レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか

宮崎世絆

文字の大きさ
15 / 51

15

しおりを挟む
 デュエットに連れられて辿り着いたのは、以前訪れた事のあるレオナルドが使う執務室だった。

 扉をノックして「ユリア様とレイルーク様をお連れしました」とデュエットが告げると、中からレオナルドの応答が聞こえた。

 デュエットが扉を開けてくれたので、ユリアと二人で中へと入った。

「やあ! 待ってたよユリア!! それにレイも!」

 レオナルドの隣に座っていた、相変わらず男装な出で立ちのルシータは、相変わらず美しい笑顔で迎えてくれた。

「えへへ、気になって一緒に来ちゃった」
「やれやれ、レイは好奇心旺盛だな」

 レオナルドも相変わらず美丈夫だが、やや呆れ顔だ。

 部屋を見回すと両親の他には誰も居ない。
 いつもレオナルドのそばに控えているセバスや、案内してくれたデュエットも既に居なかった。魔力測定は家族のみで執り行う様だ。

 テーブルにはボウリングボールよりやや小さめくらいの丸い水晶が鎮座していた。お約束なアイテムにレイルークは目を輝かせて駆け寄った。

「父様! これが魔力測定器!? これに手を乗せれば、魔力の属性や魔力量を測れるの!?」
「そうだ。貴重な物だから、遊んだりしては駄目だぞ?」
「うん!!」

(わー綺麗な水晶だな。一体どういう仕組みなんだろう? こういう摩訶不思議なのって本当ファンタジーだよね)

「レイ、一緒に座ろう?」

 魔力測定器の前から動かないレイルークはユリアに頭を撫ぜられ、我に返った。

「はーい」

 両親と反対側のソファーにユリアと座った。

「では、そろそろ始めよう。ユリア、手の平を水晶に乗せてご覧」
「はい、お義父様」

 レイルークは固唾を呑んで見守る。

(どうなるんだろ。すっごくわくわくする!)

 既に興奮状態のレイルークに気付く事なく、ユリアはゆっくりと右手を水晶に近づけ手の平を乗せた。

 水晶の中央が白い光を放ち出す。
 その光は次第に大きくなっていき、やがて水晶全体を白い光で覆い尽くした。

「わー綺麗だ! 父様! これが姉様の魔力?!」
「そうだ。白い光の強さで魔力量を測る事が出来る。ユリアはかなり強い魔力の持ち主だ」
「ユリア!! 水晶を全て光らせる人間はそうそう居ないぞ!! 私やレオを除けば、他の公爵連中ぐらいだ!!」
「おお……」

(流石ユリア姉様! 可愛カッコいい!!)

「二人共、水晶の中央をよくご覧。中央に現れる光の色で、その者の一番得意な属性が分かる」

 すかさずレイルークは水晶の中央を凝視した。
 しばらくすると、中央の光だけが色を変えていく。その色は……。

「……水色……? でも、緑色も見える気がするけど……? 父様、これは?」

 現れた光は一色ではなく二色。
 透き通る水色と同じく透き通る黄緑に近い緑色が混ざり合う様に渦を巻きながら光っていた。

 レオナルドとルシータも驚いているのが分かった。

「……これは珍しい。ユリアは『水』と『風』の二属性を得意としている様だ」
「え? 二つの属性が現れるのは、そんなに珍しいの?」
「レイ! 得意な属性は、基本一つなんだ! 昔、稀に複数得意属性を持つ者もいたが、最近では聞いた事がない!! 凄いぞユリア!!」

 ユリアはゆっくりと右手を水晶から離した。
 水晶の光は徐々に光を弱めていき、消滅した。

 ユリアは胸元で右手を左手で包み込むと、大きく息を吐いた。

「……信じられない。……得意な属性が、『水』と『風』の二属性もあったなんて……」

 感慨深そうに呟いたユリアを、ルシータはいつの間にか回り込んだのか後ろ側から突然抱きしめた。

「……ユリア。ルシアは水の属性を。ユーステウスは風の属性を得意としていた。……ユリアは二人の得意属性を引き継いだんだ!!」
「……お父さんとお母さんの……」

 ユリアは呆然としていたが、ゆっくりと微笑んだ。

「そうなんだ。……だったら、すごく嬉しい」

 自分の手の平を見つめながら嬉しそうに笑うユリアを見て、レイルークも釣られて微笑んだ。

「そうだ! 父様と母様は得意な属性って何?」
「私達か? 私は……」
「レオ! 測定して見せてあげれば良いじゃないか!!」

 ルシータはレオナルドの手を掴むと勝手に水晶に乗せた。レオナルドはされるがままに手の平を開いた。
 すると水晶はユリアの時と同じ位に白く輝いた。
 中央に光り輝く光の色は透明な緑色だった。

「ご覧の通りレオの得意属性は『風』!! ちなみに中央の光の色はね、透明な色に近い程、適性が高くなるんだ!! レオの場合、適正値が高いので上位適正として『嵐』の名が与えられているんだ!!」

(上位適正の『嵐』か……。流石父様。確かに凄く透明な緑色だな……)

 レオナルドが水晶から手を離すと、すかさずルシータが自身の手の平を乗せた。

「ついでに私の属性も発表しよう!!」

 水晶は三度みたび同じ位の白い光を放つ。しかし、中央の光の色が変わらない。

「あれ? 光の色が変わらないよ?」
「フッフッフッ。私の得意属性はね、ずばり『光』さ!!」

(おおおおっ! レア属性だ!!)

「『光』や『闇』を得意属性に持つ者は少ない。シータは『光』の魔法を操る魔法剣士。巷では『光の剣士』と言われている」

(父様、そ、それは……! 恥ずかしくないの母様?! いや、すごく似合ってるけど!!)

「ハハハっ! その名に恥じない剣士でありたいものだよ!!」

 ……恥ずかしくないようで、何よりです。

「みんな凄いね! 僕も! 僕もどんな魔力か知りたい!! ね、今、測定しちゃ……駄目、かな?」

 今すぐ自分の魔力を知りたくて、ダメ元で訪ねてみる。

「…………まあ、十歳と規定があるが、ある程度魔力が安定していれば測定は可能だろう。しかし……」
「ハハハ! 皆測定したんだ! レイが測定したくなるのは無理もない!! 別に危険はないのだからやらせてあげても良いのではないか? レオ?」

「…………今回だけだ。次は十歳になってからだ」
「やった! ありがとう父様、母様!!」

(僕はどの属性が得意なんだろう? ……闇属性とか、かっこいいよね! それか母様と同じ光属性も良いよね! 加えて父様の風属性との二属性だと、姉様とお揃いみたいでもっと良いな。
……でも、もしかしたらテンプレっぽく全属性対応とかだったりして。……はは、なんちゃって。流石にないよね)

 あれこれ予想しながら手の平を水晶に乗せてみる。

 水晶に白い光が現れた。三人と同じように水晶全体を照らし出す。

(おお。僕ってやっぱりサラブレッドな血筋……ん?)

 突然白い光が勢いを増し、その光は水晶だけでなく部屋を照らす程までに強く光り輝いた。

「あ、あれ……?」

 すると更に中央から透明な光が白い光を塗り替えるように溢れ出してきた。
 あまりにも眩しい光に目が眩む。

(ま、眩しい!! なんだよこれ!?)

 音を立てて、水晶に大きなヒビが入ったのが辛うじて見えた。


(! まずい!!)


「姉様!!」

 レイルークは水晶から守る様にユリアを抱き込んで、勢いよくソファーに倒れ込む。
 
 軋む水晶から自分の手のひらが離れた瞬間、水晶はガラスが割れるような大きな破裂音と共に粉々になって砕け散った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

処理中です...