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第3話 魔女の媚薬
番外編 悩める騎士の悔恨
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魔女の媚薬の件の翌日、ゲオルグは次の出撃に備えて自室で剣の手入れをしていた。
ディアナとの約束で、今日の昼からロッテの監視役を任されることになってはいるものの、昨夜あのようなことがあった後で、彼女の部屋でふたりきりになるのは流石に躊躇ってしまう。
額に手をあてて項垂れていると、扉が軽くノックされた。手入れ途中の剣をベッドの脇に立て掛けて、ゲオルグが扉を開く。部屋の前に立っていたのは見慣れた女だった。
「ちょっとゲオルグ、貴方、あの子に何をしたのよ」
顔を合わせるなり責めるような口振りで、ディアナがゲオルグを睨め付ける。ぎくりと身を強張らせ、ゲオルグは辿々しく呟いた。
「何……って……」
「よっぽど凄んでみせたんでしょう? あの子、相当怯えてたわよ。『お願いディアナさん、ここに居て! ディアナさんに監視して欲しいの!』って、涙ながらに訴えられちゃったわ」
まんざらでもない様子でディアナに言われ、ゲオルグはがっくりと肩を落とした。
——当然か。
子供の頃から森の奥で魔女とふたりで暮らしてきたロッテだ。異性と関わることも少なかったのだろう。見目麗しく礼儀正しいユリウスに彼女が淡い恋心を抱いていることは、初対面のゲオルグにもすぐにわかった。
ユリウスの話が正しければ、彼女はまだ十八。恋に恋する年頃の少女だ。知識の有無はわからないとはいえ、あんなことをされたのは初めてだったに違いない。
大きな溜め息が、唇から洩れる。
解毒薬を作るロッテを部屋で監視した。そこまでは覚えている。次に我に返ったとき、ゲオルグは己の前を寛げた状態で半裸の彼女を見下ろしていた。
泣き腫れた琥珀の瞳でゲオルグを見上げる彼女は、白い下腹部から捲れ上がったスカートまで白濁で濡れていて、それまでの記憶は飛んでいたものの、自分が彼女に何をしてしまったのかはすぐに理解できた。即座に謝罪はしたものの、その程度のことでわだかまりが消えるはずもない。
最後まではしなかったとはいえ、好きでもない——寧ろ嫌われていた可能性すらある——相手にあのようなことをされて、彼女は酷い辱めを受けたと思ったに違いない。ディアナと三人、ユリウスに仕える者同士、協力していければと考えてから、ようやく普通に話ができるようになったのに。振り出しに戻るどころか、取り返しが付かないほどに嫌われてしまったようだ。
「それで、例の薬はどうなったの?」
「棚に戻してそのままだ。だが、安心して良い。あいつはもう殿下に薬を盛ったりしない」
ディアナに問われ、ゲオルグは即答した。
ゲオルグが問い質したあのとき、ロッテは確かに「絶対に使わない」と間髪入れずに言い切ったのだ。ユリウスに薬を盛ることを少しでも考えていたとしたら、あのような即答はできない。多少の躊躇いは見せていたはずだ。ゲオルグのあの行為は、異性経験も僅かだった少女の心に想像以上に深い傷跡を残したのかもしれない。
視線を落として黙り込んだゲオルグを訝しむように睨め付けて、ディアナが溜め息混じりに口を開く。
「そう、なら良いわ。明日からまた討伐任務でしょう? あの子のことは私にまかせてゆっくり休みなさい」
「……お言葉に甘えさせてもらおう」
ゲオルグが頷くと、ディアナはやれやれと肩を竦め、さっさと部屋を出ていった。遠ざかるディアナの背中を見送りながら、赤銅色の前髪をくしゃりと掻き上げて、ゲオルグは大きな溜め息をついた。
ディアナとの約束で、今日の昼からロッテの監視役を任されることになってはいるものの、昨夜あのようなことがあった後で、彼女の部屋でふたりきりになるのは流石に躊躇ってしまう。
額に手をあてて項垂れていると、扉が軽くノックされた。手入れ途中の剣をベッドの脇に立て掛けて、ゲオルグが扉を開く。部屋の前に立っていたのは見慣れた女だった。
「ちょっとゲオルグ、貴方、あの子に何をしたのよ」
顔を合わせるなり責めるような口振りで、ディアナがゲオルグを睨め付ける。ぎくりと身を強張らせ、ゲオルグは辿々しく呟いた。
「何……って……」
「よっぽど凄んでみせたんでしょう? あの子、相当怯えてたわよ。『お願いディアナさん、ここに居て! ディアナさんに監視して欲しいの!』って、涙ながらに訴えられちゃったわ」
まんざらでもない様子でディアナに言われ、ゲオルグはがっくりと肩を落とした。
——当然か。
子供の頃から森の奥で魔女とふたりで暮らしてきたロッテだ。異性と関わることも少なかったのだろう。見目麗しく礼儀正しいユリウスに彼女が淡い恋心を抱いていることは、初対面のゲオルグにもすぐにわかった。
ユリウスの話が正しければ、彼女はまだ十八。恋に恋する年頃の少女だ。知識の有無はわからないとはいえ、あんなことをされたのは初めてだったに違いない。
大きな溜め息が、唇から洩れる。
解毒薬を作るロッテを部屋で監視した。そこまでは覚えている。次に我に返ったとき、ゲオルグは己の前を寛げた状態で半裸の彼女を見下ろしていた。
泣き腫れた琥珀の瞳でゲオルグを見上げる彼女は、白い下腹部から捲れ上がったスカートまで白濁で濡れていて、それまでの記憶は飛んでいたものの、自分が彼女に何をしてしまったのかはすぐに理解できた。即座に謝罪はしたものの、その程度のことでわだかまりが消えるはずもない。
最後まではしなかったとはいえ、好きでもない——寧ろ嫌われていた可能性すらある——相手にあのようなことをされて、彼女は酷い辱めを受けたと思ったに違いない。ディアナと三人、ユリウスに仕える者同士、協力していければと考えてから、ようやく普通に話ができるようになったのに。振り出しに戻るどころか、取り返しが付かないほどに嫌われてしまったようだ。
「それで、例の薬はどうなったの?」
「棚に戻してそのままだ。だが、安心して良い。あいつはもう殿下に薬を盛ったりしない」
ディアナに問われ、ゲオルグは即答した。
ゲオルグが問い質したあのとき、ロッテは確かに「絶対に使わない」と間髪入れずに言い切ったのだ。ユリウスに薬を盛ることを少しでも考えていたとしたら、あのような即答はできない。多少の躊躇いは見せていたはずだ。ゲオルグのあの行為は、異性経験も僅かだった少女の心に想像以上に深い傷跡を残したのかもしれない。
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「そう、なら良いわ。明日からまた討伐任務でしょう? あの子のことは私にまかせてゆっくり休みなさい」
「……お言葉に甘えさせてもらおう」
ゲオルグが頷くと、ディアナはやれやれと肩を竦め、さっさと部屋を出ていった。遠ざかるディアナの背中を見送りながら、赤銅色の前髪をくしゃりと掻き上げて、ゲオルグは大きな溜め息をついた。
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