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第二章 寝言の強制力と魔法使い
シリウスの帰還
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「旦那様が──シリウス様がご帰還されました──!!」
「!!」
グラルからの報告に、私は一瞬、時が止まったかのような錯覚に陥った。
さっきまで髪を撫でていたほんのりと暖かい風が止み、小鳥のさえずりが遠くに感じられた。
──シリウスが帰ってきた。二週間ぶりに……!!
ど、どど、どうしましょう!?
かお!! 顔、変じゃない!?
しばらく会ってないから気を抜いてたし、劣化してないかしら!?
ただでさえ平凡な顔をしているのだから、最低限は維持していないと……!!
外面はぼーっとしながらも心の中ではわたわたと忙しく感情を動かす私に、いち早く我に返ったメイリー様が私の肩をバンバンと叩いた。
「何をぼーっとしてますの!? しゃんとなさいっ!!」
「は、はいっ!! えっ……と、グラル、それでシリウスはここへはいつ? そもそも無事なの? 怪我とかは……?」
武器を持った人々を止めに向かったのだ。
こんなに時間がかかっているのだし、もしかしたら戦闘にもなったかもしれない。
シリウスの安否も伝わってこなかったこの二週間、彼に何かあったのではと気が気ではなかった。
私の問いかけに、グラルがわずかに目尻に皺を寄せた。
「はい。無傷でのご帰還とのことですよ。現在城で報告を行っておいでですが、夕刻にはこちらへお戻りになられるとのことです」
良かった。無傷……。
でも夕刻に? ずいぶん時間がかかるのね……。
今のシリウスなら、すぐにでも家に帰りそうなものなのに。
少しだけ残念に思うけれど、それでもこれだけ大きな仕事をしたんだ。
時間がかかるのも当然か。
と、自分の中で落としていく。
「わかったわ、ありがとう。レゼロに夕食はシリウスの好きなものを作ってあげるように伝えてくれる?」
長い遠征で疲れただろうし、温かくてシリウスの好きなものを食べてほしい。
「かしこまりました」
私の指示に柔らかい笑みを浮かべると、グラルは綺麗な一礼をしてから屋敷の中へと戻っていった。
「よかったですわね、セレンシア様。ご無事のご帰還、おめでとうございます」
「ありがとうございます、メイリー様……!!」
あぁダメ。
目頭が熱くなって、無意識に温かいものが零れ落ちる。
「す、すみません。あれ? 何で……」
止めようと思うのにとめどなく溢れ流れてくる涙。
「は、はは。すみません。あれ? と、止まらな──」
何度も目元をぬぐう私の手を、白く滑らかな手が止めた。
「それだけ気を張っていたのでしょう。でも、あまり擦っても顔が崩れるだけです事よ。大切な方との再会ですもの。最高の自分でいらっしゃいな」
「メイリー様……」
大切な人。
私にとっての大切な、かけがえのない人。
昔から変わらない。大切な──。
好きになってもらえる自信もなくて、あきらめて、どうせ離れるのだからと膝を抱えた。
でも──……。
私──シリウスがどうしようもなく好きだ。
大切で、失いたくない存在で……。
もし叶うなら、これからでも彼に向き合って、【寝言の強制実行】の力が解けたとしても、傍にいられる関係になりたい。
その努力をしたい。
「ありがとうございます、メイリー様。私、自分の気持ちにもう少しだけ正直に生きてみます。シリウスとの未来を……あきらめたくないから」
「あなたはあなたらしくがんばりなさいな。では、私は今日はお暇しますわね。また明日。それまでは決して新しい場所に針を刺さないようになさいね」
「わ、わかりました」
目を吊り上げてそう言うと、メイリー様は「それではご機嫌よう」と綺麗なカーテシーをしてから公爵家を後にした。
「奥様、ようございましたわね」
ポプリがうれしそうに顔をほころばせる。
「えぇ……!! こうしちゃいられないわ。私も厨房へ行ってシリウスの好きなプリンでも作ってあげましょ!!」
私は刺繍道具を片付けると、シリウスの期間を歓迎すべく準備に取り掛かった。
「!!」
グラルからの報告に、私は一瞬、時が止まったかのような錯覚に陥った。
さっきまで髪を撫でていたほんのりと暖かい風が止み、小鳥のさえずりが遠くに感じられた。
──シリウスが帰ってきた。二週間ぶりに……!!
ど、どど、どうしましょう!?
かお!! 顔、変じゃない!?
しばらく会ってないから気を抜いてたし、劣化してないかしら!?
ただでさえ平凡な顔をしているのだから、最低限は維持していないと……!!
外面はぼーっとしながらも心の中ではわたわたと忙しく感情を動かす私に、いち早く我に返ったメイリー様が私の肩をバンバンと叩いた。
「何をぼーっとしてますの!? しゃんとなさいっ!!」
「は、はいっ!! えっ……と、グラル、それでシリウスはここへはいつ? そもそも無事なの? 怪我とかは……?」
武器を持った人々を止めに向かったのだ。
こんなに時間がかかっているのだし、もしかしたら戦闘にもなったかもしれない。
シリウスの安否も伝わってこなかったこの二週間、彼に何かあったのではと気が気ではなかった。
私の問いかけに、グラルがわずかに目尻に皺を寄せた。
「はい。無傷でのご帰還とのことですよ。現在城で報告を行っておいでですが、夕刻にはこちらへお戻りになられるとのことです」
良かった。無傷……。
でも夕刻に? ずいぶん時間がかかるのね……。
今のシリウスなら、すぐにでも家に帰りそうなものなのに。
少しだけ残念に思うけれど、それでもこれだけ大きな仕事をしたんだ。
時間がかかるのも当然か。
と、自分の中で落としていく。
「わかったわ、ありがとう。レゼロに夕食はシリウスの好きなものを作ってあげるように伝えてくれる?」
長い遠征で疲れただろうし、温かくてシリウスの好きなものを食べてほしい。
「かしこまりました」
私の指示に柔らかい笑みを浮かべると、グラルは綺麗な一礼をしてから屋敷の中へと戻っていった。
「よかったですわね、セレンシア様。ご無事のご帰還、おめでとうございます」
「ありがとうございます、メイリー様……!!」
あぁダメ。
目頭が熱くなって、無意識に温かいものが零れ落ちる。
「す、すみません。あれ? 何で……」
止めようと思うのにとめどなく溢れ流れてくる涙。
「は、はは。すみません。あれ? と、止まらな──」
何度も目元をぬぐう私の手を、白く滑らかな手が止めた。
「それだけ気を張っていたのでしょう。でも、あまり擦っても顔が崩れるだけです事よ。大切な方との再会ですもの。最高の自分でいらっしゃいな」
「メイリー様……」
大切な人。
私にとっての大切な、かけがえのない人。
昔から変わらない。大切な──。
好きになってもらえる自信もなくて、あきらめて、どうせ離れるのだからと膝を抱えた。
でも──……。
私──シリウスがどうしようもなく好きだ。
大切で、失いたくない存在で……。
もし叶うなら、これからでも彼に向き合って、【寝言の強制実行】の力が解けたとしても、傍にいられる関係になりたい。
その努力をしたい。
「ありがとうございます、メイリー様。私、自分の気持ちにもう少しだけ正直に生きてみます。シリウスとの未来を……あきらめたくないから」
「あなたはあなたらしくがんばりなさいな。では、私は今日はお暇しますわね。また明日。それまでは決して新しい場所に針を刺さないようになさいね」
「わ、わかりました」
目を吊り上げてそう言うと、メイリー様は「それではご機嫌よう」と綺麗なカーテシーをしてから公爵家を後にした。
「奥様、ようございましたわね」
ポプリがうれしそうに顔をほころばせる。
「えぇ……!! こうしちゃいられないわ。私も厨房へ行ってシリウスの好きなプリンでも作ってあげましょ!!」
私は刺繍道具を片付けると、シリウスの期間を歓迎すべく準備に取り掛かった。
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