レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

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「……しょんにゃそんなこと、にゃいないよ」


 ポン。


 三歳の小さなレイルークの手のひらをユリアの頭に乗せ、そして優しく撫でた。


「こうしゃくけはへーみんをようしにしたぐりゃいで、かみぇいかめいにきじゅがちゅくなんてにゃい。とーたまとかーたまは、かんがえたしゅえに、きみをようしにしゅるときみぇたんだ。しょのきもちをむだにしちゃダメだよ。
……こじいんがどりぇだけたいへんなとこりょか、ほんとはわかってりゅでしょ? じぶんをたいしぇちゅたいせつにしにゃいと。
こーいうときは、こどもなんだかりゃ、いっぱいあまえりぇばいいとおもう。
めいわくかけりゅとおもうのなりゃ、がんばればいいんだよ! がんばってりっぱなこうしゃくのこになりぇば、いいんだよ!!」

 そう言ってユリアの頭から手を離すと、今度はユリアの手を優しく握った。

「しょしてね。できれば……ぼくの……ぼくのほんとうのねーたまに、なってほしい」

 自分の気持ちを正直言ってユリアを見つめる。

「ぼくと、かぞくににゃって!!」


 ユリアはレイルークに手を握られながら、呆然とレイルークを見ていた。

「レイ、ルーク……」

「……あ、あはは。ぼく、なにいってりゅんだろ。あ、あにょ、しゃきにかえりゅね! ねーたまはゆっくりしてて!」

 急に恥ずかしくなったレイルークは逃げる様に中庭に向かって走り出した。


 中庭は美しい花々が咲き誇っていた。

 イングリッシュガーデンのような中を通り抜け、庭木の間をしばらく走り続けると突然視界が開ける。
 先には美しい花畑が広がっていて、その中央には小さな噴水が見えた。

 ゆっくりと近づいて噴水の淵に両手を置くと、勢いよく顔を俯けた。


(……ちょっとだけ、恥ずかしかった……!!)


 仲良くしようとして、勢い余って何だか恥ずかしい台詞を言ってしまった気がする。


「レイルーク様」

 その声に顔を上げると、シンリーが花畑を歩いてくる。レイルークは独り言のように呟いた。

「シンリー。……ユリアおねーたまは……だいじょうぶ、かな……」

「そうですね。……ユリア様には、まだ時間が必要なのかもしれませんね」

「……うん……」

 ユリアがいる方角を見ると、綺麗な花畑の花達が微風にそよそよと揺れているのが見えた。

 微風でレイルークの髪も揺れる。

 心地良い風に瞳を閉じて、寂しそうだった姉の事を想った。


「……ぼくは。どうしてあげたら、いいんだろう……」

「……レイルーク様」

 シンリーはレイルークの前に屈み込むと、優しい眼差しを向けた。

「レイルーク様が先程ユリア様に仰られた言葉は、全て間違っておりませんでした。後は、レイルーク様はユリア様を信じて、待って差し上げれば宜しいかと」

「……うん」

 不安そうなレイルークをシシリーは優しく抱きしめると、レイルークの背中を優しくあやす様にポンポンとリズムよく叩いた。

「きっと、大丈夫ですよ。……大丈夫、大丈夫」

 懐かしくて心地良いその響きを聴きながら、レイルークはもう一度、ゆっくりと瞳を閉じた。



 ***



 気が付いたら自分の寝室に寝かされていた。
 どうやら、あのまま眠ってしまっていた様だ。

 ゆっくり上半身を起こすと、窓をぼんやりと眺めた。

 窓から漏れる日差しの明るさから、そんなに時間は経っていないのが窺える。

 部屋を見回してみたがシンリーは見当たらない。


 レイルークはため息を吐いて顔を手のひらで覆った。

(……ポンポンされてつい寝ちゃうなんて、恥ずかしい……!)

 羞恥心を忘れようと、気合を入れて両手で両頬を軽く叩いた。

(よし、とりあえず姉様ともっと話をしてみよう)


 女の子とならどんな会話がいいかとベッドの上で悩んでいると、遠慮がちな小さいノック音とともにシンリーが部屋に入ってきた。

 レイルークが起きているのに気がつくと、笑顔を浮かべてベッドに近づいた。

「お目覚めになられてましたか、レイルーク様」
「うん。ごめんね、ねむっちゃって」
「謝られることではございませんよ。それよりも、そろそろご昼食の時間でございますが。ユリア様とご一緒なさいますか?」

「しょうだね。ユリアねーたまがいいなら、いっしょにたべたいな」
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