88 / 121
87. 交渉人
しおりを挟む
シルヴァはマラカイト公爵と共に、コレールの王宮に向かっていた。
早朝に国王からの招集があったからだ。理由は勿論、ダリナスの外交大使であるマラカイト公爵の嫡男、セドリックの怪我についてだ。
幾らセドリックが知らなかった事とは言え、結界に弾かれた財務大臣の娘を庇って事故に遭ったのだ。その場にいた者が、皆目を疑った人物だった。まさか、15歳の少女が危害を加える恐れがあったとは。どんなつもりでシュゼットに近づいたのか、その本心は判らない。
ただ、あの時に言っていた言葉が本心からなら……勘違いも甚だしいと思うが。とかくあの年頃の少女は鬱屈した感情に支配され易いとも聞く。まして、彼女達はフェリックスの婚約者候補の一人だ。
難しい事だ。しかし、そのとばっちりでセドリックが大怪我を負うことになろうとは、思いも寄らなかった。
「シルヴァ王弟殿下、セドリックの事故に何かあるのですか? アレはお見舞いに行って階段から落ちただけでは無いのですか?」
公爵夫妻には、シュゼットの事もローナの事も詳しくは知らせていない。コレール王国の高位貴族が絡んでいる為、相手方の出方を待っていた。そして、その結果王宮への呼び出しとなったのだ。
事情を知るシルヴァにも声が掛かったのは、誤魔化すつもりは無いというコレール側の意思表示だろう。
「公爵。これだけは確かな事だが、セドリックには非は無い。寧ろ、コレールにとっては救世主に近い力を発揮したのだ。貴方は、息子を誇りに思って良い」
肝心な事を言わずに説明をする。父親の立場だったらもどかしいかと思う。しかし、マラカイト公爵は大国ダリナスの外交大使を務める男だ。
「……つまり、それはコレールに恩を売ったという事で良いのでしょうか? 我が息子は、身を以て我が国に忠誠を捧げたと。そう思って良いのですか?」
シルヴァの眼が、モノクルの奥で光った。その目は魔法術の教授の眼では無く、普段は隠されている王弟の眼だった。
王宮に到着すると、シルヴァとマラカイト公爵は王の謁見室まで直ぐに通された。そこは、王座のある煌びやかな謁見室では無く、限られた者しか入室を許されない厳重な造りの部屋だった。
すでにそこにはコレールの王が待っていた。極めて異例の事だ。
それだけでは無い。王の隣にはフェリックス第一王子も座していた。
「早くに呼びたてをして済まなかった。シルヴァ王弟殿下。並びにマラカイト公爵。よく来て下さった」
王は座っていた椅子から立ち上がると二人を出迎えた。
暫くしばら話を聞いているだけだったマラカイト公爵が、ようやく口を開いた。
「つまり、息子はその少女を庇って階段から落ちたという事ですか……」
王は、セドリックの事故について正しく伝えてくれた。時折その場にいたフェリックスに、確認するような素振りもあった。ただ、それも聞いているこちらからしたら、湧いた疑問に追加説明をさせる様な間合いだった。
あくまでも、その少女個人が事故の原因だという事。そう印象付けたいのだろう。
「彼女とご子息が、医術院に来られのは予想外の事だった。それも彼女が結界に弾かれるのを、ご子息は目の前で見てしまったのだろう。目の前で落ちて来る少女を、クラスメイトを、助けるために思わず引っ張り上げたのではないかと……自身の危険を顧みず、少女を転落から救ってくれたのだ」
「その少女とは、何者なのですか? なぜ、結界に弾かれるなどという事になったのですか?」
マラカイト公爵が王の眼を見ながら問う。
「その少女は、ローナ・ピア・カリノ。カリノ侯爵家の娘だ。学院では、ご子息であるセドリック殿と同じ白のクラスの生徒だ」
「財務大臣のカリノ侯爵のご令嬢ですか。フェリックス殿下の婚約者候補のお一人ですね?」
王は黙って頷くと、侍従を呼んでお茶の用意を申し付け、彼に席を外させた。
「マラカイト公爵、ご子息は、我が国の財務大臣の娘を庇って大怪我をされた。目の前の女性を助け、自身の身の危険を顧みないその姿は誠に立派であった。称賛に値する行動である。我が国の者をお助け頂いた事、感謝申し上げる」
自国の高位貴族。それも国政の中心を担う財務大臣の娘だ。
「階段から落ちる女性を見過ごす事が無かった息子は、褒めてやりたいところですが、自分が怪我を負っては戴けませんな。もう少し鍛錬を積ませるようにしなければ。しかし、ご令嬢はなぜ結界に弾かれたのですか? そもそもなぜ医術院に来たのですか? 息子と同じ見舞いに来たのではないのですか?」
王は目配せをすると、フェリックスに説明をするよう促した。フェリックスは小さく頷くと、改めてマラカイト公爵の方に向き直し口を開いた。
「ここには、グリーンフィールド公爵令嬢のシュゼット嬢が入院しています。貴殿もご存じでしょう? ついこの前までダリナスに外交大使として赴任していましたから。彼女は私やセドリック殿と同じクラスの生徒です。そして、エーリック殿下やシルヴァ殿とも面識があります。その彼女がここに入院したので、心配したセドリック殿が見舞いに来られました」
公爵が、それは判っているという様子で頷く。その先を。と、催促するような気配に、フェリックスが少し言い淀むように口を噤んだ。
そして、意を決したように続けた。
「ローナ。ローナ嬢は、私を探して医術院に来たと言っていました」
「殿下を? 探して?」
シルヴァもじっと耳を傾けた。公爵からすれば、それでどうして結界に弾かれるのか見当もつかない様だ。
「ええ。ローナは、私がシュゼットに無理難題を言われて、医術院に呼び出されたと思っていたのです。そんな事は全く無かったのですが……シュゼットが編入してきてから、ローナが彼女に対して何らかのわだかまりを持っていたのには、気が付いていました。ただ、必要以上にお互いに近づく気配がしなかったので油断していました」
「それなのに、なぜローナ嬢が結界に弾かれる事になるのですか?」
マラカイト公爵はシュゼットの事を知っていた。ダリナスに居る頃から優秀で、天使のような美少女と評判だった。息子から聞いていたのは、
『私がライバルと認める位ですから、頭も良いですし、性格だって彼女を悪く言う人間には会ったことがありません。それに、見た目は金色で艶やかに波打つ長い髪。青い目は南の海の様な明るい青色。白く陶器の様な肌に頬はうっすらと桜色です。まあ、美しいと言えないことは無いでしょうけど? 皆が言う天使の様に愛らしいと言うのも、あながち間違いでは無いでしょうが?』
と言う、いささか角度を違えた上から目線であったが、評価としては好感度MAXだった。
「シュゼット嬢の事は存じております。それで、彼女とローナ嬢の関係が悪くなった原因とは?」
公爵は、コレール王国の勢力図を思い浮かべながら質問した。フェリックスに婚約者候補が、カテリーナ以外に3人いる事は知っていた。3人ともコレールの有力貴族の娘だと聞いている。そして、シュゼットは外務大臣を務めるグリーンフィールド公爵家の令嬢だ。
もしや。と思うのは当然だった。
「すでにお気付きかもしれませんが、シュゼットも私の婚約者候補です。彼女が帰国して直ぐに決まりましたので、まだ公にはなっていませんが……5人の婚約者候補の一人です」
フェリックスが淡々とした口調で答えた。確かに、正式な発表はまだされていない。当初の予定では、王家主催のガーデンパーティーで発表されるはずだ。
「つまり、ローナ嬢はシュゼット嬢に嫉妬して医術院に来たと。入院見舞いに訪れていたフェリックス殿下を追いかけて来たという事ですか?」
公爵は溜息を漏らした。まさか、そんな事に巻き込まれていたとは。しかし、嫉妬心だけで結界に弾かれるなど聞いた事もない。そもそも、なぜたかが15歳の少女が入院しているだけで、結界魔法など掛ける必要があるのか。というか、なぜ入院しているのが魔法科学省の医術院なのか。普通に病気であれば医療院に入院するはずだ。
「フェリックス殿下。ローナ嬢が弾かれた結界とは、どんな結界なのですか?」
マラカイト公爵がフェリックスの眼を見詰めて問うた。
「それは……」
フェリックスが言い淀むように、王の顔をチラリと窺うように見た。
「シュゼットに悪意を持つ者。彼女に害為す者の排除。それが、結界のキーワードだ」
じっと話を聞いていたシルヴァが口を開いた。
「コレール史上、100年振りの光の識別者、シュゼット・メレリア・グリーンフィールドを守る為の結界。そうだったな、フェリックス殿?」
シルヴァは黒い瞳を細めると、僅かに微笑むようにフェリックスを見詰めた。いつもの学院で見る教授の表情では無かった。そして、その瞳が笑っていないのをそこにいる全員が感じた。
「そして、意識を失っていたシュゼットのサルベージを成功させたのは、セドリックの力による所が大きかった。彼がいなかったら、シュゼットは意識を取り戻すことは無かっただろう。それは、魔法科学省の力を以てしても不可能だったかもしれない。彼がシュゼットを、光の識別者を助けたと言っても良いだろう」
シルヴァがひと呼吸おいて続けた。
「王よ。ダリナスの者セドリックが、コレール王国の至宝である光の識別者シュゼットを救い、我が身を犠牲にしたこの事実を、如何お考えになるか? まして、事故の引き金になったのは、貴国の財務大臣の娘で、第一王子の婚約者候補と言う立場ある身分の令嬢だ。もし、このままセドリックが目を覚ます事無く、また目覚めても重大な後遺症が残った場合はどうお考え頂けるのでしょうか?」
マラカイト公爵も同意するように、大きく頷き王を見詰める。
王は、シルヴァの真意を探るような目を向けると、厳かな声で言った。
「……貴殿の望みを申してみよ……」
早朝に国王からの招集があったからだ。理由は勿論、ダリナスの外交大使であるマラカイト公爵の嫡男、セドリックの怪我についてだ。
幾らセドリックが知らなかった事とは言え、結界に弾かれた財務大臣の娘を庇って事故に遭ったのだ。その場にいた者が、皆目を疑った人物だった。まさか、15歳の少女が危害を加える恐れがあったとは。どんなつもりでシュゼットに近づいたのか、その本心は判らない。
ただ、あの時に言っていた言葉が本心からなら……勘違いも甚だしいと思うが。とかくあの年頃の少女は鬱屈した感情に支配され易いとも聞く。まして、彼女達はフェリックスの婚約者候補の一人だ。
難しい事だ。しかし、そのとばっちりでセドリックが大怪我を負うことになろうとは、思いも寄らなかった。
「シルヴァ王弟殿下、セドリックの事故に何かあるのですか? アレはお見舞いに行って階段から落ちただけでは無いのですか?」
公爵夫妻には、シュゼットの事もローナの事も詳しくは知らせていない。コレール王国の高位貴族が絡んでいる為、相手方の出方を待っていた。そして、その結果王宮への呼び出しとなったのだ。
事情を知るシルヴァにも声が掛かったのは、誤魔化すつもりは無いというコレール側の意思表示だろう。
「公爵。これだけは確かな事だが、セドリックには非は無い。寧ろ、コレールにとっては救世主に近い力を発揮したのだ。貴方は、息子を誇りに思って良い」
肝心な事を言わずに説明をする。父親の立場だったらもどかしいかと思う。しかし、マラカイト公爵は大国ダリナスの外交大使を務める男だ。
「……つまり、それはコレールに恩を売ったという事で良いのでしょうか? 我が息子は、身を以て我が国に忠誠を捧げたと。そう思って良いのですか?」
シルヴァの眼が、モノクルの奥で光った。その目は魔法術の教授の眼では無く、普段は隠されている王弟の眼だった。
王宮に到着すると、シルヴァとマラカイト公爵は王の謁見室まで直ぐに通された。そこは、王座のある煌びやかな謁見室では無く、限られた者しか入室を許されない厳重な造りの部屋だった。
すでにそこにはコレールの王が待っていた。極めて異例の事だ。
それだけでは無い。王の隣にはフェリックス第一王子も座していた。
「早くに呼びたてをして済まなかった。シルヴァ王弟殿下。並びにマラカイト公爵。よく来て下さった」
王は座っていた椅子から立ち上がると二人を出迎えた。
暫くしばら話を聞いているだけだったマラカイト公爵が、ようやく口を開いた。
「つまり、息子はその少女を庇って階段から落ちたという事ですか……」
王は、セドリックの事故について正しく伝えてくれた。時折その場にいたフェリックスに、確認するような素振りもあった。ただ、それも聞いているこちらからしたら、湧いた疑問に追加説明をさせる様な間合いだった。
あくまでも、その少女個人が事故の原因だという事。そう印象付けたいのだろう。
「彼女とご子息が、医術院に来られのは予想外の事だった。それも彼女が結界に弾かれるのを、ご子息は目の前で見てしまったのだろう。目の前で落ちて来る少女を、クラスメイトを、助けるために思わず引っ張り上げたのではないかと……自身の危険を顧みず、少女を転落から救ってくれたのだ」
「その少女とは、何者なのですか? なぜ、結界に弾かれるなどという事になったのですか?」
マラカイト公爵が王の眼を見ながら問う。
「その少女は、ローナ・ピア・カリノ。カリノ侯爵家の娘だ。学院では、ご子息であるセドリック殿と同じ白のクラスの生徒だ」
「財務大臣のカリノ侯爵のご令嬢ですか。フェリックス殿下の婚約者候補のお一人ですね?」
王は黙って頷くと、侍従を呼んでお茶の用意を申し付け、彼に席を外させた。
「マラカイト公爵、ご子息は、我が国の財務大臣の娘を庇って大怪我をされた。目の前の女性を助け、自身の身の危険を顧みないその姿は誠に立派であった。称賛に値する行動である。我が国の者をお助け頂いた事、感謝申し上げる」
自国の高位貴族。それも国政の中心を担う財務大臣の娘だ。
「階段から落ちる女性を見過ごす事が無かった息子は、褒めてやりたいところですが、自分が怪我を負っては戴けませんな。もう少し鍛錬を積ませるようにしなければ。しかし、ご令嬢はなぜ結界に弾かれたのですか? そもそもなぜ医術院に来たのですか? 息子と同じ見舞いに来たのではないのですか?」
王は目配せをすると、フェリックスに説明をするよう促した。フェリックスは小さく頷くと、改めてマラカイト公爵の方に向き直し口を開いた。
「ここには、グリーンフィールド公爵令嬢のシュゼット嬢が入院しています。貴殿もご存じでしょう? ついこの前までダリナスに外交大使として赴任していましたから。彼女は私やセドリック殿と同じクラスの生徒です。そして、エーリック殿下やシルヴァ殿とも面識があります。その彼女がここに入院したので、心配したセドリック殿が見舞いに来られました」
公爵が、それは判っているという様子で頷く。その先を。と、催促するような気配に、フェリックスが少し言い淀むように口を噤んだ。
そして、意を決したように続けた。
「ローナ。ローナ嬢は、私を探して医術院に来たと言っていました」
「殿下を? 探して?」
シルヴァもじっと耳を傾けた。公爵からすれば、それでどうして結界に弾かれるのか見当もつかない様だ。
「ええ。ローナは、私がシュゼットに無理難題を言われて、医術院に呼び出されたと思っていたのです。そんな事は全く無かったのですが……シュゼットが編入してきてから、ローナが彼女に対して何らかのわだかまりを持っていたのには、気が付いていました。ただ、必要以上にお互いに近づく気配がしなかったので油断していました」
「それなのに、なぜローナ嬢が結界に弾かれる事になるのですか?」
マラカイト公爵はシュゼットの事を知っていた。ダリナスに居る頃から優秀で、天使のような美少女と評判だった。息子から聞いていたのは、
『私がライバルと認める位ですから、頭も良いですし、性格だって彼女を悪く言う人間には会ったことがありません。それに、見た目は金色で艶やかに波打つ長い髪。青い目は南の海の様な明るい青色。白く陶器の様な肌に頬はうっすらと桜色です。まあ、美しいと言えないことは無いでしょうけど? 皆が言う天使の様に愛らしいと言うのも、あながち間違いでは無いでしょうが?』
と言う、いささか角度を違えた上から目線であったが、評価としては好感度MAXだった。
「シュゼット嬢の事は存じております。それで、彼女とローナ嬢の関係が悪くなった原因とは?」
公爵は、コレール王国の勢力図を思い浮かべながら質問した。フェリックスに婚約者候補が、カテリーナ以外に3人いる事は知っていた。3人ともコレールの有力貴族の娘だと聞いている。そして、シュゼットは外務大臣を務めるグリーンフィールド公爵家の令嬢だ。
もしや。と思うのは当然だった。
「すでにお気付きかもしれませんが、シュゼットも私の婚約者候補です。彼女が帰国して直ぐに決まりましたので、まだ公にはなっていませんが……5人の婚約者候補の一人です」
フェリックスが淡々とした口調で答えた。確かに、正式な発表はまだされていない。当初の予定では、王家主催のガーデンパーティーで発表されるはずだ。
「つまり、ローナ嬢はシュゼット嬢に嫉妬して医術院に来たと。入院見舞いに訪れていたフェリックス殿下を追いかけて来たという事ですか?」
公爵は溜息を漏らした。まさか、そんな事に巻き込まれていたとは。しかし、嫉妬心だけで結界に弾かれるなど聞いた事もない。そもそも、なぜたかが15歳の少女が入院しているだけで、結界魔法など掛ける必要があるのか。というか、なぜ入院しているのが魔法科学省の医術院なのか。普通に病気であれば医療院に入院するはずだ。
「フェリックス殿下。ローナ嬢が弾かれた結界とは、どんな結界なのですか?」
マラカイト公爵がフェリックスの眼を見詰めて問うた。
「それは……」
フェリックスが言い淀むように、王の顔をチラリと窺うように見た。
「シュゼットに悪意を持つ者。彼女に害為す者の排除。それが、結界のキーワードだ」
じっと話を聞いていたシルヴァが口を開いた。
「コレール史上、100年振りの光の識別者、シュゼット・メレリア・グリーンフィールドを守る為の結界。そうだったな、フェリックス殿?」
シルヴァは黒い瞳を細めると、僅かに微笑むようにフェリックスを見詰めた。いつもの学院で見る教授の表情では無かった。そして、その瞳が笑っていないのをそこにいる全員が感じた。
「そして、意識を失っていたシュゼットのサルベージを成功させたのは、セドリックの力による所が大きかった。彼がいなかったら、シュゼットは意識を取り戻すことは無かっただろう。それは、魔法科学省の力を以てしても不可能だったかもしれない。彼がシュゼットを、光の識別者を助けたと言っても良いだろう」
シルヴァがひと呼吸おいて続けた。
「王よ。ダリナスの者セドリックが、コレール王国の至宝である光の識別者シュゼットを救い、我が身を犠牲にしたこの事実を、如何お考えになるか? まして、事故の引き金になったのは、貴国の財務大臣の娘で、第一王子の婚約者候補と言う立場ある身分の令嬢だ。もし、このままセドリックが目を覚ます事無く、また目覚めても重大な後遺症が残った場合はどうお考え頂けるのでしょうか?」
マラカイト公爵も同意するように、大きく頷き王を見詰める。
王は、シルヴァの真意を探るような目を向けると、厳かな声で言った。
「……貴殿の望みを申してみよ……」
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる