【更新中】悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! -5年前「白パンダ」と私を嗤った皆様に今度は天使の姿でリベンジします! 覚悟は宜しくて?-

薪乃めのう

文字の大きさ
100 / 121

99. 特別な存在

しおりを挟む
 どうして?



 我が屋敷の一番大きな応接間で、王宮からの使者の話を聞いています。
 目の前にいるのは、陛下からの勅命を受けた使者。その手には、陛下の紋章が刻まれた巻紙がありました。
 コレール王国は、王族の婚約者候補及び側室候補に関わる法を全て撤廃し、一夫一婦制とする。

 使者の声が、遠くに聞こえます。目の前で話されていることなのに、随分離れた所から聞こえる位、私の耳にははっきりと聞こえませんでした。

「使者殿。それは、カテリーナ姫が婚約者として決定し、婚約者候補であったローナは、婚約者にも側室にもなれない。という事ですな?」

 隣にいるお父様の声で、ハッとしました。
 婚約者にも、側室にもなれない。という事は……

「私は……フェリックス殿下に、今までの様に近づくことも出来ないのですね?」

 婚約者の決まった殿下に、幼馴染の振る舞いで変わらず近づくなんて出来ません。

「今回の事は、我が娘の不祥事が原因なのですか? フェリックス殿下より、直接自宅謹慎を申し渡されたと聞いています。それが故のご判断なのでしょうか?」


 不祥事? 不祥事? どういうこと? 私が何をしたというのですか?

「ここから先は、陛下が直接お話しされます。カリノ侯爵は私と一緒に、陛下の御前まで御同行願います。正しく陛下のお気持ちを伺った方が宜しいでしょう」

 お父様と使者は、私を残して王宮へと行ってしまいました。

 見送りをする為玄関まで出ると、心配したロイも来てくれます。お父様は、私の方を見ずに馬車に乗り込むと、神妙な面持ちで王宮へと行ってしまわれました。




「ローナ……」

 隣にいるロイが、私の肩に手を置きました。暖かい手です。

「……ロイ……私……」

 口がカラカラに乾いて、上手くしゃべることが出来ません。

「私、婚約者候補でも、側室候補でも無くなりました……私の、不祥事が原因かもしれないと……」

 そこまで言うと、立っていることが出来なくなりました。階段で打ち付けた膝がズキンと痛みました。
 ロイは、何にも知りません。知らせていません。私からは何も言っていませんから。
 玄関先で座り込んでしまった私に、ロイが両手を差し伸べてくれます。フンワリした優しい笑顔で。

「ローナ。不祥事って、何があったの?」

 フェリックス殿下自らが謹慎を申し渡された理由。陛下はお父様に詳しくお話しされるでしょう。私が……私の……







「私のせいで……セドリック様が大怪我をしてしまったの……」

 ああ、漸ようやく打ち明けられました。



















 王宮から戻って来たお父様は、書斎に私を呼ばれると深い溜息を吐かれました。

「ローナ。お前は何故医術院に行ったのだ?」
「フェリックス殿下が、いらっしゃるかと思ったので……」
「殿下を追って、何をしようとしたのだ?」

 一言づつお父様が聞いて下さいます。

「……シュゼット様が……殿下にご迷惑を掛けているかと思って……」

 そこまで言うと、お父様は顔をしかめて私の言葉を遮りました。

「ローナよ。シュゼット嬢は意識不明でいたと聞いている。彼女が殿下に迷惑を掛けるなど、何故そう思ったのか?」

 意識不明? なのに、何故、彼女の所にフェリックス殿下は行っていたのですか!? 何の為に?

「ローナ。シュゼット嬢が魔法識別者であることは知っているな?」

 ええ。確か魔法術の導入教育に、双子の王子様達が彼女を迎えに来ていました。中等部の教室で行われるとか言っていましたわ。

 でも、それがどうしたのです? 魔法術の識別者であればフェリックス殿下に近づけるのですか?



 憮然とした表情で、私は頷きました。

「……ローナ、良く聞いてくれ。彼女は、シュゼット嬢はなのだ。王国にとって、このコレールにとって特別な存在なのだ」

 お父様は何を言っているの? 彼女が特別? 魔法術の識別者がそんなに特別ですか?

「シュゼット・メレリア嬢は、光の識別者だ。100年振りに発現した光の識別者。魔法科学省と王宮神殿が庇護の対象とする希少識別者だ。
 お前は、その光の識別者に悪意を持って接近し、レイシル殿の結界に弾かれたそうだな。それを庇って、助けてくれたのがセドリック殿だと伺った。セドリック殿は、頭を打って今も意識不明の重傷だそうだ……」

 目を瞑り、深い皺を眉間に刻んで、お父様が重い溜息を吐きました。





 光の識別者……?
 国の庇護の対象となる希少識別者? 
 私が悪意を持っていた? 結界に弾かれた? 
 セドリック様が大怪我? 意識不明?

 私は……

    私は、

       私は‼



 シュゼット様は、いつも、いつも、

 5年前のお茶会でも。学院に戻って来ても。

 鑑定式を受けても‼ 

 




「お前の嫉妬が、セドリック殿を巻き込んだ。
 その原因が、光の識別者に対する悪意があったことだというではないか。もしも、シュゼット嬢に何かあれば、我がカリノ家は取潰しであったであろう。それに、巻き添えで怪我をさせてしまったセドリック殿についても、ダリナスのマラカイト公爵家のご子息だ。外交大使である公爵が何と言ってくるか……」
「取潰し?」

 私が原因で? 私の行動が原因で? お父様は、私に婚約者候補になって、婚約者が無理でも側室になれと、側室になれるようにフェリックス殿下に尽くせとおっしゃいましたのに。



 カリノ家の為に。家の為に。

「お前の、軽はずみな行動が原因だ。沙汰があるまで、私もお前と共に謹慎する。今後の事を考えなければならない。判っているな、ローナ」

 厳しい声で言うお父様に、私は頷くことも出来ませんでした。



 私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい私のせい……


 私は、私は、誰の特別にもなれない……
 私は、想う事も出来ない……



 私は、ただ、フェリックス殿下に、恋をしていただけだったのに……

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

乙女ゲームのモブに転生していると断罪イベント当日に自覚した者ですが、ようやく再会できた初恋の男の子が悪役令嬢に攻略され済みなんてあんまりだ

弥生 真由
恋愛
『貴女との婚約は今夜を持って破棄させて貰おう!』  学園卒業祝いの夜会の場に、凛と響いた王太子殿下の一声。  その瞬間、私は全てを思い出した。  私が前世ではただの手芸とゲームが好きなインドア派女子大生だったこと。そして、ゲーム世界に転生して尚も趣味は変わらず、ライバルキャラですらないモブになってしまっていたことを。  幼い頃に一度出会ったきりの初恋の彼と学園で再会出来たらなぁ、なんて淡い期待を抱いて通っていたのに、道理で卒業式までなんにも起きなかったわけだ。  ーーなんて、ひとり納得していたら。  何故だが私が悪役令嬢の断罪イベントの目撃者として名指しされ、一気に渦中の人物に!?  更に、王太子以外の男性陣は皆様悪役令嬢に骨抜き。なので自然と私には、彼女の潔白に繋がる証言が求められる。  しかしながら、私は肝心の事件の日の記憶が訳あって曖昧だったので、致し方なく記憶を呼び覚ます治療を受けさせられる羽目に。  タイムリミットは1年間。  その1年間の私への護衛につけられたのは、悪役令嬢に心奪われた初恋の彼でした。

処理中です...