分良くなった様に見えた。

「良かった……」

 ポロリと涙が零れた。意識は戻っていないが、確かに息遣いを、命を感じられるのだから。




 セドリックの横たわる寝台の隣に、シュゼットの眠る仮寝台を並べる。
 シュゼットとセドリックの手を繋げる。力の無い二人の手をマリがしっかりと握り締めた。勿論、シルヴァの指輪も握り締めている。

イカリの準備は良いか?」

 レイシルの声にマリが大きく頷く。そして、もう片方のシュゼットの手に鑑定石を通してレイシル、シルヴァ、エーリック、フェリックスの4人でサルベージを掛ける。

「願うは、シュゼットの目覚め。それだけだ」

 レイシルが杖で床を大きく突くと、厳かな神秘の鈴の音と共に、金色に輝くさざ波が床面に広がり出した。









「さあ、始めよう」








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』  学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。  その瞬間、私は全てを思い出した。  私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。  幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。  ーーなんて、ひとり納得していたら。  何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?  更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。  しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。  タイムリミットは1年間。  その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

処理中です...