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執務室に沈黙が生まれた。
覆い被さるように強くユリアを抱きしめられながらソファーに倒れこんだレイルークは、先程のショックなのか、とにかく心臓がバクバクしていた。
(ど、どうしよう。魔力測定器、割れちゃった……)
「レ、レイルーク……。あ、ありがとう。もう、だ、大丈夫だから……」
レイルークの胸板をユリアが軽く叩く。ハッとして上半身をユリアから離した。
「ユリア姉様!! 大丈夫?! 怪我は…怪我は無い?!」
ユリアの顔の左右に両腕を着いて、ユリアを閉じ込めた状態で真上から覗き込むように見下ろした。
「う、うん! だ、だ、大丈夫! 大丈夫だから!! は、離れて……!!」
何故かユリアは顔を真っ赤にして、レイルークの胸元を押し返してきた。
(? 何でそんなに慌ててるのか分からないけど、どうやら何ともないみたいだ。……良かった)
安堵と共にレイルークは少し落ち着きを取り戻し、ユリアから上半身を離した。
未だ顔の赤いユリアの手を引いて上半身を起こしてあげてから、レイルークは改めてテーブルを見た。
水晶は見事な殆どに粉々に砕け散っていた。
「これは……まずい事になった……」
「これは……流石に想定外だね……」
レオナルドとルシータも全くの無傷だが、レオナルドは疲れたように眉間を指で挟んでいる。
ルシータは溜息を吐きながら、ソファーにもたれ掛かり天井を仰ぎ見ていた。
レイルークは自分の顔色が悪く(青く)なるのを感じた。
不可抗力とはいえ公爵家の貴重な魔力測定器を木っ端微塵にしてしまったのだ。どれ程の価値があったのか、想像もつかない。
(……どうしよう。謝って済む気がしない!!)
「レイルーク」
「ごめんなさい!!」
レオナルドの声に素早く反応したレイルークは、勢いよく立ち上がると、思いっきり腰を直角に曲げた。
やはり、謝る以外に方法など無かった。
「本当にごめんなさい! 貴重な魔力測定器を壊してしまって……」
「ああ、別にそれは全く問題ではない。直ぐに新しい物を用意すれば良いだけのことだ」
(え、問題無いの!? 貴重なお品の筈では?!)
「それよりも問題なのは、レイルーク。お前自身だ」
「え?」
問題児認定ですか? レイルークはかなりのショックを受けた。
「水晶が割れる程の魔力など通常有り得ない。それに加えてあの透明な光。……あれが魔力量よりも更に問題だ」
(魔力量が凄くて水晶が割れたのは理解できたけど。属性は透明、ってどういう意味なんだろう?)
「あの、属性が透明って……。僕の得意属性は……?」
「……属性を示す光は、透明な程適性が高い。無色透明、という事は……。全属性、適性があるという事だ」
(げ! そ、それってテンプレチートってやつだ!!)
レイルークはよろめいて、そのままソファーに座り込んだ。
(なに……僕、魔王とか倒さないといけないの? この世界には魔物は居ても魔族は居ない筈なのに。もしかして……僕って勇者とか何かなのかな。最終的には最強目指して『俺TUEEE~~!!』ってやつやらないといけないのか?! つまりハイファンタジーまっしぐら!?)
「レイ、大丈夫?」
不安そうなレイルークの肩をユリアがそっと優しく支えてくれる。
レオナルドは考え込む様に瞼を閉じた。
「……ただでさえ美しすぎる容姿に、加えて憶測の域を出ないが歴代最高であろう魔力量、しかも全属性適性などと……私達の子は本当に妖精だったのか……」
「父様! 気をしっかり持って! 僕は人間だよ!!」
「いや、レイ……。レオの言うことは揶揄するものではないよ。……それくらい前例が無いという事さ!!」
再び沈黙が生まれた。
「……私が、守ります」
「姉様?」
レイルークの肩に置いたユリアの手に力が入ったのが分かった。
「どれだけ公爵家で囲っていても、レイルークの噂は既に世に知れ渡っている事は知っています。もしこの件が皆の知ることとなれば。更にどんな手を使ってでも手に入れようと躍起になるでしょう。……そんな事、私が絶対にさせません」
(営利目的な誘拐!!)
レイルークは僅かに震えた。そんなレイルークを安心させる様にそっと抱き寄せる。
「貴方が大人になるまでは私が守ってあげる。だから、安心してレイルーク」
優しく語りかけるその声に、強張っていた身体が少し解れた。
「……魔力量は、魔力制御の魔導具で何とかなるだろう。得意適性は……公表する属性を一つか二つに絞った方がいいな。あとは……レイルーク」
「……はい」
「レイの姉であるユリアがお前を守ってくれる。勿論、私達もだ。だからなにも心配する事はない。……ただ、心構えは必要だ。分かるな?」
「はい」
「本当ならば、レイが成長するまでは敢えて魔術から離れるのがいいのだが。レイには耐えられないだろう? ならば、先ずはその膨大な魔力をきちんとコントロール出来る様に、早急に手を打たなければならない」
(流石父様、僕の性格をよく分かってる。けど、どうやって)
「そこで私の出番だな!!」
ルシータが勢いよく立ち上がった。
「母様?」
「レイの魔力制御、この私が教えようではないか!! 何、私のレイのことだ! 特訓を積み重ねれば、短時間で完璧にコントロール出来る様になるさ!!」
(僕、近々死ぬかもしれません……)
覆い被さるように強くユリアを抱きしめられながらソファーに倒れこんだレイルークは、先程のショックなのか、とにかく心臓がバクバクしていた。
(ど、どうしよう。魔力測定器、割れちゃった……)
「レ、レイルーク……。あ、ありがとう。もう、だ、大丈夫だから……」
レイルークの胸板をユリアが軽く叩く。ハッとして上半身をユリアから離した。
「ユリア姉様!! 大丈夫?! 怪我は…怪我は無い?!」
ユリアの顔の左右に両腕を着いて、ユリアを閉じ込めた状態で真上から覗き込むように見下ろした。
「う、うん! だ、だ、大丈夫! 大丈夫だから!! は、離れて……!!」
何故かユリアは顔を真っ赤にして、レイルークの胸元を押し返してきた。
(? 何でそんなに慌ててるのか分からないけど、どうやら何ともないみたいだ。……良かった)
安堵と共にレイルークは少し落ち着きを取り戻し、ユリアから上半身を離した。
未だ顔の赤いユリアの手を引いて上半身を起こしてあげてから、レイルークは改めてテーブルを見た。
水晶は見事な殆どに粉々に砕け散っていた。
「これは……まずい事になった……」
「これは……流石に想定外だね……」
レオナルドとルシータも全くの無傷だが、レオナルドは疲れたように眉間を指で挟んでいる。
ルシータは溜息を吐きながら、ソファーにもたれ掛かり天井を仰ぎ見ていた。
レイルークは自分の顔色が悪く(青く)なるのを感じた。
不可抗力とはいえ公爵家の貴重な魔力測定器を木っ端微塵にしてしまったのだ。どれ程の価値があったのか、想像もつかない。
(……どうしよう。謝って済む気がしない!!)
「レイルーク」
「ごめんなさい!!」
レオナルドの声に素早く反応したレイルークは、勢いよく立ち上がると、思いっきり腰を直角に曲げた。
やはり、謝る以外に方法など無かった。
「本当にごめんなさい! 貴重な魔力測定器を壊してしまって……」
「ああ、別にそれは全く問題ではない。直ぐに新しい物を用意すれば良いだけのことだ」
(え、問題無いの!? 貴重なお品の筈では?!)
「それよりも問題なのは、レイルーク。お前自身だ」
「え?」
問題児認定ですか? レイルークはかなりのショックを受けた。
「水晶が割れる程の魔力など通常有り得ない。それに加えてあの透明な光。……あれが魔力量よりも更に問題だ」
(魔力量が凄くて水晶が割れたのは理解できたけど。属性は透明、ってどういう意味なんだろう?)
「あの、属性が透明って……。僕の得意属性は……?」
「……属性を示す光は、透明な程適性が高い。無色透明、という事は……。全属性、適性があるという事だ」
(げ! そ、それってテンプレチートってやつだ!!)
レイルークはよろめいて、そのままソファーに座り込んだ。
(なに……僕、魔王とか倒さないといけないの? この世界には魔物は居ても魔族は居ない筈なのに。もしかして……僕って勇者とか何かなのかな。最終的には最強目指して『俺TUEEE~~!!』ってやつやらないといけないのか?! つまりハイファンタジーまっしぐら!?)
「レイ、大丈夫?」
不安そうなレイルークの肩をユリアがそっと優しく支えてくれる。
レオナルドは考え込む様に瞼を閉じた。
「……ただでさえ美しすぎる容姿に、加えて憶測の域を出ないが歴代最高であろう魔力量、しかも全属性適性などと……私達の子は本当に妖精だったのか……」
「父様! 気をしっかり持って! 僕は人間だよ!!」
「いや、レイ……。レオの言うことは揶揄するものではないよ。……それくらい前例が無いという事さ!!」
再び沈黙が生まれた。
「……私が、守ります」
「姉様?」
レイルークの肩に置いたユリアの手に力が入ったのが分かった。
「どれだけ公爵家で囲っていても、レイルークの噂は既に世に知れ渡っている事は知っています。もしこの件が皆の知ることとなれば。更にどんな手を使ってでも手に入れようと躍起になるでしょう。……そんな事、私が絶対にさせません」
(営利目的な誘拐!!)
レイルークは僅かに震えた。そんなレイルークを安心させる様にそっと抱き寄せる。
「貴方が大人になるまでは私が守ってあげる。だから、安心してレイルーク」
優しく語りかけるその声に、強張っていた身体が少し解れた。
「……魔力量は、魔力制御の魔導具で何とかなるだろう。得意適性は……公表する属性を一つか二つに絞った方がいいな。あとは……レイルーク」
「……はい」
「レイの姉であるユリアがお前を守ってくれる。勿論、私達もだ。だからなにも心配する事はない。……ただ、心構えは必要だ。分かるな?」
「はい」
「本当ならば、レイが成長するまでは敢えて魔術から離れるのがいいのだが。レイには耐えられないだろう? ならば、先ずはその膨大な魔力をきちんとコントロール出来る様に、早急に手を打たなければならない」
(流石父様、僕の性格をよく分かってる。けど、どうやって)
「そこで私の出番だな!!」
ルシータが勢いよく立ち上がった。
「母様?」
「レイの魔力制御、この私が教えようではないか!! 何、私のレイのことだ! 特訓を積み重ねれば、短時間で完璧にコントロール出来る様になるさ!!」
(僕、近々死ぬかもしれません……)
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