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出会い編
人助けの魔女
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ざっくりまとめると数年前、まだおばあちゃんが生きていた頃。
その頃の私は街におばあちゃんと一緒に薬を売りに来て、おばあちゃんの影にひたすら隠れて人と目を合わせない子供だった。
でも一度だけ、おばあちゃんの影から離れたことがあった。
それがいじめられていた同い年くらいの男の子を助けた時。
『‥なに、してるんですか。』
ただおばあちゃんが薬を売りにギルドへ入って行って、ただ外でぼーっとして待っていただけだった。
でもいじめられていた男の子を見た時、かつて私がしていた全てを諦めたような瞳を見た瞬間、勝手に体が動いた。
何しているんだと聞いた時も本当は体がガクガク震えるほど怖かった。
でも男の子を庇うように立ちはだかった体勢で、何故か動こうとは思わなかった。
『だ、誰だよ!お前!』
男の子をいじめていた男が私を見てそんなことを言った。
『…何をしてるって、聞いてるんです。』
(怖い、怖い怖い怖い。
でも、でも、逃げたらダメだ。
逃げたら、この男の子はおばあちゃんに救われなかった私のようになってしまう。
弱気になるな。背筋を伸ばして、言葉をはっきり話して、強気な女を演じてみせろ。
ここはギルドの近く、おばあちゃんが来たらギルドの人たちを呼んで助けてくれるはず。
少しでも時間稼ぎをしてみせろ私っ!)
何秒ほど、いじめていた男と向かい合っていただろうか。
私にとっては永遠と感じられるほど長い時間だった。
そうして男が口を開く。
『…あっ、おま、お前!あの毒薬ばっかり作っているって噂の魔女と一緒にいる女じゃねぇか!気味が悪い!』
『…え?』
(毒薬、ばっかりって…まさかおばあちゃんのこと?
…おばあちゃんは確かに毒薬も作っているけど、毒薬を作っているのはその毒薬の解毒剤を作る過程で必要だから、なんだけどなぁ。)
呆気に取られていた私を置いて男は、
『ちっ、今日はもういい。興がさめた。』
そう捨て台詞を残して去って行った。
(な、何だったんだろう。)
『あ、あのっ。』
後ろからさっきの男の子が話しかけてくる。
私はびくっと体を震わせたあと、秒で土下座姿勢になった。
『ご、ごめんなさ、ごめんなさい!勝手なことしてごめんなさい!ごめんなさいぃ…』
頭上から全力で男の子が戸惑ってる声が聞こえる。
恐る恐ると言った感じで目線だけ上に向けると、男の子は困惑顔で
「いいから立ってください…。」
と言っていた。
とりあえず立って男の子と向かい合う。
怖すぎて全力で帽子を深々と被り無言の私に耐えかねたのか、男の子は沈黙を破った。
『助けてくれて、ありがとうございました。』
感謝されたということは、いらないおせっかいにはなっていなかったようだ。
『あ、い、いえ。ご迷惑になってないのなら、よかったです。』
『…どうして俺を助けたんですか。』
ふと男の子がそんなことを言う。
『どうして、ですか。』
私は少し考えたあとふわりと笑ってこう言うのだった。
『世界はもっと、広いし楽しいんだと言うことを知って欲しくて。』
『…え?』
一瞬何言ってるんだこいつみたいな目を向けられた。
(まぁ、突然こんなこと言うのは変な人、か。)
『人生って、楽しくないことが、たくさん、あります。
友達に嫌われた、とか、親に捨てられた、とか。
でも、それは小さな箱のような世界にすぎないじゃないですか。』
(おばあちゃんに拾ってもらう前までずっと、自分の部屋という名の箱に閉じ込められていた私のように、ね。)
『その小さな箱を飛び出して外の広い世界を知ったら、自分が今まで苦だったことが、小さなことのように思えてくるんです。
…うまく、伝えることは難しいんですけれど。』
そう言って少し苦笑いをして私は男の子と初めて目を合わせた。
(今でもあの時のことを思い出すと少しは辛いし怖い。でも、おばあちゃんに連れられて外の世界を知って、楽しいこともたくさんあるってしれた私のように、あなたにも広い世界の楽しさを知って欲しい。
貴方は私のように監禁なんてされていないのだから、きっと誰かの助けなんてなくても自由に生きることができるはず。)
『もっともっとたくさん、いろんな場所に行って、見て、経験して、人生ってこんなに楽しかったんだって知って欲しいなぁって、そう思ったんです。』
男の子は驚いたような顔をしたあと
『君は…』
という言葉が聞こえた。
だが、その続きの言葉はギルドの方から聞こえたおばあちゃんが私を探している声でかき消された。
『あっ、ごめんなさい!私もう行かなきゃいけないんです。』
そう言って足早にその場をさる。
後ろから男の子の声が聞こえた気がしたが、急いでいた私が振り返ることはなかった。
その頃の私は街におばあちゃんと一緒に薬を売りに来て、おばあちゃんの影にひたすら隠れて人と目を合わせない子供だった。
でも一度だけ、おばあちゃんの影から離れたことがあった。
それがいじめられていた同い年くらいの男の子を助けた時。
『‥なに、してるんですか。』
ただおばあちゃんが薬を売りにギルドへ入って行って、ただ外でぼーっとして待っていただけだった。
でもいじめられていた男の子を見た時、かつて私がしていた全てを諦めたような瞳を見た瞬間、勝手に体が動いた。
何しているんだと聞いた時も本当は体がガクガク震えるほど怖かった。
でも男の子を庇うように立ちはだかった体勢で、何故か動こうとは思わなかった。
『だ、誰だよ!お前!』
男の子をいじめていた男が私を見てそんなことを言った。
『…何をしてるって、聞いてるんです。』
(怖い、怖い怖い怖い。
でも、でも、逃げたらダメだ。
逃げたら、この男の子はおばあちゃんに救われなかった私のようになってしまう。
弱気になるな。背筋を伸ばして、言葉をはっきり話して、強気な女を演じてみせろ。
ここはギルドの近く、おばあちゃんが来たらギルドの人たちを呼んで助けてくれるはず。
少しでも時間稼ぎをしてみせろ私っ!)
何秒ほど、いじめていた男と向かい合っていただろうか。
私にとっては永遠と感じられるほど長い時間だった。
そうして男が口を開く。
『…あっ、おま、お前!あの毒薬ばっかり作っているって噂の魔女と一緒にいる女じゃねぇか!気味が悪い!』
『…え?』
(毒薬、ばっかりって…まさかおばあちゃんのこと?
…おばあちゃんは確かに毒薬も作っているけど、毒薬を作っているのはその毒薬の解毒剤を作る過程で必要だから、なんだけどなぁ。)
呆気に取られていた私を置いて男は、
『ちっ、今日はもういい。興がさめた。』
そう捨て台詞を残して去って行った。
(な、何だったんだろう。)
『あ、あのっ。』
後ろからさっきの男の子が話しかけてくる。
私はびくっと体を震わせたあと、秒で土下座姿勢になった。
『ご、ごめんなさ、ごめんなさい!勝手なことしてごめんなさい!ごめんなさいぃ…』
頭上から全力で男の子が戸惑ってる声が聞こえる。
恐る恐ると言った感じで目線だけ上に向けると、男の子は困惑顔で
「いいから立ってください…。」
と言っていた。
とりあえず立って男の子と向かい合う。
怖すぎて全力で帽子を深々と被り無言の私に耐えかねたのか、男の子は沈黙を破った。
『助けてくれて、ありがとうございました。』
感謝されたということは、いらないおせっかいにはなっていなかったようだ。
『あ、い、いえ。ご迷惑になってないのなら、よかったです。』
『…どうして俺を助けたんですか。』
ふと男の子がそんなことを言う。
『どうして、ですか。』
私は少し考えたあとふわりと笑ってこう言うのだった。
『世界はもっと、広いし楽しいんだと言うことを知って欲しくて。』
『…え?』
一瞬何言ってるんだこいつみたいな目を向けられた。
(まぁ、突然こんなこと言うのは変な人、か。)
『人生って、楽しくないことが、たくさん、あります。
友達に嫌われた、とか、親に捨てられた、とか。
でも、それは小さな箱のような世界にすぎないじゃないですか。』
(おばあちゃんに拾ってもらう前までずっと、自分の部屋という名の箱に閉じ込められていた私のように、ね。)
『その小さな箱を飛び出して外の広い世界を知ったら、自分が今まで苦だったことが、小さなことのように思えてくるんです。
…うまく、伝えることは難しいんですけれど。』
そう言って少し苦笑いをして私は男の子と初めて目を合わせた。
(今でもあの時のことを思い出すと少しは辛いし怖い。でも、おばあちゃんに連れられて外の世界を知って、楽しいこともたくさんあるってしれた私のように、あなたにも広い世界の楽しさを知って欲しい。
貴方は私のように監禁なんてされていないのだから、きっと誰かの助けなんてなくても自由に生きることができるはず。)
『もっともっとたくさん、いろんな場所に行って、見て、経験して、人生ってこんなに楽しかったんだって知って欲しいなぁって、そう思ったんです。』
男の子は驚いたような顔をしたあと
『君は…』
という言葉が聞こえた。
だが、その続きの言葉はギルドの方から聞こえたおばあちゃんが私を探している声でかき消された。
『あっ、ごめんなさい!私もう行かなきゃいけないんです。』
そう言って足早にその場をさる。
後ろから男の子の声が聞こえた気がしたが、急いでいた私が振り返ることはなかった。
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