まさか俺が異世界転生ものの主人公になるなんて!

越路遼介

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第18話 弓術士イズミ

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「はあ…」
 弓術士イズミは冒険者ギルドを出て、ため息をついた。息は白い。時刻は夜に差し掛かり寒い。
 これから冬に入る時期と云うのに、パーティーを追放されて装備も没収。無一文。
 最低のランク『石』であるため、ギルド側の待遇もあまり良くない。寮も貸してくれない。
「はあ…。何で私だけこんなんばっかり…親に売られた挙句、唯一の取り柄の弓も…」

「見ていたよ。散々だったね」
 レンヤがイズミを追いかけてきた。
「覗き見野郎…」
「ご挨拶だな。しかし君、よく俺が鑑定使って君を見たと分かったな」
「…狩人の勘ってところかな」
「ディナーご馳走するから、セックスの相手してくれ」
 一見、非常識なナンパに見えるが、女性の性欲も強いこの異世界セイラでは非常識ではない。
 もちろん断られることも多いが、男がよほど飢えているのが目に見えて分かるか、見るに堪えない醜男や不潔でないかぎり応じる女はいる。

「ま、いいか…。避妊の魔法は?」
「心得ているよ」
「だったら中に出していいから、ちょっと高いのいい?最近ロクなの食べていないの」
「ああ、いいよ」
「やたっ、ステーキ食べたい!」
「だったら、いい店知っている。ああ、俺は…」
「レンヤでしょ、憶えているよ。誤射したの庇ってくれたものね」

 リケード王国城下町のメインストリートにあるステーキ店『イ・キナールィ』に来た。
 同王国のブランド牛『ヨネイザ牛』『ジマータ牛』を食べられる。
「焼き方はどうなさいますか?」
 店員の問いに
「俺はミディアムレア」
「私はレアで」
「かしこまいりました」
 オーダーを終えるとレンヤは革の胸当てと手甲を外して、隣の椅子に置いた。向かいに座るイズミは
「結構高いけれど…本当に大丈夫なの?」
「たまの贅沢だしな。養っている家族がいるわけでも無し。それに同じ人種の子を抱くのは久方ぶりだし安いものだよ」
「私も同じ人種の男と寝るのは…あれ、もしかして初めてかも。白人と黒人は体臭がちょっとキツくてね…」
「らしいなぁ…。白人女と黒人女はいいにおいするのに不思議なものだよ」
 しばらくすると、ジュー、ジューと鉄板に焼かれているステーキが来た。
「ん~、たまんない」
「ああ、美味そうだ」(君もね)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さっ、最高よ、レンヤァ!」
「イズミのあそこ、いいよぉ…」
 後ろと前から楽しんだあとは騎乗位、イズミは夢中で腰を使い快楽を貪っていた。
 カトレアのようにミミズ千匹とまでいかないが、イズミの秘所も中々の名器。
 締まり具合、おつゆもたくさん出て膣内の滑りも最高だ。
「ああんっ、また、イク!」
「俺も出すよ」

 熱烈な情事を終えて、イズミはレンヤの胸の中に顔を埋めていた。
「ねえ…」
「ん?」
「さっき見ていた通り、私ってばソロになっちゃったのよ。私が次の落ち着き先を決めるまででいいから、レンヤのパーティーに入れてくれない?」
「いや、俺も今日ソロになってしまったんだよ。バレンのおっちゃんたちは故郷に帰ってしまったからな」
「そうなの?」
「ああ、元々長くは続けられないパーティーとは分かっていた。俺以外いい歳だったからな」
「ふうん…。じゃ、改めて次の落ち着き先にしてくれる?毎夜は無理かもしれないけれど、こうしてセックスの相手もしてあげるから…。レンヤのご立派様、すっごくいいんだもん」
「大歓迎だけど、俺は迷宮や遺跡に潜るのは好きじゃない。メインは害獣や低級モンスター退治になるだろう。一獲千金はないぞ」
「ええ、それでいいよ。私も迷宮と遺跡に潜るのは好きじゃないし」
「それじゃパーティー結成を祝い、贈り物があるよ」
「え?なになに!?」

 ちょっといいか、とレンヤは言いベッドから降りてバッグから長方形のケースを出した。
「……?」
「イズミ、君…もしかして目が悪くなったんじゃないか?」
「……!どうして分かったの?」
「弓術士の腕が鈍るのは目が悪くなったと想像するに難しくない。君は俺の鑑定を察知した。君の言う狩人の勘は偽りのないもの。君の弓の腕は確かだということだ。もし落ちた視力をこれで補えれば…」
「それ、もしかして眼鏡!?」
 この世界では、かなりの高級品だ。一つ一つが手作り、レンズ加工は職人たちの技術の結晶、とても石級冒険者が買えるものではない。レンヤは
「これ、俺が作った」

 レンヤの能力『眼鏡』はそのまま眼鏡を作る能力だった。前世立川廉也がプレイしていたスマートフォンアプリ『アイドル☆DREAM!!』において、彼が推していたアイドルは眼鏡っ娘だった。吉原の高級ソープ嬢を堪能する時も、よく女の子に伊達眼鏡をつけてもらっていた。彼が最初のセックスに失敗した恋人もまた眼鏡っ娘だった。
 その眼鏡好きが現在の能力に反映したかは不明だが。

 話は戻る
「レンヤが作ったの!?」
「まあ、何でもやっておくもんだよ。とにかく君の目の状況を把握しないと君に合ったものは作れないからな。ちと検査しよう」
「うんっ!」
 少し視力の検査をしたあと、レンヤはレンズに魔力を流す。
「レンズって、そうやって作るの?」
「違うよ、レンズを研磨する魔道具を使い仕上げるが、俺はそれを必要としないだけだ。と、出来たぞ」
 レンヤに渡された眼鏡をかけたイズミ。しかも軽量かつ頑丈になるよう付与魔法も追加されている。
「……!すっ、すごい!レンヤ、これなら私の弓は百発百中だよ!あはは!……どしたの?」
 眼鏡をかけたイズミを見るや、レンヤの呼吸が荒くなり、ご立派様が腹筋にピタとくっつくほど勃起していた。
「眼鏡っ娘、いい…!」
「え?」
「辛抱たまらん!イズミ、エッチ中、ずっと眼鏡つけていてくれ~!」
 ベッドに押し倒されたイズミ。
「ああん、もう変態!」


 翌日、ギルドに赴きパーティー申請をした。『雷の矢』というパーティー名だった。
 早速ミッションを探す。
「イズミ、この田畑を荒らすボアの退治を受けようと思うけど、いいか?」
「うん、でもその前に武器屋に行かないと。私の弓、あいつらに取られちゃったからさ」

 昨日までイズミが属していたパーティー『シャイニング』の面々は現在窓口に並んでいる。会っても挨拶も会話も無い。素っ気ないものだ。
「今日の君の戦果を見たら、あいつらは君を追放したことを必ず悔やむ」
「ええ、楽しみだわ」
「ああ、これ弓な。ええと、矢のストックはどんだけあるかな…」
 収納魔法から弓を出した。ズタ袋ひと袋分の収納量はあるとギルドに申告しているから問題ない。

「いい弓ね」
「ああ、俺も弓には少し心得があるんでな。まあ、竹で作られた一般的なものだが…おっ、矢は30本近くあるな」
「竹矢ね」
「これでボアを一撃で仕留められるか?」
「それは無理、レンヤ、矢にブーストはかけられる?」
「ああ、出来るよ」
「ふふっ、出会うべくして出会えたパートナーね」
「嬉しいね、さてそろそろ行こうか」
 イズミは追放したパーティー『シャイニング』の面々にアッカンベをしてギルドを出た。
 昨日の追放劇にて、特に言葉を発しなかった盾役を務めるバイソンはイズミのアッカンベに苦笑しつつ、後ろにいる魔法使いのミナに声をかけた。
「…イズミ、眼鏡をかけていたな」
「ええ、よく手に入れられたわね、あんな高いの」
「矢の命中精度が落ちたのは、そのせいか…。だとしたら俺たちはとんでもない損をしたことになる」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 依頼主の村に行った。田畑を荒らして家畜も食い、村内に糞を垂れていく猪がモンスター化したボア、討伐の報酬に加えて毛皮と肉が売れる。対象は三体、死んでしまえば収納魔法に入れられるが、レンヤは悪目立ちを避ける。荷車を城下町でレンタルして曳いてきた。

 村に待機したレンヤとイズミ、村人もボアを見つけるのに協力してくれる。
「若いの、現れたぞ」
 村人が知らせてくれた。村内の田畑、収穫間近の芋を狙っている。そして家畜の牛も。
 ボアは何でも食べるのだ。イズミが弓を引く。
「レンヤ、ブーストお願い」
「了解」
 イズミの曳く矢に光が帯びた。射る。

「ブモッ」
 眉間に深々と矢が刺さり即死だ。これを三体続けてミッション達成。
「しかし、君の以前の仲間たちは、どうして君の矢にブーストをかけなかったんだ?」
「魔法使いはミナがいたけれど、こういう系統の魔法は無理だったみたいね。でも、ある意味ブーストなしで正解だった」
「確かになぁ、バレンのおっちゃんを間違って殺していたところだよ」
「「わははははは!」」

 そして顔を赤めてレンヤに抱きつくイズミ。
「戦闘後で盛ってきちゃった…。あそこが熱いの…」
「じゃあ、この村の宿屋でご休憩しちゃおうか」
「うんっ、あ、眼鏡かけたまま?」
「もちろん、俺ってば眼鏡っ娘がだーい好きなんだ!」
「…変な汁かけないでよ、大切なもんなんだから」


 村内の宿屋で、しこたまイズミの肢体を堪能したあと、ボア三体を荷車に乗せてロープで固定、城下町に帰ることにした。防腐の魔法も施した。イズミは艶々の顔で獲物のボアの上に乗っかり鼻歌を歌っている。軽々と巨体のボア三体とイズミが載る荷車を曳くレンヤ。その背中をうっとりとして見つめるイズミ

「レンヤと組めて良かった。冒険者として満足が出来る仕事が出来るうえ、セックスがすんごく気持ちいいし。蕩けちゃう」
「俺もだよイズミ、やはり同じ人種だから具合が合うのかね。君のあそこと眼鏡に夢中だよ」
「エッチ、あそこと眼鏡以外も愛してよね。うふふっ」
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