【更新中】悪役令嬢は天使の皮を被ってます!! -5年前「白パンダ」と私を嗤った皆様に今度は天使の姿でリベンジします! 覚悟は宜しくて?-

薪乃めのう

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100. 束の間

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 結局、カテリーナ様と私がどんなに食い下がっても、エーリック殿下とシルヴァ様からはローナ様の事を伺えませんでした。

「ローナ嬢については、あくまでもコレール王国の事情とされている。私達ダリナスの人間が言える事では無いのだ」

 確かに私以外、ここにいるのは全てダリナス王国の皆様です。ですが、カテリーナ様がフェリックス殿下の婚約者になった以上、それ以外の候補者についても何も聞かないなんてあり得ませんよね? 

 だって、誰が婚約者候補だったかなんて、暗黙の了解で皆様知っていたはずですもの。強いて言うならば、一番最後に決まった私の存在がどこまで知られているかですけど。ダリナスから帰国した時に、結構インパクトがあるように登場しましたから……公式発表を待たずに噂だけはあったかもしれません。



「お二人は、ローナ嬢の事をご存じだけど、今は、私達に言えないという事ですわね?」

 更に食いつくカテリーナ様ですけど、シルヴァ様の意志は随分硬いようです。もうこの話はお終いとばかりに、席をお立ちになりました。

「カテリーナ、シュゼット。彼女の事はいずれ詳しく聞くことになるだろう。それまで待って欲しい」

 そう言って、窓の近くまで寄ると、薄暗くなった外を見渡してくるりと踵を返しました。そうです。話に夢中で、気が付きませんでしたが大分室内が暗くなっていたのでした。

「暗くなって来たな」

 シルヴァ様が、一番大きな照明に指先を向けて、空中でひと回り小さな円を描きました。

「まあ!?」

 思わず大きな声が出てしまいました。だって、シンプルなガラス製の照明が、いきなり明るく部屋を照らしたのです。

「魔法ですのね? 気が付きませんでした。ここの照明は魔法で点く様になっているのですか?」

 感心しながら尋ねると、シルヴァ様がフッと微笑みました。

「君も魔法術の鍛錬を積めば、直ぐにこの位は出来るようになる。まずは、魔力を身体に巡らせる事が出来るようにならなければな。それが出来なければ何も始まらない」

 私は、自分の掌を見詰めました。光の識別者になる為には、心身の修業を積まねばいけません。。

「ええ。やると決めたからには、全力で取り組みます。ところで、今後私はどうしたら良いのでしょうか? いつまでここにいれば良いのでしょう。もう少し、セドリック様の近くに居たいのですけど……」

 まだまだ不安定なセドリック様。もう少しお加減が良くなるまで、ここにいたいと思います。でも、修行? が始まるならそちらを優先しなければいけないのでしょう。結果的にセドリック様の怪我を治せる助けとなれますもの。

「そろそろレイシルが来ても良い頃だと思うが……今後の君の事もお父上と相談されたろう」

 そうでした。お父様は今後のお話をする為に、王宮に残られたのでした。

「そう言えば、セドリックはどうしてあんな怪我をしたの? 階段から落ちたって聞いたけど?」

 カテリーナ様が小首を傾げて疑問を口にしました。

「幾らセドリックがうっかりさんでも、階段を転げ落ちただなんて、鈍臭いにも程があるでしょう? 
 そんなに焦って階段を上っていたのかしら。ここの階段って、そもそも幅広いステップだから走って昇るのにしてもスピードは出せないわ。私でも途中で息が切れたもの。
 それに、どれだけ上から落ちたのかしらね。転がり落ちるのもステップが広いから、途中で止まりそうなのに」

 そうですか。カテリーナ様も5階まで駆け上がって来たのですね。身を以てのご感想ですか。

「「……」」

 シルヴァ様とエーリック殿下は無言でいます。何故に?





「でも、まあ、セドリックですものね。誰かに突き落とされた訳でも無いでしょうし? きっと、脚でももつれたのかしら。身体より心の方が早く走ったのです。とか言って」
「「……」」

 お二人は、聞こえてないような顔でお茶を飲まれていますけど?

 そんな話をしていると、医師様が私の診察にいらっしゃいました。忘れていましたけど、まだ病み上がり? なのでした。
 そのタイミングで、シルヴァ様とエーリック殿下がカテリーナ様を引っ張って帰って行きました。まだここにいると駄々を捏ねるカテリーナ様に、明日も面会に来ればいいだろうと言い含めて。

「ああ! 帰る前にもう一度、セドリックの顔を見たいわ! 寝顔よね? 久し振りに寝顔を見られるわね?」
「カテリーナ。止めてやれ」
「ええっ? だってセドリックの寝顔よ? 普段なら絶対見られないわよ? 結構可愛いのよ、知っていて?」
は、止めろ。静かに寝かせてやれ!!」

 エーリック殿下とカテリーナ様のいつもの絡みに、思わず笑いが広がりました。ああ、いつもの日常が戻って来たと。いつものカテリーナ様だと、ほっとしたのです。







 翌日。とんでもない事件が起きる事など、その時の私達は微塵も思わなかったのです。

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